インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第32話

学年別トーナメントが終わり、普段の日常が訪れようとしていた時だった。

 

「はっ……ふぅ……」

 

いつもの様に寝たつもりであった一夏だが、何故か疲れが取れるどころか、昨日よりも疲れが増していた。そして、昨日から一睡もできず、朝を迎えしまう。

 

「(おかしい……身体が……滅茶苦茶……おめぇえ……)」

 

一夏は無理矢理身体を起こし、ベッドから立ち上がろうとする。

しかし、息が荒れた一夏は立つこともままならず、その場に倒れた。

 

「うぅん……なにそんなに、大きな音を起てて……」

 

簪が物音に気付き、眠そうにしながら起き上がる。

そして、簪が壁に寄りかかる一夏を目にして、完全に眠気が消し飛んだ。

 

「!? 一夏くん!!」

 

「は……はっ……カラダガ……クソヲモイ」

 

「今、先生を呼んで来る!!」

 

簪は慌てた自室を出て、一夏の姉である千冬のいる部屋へと走り出す。

それと同時に一夏の意識が落ちた。

 

 

 

 

「急いで!」

 

いきなりの呼び出しに千冬もはっきりと意識が保てていなかったが、簪から告げられた一夏が倒れたと聞くと、一変した。

その後の対応が早く、山田先生と共に一夏のいる部屋へと駆け込むと今にも死にそうな一夏がいた。そして、担架でIS学園に設置されている緊急治療室へと運ばれる。

 

「心拍数が低下していきます」

 

だが、緊急治療室に運ばれた一夏の状態が一向に悪くなっていく。

そして、一夏が倒れたことを耳にした箒、セシリア、鈴、ラウラ、シャルルが緊急治療室に入って来る。

 

「一夏は無事なんですか!」

 

「結果で言えば、良くないわ」

 

緊急治療室に搬入された時に一緒にいた楯無は一夏の状況を簡潔に説明する。

なにしろ、今回の異常は今ままでになく、楯無も何もできなかった。

 

「そんな……嫌だよ」

 

簪がそれを聞いて、泣き崩れる。

 

「おい、それは……」

 

ラウラが目にしたのは、簪が握っていたタグだった。

緊急治療室に運ばれる時に一夏から外されたタグを簪が握っていたのだ。

 

「織斑は……黄昏種(トワイライツ)なのか!」

 

「え?」

 

いきなりの問に簪が驚く。

 

「もし、黄昏種(トワイライツ)なら、あれがあるはずだ」

 

「ぐす……あれってなに……」

 

「あれだ! 黄昏種用投与剤(セレブレ)だ」

 

黄昏種用投与剤(セレブレ)……?」

 

「まさか……黄昏種用投与剤(セレブレ)を与えていないのか!?」

 

そう言って、ラウラは飛び出し、自室に駆け込む。

そして、クロウゼットから自分の荷物を掻き出す。

 

「確かあったはずだ……あった!」

 

ラウラは軍人の癖で、常に薬を持ち合わせている。

そして、ラウラが目的の物を見つけ、すぐさま戻った。

 

「今すぐ、これを投与しろ!!」

 

戻って来たラウラに驚いた山田先生は混乱する。

 

「え、え」

 

「もたもたするな! 織斑を殺すつもりかぁ!!」

 

「は、はい!」

 

山田先生はラウラから渡されたインジェクタを一夏の首元に刺す。

その後、一夏の呼吸が安定し、平常値になった。

 

「バイタルが安定しました」

 

山田先生がそう宣言すると、楯無はほっと、息を吐く。

 

「とりあえず、山は越えたわ」

 

「良かった……良かったよ」

 

簪は一夏の安全を確認すると、その場で泣き始めた。

 

「それで、黄昏種用投与剤(セレブレ)とはいったい……それより、ボーデヴィッヒさんは何故、黄昏種(トワイライツ)のことを知っているのかしら?」

 

楯無も聞きなれない言葉に疑問を持ち、同時にラウラが黄昏種(トワイライツ)を知っていることを知った。

 

「あの~。黄昏種(トワイライツ)とは一体……」

 

セシリアが手を上げ、聞いて来る。

それは、この場にいる全員が知りたい質問でもあった。

 

「うむ。まさか、この地にいるとは思ってもいなかったがな。黄昏種(トワイライツ)とは、ある種族の名称だ」

 

セシリアの質問にラウラは答える。

それは、闇に葬られた黄昏種(トワイライツ)の歴史だった。

 

「始まりは第二次世界大戦の時だ。イタリアが戦争の兵器として、生み出した人間……それが黄昏種(トワイライツ)だ。人間を超えた存在を奴らは作り出してしまったのだ」

 

人は常にリミッターをかけて生活をしている。そんなことをしなければ、筋肉が損傷してしまうからである。その為、脳はリミッターをかけることでそれを防いでいる。

しかし、黄昏種(トワイライツ)は別だ。黄昏種(トワイライツ)はそのリミッターを限界まで解除している。そして同時に強靭的な肉体である為、普通の人より異常的な力を使う。

一夏もその気になれば校舎の壁から屋上まで駆け上がることもできるのだ。

 

黄昏種(トワイライツ)は異常なまでの身体能力を手にする代わりに……代償が発生するのだ」

 

「代償って……今の一夏みたいにか?」

 

「ああ、あれはまだ序の口だ。もっとひどい奴だと身体のどこかに異変が起きている」

 

黄昏種(トワイライツ)はその代償のせいで、短命種族となってしまった。

そして、同時に身体のどこかに代償が付きまとう。ある者は音と声。身長と……何かしらの異常を持っている。

 

「でも、一夏は普通だったよ……」

 

「今まで黄昏種用投与剤(セレブレ)を与えていなかったのが不思議な位だぞ。黄昏種(トワイライツ)はこれがなければ生きていけない」

 

ラウラが見せたのは、先程一夏に与えた物とは別に錠剤が入った筒を見せる。

 

「これは促進剤(アッパー)と呼ばれる黄昏種(トワイライツ)の生命維持に必要な物だ」

 

「とりあえず、一夏は助かるのだな」

 

それを聞いて、箒は一安心するが、ラウラの一言で崩れた。

 

「そうとは言いにくい。これだって無限にあるわけではない、いつかは切れる」

 

そうなれば、一夏はまた……

 

「なら、それを……」

 

「手に入れるってか? それは無理だ」

 

「なぜだ!」

 

箒は怒鳴り声を上げる。

そして、ラウラは楯無の方に向く。

 

「更識が黄昏種(トワイライツ)のことを調べていることは、耳にしていたが全くと言って成果を得ていないのだろう?」

 

「ええ。確かにそうよ」

 

「それが、何故だと思う」

 

「……抹消された」

 

「そうだ」

 

「抹消されたとは……」

 

「先程の続きだが、第二次世界大戦で作られた黄昏種(トワイライツ)は終戦と同時に役目を終えた。だが、その異常までにある身体能力に恐怖を感じた上層部は……黄昏種(トワイライツ)を根絶やしにしたのだ」

 

「ま、まってよ……それって」

 

シャルルは……いや、その場にいた全員が同じ答えにたどり着いたのだ。

 

「だが、その中に生き残った者がいたらしい」

 

「それが、一夏なのね」

 

「ああ。織斑の両親……もしくは、その上が黄昏種(トワイライツ)だったのだろう」

 

一夏の異常なまでの身体能力の秘密にたどり着いた。

 

「織斑先生の身体能力にも説明がつくわね」

 

IS用の接近ブレードをISなしで扱ったことは、この学園で有名な話だった。

 

「でも、それがあるっと言うことは、何処かで生産しているのでしょ?」

 

「どうだろうか? これは、第二次世界大戦時の遺留品だ」

 

「どうするのよ……」

 

「……まって。確か……」

 

楯無は何かを思い出す。

 

「(亡国機業は第二次世界大戦の……なら、そのルートも知っているはず)」

 

前に亡国機業と戦った時に楯無は黄昏種(トワイライツ)を見ている。

もし、ボーデヴィッヒの話がそうなら、彼女らだって黄昏種用投与剤(セレブレ)が必要になるはずだ。

なら、黄昏種用投与剤(セレブレ)を量産していても可笑しくない。

 

「僅かだけど……希望はある」

 

「本当ですか!」

 

「確定ではないけどね……とりあえず、色々とあたってみるわ」

 

「なら……」

 

「貴方達は大人しくしていなさい」

 

「しかし……」

 

「箒。これは私たちが関わっていけないことなのよ」

 

「なっ! 貴様はそれでいいのか!」

 

「言い分けないじゃない!! でもね、これはアタシ達は重すぎるのよ。分かる?」

 

「っ……」

 

「一夏のことは、私達に任せない」

 

楯無の一言で箒以外の者たちは納得し、退室していった。

 

「もう一度、会うことになるとはね……」

 

楯無は眠る一夏を窓越しから眺めるのであった。

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