「…………」
少女は一夏のタグを見てから、黙り込んでしまった。
「(組織に居る奴以外にA0級クラスの奴がいるなんて……ん?)」
少女は一夏を改めて見て、あることに気付く。
「(ああ。なんて私はついているのかしら……)」
少女は不気味な程の笑みを浮かべる。
そんな少女を見ながら、一夏は、
『…………』
肩から息が上がっていた。
《リンドヴルム》の
「(これ以上、この場にいるのは不味いな……)」
楯無は辛うじて離脱は出来たようで、一夏がこの場に留まる理由はない。
だが、目の前の少女はどうやら、逃がしてくれそうにはなかった。
「(《
一夏は今あるカードで。どうやってこの場を斬り抜けようかと、思考を掛け巡らせる。
そして、覚悟を決めた。
「(楯無は怒ると思うけど、仕方ないな……)」
簪との約束がある以上、一夏はこの場を斬り抜けなければならない。
「(身体よ、もってくれよ!)」
ガキィン!
と、一夏の心の叫ぶと、《リンドヴルム》の肩口に連結された主砲を、少女に向けた。
残りのシールドエネルギーを注ぎ込んだ、一夏の切り札《
船など一撃で跡型もなく吹き飛ばしてしまう超広範囲の攻撃では、少女も避けざるをえない。
「ッ……!?」
エネルギーの充填前に、少女は一夏に高速で飛びかかった瞬間、一夏の槍が電撃を帯び、眩しく輝いた。
直後、《支配者の神域》で瞬間移動し、少女から限界まで距離を取る。
最初の充填の動作は―――
『《
弱弱しい一夏の声とともに、圧縮されたエネルギーの光球が放れた。
◇
「ッ!」
楯無はなんとか臨海公園までたどり着き、部下たちに介抱されていた。
「あの力は一体何なの……」
見た目は一夏と楯無と歳は殆ど変わらないのにも関わらず、楯無は一方的に負けたのだ。
「(まるで、一夏くんとそっくりじゃない……そいえば、あの娘もタグを付けていたわね)」
一夏がIS学園に入学する前に一度だけ、楯無は一夏と模擬戦を行ったことがあった。
そして、同時に一夏の異常なまでの身体能力を目にし、楯無は負けた。
ドウッ!
「!? あの子まさか!!?」
一夏がいる方向で強い光と爆発音が聞こえ、楯無はその場から立ち上がる。
「すぐさま、救出隊を向かわせなさい!」
「は、はい!」
一夏が使ったのは《
長時間の戦闘で既にシールドエネルギーがない状況で、一夏は切り札を切ったのだ。
「アンタが死んだら、私はあの子にどんな顔をすればいいのよ……」
楯無は手摺りを強く握り締め、爆発があった方向を見る。
その数十分後、一夏は無事に保護されたが、異常までのダメージを受けており、入院することになった。
◇
「あの野郎……自爆覚悟であんな物撃ちやがって」
オータムは一夏を追って来ると否や網膜を焼く閃光と、息も出来なき程の爆風が襲いかかったのだ。
「…………」
少女はそんなオータムの横を歩くが、何も言わない。
「(織斑一夏……)」
一夏の一撃を僅かだが受け、一夏の確保に入ろうとしたが、上からの命令により、すぐさま撤退することになる。
少女は僅かに残った一夏との戦闘の感触を確認していた。
「次は……私が勝つ」
少女……Mは首に提げられたタグを握り締め、アジトに戻って行った。