東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第53話 家路

 

人里にて紅魔館のメイド長、十六夜咲夜との戦いを繰り広げた練也だったが、その場の地理状況では彼の能力の発揮は難しく苦戦を強いられる。そこへ駆け付けた慧音と妹紅によって形勢は好転し、咲夜はその場から去った。

 

 

 

「練也、一体どうしたというんだ。」

 

 

 

人里に被害が及んでいないことを確認した慧音と妹紅は、練也へと歩み寄る。誰かが戦っているという報告を里の自警団が2人に報告をした為、今回は大事には至らなかった。ワームが相手じゃないにしても、咲夜は幻想郷の中で実力は上位ランクに入るかなりの強者だ。あと少し遅ければ、練也は更に傷を負っていただろう。

 

 

 

「しかし、なんだって紅魔館のメイドが此処で戦うんだ。」

 

 

「さしずめレミリアの差し金だろう。あの吸血鬼は一体何を考えているのか...。それより練也。怪我をしているが大丈夫か?」

 

 

 

 

傷口から血を流す練也に、慧音はハンカチを取り出し血を拭うようにと彼に手渡す。差し出されたハンカチを前に、練也はそうはいかないと言う風に断った。

 

 

 

「いや、女性のハンカチを血で汚すのは...。」

 

 

「また私の頭突きを味わいたいようだな。」

 

 

「...ハンカチありがとうございます。」

 

 

「わかればよろしい。」

 

 

 

やはりこの人には中々頭が上がりそうもない。慧音の頭突きを食らってからそれが頭に叩き込まれたか、練也は慧音の厚意を受けてハンカチで血を拭った。白い頭髪と白、赤の2色を基調とした服装をした少女、藤原妹紅は練也に言った。

 

 

 

「それで、慧音とは面識があるみたいだがアンタは誰?」

 

 

「ああ、そうだったな。妹紅は練也と初対面か。」

 

 

 

血を拭ったハンカチを慧音に返した後、練也は妹紅に向かい自己紹介する。

 

 

 

 

「俺は佐藤練也。見ての通り神社の神職で、最近こっちにやってきた外来人だ。」

 

 

「アタシは藤原妹紅。竹林の案内人をしている。...今思い出した。アンタ、たしか天狗の新聞に載っていた外来人か?」

 

 

「そうだよ。やっぱり情報は広まっていたのか。」

 

 

 

 

烏天狗の情報共有能力は確かなものだ。あっという間に世間に広まり、下手なことは出来なくなる。慧音が居なければ、今頃人里ではクレーター製造業者として練也は幻想郷中に知れ渡ることとなったに違いない。

 

 

 

「たしか守矢神社に住んでるって聞いたけど。時間は大丈夫なのか?」

 

 

「ああ、これぐらいなら大丈夫。2人共、助けてくれてありがとう。俺はもう帰るよ。」

 

 

「ああ、気を付けるんだぞ。」

 

 

 

 

慧音と妹紅に見送られ、練也は守矢神社への帰路へ就いた。歩いて行くその道中、彼は重大な事実に直面したのだった...。

 

 

 

 

「(帰り道ワカンネー...。)」

 

 

 

 

神社から此処までの間、衝撃波を用いての大跳躍という究極的なショートカットを使用した練也は、経路は勿論、目印らしいモノも何1つわかる筈もなかった。彼は守矢神社のある方角を把握しつつ、歩いて帰ることにした。

 

 

 

 

妖怪の山、山中。鬱蒼と生い茂る木々の間をゆっくりと歩いて行く。先程から彼の周りには、人ではない者の気配が蠢いていた。白い頭髪に犬のような耳を生やし、練也とは異なる袴を着用している。更に目を惹くのは、臀部付近の白いしっぽである。見る人が見れば、モフりたくなる衝動に駆られること間違いなしである。両手には盾と刀を持ち、今にも襲いかかって来そうな様子である。

 

 

 

「(さっきから茂みが微妙にガサついているな...。)」

 

 

「そこの人間、止まれ。」

 

 

 

案の定である。白い耳としっぽを生やした集団が、練也の周りに存在する茂みから、または上空から姿を見せた。一切の動作を起こさないように言われ、練也はその場で立ち止まった。

 

 

 

「貴様、何処へ向かう気だ。これより先は我々天狗の領域だぞ。」

 

 

「(言葉を喋れるってことは、意思の疎通が出来るってことか。)道に迷ってしまって、何処へ行けば良いのかわからなくなったんだ。」

 

 

 

 

見たところ、かなり統制のとれた集団だ。先程の現れたタイミングといい、全員が全員ちゃんと戦闘態勢を維持していることといい、完成された1つの軍事組織と言える。自由に動く妖精とは明らかに違う性質を持っていた。

 

 

 

「目的地を言え。」

 

 

「守矢神社だ。方角も途中まで覚えていたんだが、今ではサッパリだよ。」

 

 

「ほう、守矢神社か。...その服装は宮司か何かだな...。」

 

 

 

 

全体的に見て白の割合が多い、妖怪の山に住む白狼天狗と呼ばれる存在。この種族は千里先の状況を知ることが出来る、なんとも立派な耳目を持った種族だ。練也が発する轟音は、それは白狼天狗達には堪えたことだろう。

 

 

 

 

「守矢神社で宮司...?おい、お前。まさか、烏天狗の方が調べている例の外来人か?」

 

 

「ああ。つい最近来たばかりで幻想郷どころか、この山のことも満足に知らないよ。」

 

 

「そうか...。...よし、行け。守矢神社はこの先...。」

 

 

 

 

またもや戦闘かと思ったが、予想は外れ険悪なムードから一転した。白狼天狗が懇切丁寧に道を教え始めたが、それに対し頭の弱い練也は途中で頭がこんがらがってしまった。それを見かねた他の白狼天狗達が、こぞって彼に道案内をし始めた。

 

 

 

「...で、こう行けば着く。わかったか?」

 

 

「.....。ああ、大体わからなかった。」

 

 

「わからなかっただと?!お前は私の丁寧な道案内を無碍にするのか!」

 

 

「いや、そうじゃなくて。俺、バカだからさ。あまり覚えられない...。」

 

 

「何?!私の道案内がわからんと言うのか、貴様!?」

 

 

「それじゃあ、私が...。」

 

 

「ココはアタシが...。」

 

 

「いやいや、私がやるわ。」

 

 

「どうぞどうぞ。」

 

 

「ちょっとお?!!」

 

 

 

 

いつの間にかコントをする白狼天狗達を見ていると、練也の心は自然と穏やかになったそうな...。そして1人の白狼天狗が彼の前に出て、わかりやすい説明をする。今度は、流石の彼も覚えられたようだ。

 

 

 

「...。これでわかりましたか?」

 

 

「ああ、ありがとう。今度は大丈夫!」

 

 

「注意して下さいね。夜の山は私達以外にも大勢妖怪が居ますので。」

 

 

「ああ。十分気をつけるよ。それじゃあ。」

 

 

「あっ、あと1つだけ、...良いですか?」

 

 

 

練也が歩み始めたと同時に、先程彼に道を教えた1人の白狼天狗が声でその動きを止め振り向かせる。片頬に2本の斬り傷がある彼の顔は、どこか彼女に凛々しさを感じさせた。そう感じた彼女は一瞬戸惑い、それから練也に言った。

 

 

 

 

「あの...。あの音なんですけど...。」

 

 

「...やっぱり響いていたのか?」

 

 

「はい...。私も、ちょっと耳に響いちゃって...。」

 

 

「善処するよ。ごめんなさい。」

 

 

「あっ...、...はい。お願いします...。あと、名前...。私は、犬走椛と言います。」

 

 

「佐藤練也です。それじゃあ、道案内ありがとう!」

 

 

 

そう言って、練也は教えられた通りの道を歩いて行った。彼は、当分の間衝撃波を使うことは出来なくなりそうだ...。

 

 

 

 

 

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