東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第64話 酒宴の戦舞

「まだ....、全うな状態での貴女とは勝負してませんでしたね....。」

 

「.....。前回の異変の際の払拭、いえ。ワームに対しあまりにも情報が少なかった我々紅魔館にも至らぬ点があったことは明白。ならばここで、私から純粋な決闘を貴方に申し込みます。大和護。」

 

 

 

 

前回のワーム異変の際、紅魔館にワーム侵入を許し乗っ取られた際の話を聞いてからというものの、自身の眼前に存在する黒き体躯、黄色の眼光を放つ瞳の戦士との決闘を、彼女は心から待ち望んでいたようだった。

 

酒宴の場でまさかの弾幕ごっこが勃発し、その流れ弾を全て撃ち落とした護と咲夜。そしてその場に居た面々も、その状況を見て感じ方もさまざまである。ダークカブトの容姿をこの目で初めて見る者に関しては、突然あらわになるその体躯、そして能力、雰囲気。酒宴の参加者から注目を注がれるには、無理もない話であった。突然の状況の変化、両者に注がれる宴会参加者の視線。沈黙がその場を支配した。例外としては、会場に流れ弾を飛ばしてきたフランとレミリア。彼女たちの弾幕ごっこが原因であったわけだが、誰であろうとそんなに状況は変わらなかったであろう。

 

 

「あの姿.....。」

 

 

 

護が変身するダークカブト...。もともとは悪の者が扱うモノとして、認識されていることが殆ど。それに該当するものである。しかしながら、この幻想郷においてその認識は覆される。これにより幻想郷の主メンバーの間でダークカブトの存在が認知されることとなった。神社の外陣付近で酒を楽しんでいた魔理沙、霊夢、士も、その状況を見届けていた。

 

 

「おい、士。たしかお前もあの姿になれたよな?」

 

「あれは、ダークカブトだ。普通なら敵に回る筈の存在だが、今回はそうでもないらしいな....。」

 

「どーでもいいけど。というか私の神社って、これからああいう風な奴が結構来たりするの?嫌よ私は。っていうか弾幕を防いでくれたのありがたいけど、木が燃えてるんですけど。」

 

 

向かい合う咲夜とダークカブトの写真をとる士。迎撃した弾幕が砕けたことにより爆炎を辺りに散らし、それを被った神社の周りにある一部の樹木が燃え始めているのを玄武の沢に住む河城にとりが余裕の表情で消火活動を行っていた。

 

 

「(やっぱり守矢神社の人って異変しか起こさないよねえ.....。)....にしても。」

 

 

にとりの眼は、しっかりと護が変身、キャストオフする様を捉えていた。装甲が自身の体表を覆うようにして装着されていき、その覆われた装甲を一気にパージ。その容姿の変化は、彼女の興味をより惹くこととなる。沈黙からだんだんと賑わいの声が起こり、やがて会場は熱気を帯びるまでの盛況さを取り戻した。まるでボクシングの試合をする会場のような、そんな盛り上がり方である。特に鬼の種族はかなり盛り上がっていたそうだが。

 

 

「....場所が悪いわね。」

 

「同感です。移動しましょう。」

 

 

自分たちの私闘を繰り広げるという時に、このように観衆の目に当てられながらでは気になってしょうがないと考えた2人は場所を移す。

 

 

 

 

 

両者はその場から離れ、出来る限り人目のない場所を選定。その場所は、霧の湖の湖畔。咲夜が護へ向かい正対する。それに対して、護も同じように咲夜に向かい合う。

 

 

「紅魔館のメイド長を務め、主、レミリア・スカーレット様にお仕えする、十六夜咲夜。」

 

「外来人、仮面ライダーダークカブト、大和護。」

 

 

CLOCK UP

 

 

そこから2人は時間軸を共有し固有の戦闘空間で戦い始めた。見えない程の熾烈な剣戟を交わし、頬に胴に、四肢に互いに刃を掠めた。引いて推して、推して引いてを繰り返す激闘が繰り広げられる。

 

 

「はあっ!」

 

「ふっ!」

 

 

 

剣戟を交える両者。咲夜の巧みなナイフ裁きに護も押され気味だ。身体の身のこなし、そして身体の一部が如くナイフを操る咲夜は、自分の放ったナイフの位置関係は全て把握している。まるで見えないワイヤーで操っているが如く、正確無比な斬撃、飛来するナイフが的確に護へ命中していく。

 

 

「(ワームに操られていた時と、まるで違う....!)」

 

CLOCK OVER

 

 

ダークカブトを串刺しにせんとばかりに、数多のナイフを両手の五指に蓄え未だかつてない程の夥しい量のナイフを投擲。ナイフのカーテンとでも言えば良いのだろうか。それ程までに濃密な弾幕、そしてその弾幕を展開した後、あえて数本残したナイフの内、2本を刹那の間を空けて投擲。そのナイフは、別々の軌跡を描きながら徐々に護へと詰め寄る。

 

 

「(凄まじい数だ....!)」

 

 

クロックアップにも発動時間に限界がある。そこを合わされたのか、咲夜は次に来るであろうクロックアップ発動までの間、徹底的に弾幕を構築し一気呵成に畳みかける算段だ。回避しようにも既に護の眼前には所狭しと配置された数多のナイフが、その刃1つ1つを月明かりに煌めかせ1点に吸い込まれるようにしてダークカブトに飛来。回避は不可能だと考えた為、被害を抑える為にパージしたヒヒイロノカネを集結するプットオンを発動する。

 

 

「プットオン!」

 

 

PUT-ON

 

 

 

飛来するナイフのカーテンとほぼ同一のタイミングでパージされた装甲、ヒヒイロノカネがダークカブトの下へ舞い戻り、ほぼナイフの直撃を免れることなく大量の火花を散らし数mは吹き飛ばされ、更にはそのあとに迫る2本のナイフ。そしてそのナイフは回避しようと動きを起こそうとするが、それは咲夜が護の隙を作る為に放ったナイフだった。

 

 

「ふん!!」

 

 

 

カブトクナイガンをクナイモードに変更して、迫り来るナイフを斬り落とす。そこへ隙を作った所へ咲夜の斬撃が、ダークカブトへ降り注いだ。赤い軌跡を描いた、まさに細切れにされるといった表現が適切な程、間隙の少ない、そして正確な斬撃だ。

 

 

「ちいっ!!」

 

 

ダークカブトのボディーに亀裂が入る程の、凄まじい斬撃を与えてもなお攻撃の手は緩めない。斬撃を繰り出すだけではなく、徒手、蹴り技の動きも複合させた完璧な肉弾戦を考えた上で構成された格闘術でどんどん攻め立てる。斬撃を繰り出してきたところを、護はキャストオフをしつつ反撃の手を打とうと動く。あえてナイフを安全な捌き方に拘らずに、自身の身体を傷付ける形で一瞬でも咲夜の動きを制することが出来れば、こちらも手を打てる。

 

 

「はああっ!!」

 

「(これだ....。)」

 

 

斬撃を白刃取りの要領とは全く違う、ナイフの刃を直接握るようにして簡単に引き抜けないようがっちりと握り締める。当然のことながら、手からは鮮血が滴り落ち草、地に紅い血痕を残す。更に空いている片方の手で咲夜の頸部目掛け、鷲掴みしようと手を伸ばす。凄まじいその力に、咲夜は時間停止の能力を頸部を掴まれる前に発動、ナイフを手放しその場から跳躍して回避する。

 

 

「.....。」

 

「.....。」

 

 

両者は互いにその場でにらみ合い、最後の剣戟を交えようと護はゼクターホーンに手をかけた。その挙動を見た咲夜は能力を発動する。

 

 

「(させない....!)」

 

 

クロックアップする為には、マスクドフォームからライダーフォームに変形しなければならない。クロックアップそのものは強力な能力だが、そこまでに至るスパンは中々長い。そこまで辿り着かせなければ、こちらは一方的に攻撃できる。

 

「この幻想郷に来るより以前に得たこの力.....。それを操る者は私1人で十分!!」

 

 

先程と同じく、ナイフのカーテンを構築した後、自身もそれに続いて斬りかからんと構える咲夜。おそらくこのナイフ達はプットオンと同時に飛来する装甲と相殺するだろう。ならばあとは、文字通りの一騎打ちである。その時が来るまで咲夜は構えた。

 

 

「(勝負よ、仮面ライダー.....!)...解除!」

 

「キャストオフ!」

 

 

CAST OFF

 

CHANGE BETLLE

 

 

一斉に動き出した咲夜のナイフ、そしてそれと同時にゼクターホーンを倒し、ライダーフォームへと変形するダークカブト。ヒヒイロノカネとナイフの相殺。

 

 

CLOCK UP

 

 

その後に起こる見えない一騎打ちに、固唾を呑んではいないが見守る者が数名居た。八雲紫と、その式、八雲藍と橙である。

 

 

「どう蘭。仮面ライダーも捨てたものじゃないでしょ?」

 

「あの黒い仮面の男が、平行世界から来た人間....。」

 

「ええ....。」

 

 

 

 

その後、2人の能力がほぼ同時に停止する。互いに首下へ刃を寸止めの状態で向けあっていたこの判定は、いかがなものかとしばし互いに硬直しその姿勢を崩さなかった。

 

 

「......。」

 

 

「......。」

 

 

 

月下での私闘....。この戦い以降、両者は互いにライバルと認識するようになる...。この幻想郷で新たな出会いが、そして幾多の新たな戦いが始まる。

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