東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第66話 美しい月の下で、安らかに

迷いの竹林。その真っ只中にひっそりと佇む永遠亭、そのすぐ近く。鉛色の絶えず歪みが生じているオーラが突如出現し、その中から門矢士がゆっくりと姿を見せた。

 

 

「ここが永遠亭か....。なるほど、ここなら外敵も滅多に寄せ付けることもない。まさに竹取物語の世界か。」

 

 

屋敷全体を見渡しながら歩く士。その足は自然と玄関先の門へと向かっていた。

 

 

屋内では、永琳、優曇華、てゐの施しを受けた霖之助が、病室のベッドの上で天井を眺めながら横になっていた。安静第一という永琳からの指示を受け、その通りにする彼の身体にはワームによって付けられた傷が残っていた。彼の患部には既に消毒が施され、薬品が塗られ、その上から包帯で被覆がなされていた。永遠亭で作られる薬品はどれも一級品以上の効能を持つものばかりが揃っている為、如何に霖之助が受けた傷が深けれど、投与された薬のおかげもあり、治癒が早く進んでいる。

 

 

 

「(思いのほか、痛みも和らいできたな...。この分には明日には帰れそうか...。)」

 

 

 

彼自身も半妖なので、常人以上の回復力を持つ。それでワームによる攻撃を受けても、その身体は耐えれたのだろう。永遠亭の屋内、輝夜の部屋。そこには1人の少女が三日月の月を見上げていた。蓬莱山輝夜。この永遠亭は永琳の診療所としても幻想郷で知られているが、彼女が住む屋敷でもある。飲むと不死になるとされる蓬莱の薬、それを飲み決して老いることもなければ死ぬこともない身体を持つ。

 

 

「今頃、宴会は盛り上がっている頃でしょうねえ...。」

 

 

はぁ....。一回ため息を吐く輝夜。なんでこんな時に限ってウチに外来人、いえ、外から来た妖怪を匿っているのかと彼女は自身が宴会に参加出来ないことに不満をその表情に露わにした。

 

 

 

「....。」

 

「れぷちゃん。良いわよ、入って。」

 

「...。」

 

 

 

部屋に入るのを躊躇う様子のれぷちゃんこと、レプトーフィスワームに輝夜が言った。永遠のメンバーは宴会には必ず参加する常連メンバーのうちの1つなのだが、今回は場合が場合である。なにせ異変の一片ともいえる存在であるワームを招き、そして一緒に生活しているのだから。しかしながら、そのワーム...。レプトーフィスワームは、特異な個体であった。人間に対する情が芽生えただけではなく、門矢士が変身する仮面ライダーディケイドと協力して人里からワームを駆逐したのだから、単にワームという括りに入れるのもいささか躊躇われるものがある。

 

 

 

「さっきから色々気にしているみたいだけど....、大丈夫よ。ここの皆は貴女のこと理解してくれているじゃない。まだ知り合って日も浅いけど、永琳から色々と聞いているわ。」

 

「私は....ワームだから....。」

 

「だからなんだというのかしら?人里を襲ったそのワームという怪物を、貴女はすべて倒したんでしょ?それで悪く言われる道理なんてないわ。」

 

「でもその事実は、多くの人が...知らない。」

 

「永琳から話を聞いて、確信したわ。貴女は悪い怪物ではない。...また次回の宴会の時にでも、みんなの下へ一緒に行きましょう。」

 

 

 

2人で月を眺める、その光景はとても優雅。落ち着いていて気品のある姫君と、まだあどけなさが残る少女。一方が地球外生命体、一方が元月の民。宇宙から来たという点で、2人には...。いやこの永遠亭とレプトーフィスワームは気付かないうちに惹かれ合っていたのかもしれない。

 

 

「月がきれいね、れぷちゃん。」

 

「....うん。」

 

「姫様、失礼致します。」

 

「優曇華、お疲れ様。どう?霖之助は。」

 

「秘薬を投与致しまして、順調に回復しています。明日には完治する予定です。」

 

 

 

優曇華が状況の経過を輝夜に報告し、その報告を聞いた輝夜は何事もなく良かったと安心した様子で優曇華の報告を聞く。

 

 

 

「そう....。」

 

「それから....、れぷちゃんに会いたいとお忍びの客人が....。」

 

「誰かしら?...永琳には報告した?」

 

「はい。....最近新聞の紙面でよく見かける外来人で、私も驚いたのですが...。門矢士という方が...。」

 

「(門矢....士?)」

 

「外来人が?ここに1人で?」

 

「はい。いかがいたしますか?」

 

 

輝夜も文々。新聞の購読者の1人で、その記事は目に通してはある。今回の異変を取り上げた記事も勿論。どのような異変が起きたのか、どのような人間が動いているのか、ある程度は把握していた。その門矢士という人物、直接は会ったことは無いにしても、その人間の活動は新聞にも何度か取り上げられていた。

 

 

「妹紅やてゐの案内もなしに、この迷いの竹林をどうやって...。....良いわ。こちらに通しなさい。」

 

「はい。」

 

 

 

玄関の門で待つ士は、この竹林の風景をトイカメラに収めていた。果てしなく広がる竹林の風景は、心を静めるようなそんな作用が働くような感じがし、落ち着いた様子でシャッターを切っていく。迷いの竹林というよりは心を潤す、神聖な竹林という印象を士は受けた。

 

 

カタンッ....。

 

 

月明かりが美しい風景をより美しく見せる。撮影をしている士を、門の中から優曇華が出迎えた。

 

 

 

「(.....!?えっ....!)門矢士さん、お待たせしました。姫様と共にお探しの方がお待ちです。御案内致します。」

 

「ああ。中々良い場所だな、ここは。」

 

「は、はあ...。ありがとうございます。(迷いの竹林っていうのに、何景色楽しんじゃってるのこの人....!)」

 

 

 

内心突っ込みを入れる優曇華。この男、もしかすると白黒の魔法使いや博麗の巫女と同等の存在なんじゃ...!?と思いながら、士を座敷へと案内する。広い屋敷を辺りを見ながら優曇華に付いていく。やがてある一室に通された彼は、その襖の奥の2人の少女と対面する。

 

 

 

「姫様。門矢士様をお連れ致しました。」

 

「どうぞ。お通しなさい。」

 

「失礼いたします。」

 

 

ススーッと音を立てて襖が開かれる。その奥には2人の少女が可愛らしい様子で座っており、その美しい瞳を士に向けて言った。

 

 

 

「初めまして、門矢士さん。私は、この永遠亭の亭主、元月の民にして蓬莱の血を宿す者....。蓬莱山輝夜。貴方のことは、新聞で以前から知っていました。」

 

「この幻想郷も、大した情報網が構築されているみたいだな。僅かな間でここまで有名になるとは...。」

 

「まあ、あの天狗は仕事が早いから...。コホン....、こちらも名乗ったのだから、あなたの名前も聞いておきたいわね、本人の口から直接。」

 

「門矢士。通りすがりの外来人だ。」

 

 

 

外来人が迷いの竹林を平気で通りすがるのだろうかという突っ込みを誰もが堪えながら、その場の会話は進んでいく。

 

 

「それで、貴方はここにどのような件でいらしたのかしら?この永遠亭が迷いの竹林の中にあると知った上で来ているんでしょうけど、ただ美女を拝みに来ただけというのであれば、帰っていただきたいわね。」

 

「自意識過剰の塊だな。」

 

「あら?貴方こそこんなところを通りすがるなんて、とんだ物好きよね。」

 

「自分の住処の立地を悪く言うのなら、はなから人里にでも造れば良かったと思うがな。物好きなのはお互い様だ。」

 

「言うじゃない。それで、何か用があるのでしょう?」

 

 

どんどん口調が粗雑になる輝夜。それに構うことなく士は、レプトーフィスワームの方へ顔を向けながら言った。

 

 

 

「ここに人里で共に戦ったヤツがいるって聞いて来た。俺は、お前に用がある。」

 

「....あの時の、ライダー....。」

 

「御名答だ。元気そうだな。」

 

「れぷちゃん。この男と知り合いなの?」

 

「うん...。」

 

 

永遠亭で再び再開した2人。レプトーフィスワームは、仮面ライダーディケイドこと門矢士とどのような関係になるのだろうか....。

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