太陽が自身の真上から眩い光を浴びせる。それによって生じるのは、うだる様な暑さと、多少の不快感。季節は夏ということもあり、蝉の鳴き声が辺りに響き渡っていた。それが体感温度を増大させ、尚更不快感が増す。
「...それでは、続いてなんですが...。」
「(長っげぇなあ....。)」
「(長いですねえ....。)」
文の取材を許可した練也だったが、その取材はすぐには終わらなかった。気付けば既に時間は正午を回っており、取材開始から数時間が経過していた。
「(今日は帰らなくて良いかな...。なんか疲れちまった...。)ふぅ...。」
「むっ、どうかしましたか?」
「いや...、なんでも無いよ。」
練也は疲れ、つい溜息を吐いた。早苗の能力のおかげなのか、先程から微風が吹き始めている。長ったらしい取材の時間を除けば、なんら腹立たしいことは無い。早苗に感謝しながら、練也は文の取材に答えていく。
「先程伺った能力を使って、弾幕ごっこをしたいと思いますか?」
「弾幕ごっこ?」
弾幕ごっこ。この世界で行われる戦いのことである。スペルカードルールという戦闘規則に則り、正々堂々と勝負する。弾幕と呼ばれる無数の光弾を用いて戦闘を行い、相手が負けを認めるか、完璧に戦闘不能状態に陥るまで、戦いは続けられる。
「....というモノです。」
「もし使えるなら、やってみたいな。」
練也は少なからず、この世界に興味を持っていた。自分が住んでいた世界とは結界で隔てられており、そこでは自分にとっての非日常が溢れている。また此処に来る機会があるというのは、考え難い。この世界に留まるか、元の世界に戻るか...。練也は今、心の中で揺れていた。
「俺は外来人だ。だからこそ、此処に来て充実出来ることがあるかもしれない。
「でも、練也さん。貴方は外の世界に家族が居るんじゃ...。」
「俺の両親はしばらくの間は家に帰らない。ちょっとぐらい家を留守にしたって罰は当たらないだろ。」
早苗の問いかけに、練也は問題無しという様に胸を張って答えた。どうやら自身の中で渦巻く好奇心に駆られてしまい、弾幕ごっこという未知の領域に足を踏み入れようとしている様だ。早苗がそれを静止する間も無く、文が間髪入れずに練也に話を持ちかけた。
「では、話は早いですね。早速出してみて下さい。」
「出すって...。昨夜のアレか?」
「ええ、そうです。能力すら出せないとなると、弾幕ごっこどころじゃないですから。」
初心者に随分と辛口でかかって来やがると、内心悪態を吐く練也。再度身体に意識を集中させ、全神経を研ぎ澄ます。文はソレを見てカメラを構えながら目を輝かせていた。またとないであろう、外来人が能力を発動する瞬間。絶好のシャッターチャンスを逃すまいと、文は今やその時を待ち構えている。
「(思い出せ...、あの時の感覚を...。化け物をぶっ飛ばした時の感覚を...。)」
純粋にただ気持ちだけで撃てた様に思えた...。なら、今やっている方法で間違い無い筈だ。練也は一生懸命に、何かを発動しようと心の中で念じ続けている。
「.....。」
「どうしたんですか?」
「....。(わからない...。何が足りないんだ...?)」
文の言葉に耳も貸さない練也だが、この後、彼はとんでもない行動をとり能力を発動する...。昨夜と同じ、”吹っ飛んだ”ことを彼はやってのけた。
「....!!?」
身体が徐々に熱を帯び始め、最終的には全身が炎に巻かれた様な、今まで体験したことのない感覚が練也の身体を包み込んだ。
「どうかしたんですか?」
「いや...。(そうかっ...!コイツはこれでつかえるのか...!)」
練也の異変に若干気付いたらしい、文と早苗。練也は試しに右の手先から、前腕、上腕にかけて意識を集中させる。その後エネルギーがその一点に収束し、彼の右腕全体が灼熱の炎に覆われたが如く熱を持った。練也は自身の右腕をマジマジと見つめながら、文と早苗に言った。
「....出来た。」
「ええっ!?まさか本当に出来るなんて!コレはスクープに違いありません!」
「確かに、赤いオーラの様なモノが腕に浮き出ている気がします...。」
パシャパシャっと何枚か写真を撮る文を他所に、練也は辺りを見渡し始めた。この能力が、昨夜自分が使用した能力かを確かめたくなったからだ。今はその実験場を探していると言ったところだろう。
「しかし若干の変化は見られたものの、まだ能力を発揮するまでには至ってはいません。そこで....。」
「俺もそうしようと思っていたところだよ。つーか、お前本当に俺を記事のダシに使う気満々だな。」
場所を移動する為、その場から動き始めた3人。丁度同じ頃。マヨヒガを出た士は、人里へと足を踏み入れた。首に下げたトイカメラと白を基調とした涼しげな服装を身に纏い、ノンビリと歩いている。
「全く。何度か此処に来ている筈なんだがな。」
人々の視線に士はそうぼやきながら、人里の散策と写真撮影を開始する。