インフィニット・ストラトス ~未定~   作:ぬっく~

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第38話

「『国境の長いトンネルを抜けると―――』これは『雪國』の冒頭の一節ですが―――」

 

教卓の前で山田先生はいつのも通り授業を進める。教卓前の一夏の席だけが空席である以外。

 

「(今日は来ていないか……)」

 

箒は空席の一夏の席を見つめていた。

一夏が目覚めたことは、あのホテル消失事件の次の日に聞かされていたが、一夏は未だにクラスに姿を見せてない。

 

「(もう、心配ないのなら姿くらい見せろよ……!)」

 

こみ上げてくる怒りをどうにか抑える。

教室の後ろの方では、セシリアがノートにペンを走らせていた。しかし、書かれていることは意味のない腺で、言葉になっていない。

 

「(今日も来ませんのですか……)」

 

姿を見せない一夏にセシリアは心配する。

副クラス代表として、一夏の体調を気にするのは当たり前だった。

むしろ、あのことがあっては、余計にそうさせる。

 

「(一夏は何処で何をやってるのだろう……)」

 

シャルル……改めて、シャルロット・デュノアは一夏の席を見つめる。

学別トーナメントが終わると、シャルルは本当の名前であるシャルロットとして、ここに転校してきたのだ。

シャルロットの問題は楯無が処理し、その提案が一夏が行なったことをシャルロットに伝えられていた。

 

「(ふむ……ずる休みと言うやつか?)」

 

ラウラはあの日から随分と大人しくなり、何故か一夏のことを心配するようになった。

しかも、夜這いまで試みたのだが……

 

「(あのセキュリティをどう突破するものか……)」

 

一夏の部屋は普通の部屋とは違い、要塞に近い。

ピーピングをすればアウト。開ければ、ワイヤートラップで即アウト。部屋に入れば、重量トラップでアウト。さらにさらに、赤外線センサーがそこら中にあり、当たれば即アウトと……警備は万全なのだ。

そこまでする必要があるのかと思うが、一夏の同室の子が一夏の主である簪の為、普通より警備が厳重である。

 

「「「「(どうやって、一夏を誘うか……)」」」」

 

一同、同じことを考えていた。

しかし、そんな平和な授業はあることで、中止になる。

 

ドウッ!

 

それはいきなりだった。

教室の外から強烈な光弾が弾ける光と突風が襲い。IS学園その物を揺らす。

 

「な、なんだ!?」

 

千冬はいきなりの揺れに驚き、外を見る。

そして、ある場所から煙が上がっていた。その上を二つの光がぶつかり合っていた。

 

「誰かが、戦っているのか……?」

 

しかし、今日の授業に模擬戦闘を行なっているクラスはない。しかも、これだけの威力がある武装は……一つしか思いかばなかった。

 

「織斑と……誰が……」

 

「そんな……まさか!?」

 

セシリアは即座に高速移動する機体をロングレンジ用のズームで確認する。そして、そこに写っていたのは、セシリアが見たことのある機体だった。

BT二号機《サイレント・ゼフィルス》。

シールド・ビットを試験的に搭載した機体であり、その基礎データには一号機であるセシリアのブルー・ティアーズが使われている。

 

「くっ……」

 

「おい!」

 

セシリアはすぐさま、教室を出て、高速移動する一夏と《サイレント・ゼフィルス》の元へと向かう。

走っている中でもセシリアは一夏の戦いから目を離さない。

 

「(超高速機動下の精密射撃!? それも、こんな連続射撃だなんて!)」

 

《サイレント・ゼフィルス》の操縦者は一夏の《雷閃》をシールド・ビットで防ぎ、有効打を与えない。

自らを上回る技量に驚愕するセシリア。しかも、敵機から通常の射撃ビットが飛来し、セシリアを越える同時六機制御の中、一夏も負けていなかった。

 

 

 

 

「(マッハ2で飛行しても、精度を落とさないか……)」

 

アリーナで始まった戦いはいつの間にか外へと変わっていた。

一夏とMの戦いではあのアリーナの中では狭く、一夏は遮断シールドを破壊する否や高速起動に入った。その後を追うようにMも高速起動に入る。

そして、現在の一夏とMの速度は秒速680メートル。マッハ2で飛行していた。

 

「(そろそろ限界だな……)」

 

マッハ2で飛行している為、一夏の《リンドヴルム》に限界が訪れようとしていた。

勿論、Mの《サイレント・ゼフィルス》にも同様の兆候が見えていたことは、一夏は気付いている。

一夏は垂直に上昇し、高度を上げていく。

Mもその後を追うように高度を上げ、一夏が上空一万メートルに到着すると、一夏は《リンドヴルム》のPICをカットした。

PICをカットした《リンドヴルム》は浮遊、停止、加速を失い落ちる。

 

「もらったぞ、織斑一夏!」

 

《リンドヴルム》に向けられた六機のビームが放たれた。

 

『《支配者の神域》』

 

Mのビームが当たる寸前で一夏の《リンドヴルム》が七色の光輪に包まれる。

ビームは一夏に当たることなく、消えてしまった。

 

「なっ!?」 

 

完全無防備状態であった一夏が一瞬にして消え、Mは思わず声をあげてしまった。

そして、Mの背後に機体反応を感知した時にはもう遅く。

 

『《雷光穿槍》』

 

電撃を帯びた突撃槍の一撃が《サイレント・ゼフィルス》の横腹目がけて繰り出される。

不可避のタイミングにMは持ってた《スターブレイカー》を盾にした。

 

「ッ……」

 

《スターブレイカー》は一夏の《雷光穿槍》によって破壊され、Mは出来た隙をついて、シールド・ビットで追い詰める。

しかし、一夏は《雷光穿槍》を巧みに振るって、あらゆる方向から襲いかかるシールド・ビットを、次々と弾く。

槍一本だけで、六機によるビームの嵐を全て防いでいた。

 

「いい加減に沈めぇええ!!」

 

Mは全ての手札を切り、もう何も残っていない。

《スターブレイカー》は破壊され、シールド・ビットは全て感電してしまい、再起動までに時間がかかり過ぎる。シールドエネルギーももうない。

Mは右手に拳を作り。

 

『断る!!』

 

それは一夏も同様だった。

超高速状態での戦闘は予想以上に体力を消耗し、《星光爆破》に《雷閃》と一夏は《リンドヴルム》の特殊武装を使いまくった。Mと同じくシールドエネルギーがもうない。

一夏は《雷光穿槍》を捨て、空いた右手に拳を作る。

一夏とMは同時に殴りかかった。

 

『「ぐっ……」』

 

お互いの拳は……最後のシールドエネルギーを削り、無くなった。

模擬戦とかの試合なら、余分にシールドエネルギーが残っているが、お互いのISにはその制限を解除してあり、完全にシールドエネルギーを使い果たしてしまった。シールドエネルギーが無くなった機体はPICを制御する力も無く、落ちる。

 

「(負けた……のか……)」

 

Mは落ちていく中で、手を伸ばした。

 

「(やっと、皆の所に……)」

 

上空一万メートルからの落下では確実に死ぬであろう。そう思ってMは目を閉じた。

 

『何勝手に死のうと思っているんだ?』

 

Mの手を握る感触があり、思わず目を開けると、そこには口から血を垂らした一夏と《リンドヴルム》の姿があった。

 

『捕まっていろ』

 

そう言って、一夏はMを引き寄せ、抱き込む。

《リンドヴルム》の両翼を広げ、落下速度を殺し、一夏とMは海に落ちた。

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