東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第5章 常夏の宴
第60話 宴会前


守矢神社の住居内。そこの居間では、守矢神社の2柱と2人が夕食を摂っていた。本日も変わりなく充実した食卓に、この和やかな雰囲気。練也もすっかりこの世界に馴染んだようだ。

 

 

 

「....。(チラッ。)」

 

 

 

早苗が何やら微妙な目配せを練也に送るも、練也はそれに気付くことなく黙々と食を進める。残念そうな表情を浮かべながらゆっくりと箸を動かす早苗に、神奈子や諏訪子はやれやれと言った様子でお互いに顔を横に振った。

 

 

 

「(早苗、さもないと萃香や他の女に取られっちまうよ...。)」

 

 

「(早くなんとかしないと〜...。)」

 

 

 

 

恋の病は一向に引くことを知らず。人柄的に奥手な早苗は、どうやら今ひとつ足を踏み込めないようだ。モジモジとした仕草を見せる彼女の姿は、何時もの服装と相まって中々男心をくすぶりにかかっている。それに対し、練也は...。

 

 

 

 

「モグモグモグ...。ご馳走様でした!」

 

 

 

この調子では、実る恋も実らず終わってしまうようなものだ。視野が狭いのか、それとも唐変木なのか、良くわからないところである。もし前者なのであれば、凄い食いつくことは間違いない筈だが...。この状況を練也の心の内から伺っていた護は、恋の行方を見守るかのように微笑んでいた。

 

 

 

 

「(明日は、どうなることやら...。)」

 

 

 

 

この日はなんらハプニングに見舞われることもなく、静かに夜は明けて行った。

 

 

そして迎えた宴会当日。青い空と、心地よい風。夏の暑空が頭上に広がる中、博麗霊夢はただ1人宴会の準備を始めていた。雨が降り注いだ境内には予め敷物を展張させ、そのおかげか水気が微塵もない。

 

 

 

「これで滞りなく出来るわね。」

 

 

「おーい、霊夢。」

 

 

 

 

ゆっくりと境内に降り立つ魔理沙に軽く挨拶をしてから、霊夢はその敷物を撤収し始める。因みにその敷物は、塗装職人がよく現場で使うブルーシートだ。

 

 

 

「あら魔理沙、いらっしゃい。宴会にはちょっと早いわよ?」

 

 

「まあ、暇なんだよ。それよりこのシートはどうしたんだ?」

 

 

「余って必要ないからあげるって、にとりからもらってきたのよ。」

 

 

 

ふーん。という反応と共に、魔理沙は霊夢の側まで行きシートを剥がす。シートに覆われていた部分は、綺麗に乾いていた。

 

 

 

「これなら宴会もバッチリだな。」

 

 

「でしょ?さっ、早い内に準備を済ませたいから、魔理沙も手伝ってちょうだい。」

 

 

 

 

一大イベントを開催するだけあって、中々の物品の多さだ。膨大な数のお猪口や、受け皿等の器を前にして、少女2人はせっせと準備を始めた。

 

 

 

所は紅魔館。今宵は皆が集う楽しき宴が催される!...ということで、レミリアは早速服装を整え始める。

 

 

 

「さて、私達も行きましょうか。皆を呼びなさい、咲夜。」

 

 

「かしこまりました。」

 

 

 

 

白玉楼では...。

 

 

 

 

「幽々子様、準備は整いました。」

 

 

「そう。それじゃあ、まず人里に行って〜♪」

 

 

「....。酒肴は私がお持ちしますので、寄り道はよろしいかと。」

 

 

 

また、マヨヒガでは...。

 

 

 

 

「....。」

 

 

「またカメラを弄ってるの?」

 

 

 

トイカメラを弄る士の姿を見て、橙は近付きつつも何処か拗ねている風に彼に言った。まあこれが何時もの彼の姿だ。可愛い猫耳と尻尾を生やした妖獣の橙との戯れも、彼の楽しみの1つとなっている。

 

 

 

「誰も俺からこの作業を取ることは出来ない。例えスキマ妖怪の式神でもな。」

 

 

「むう...。たまには遊んでくれても良いでしょ?いつも何処かに行って除け者にするんだから!」

 

 

 

橙が完全に拗ねている。私よりカメラが大事なんだね!そうなんだね!と言いたげな物言いで士に詰め寄り、それに答えるように彼は橙の頭を優しく撫でながら言った。

 

 

 

「俺は橙を除け者になんてしない。こんなに可愛い妹みたいな存在を放っとくわけないだろ。」

 

 

「...うん。約束だよ?」

 

 

 

小指と小指を絡ませ、約束のおまじないをする士と橙。しかし、彼女はそれだけでは足らないようだ。

 

 

ゴロン...。

 

 

士の膝に乗ったまま、寝転がる橙。どうやらこのまま一眠りする気のようだ。

 

 

 

「だいぶ懐いているみたいね、貴方に。」

 

 

「(....うっ、...うらやましい...。なんて思ってないからな、士!)...ふん。」

 

 

 

マヨヒガも相変わらず、平和は健在であった。

 

 

 

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