インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第18話

「(今の衝撃は一体……コイツがやったのか?)」

 

姿からして異形だった。深い灰色をしたそのISは手が異常に長く、つま先よりも下まで伸びていた。しかも首と言う物がない。肩と頭が一体化しているような形をしている。

何より特異なのが、その『全身装甲』だった。

 

「(こんな……全身装甲のISなんて、今まで見たこともない……)」

 

通常、ISは部分的にしか装甲を形成しない。なぜなら、必要がないからだ。防御はほとんどがシールドエネルギーが行なってしまう。だから、見た目の装甲というのはあんまり意味を成さない。もちろん防御特化型ISで物理シールドを搭載しているものもあるが、それにしたって肌が一ミリも露出していないISと言うのは今までに聞いたことがない。

 

「一夏! 試合は中止よ! 今すぐピットに戻って!!」

 

『あっちは逃がすつもりはないのだが?』

 

「あいつ、アリーナの遮断シールドを力ずくで破壊したのよ。とんでもない火力を持っている……攻撃されたらタダじゃすまないわ」

 

『そうしたい所だがな……!!』

 

間一髪、鈴の身体を抱えてその場から離れる。その直後に熱腺で砲撃された。

 

『ビーム兵器か……しかもセシリアのISより出力は上……』

 

「ちょっと!! 馬鹿! 離しなさいよ!!」

 

『お……おい! 暴れるなって!!』

 

「うるさいうるさいっ!! 大体何処触って……」

 

『ちっ!! 《支配者の神域》』

 

うるさい鈴はさておき、煙を晴らすかのようにビームを連射してくる。

それをどうにかかわすと、その射手たるISがふわりと浮かび上がって来た。

 

『お前……何者だよ』

 

当然といえば当然だが、謎の乱入者はこちらの呼び掛けに答えない。

 

『織斑くん! 凰さん!』

 

『山田先生!』

 

割り込んで来たのは山田先生だった。

 

『今すぐアリーナから脱出してください! すぐに先生たちが制圧に行きます!!』

 

『……いや、俺は残ります』

 

あのISは遮断シールドを突破してきた。と言うことはつまり、今ここで誰かが相手しなくては観客席にいる簪に被害が及ぶ可能性があるということだ。

 

『だ、駄目ですよ!! あなたたちに、もしものことがあったら……』

 

『鈴は先に行っていろ』

 

『わかったわ。無理だけはしないでよね』

 

『ああ』

 

一夏は鈴をピットの上に下ろす。

鈴の『甲龍』は既にシールドエネルギーがなく、起動させるには数時間が必要だった。

このままでは一夏の足手まといになることが分かっていた為、鈴は大人しく一夏の言葉に従う。

 

『さてと……殺りますか』

 

鈴がピットの奥へと下がるのを見届けた一夏は獲物を構える。

そして、学生から仕事モードへとクラスチェンジした。

 

 

 

 

「織斑くん! 聞こえています!? もしもし! もしもし!!」

 

ISのプライベート・チャンネルは声を出す必要は全くないのだが、そんなことを失念するくらい山田先生は焦っていた。

 

「落ち着け」

 

「ひゃうっ!?」

 

慌てる山田先生のおでこにデコピンが入る。

 

「おっ……織斑先生……!」

 

デコピンを入れたのは織斑先生だった。

 

「つ、通信が切れちゃって、織斑くんが……!!」

 

「ああ。本人がやると言っているのだから、やらせてみてもいいだろう」

 

「な、なにを呑気なことを言ってるんですか!! 早く救援に行かないと!」

 

「これを見ろ」

 

「え……こ、これは!」

 

ブック型端末の画面を数回叩き、表示される情報を切り替える。

 

「遮断シールドがレベル4に設定……ステージに通じる扉も全てロックされている。これでは救援に行けない」

 

「まさか……あのISが……!?」

 

「だろうな。シールドの解除を三年の精鋭たちに任せているが、あと何分かかるかわからない。政府に援助の連絡も入れたが……それもすぐには来ないだろう」

 

状況が芳しくない状態であるにもかかわらず、千冬は落ち着いていた。

 

「まあ、織斑なら大丈夫だろうな」

 

「え?」

 

千冬の言葉に真耶は驚く。

 

「(主人の危機である以上、アイツも本気になるな)」

 

更識家の従者となった一夏に与えられた二つ名は……『雷帝』。

主を守る、最速の槍。それが更識家の最強の従者である織斑一夏に与えられた名だった。

 

 

 

 

「(この動き……やっぱりそうなのか?)」

 

一夏は敵ISの動きに合わせて《雷光穿槍》を振る。

しかし、敵は当たる寸前で一歩下がる。この行動は《雷光穿槍》の特殊能力に気付いていることに他ならなかった。

しかもこれを七回も回避しているのだ。

 

「(人が乗っていないな)」

 

《雷光穿槍》の特性に気付いているのであれば、鈴のように別の方法で攻撃してきたはず。だが、眼前の敵ISは追撃の一つもしてこなかった。

これは人ではなく、パターン化された行動だった。このことから、一夏は眼前のISは無人機だっと判断したのだ。

 

「(人が乗っていないなら、アレを―――)」

 

一夏が突撃姿勢に入ろうとした瞬間、アリーナのスピーカーから大声が響いた。

 

『一夏ぁっ!!!!』

 

『箒!? そんな所でなにしてるんだよ!!』

 

『男なら……そのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!』

 

気付くと、敵ISは箒のいる館内放送者の方を見ていた。

 

『ちっ!!』

 

その瞬間、一夏が動いた。

それに反応するかのように敵ISが一夏に向けてビームを放つ。

 

『《支配者の神域》』

 

静かに呟くと同時に、纏った《リンドヴルム》が、七色の光輪に包まれる。

そして、ビームが一夏に襲いかかった瞬間、その姿が消えた。

 

『!?』

 

敵ISは一瞬動きが止まった時、既に一夏は、敵の眼前にいた。

 

『《星光爆破》』

 

一瞬に移動したことにより、緊急処理が行なわれフリーズした敵ISへ、ゼロ距離から超圧縮の光弾を放つ。

直後、一夏は上空へと高く飛翔し、凄まじい程の電撃を纏わせた《雷光穿槍》を構えた。

 

『止めだ』

 

光弾の爆発と同時に、一夏は眼下の敵ISへ突貫した。

二種類の攻撃を、一人で同時に当てる『重撃』。

敵が爆破される瞬間を狙い、一夏がそれを仕掛ける。

爆風と衝撃波が一帯を揺らす中、一夏は自らの砲撃によるダメージも厭わず、敵ISの胴を深々と貫いた。

 

『う……、あ』

 

さすがに相当消耗したのか、突き立てられた槍を引き抜きながら、一夏はぐらりと身体を揺らした。

 

「(限界か……)」

 

『―――敵ISの再起動を確認! 警告! ロックされています!』

 

『!?』

 

殆ど原型を留めていない敵ISが、一夏を狙っていた。

次の瞬間、迫り来るビームに一夏は、ためらいなく光の中へと飛び込む。

真っ白な視界の中、槍が装甲を貫く手応えを感じた。

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