東方 躍動仮面   作:佐藤練也

62 / 73
東方 躍動衝波!この後すぐ!


第62話 宴会 中編

「どうやらもうすでに始まっているようだね。」

 

「もう良い時間だしね。いつもよりちょっと早いくらいじゃない?今日もいっぱい呑もうかなあ。」

 

「いいねえ。久々に会うヤツもいることだし、酒の肴に面白おかしく話でもしようじゃないか。」

 

 

博麗神社の石段を昇って宴会の会場へと足を運ぶ。神奈子と諏訪子も酒宴に参加するのが日常生活の中において楽しみの1つ。2人の会話を聴くに、気分はより一層良いようだ。その後ろには萃香と早苗、練也がゆっくりと談笑をしながら石段を上がる。

 

 

「博麗神社には歩きでは初めて来るけど.....。にしても、.....長いなこの階段.....。」

 

「うちの神社も負けてはいませんけど、確かに長いですよねここの階段。」

 

「たまには歩くのも良いじゃん、こうして楽しく話しながら、アタシは好きだけど?」

 

「石段じゃなければな....。早いところ俺も”跳ぶ”方じゃなくて”飛ぶ”方を覚えた方が良いかもなあ.....。」

 

 

この世界の住人だからこそ、飛行という便利な移動手段がある。練也にはまだその能力は身についておらず、それを身に付けるには時間がかかりそうだ。あまりにも長い石段を進行方向に顔を向けながら、練也が何思うことなく呟いた。石段を上るにつれて、酒宴の盛り上がりがどれ程盛況であるか段々わかるようになってきた。予想以上に盛況であることが伺える。

 

 

「おおー♪だいぶ賑わってるな今回!」

 

 

酒宴の場に着くと、あちこちで杯が交わされる音と共に乾杯、お疲れさんという声や談笑をしている者の笑い声などが響く、楽し気な雰囲気に包まれた博麗神社の境内がそこにあった。守矢神社と鬼の一行を出迎える霊夢。彼女は魔理沙や士と一杯ひっかけてきた後であるようだが、まだまだいける様子である。

 

 

「アンタたちもいらっしゃい。今回の宴会は豪勢にしてあるから、ゆっくりしていきなさいよ。あっ、食べ物は私が食べる分残しておいてね。ただでさえ食べ物に困窮しているからうちの神社。それから練也、あんたにはこっちにいる士と同様。自己紹介を皆の前でやってもらうわよ。」

 

「ひょっとすると。...今回の宴会は異変解決の祝いだけではなく.....。」

 

「そう、この幻想郷へ新たに越してきたメンバーを紹介するための宴でもある。それで今日はいつもにも増して賑やかになっているってわけ。」

 

「ふーん。確かにうちの神社としても、それはやっておいた方が良いかもね。」

 

 

練也の答えに察しが良いと言うかのように、加えて宴の趣旨を伝える霊夢。諏訪子も守矢神社に新たに宮司が入ったという宣伝をしておけば、何かしら異変が起きた時、改めて重要戦力として認識されるかもしれないという思惑があった。しかも、練也はこの幻想郷に来てから1カ月と経っていない。その上でスペルカードを数枚所持し能力の制御もままならないが、その能力を使用できるようになったと考えれば守矢神社にとってこれから大いなる戦力となると、神奈子も考えていた。更には、彼は仮面ライダーへ変身できるというヒーロー的要素も含まれている。守矢神社に正義の味方が居るともなれば、それもかなりの抑止的効果になる筈だ。

 

 

「そういうことなら、練也。皆にアンタの姿を見てもらいな。挨拶、自己紹介もしっかりね。」

 

「わかりました、神奈子さん。」

 

「さっ、とりあえず今はパァーっとやってちょうだい。まだかかわっていないヤツのところに行ったりとかして親睦を深めるのも良いんじゃない?」

 

 

霊夢はそう言うなり、別の場所へ向かう。宴の席へ腰を下ろす守矢神社一行と萃香。外の世界にある野外蛍光灯とかよりも薄暗いが、たくさんの人魂が周辺に光を届ける。月明かりも手伝い、丁度良いくらいの明るさだ。あちこちを飛び交う妖精、楽器の演奏をしメロディーを奏でる者、すでに周りは大いに酒を交えて仲睦まじい者同士で親睦を深めていた。練也は杯を差し出した神奈子へお酌をしようと、手に徳利を持つ。早苗も同じように、諏訪子へお酌を始めた。

 

 

「今日もお疲れ様、練也。」

 

「はい。何とか、いままでやってこれました。」

 

「これも幻想郷へ来たが為に生じた縁というわけだ、今宵は楽しく呑もうじゃないか。」

 

「縁か。....この数週間で色々と経験もさせてもらいましたよ。」

 

 

ゆっくりと酒を注がれていく杯に目をやる神奈子は、練也へ労いの言葉をかける。それに練也は思うところもあり、返しのお酌を神奈子から授かりながら言葉を返す。幻想郷の存在、その住人たちとの交流、能力とスペルカードの習得、仮面ライダーディケイドへの変身、平衡世界から来たもう1人の自分、そしてこの幻想郷の異変。その全てが練也の心へただならぬ影響を与えていた。博麗の大結界への干渉からことは始まり、そこからこの世界へ入ったことによる自身への変化は彼自身も驚いた。彼はこれからも様々な住人達と接し、まだまだ色々と経験を重ねていくことになる。

 

 

「この世界に来なければ経験できないことも多い。外の世界とは違って、ここには人間側からすれば超常的なことが日常的に起こるからな。」

 

「違いありません。....。」

 

「もとより、そういうのが好きな性分なのだろうがね、君は。」

 

 

笑みを浮かべながら酒宴を楽しみ、練也との会話に勤しむ神奈子。現実の、元居た世界は自分にとって悪い場所ではなかった。しかしこの世界に誘われてからというものの、さまざまな出会い、経験もあり、この世界の魅力を追及したいと彼は考えている。....といってもスペルカードをもっと増やしたいとか、もっと弾幕を張れるようになりたいとか、とりあえず弾幕ごっこに関することに関して一極化しているのだが、本人はこの世界を楽しんでいるようだ。実に平和である。練也も一杯引っ掛けた。

 

 

「相違ないです。」

 

「素直でよろしい、今日は楽しみない。ほかのヤツのところへも行ってきな。」

 

「はい、ありがとうございました。.....!?」

 

 

神奈子に返事をして、その場から去ろうとする練也。そこへ1人の少女が姿を見せた。赤いリボンを金髪に結び、黒い洋服を着ており腕を両側に開くように宙を浮きフワフワと漂う様にして、練也の方に近付く1つの陰.....、いや闇の塊のようなもの。その表面が透けて、奥が見えた。その闇の中に居たのは、ルーミア。闇を纏う妖精.....。練也が幻想郷にて初めて弾幕ごっこの相手となった人物である。当初は捕食されそうになったこともあり、練也は身構えたがそれを見たルーミアは纏っていた闇を徐々に溶かすようにして自らの周りから取り除き地面に足をついた。

 

 

「あっ、お兄さんはこの間ぶりなのだー。」

 

「....!(油断させて摂って食う気か....!)」

 

 

明らかに当初の印象と打って変わっている。あからさまな誘いに騙されるかと、懐にあるディケイドライバーに手を伸ばそうとする彼の下へもう2人、女性が近寄って来た。その声が練也の動きを制した。

 

 

「酒の席での乱行は、感心しないな。練也。」

 

「あー、なんか黒いのが居ると思ったけどルーミアだったか。」

 

「....慧音さん、妹紅さん。」

 

「あーケイネとモコウも来てたのかー。」

 

 

どうやらこの3人は面識があるようだ。慧音の話によれば、このルーミアという妖精の少女は日々空腹の状態で幻想郷を彷徨っているらしい。その空腹のピークを迎えると、先刻のように狂暴化して人に襲い掛かってくる場合がある、らしい。つまり練也は運がなかった、彼は合うタイミングを間違えただけだったのだ。

 

 

「そうだったのかー.....。」

 

「そうなのだー。」

 

「(こうして接していると、人を襲う妖精とは思えないんだけど.....。結構かわいいな.....。)」

 

「彼女もまた、この幻想郷の住人だ。たびたび先刻のように弾幕ごっこの相手をしてやってほしい。それから、私の寺子屋の生徒でもあるからな。教え子が泣かされては敵わん。」

 

「....失礼しました。」

 

「まあ。何事もなくてよかった。これからまた妹紅と呑み直すが、一緒にどうだ?」

 

「はい。ご一緒させていただきます。」

 

 

練也は慧音、妹紅と共に酒宴に興じ始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。