東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第67話 宴の後の静寂

博麗神社において催された新人歓迎、異変解決を祝った宴会は滞りなく終わりを迎えた。数名を除いて続々と帰っていく幻想郷の住人達。会場に残った数名は、のんびりと撤収作業を開始していた。

 

 

 

「宴会をやるのはいいけど、やった後のこの作業がしんどいのよねえ....。」

 

「そう言うなよ霊夢。お前だけじゃないだろ、やってるのは。早いところ終わらせようぜ。」

 

「それにしても、今回の宴会は本当に賑わっていたわね。外来人が姿を変えるところとか、見れるとも思わなかったわ。」

 

 

霊夢と魔理沙が撤収作業をしているその横で、魔法の森に住む七色の人形使いことアリス・マーガトロイドは、自身が使役する人形達を遣って作業を手伝っている。彼女は数多の人形を使役する魔法使いであり、日常的に人形達と身近に接し合いながら日々を送っている。その人形達もかなりの人数がおり、現在やっている日常的な業務、そして戦闘においても絶大な力を発揮する。

 

 

「人数が人数なだけ、片付ける食器の量も馬鹿になんないわ。アリスも手伝ってくれてありがと。」

 

「気にしないで、私も楽しませてもらったし、とりあえずまた新しく住人が増えたことでこれからどうなるかも興味が湧いてきたわ。」

 

「だな。あんなんな感じの奴らは今まで見たことなかったし、これから楽しみだぜ。」

 

「私はあの騒音さえ何とかしてくれれば、別にいつまで居てくれてもいいのだけれど.....。」

 

 

練也の持つ能力、『ありとあらゆるものを吹き飛ばす程度の能力』が発動する度、幻想郷中に衝撃音が木霊する。妖怪の山に住む白狼天狗や天狗だけが問題としていることではない。ある程度の距離を置いた位置にある博麗神社にも、その騒音は問題をきたしていた。人形達をせっせと動かしながら、アリスは言った。

 

 

「彼の能力でしょ?『ありとあらゆるものを吹き飛ばす程度の能力』。烏天狗の新聞で取り上げられていたわね。」

 

「吹き飛ばすなら異変の首謀者だけにしてもらいたいわね。こっちの鼓膜が持ってかれちゃうわよ。」

 

「寝てるときにやられるとなあ....。」

 

「それでも、その力が異変の解決に役立つと考えれば心強いじゃない。私はあまり気にならなかったけれど....。」

 

 

その騒音は博麗の巫女の耳にも堪えていたようだ。アリスもその音を何度か聞いているが、別に被害はこうむっていない様子であった。一方別の場所で作業をしていた数少ない男性陣1名。佐藤練也は、宴会の会場撤収の方を霊夢に任されていた。

 

 

「(すぐに能力が身についたり、弾幕もそれなりに出せるようにはなったり、か...。鬼や妖怪とも戦って、まさかワームとも戦うとは...。そして、このディケイドライバーか...。)」

 

 

練也が手にしたディケイドライバー。士が変身するディケイドとは違い、付属されている力に差異があるものの、ディケイドに変身できるという点では一致している。

 

 

「(これを手に入れたのは、別の世界から来たもう1人の俺のおかげ....。冷静に考えてみれば、短い間に色々と起こっていたんだな。またただならないことが近いうちに起こるかもしれない。)」

 

 

会場の撤収を1人で黙々と続け、作業を終えた練也。女性陣は既に皿洗いを終えたようで、練也の下へ霊夢が近寄って来た。

 

 

「練也、お疲れ様。今日は遅くまで付き合ってもらって助かったわ。ありがとう。」

 

「いや大丈夫。俺や護も楽しませてもらったよ、まさかのアクシデントも起きちゃったけどな。」

 

「大丈夫よ。ああいうこともここじゃあ見慣れるくらいにあるんだから。それより終わったのなら、中に入って寛ぎましょう。私達も作業終わったところだし。」

 

「そうだな....。ゆっくりさせてもらうよ。」

 

 

同時刻永遠亭、輝夜とレプトーフィスワーム、士の3人は月の光が差し込む和室にて、会話に勤しんでいた。士とレプトーフィスワームが出会った経緯、そしてワームを倒した時の状況、擬態した少女との交流を事細かに輝夜は士、レプトーフィスワームの両名に説明を求めた。その結果、自分が思っているよりも深刻な立ち位置ではないことを解った輝夜は、安堵する。士としても、このレプトーフィスワームへの誤解だけは絶対に避けたいと思っていたので、その様子を見てからレプトーフィスワームへ顔を向けて言った。

 

 

「俺もお前のような怪人、怪物を外の世界で少なからず見てきた。...この世界にも、外の世界と同じように様々な形の善や悪が存在する。俺はお前が善の存在であると認める。こうして擬態してもなお、擬態した人間の命を奪うこともしない。それを見て、俺はそう結論付けた。」

 

「....。知った風な口を利かないでもらえるか...?」

 

「俺はただ、お前が従来のワームと違う性質を持っている敵対性の無い個体だということを、この女に伝える為にここへ来た。お前のすべてなど、お前の周りを取り巻く状況など解るわけがないだろう。」

 

「それゆえに口を挟むなと言っているんだ...。ライダーのくせに、ワームである私の気持ちなど....。」

 

「...まあ。それとお前がどういう風に過ごしているかも気になったがゆえの、今回の訪問をさせてもらった。随分と良い待遇じゃないか。俺が様子を見に来るまでもなかったようだな。」

 

「余計なお世話だ....。」

 

「(まるで私の入る隙が無いわね....。)」

 

 

1人蚊帳の外になりがちな、輝夜。だが彼女にも解ったことがある。レプトーフィスワーム、れぷちゃんが危険な存在ではないということ、そして優しい心を持った怪物だということ。これさえわかれば、彼女には十分だった。

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