ダークカブトへ変身した護と咲夜の激闘を自らの眼で確認した紫、蘭、橙の3人は、宴会の会場へと戻っていく。この幻想郷において、このような戦いは稀に起こることというわけでもなく、これも日常の風景の一部に過ぎない。"弾幕ごっこ"を日常的に見ることのある世界、強者の溢れている世界の日常では、よくある光景なのだ。
「さて、こちらはどうなっているかしらね....。」
紫達3人が宴会の会場へ戻ると、弾幕ごっこは既に終わっていたようでスカーレット姉妹は仲良く紅茶を啜りながら談笑中であった。激烈な一戦を交えたとは思えない、平和的な光景である。やはりこの世界の常識というものは、こちらの世界と一線を画するものである。戻って来た紫達の姿を見た士は突如現れたスキマから出てくる紫に言った。
「アイツ等の戦いはどうだった?」
「ええ。見ていて飽きなかったわ、度々見えなくなったと思えば斬り合いをしていたり.....。何より2人とも必死だったもの。」
「やはりこの世界の住人は化け物揃いってわけだ。ライダーや怪人と生身で戦うぐらいの力を持っている。俺がこの世界に居ても、なんら違和感はないわけだ。」
「化け物とは失礼ね。必殺キック約30t、そうでなくてもパンチ力8tぐらいの力のある貴方が言えたことではないでしょう?それに貴方の経歴を見れば、如何様にでも例えることはできるわよ。」
「どこでそんな話を聞いた。また鳴滝か?」
「さあ?どうかしらね?」
また余計なことを喋らなければいいがと、士は眼前で騒ぐ魑魅魍魎の集団を見ながら軽く息をこぼした。なかなか終わりの雰囲気を漂わせない宴は、その華やかしい時間を刻一刻と刻んでいく。近くに何者かの気配を感じた士は、その方向へと顔を向けた。振り向きざまにパシャッとシャッターを切る音が耳に聞こえ、その音は文が持っていたカメラから発せられた音だ。
「幻想郷の新聞記者は報道出来ればそれでいいのか?」
「ずいぶんな物言いですね、門矢士さん。まあ今回は特ダネとなる記事が驚く程出来ましたので、それにも協力していただいたわけですが。」
「協力も何も、俺はしたいようにしただけだ。いちいち新聞の表紙を飾る為だけに変身したりはしない。」
「でも、凄い活躍だったじゃありませんか。外の世界のワームを文字通り一蹴して蹴散らしたのですから!」
「今度こそ記事の内容にハッタリかまさない確証があるんなら、私を一面に取り上げろよな、文。」
「あやや、魔理沙さん。」
そう言いながらメモ帳に次々と文章を書きこむ文、そこに魔理沙が若干顔を赤らめた状態で戻って来た。その彼女の隣にも半人半霊の白玉楼の庭師、魂魄妖夢の姿もある。頭の側にいつも漂う半霊はかわらず健在。彼女は普段こそキリッとした印象を他の人間に与えるが、今回の宴会は色々なブースを回っているうちにいつの間にか出来上がってしまっている様子である。
「魔理沙。少し出来上がっているみたいだな。....それと初めて見るヤツもいるみたいだが....。」
「おう、士。御覧の通りだぜ。そうだ妖夢、お前にも紹介しようと思っていたんだ。」
「えっ...。あっ、初めまして。白玉楼で庭師と幽々子様のお世話をさせていた頂いてます、魂魄妖夢です。」
魔理沙の傍に立っていた妖夢は、出来上がっているとは思えないとても丁寧な挨拶を士へするも、そこはさすが通りすがりの仮面ライダーなだけはある。捻くれた返し、本人は決してそのような悪人ではないのではあるが、それが彼のキャラクターというものだ。捻くれた様子で手短に妖夢へ自己紹介を行う。
「門矢士。通りすがりの外来人だ、覚えなくていいぞ。」
「えっ...?」
「いやいや士、コイツにそんな冗談通じねえって。妖夢も真に受けなくていいからな?」
「しかし、今日はいつもより増して盛況ですね皆さん。やっぱり外来人の方が多数いらっしゃるからでしょうか?」
文が周囲を見渡しながら言う。士と妖夢のやり取りを見兼ねた魔理沙が軽く突っ込みを入れつつ、妖夢へ助け船を出し、そのやり取りまで細部にわたり記憶するかのようにスラスラとペンを走らせる文。
「当たり前だろ、新人の歓迎をするのは。それに尚更ここでお互いのことを知って結束を深めて、いざって時に協力し合える仲を作っていけるようにするのが、この宴会の目的でもあるんじゃないか?」
「そこまで考えていたんですか、魔理沙さん。ちょっと見直しちゃいました。」
「なんで上から目線なんだよ....。そういえば、士。」
「どうした?」
魔理沙が士に対して質問を投げかけようと、御猪口を片手に話しかけた。
「今回の異変のことなんだけど、士は何か知らないか?外の世界の怪物に関しては、私達よりもはるかに士の方が知っているだろうし。」
「俺にも、...よくわからん。ただ、またすぐにでも奴等は現れる。これだけは言える。様々な世界を回った身だからこそ言わせてもらう。今は嵐の前の静けさが訪れているってな。」
「なかなか恐怖を煽るのが好きなのか、それともからかいもせずにマジで言ってんのか?」
「質問してきたのはお前だろ、魔理沙。それに俺は無駄なことが嫌いな人間だ。おそらくこの世界においても誰よりもな。それに、俺やアイツがいる限り、この世界が蹂躙されることはない。」
「アイツって....。」
「来たぞ。」
CLOCK OVER
その機械的な音声と共に、その人物が姿を現す。護は湖の湖畔にて咲夜との決闘を終えると、彼女と共に能力を使い博麗神社まで戻ってきていた。士、紫、魔理沙、妖夢、文の眼の前には、黒い甲冑を身に纏った護が佇んでいた。何もない地点にまるでそこにもともといたかのような佇まいに、文はシャッターを数枚切り、妖夢は驚き、ほかの3人は到って平然と彼を出迎えた。
「おお!この方が、噂の黒いカブトムシの方ですね!」
「お疲れだったわね、護。」
「労いの言葉、ありがとうございます紫さん。」
「護っていうと....、そうか、お前確か練也の別人格って言ってたもんな。」
「ええ....、彼の陰から度々伺わせていただきました。改めて、大和護です。霧雨魔理沙さん。」
「ああ、よろしく頼むぜ、護。」
普通に会話をする魔法使いと、元は敵側のライダーであったダークカブト....。そもそも妖夢にはそんな事情も知るわけがなく、今回が仮面ライダーという存在に初めて会うのだから、状況の処理が追い付いていないのは無理もない話である。士が護の姿を見るなり、その容姿に至るまでの経緯を聞き出した。
「しかし妙なことが起こるもんだな。悪のライダーが、こうも平和に貢献するとは。」
「それは私が拾ったのを彼にあげたのよ。」
「その通りです。」
「紫か....。スキマがあれば大抵のことは出来るわけだ。....ワームからパクったのか?」
「ええ、御名答よ。」
いい加減戦いも終えた護は変身を解除する為、ダークカブトゼクターへ手を掛けてベルトから解放。ダークカブトゼクターがベルトから離れると共に、体表を覆っていた装甲が剥がれるようにして変身が解除される。変身者である大和護の姿があらわとなり、それに驚愕する妖夢。妖術の類とも違うその変化の模様は、まさに甲冑を脱いだ戦士の姿とでも言えば良いだろうか。
「そうだ護、紹介するぜ。私の友達の魂魄妖夢だ。今はこんなんだけど、普段はけっこう固くてまじめな半人半霊なんだ。」
「これは、幽霊の方でしたか。この世界に来てから驚くことが多い....。大和護です、魂魄妖夢さん。よろしくお願いします。」
「初めまして。よろしくお願いします、大和護さん。正しく言えば、半分人間なんですけどね。...変身して戦っていらっしゃるんですね。」
「失礼しました....。ええ。この世界では、おそらく変化の術があるとは思いますが....。それとは別と考えて頂いた方が正しいかもしれません。」
「たしかに....、あの様子からすると、変化というより、なにか甲冑を脱ぐと言うか、そんな感じがしました....。」
「その認識で、間違いありません。」
ここで出会え、同じ杯を持てたのも何かの縁だろう。護はその場で杯を手に持ち、戦いで疲労を伴った体に労いと敬意を込めて酒を自らの口に含んだ。初めての酒、そして今このような華やかな場でたくさんの人々と縁を結ぶことが出来たことを、彼は顔に出さずとも喜んでいた。