「織斑。あれは何だ」
試合が終わって、一夏は千冬に呼び出された。
『《リンドヴルム》のことだろう?』
今の一夏は手話でも空中ディスプレイではなく、機械的な声で話していた。
ISのオープン・チャンネルと言語能力をISが演算処理することで会話を成立させているのだ。
もちろん、条件としてISを部分展開していなければならない。その制約があるため、殆ど試合以外では使われない。
「そうだ」
「説明は私がします」
一夏の横に待機していた簪が前に出る。
「IS機体名《リンドヴルム》。更識家の持つIS特権をフル活用した世界に一つしかないISです」
「やはり、お前らが関係していたか」
千冬もいくら一夏でもあれ程の物を一人で作り出すとは思ってもいない。
しかし、まだいくつかの疑問があったが、あえて言わない。
「セシリアさんの自立機動兵器《ブルー・ティアーズ》を行動不能まで追い込んだ特殊武装は、雷と星を正体とする竜の牙―――、《
このIS開発に携わった簪は、そう丁寧に解説する。
強烈な突きと同時に、電撃を浴びせ、ISの機能をも封じる能力。
それだけでも十分に厄介だが、あの空中を走った雷撃は―――。
「はい、それだけではありません。電撃を穂先から放ち、中距離攻撃も可能です。もちろんそれを受ければ、触れたときと同様に数秒間、ISの機能が低下してしまいます」
千冬が疑問を発するより早く、簪が補足する。
「電撃を帯びた一夏の攻撃は、『
「…………」
一夏の攻撃を、連続して受け続けることは不可能。
対策としては、当たらないようにするしかないが、あの洗練された突きの一撃を、全く受けずにかわすのは不可能に近い。
常に飛び回るにしても、相手はスピードタイプのISなのだ。訓練機の《打鉄》とは、そもそもの機動力が差がありすぎる。
想像以上の難敵。
「となると、瞬間移動は……
「はい。《リンドヴルム》の
「そんな、まさか―――」
真耶は絶句する。
《リンドヴルム》が展開した光の領域は、千冬の目測で第三アリーナを包み込んでいた。
演習場全域を覆ってしまえる広範囲を、自在に瞬間移動できるとすれば―――。
「単純な戦闘技術、IS操作の腕でも群を抜いていますが、ああも自在に間合いを支配されてしまっては、勝ち目がありません」
その意味を、千冬は瞬時に把握する。
極論を言ってしまえば、戦いとは間合いを制することだ。
自分の攻撃が相手に届き、相手の攻撃が当たらないか、避けやすい距離を保って戦うのが、基本でありもっとも難しい技術だ。
だが、一夏のISは―――。
「離れていても、一瞬で距離を詰められる。接近して追い詰めても、瞬時に背後を奪われる。いくら先読みしても、ほとんど意味がありませんか……」
「…………」
真耶の呟きに、千冬は改めて理解する。
最強のISと言うには十分な性能を持ったISだった。
捕捉。
スターライト・ゼロは時間の関係上、完成していません