インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第17話

試合当日、第三アリーナ第一試合。組み合わせは一夏と鈴。

噂の新入生同士の戦いとあって、アリーナは全席満員となっていた。それどころか通路まで立って見ている生徒で埋め尽くされていた。会場入りできなかった生徒、関係者は、リアルタイムモニターで観戦するらしい。

 

『…………』

 

一夏の視線の先では、鈴とそのIS『甲龍』が試合開始の時を静かに待っていた。ブルー・ティアーズ同様、非固定浮遊部位が特徴的だった。肩の横に浮いた棘付き装甲が、やたらに攻撃的な自己主張をしていた。

 

『両者……規定の位置まで移動してください』

 

アナウンスに従い、一夏と鈴は空中で向き合う。

 

「アンタの試合、ビデオで観たわよ。《リンドヴルム》の武装はどれも馬鹿げた物ばかりね。でもね―――」

 

『それでは両者……試合開始!!』

 

ビーッと鳴ると同時に鈴が動く。

 

「アタシが勝つんだから!!」

 

ガギィンッ!!

 

瞬時にブレードで鈴の一撃を防ぎ、三次元躍動旋回で鈴を正面に捉える。

 

「ふうん……初撃を防ぐなんてやるじゃない」

 

鈴の手にしている異形の青竜刀をバトンでも扱うかのように回す。先端に付いた刃は鈴の手によって自在に角度を変えながら斬り込んで来る。

 

「(消耗戦は避けた方がいいな……一度距離を―――)」

 

「甘いっ!!」

 

ばかっと鈴の肩アーマーがスライドして開く。中心の球体が光った瞬間、一夏は手に持っていたブレードでガードする。瞬間、一夏は目に見えない衝撃に『殴り』飛ばされる。

一夏が持っていたブレードが砕け、辛うじて軽傷で済む。

 

「良く防げたわね。『龍砲』は砲身も砲弾も見えないのに」

 

一夏は音を失ったことで、視力と気配察知が異常になったことで、鈴の『龍砲』を察知することができたが、《リンドヴルム》の武装を一つ犠牲にすることで回避してしまったのだ。

 

「でも、次は当てるわ」

 

鈴が勝利宣言をするが、一夏は何故か―――笑っていた。

 

『《支配者の神域》』

 

静かに呟くと同時に、纏った《リンドヴルム》が、七色の光輪に包まれる。

そして、鈴の《龍砲》が一夏に襲いかかった瞬間、その姿が消えた。

 

「なッ!?」

 

鈴が驚いた時には、既に一夏は、鈴の眼の前にいた。

 

『《雷光穿槍》』

 

雷を帯びた大槍の特殊武装―――《雷光穿槍》を巧みに振るって、鈴に喰らいつく。

青竜刀で一夏の攻撃を防ぐ鈴だが、一夏の槍をガードする度に『甲龍』の動きが鈍くなっていき、やがてガードが間に合わなくなる。そして、一夏の一撃が決まる。

 

『《雷閃》』

 

バシィィィッ……!

 

瞬間。雷鳴が轟き、突撃槍の穂先から雷が放たれる。

 

「う、ああッ……!?」

 

障壁と装甲の上から穂先と電撃を受け、鈴は後方へと弾かれた。

 

『―――お前の負けだ』

 

そう突き放して、一夏は鈴に背を向ける。

 

「何処へ行くつもり? アンタの相手はまだここにいるわよ」

 

『……っ!?』

 

その瞬間、鈴は《甲龍》で一夏の《リンドヴルム》に背後から組み付き、拘束していた。

 

『青竜刀を犠牲にして、最後の一撃を回避したか……』

 

「そうよ。アンタの《雷光穿槍》は触れた物にしかスタン効果が発揮しない。なら、当たる寸前で捨てれば、多少は回避できるのよ」

 

勿論そのことは一夏は分かっていた。

だが、鈴は一夏の《雷光穿槍》を能力の唯一の欠点に気付いたのだ。

 

「それに《支配者の神域》で転送できるのは、大きさに制限があったわね? 《リンドヴルム》を纏ったアンタ自身の大きさが、その限界。ならこうして組み付いていれば飛べない!!」

 

普通では思いつかない行動に一夏は冷汗を掻く。

一瞬の油断で鈴は組み付けるチャンスをギリギリまで待ち、見事に勝ち取ったのだ。

 

「食らいなさい!」

 

鈴の左右に浮遊していた衝撃砲が砲火が一夏に襲いかかろうした、その瞬間、

 

バシィィィッ!

 

耳をつんざく轟音とともに、《甲龍》と《リンドヴルム》が雷に包まれた。

 

「ッ―――!? (自分の周囲を……《雷閃》で攻撃した……!!?)」

 

鈴は一瞬、その凄まじい閃光で目が眩む。

直後、超然とした声が響くように聞こえた。

 

『《星光爆破(スターライト・ゼロ)》』

 

いつの間にか鈴の拘束から逃れ、アリーナの対岸まで瞬間移動した一夏が、そう呟く。

直後、その肩に連結されていた砲身が唸りを上げて起動し、球状の光弾を発射した。

 

「……ッ!?」

 

眩しさに目を細めながら、鈴は息を呑む。

黄色に明滅する光弾の速度は、決して速くない。

だが、そのほんの数秒後。

光弾がアリーナの中心へと到達した瞬間、その場で揺らめき、爆裂した。

 

ドウッ!

 

網膜を焼く閃光と、息も出来ない程の爆風がアリーナ内に激しく渦巻き、観客席の生徒たちが悲鳴を上げる。

ほぼアリーナの八割の広さが、光と爆炎で埋め尽くされた。

星光爆破(スターライト・ゼロ)》は、《リンドヴルム》が持つ、もう一つの特殊武装だ。

溜め込んだエネルギーを極限まで圧縮した『星』と言う光弾を撃ち出し、数秒後、そこを中心とした半径三百メートル内の空間を爆撃する、広範囲超威力の殲滅兵器。

その砲撃を一夏は完璧に計算し、観客席に被害がでないよう、調整して放っていた。

 

「一夏くんが、本気を出すとはね―――」

 

モニターで観戦していた楯無は、驚きを隠せぬ表情で呟き、眼下のアリーナに視線を落とす。

凄まじい衝撃と炎の余波が消え、煙が晴れると―――。

 

『試合終了。勝者―――織斑一夏』

 

星光爆破(スターライト・ゼロ)》の一撃で、《甲龍》のシールドエネルギーが、力尽きる。

その瞬間、勝敗を告げるアナウンスが鳴る。

直後に大歓声が、アリーナの中に降り注いだ。

 

「……負けたんだ、私……」

 

『立てるか?』

 

一夏は力尽きて仰向けに倒れている鈴の元に下り立つと、手を差し伸べる。

 

「今回はアンタの勝ちよ。だけどね! 次はアタシが勝つからね!!」

 

『ふん。次があればな』

 

鈴は一夏に指を突き付け、一夏は笑みを浮かべ、それを受け取る。

 

ズドオオオンッ!!

 

「!?」

 

鈴を立ち上がらせた瞬間、突然大きな衝撃がアリーナ全体に走った。

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