東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第56話 紫 vs レミリア

 

 

 

紅魔館に響く、数多くの轟音。それは勿論、弾幕を放ちそれが着弾したことによって生じた音である。紅魔館の主、レミリアスカーレットと妖怪の賢者、八雲紫の間で、熾烈な戦いが繰り広げられていた。

 

 

 

「流石、紅魔館を束ねる者と言ったところかしら...?誰かに憑依されてもその強さは健在というわけね。」

 

 

「減らず口はそれまでよ...!」

 

 

 

そう言いながら、レミリアは弾幕を放ちつつスペルカードを発動する。

 

 

 

 

「夜符『デーモンキングクレイドル』!」

 

 

 

レミリアから放たれた弾幕が突然止み、その直後に彼女の身の回りには顕著な変化が見られた。青か、それとも緑か...。いや、その2色が合わさったエネルギーが、絶えず彼女の周りを巡り始める。やがて電流のようにも見えるそのエネルギーを纏ったレミリアは、凄まじい速度で紫に突っ込んで行った。

 

 

 

 

「(この感じ...、やはり彼女は本来のレミリアではない...。)前とは色の趣向が随分と違うのね。」

 

 

「はああぁぁぁぁああっ!!」

 

 

 

 

余裕を崩さない様子でレミリアに言い放ち、紫は数多のスキマを出現させ弾幕を張る。高密な弾幕をものともせずに突き進み、かつ、彼女も大小様々な弾幕を負けじと自身の身体から放つ。

 

 

 

 

「....。」

 

 

 

 

紫は自身の両手をゆっくりと広げ、その中より無数の光る球体を出現させた。まるで意思を持って動いているかのような挙動をとるそれ等に対し、紫は無言でレミリアに対する攻撃を指示する。それと並行して、生じている多数のスキマからは弾幕がレミリアに向けて放たれ続ける。

 

 

 

「貴女がそこまで力技で来るなんて、少々意外ね。あまりらしくないことをやるものじゃないわよ?」

 

 

 

 

明らかに何時もと戦い方が異なるレミリアに対して違和感が拭えないのか、紫は弾幕を放ちながら接近するレミリアに向けて言った。しかしその言葉は、今の彼女には馬の耳に念仏を唱えるようなものだ。案の定、弾幕の中を突き進むレミリアの攻撃を回避する紫。

 

 

 

 

「まずは、その貴女に似合わない色を取らなきゃ駄目のようね...。」

 

 

「ほざくな、妖怪風情があっ!!」

 

 

「(とうとう、素が出たかしら?)」

 

 

 

 

レミリアは自身の紅き鋭い爪を尖らせ、そこに例の如く青と緑の2色を混ぜたエネルギーを纏わせ、それを紫に振るった。紫の身体を斬り裂かんと迫る、吸血鬼の鋭利な爪。ごく僅かな動作で容易く回避し、その攻撃は頬を掠りもしない。

 

 

 

 

「ワームの隠し玉がまだ居たのは、流石に驚いたわ....。でも、その驚きもじきに薄れて空気の中へ消える...。」

 

 

「何を、言っている....!!?」

 

 

 

攻撃を回避されるだけではなく、それを容易く受け止められた。たかが扇子1本に、自身のエネルギーを載せた攻撃を受け止められたのだ。

 

 

 

 

「もっと強くなってから、この私と戦うべきだったわね...。」

 

 

 

そのままレミリアを突き放し、紫はスキマを使い彼女の後方へ転移。その後地面に目掛けて蹴り落とし、その後周囲には弾幕を幾重にも重ねた結界を張る。完璧に逃げ場を失ったレミリアは、頭上に浮かぶ紫を仰ぎ見た。

 

 

 

 

「さよなら...。レミリアの中に居る、邪悪な者よ...。」

 

 

 

 

 

濃密な弾幕が、レミリアに向かい無慈悲にも降り注ぐ。それに伴い紅魔館にはただならぬ衝撃が生じ、夜空に砂塵が舞い上がった。

 

 

 

「...やっぱり、弱いわね...。彼女のことをもっと理解していれば、善戦とまではいかないけど....。」

 

 

 

 

 

「...。」

 

 

 

 

扇子を開き、自身の顔に向かい扇ぐ紫。その光景を紅魔館の屋上から見下ろすのは、佐藤練也である。彼はダークカブトの変身を解かないまま、戦いの終わりを静かに見届けた。その腕の中には、気を失い横たわる咲夜の姿も確認出来る。2人は互いに必殺技を放ち、それが干渉。凄まじい衝撃が生じた後にも戦いを続けていたが、突然咲夜が意識を失いその場に倒れた。

 

 

 

 

「(この状況では、増援は不要のようですね...。)」

 

 

 

 

ダークカブトゼクターをベルトから外すことにより、変身が解除され練也は人間の姿へと戻る。その役目を終えたゼクターは、時空の裂け目の中へと戻って行った。それを見届けた練也は、咲夜へと目を向ける。

 

 

 

 

「(レミリアお嬢様が乗っ取られていたとするならば、咲夜さんは一体...。もしや、お嬢様が倒されたタイミングと被っているようにも見えたが...。)....まさか...!」

 

 

「(どうした?)」

 

 

 

練也が自分の中である結論に達した時、もう1人の練也がそれに反応し脳内で2人の会話が始まる。

 

 

 

 

「(練也さんですか。いえ、ちょっと考えていまして。)」

 

 

「(この洋館の主を倒したら、急に咲夜さんが動かなくなったっていう話?)」

 

 

「(咲夜さんをご存知でしたか。)」

 

 

「(前に人里で会って以来だよ。それより、何かわかったことは?)」

 

 

 

 

練也の結論は、レミリアの中に入り込んでいる者が何らかの手段を使い、この洋館に居る住人を洗脳していたというものだった。しかしいささか不自然な点がある。レミリアを除いて洗脳の対象とされたのが、咲夜のみだという点である。もし他の住人が居るのならば、洗脳し数で叩くことも出来た筈なのだ。

 

 

 

「(この刺客を送り込んだ敵にも、大きな欠陥があるってことか?洗脳するのならもっとちゃんとやるべきだと思うけど...。)」

 

 

「(おそらく、試験的に送り込んだもの...。....これも、破壊の力の一端と見て間違いないでしょう...。)」

 

 

 

 

その後、レミリアと咲夜は目を覚まし、正気に戻ったことを確認。その時の咲夜さんは、なんとなく顔が赤くなっていたように見えたようなそうでないような...。騒ぎを知った館の住人達も、一斉に集まってレミリアや咲夜の安否を確認した。2人が大した傷を負っていないことに対し、住人は大いに安堵の声を上げたのだった。

 

 

 

 

某界 某所

 

 

 

 

「...。」

 

 

 

幻想郷で生起した今までの戦闘の経過映像が、宙に浮くディスプレイに映し出されている。それを見やる、全身を黒い鎧のようなモノで覆う男...。非常に感心した様子を見せながら、その男は、こう口にした。

 

 

 

「...幻想郷...。やはり、手に入れねばならんな...。...。」

 

 

「御首領、報告致します。」

 

 

 

黒スーツに身を包んだ1人の男が不意に現れ、鎧に身を包んだ男に報告しようとするが、その男は自らの手を軽く上げながらそれを制した。

 

 

 

「良い。第1波の最後に放った、ワームの複合体が倒されたのだろう?創造に失敗したキメラ体の報告などいらん。」

 

 

「はい、わかりました...。では...。第1波の報告、終わります...。」

 

 

「ああ。下がれ。」

 

 

 

 

黒スーツの男が姿を消し、その場にはディスプレイと鎧の男のみが残った。この男達の存在こそが、幻想郷に災いをもたらす元兇となる。

幻想郷には、巨大な魔の手が今伸び始めた...。

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