ざぁ……。ざぁぁん……。
「(ここは……?)」
遠くから聞こえる波の音に気付いたMは一面に広がる空が最初に目に写る。
『気付いたか』
波に身を任せながらMの横に浮かぶ一夏がMの意識が戻ることに気付き、そう言う。
お互いに全力を出しての戦い。そして、引き分けた。
もう、身体を動かす余裕などなく、こうして浮かぶだけで限界だったのだ。
「何故助けた……私はお前を……」
織斑一夏を殺そうとしたMは、その一夏に助けられた。
その意味が分からない。
『そんなちんけなこと……どうでもいいだろう』
「な!? ちんけだと!? 分かってて言っているのか!?」
殺意剥き出しで戦ったMにとって、一夏の前ではちんけなことだったらしい。
『スッキリしたか……』
「っ……。はぁ……何かどうでも良くなったよ」
『そうか……』
Mは今まで悩んでいたことが、どうでも良くなってしまった。
織斑一夏に殺されたスコールとオータムの敵を取ろうと必死になったにかかわらず、結局取れなかった。その上、二度も助けられると言う始末。
「私は……どうなるのだ?」
これだけのことをしでかしたMは一夏に問う。
一夏がその問に……
『一緒に来るか?』
「は?」
以外な答に、Mは目を丸くする。
『行く宛てがないんだろう? それに帰る場所も……なら、俺が与えてやるよ。きっとお前も気に入るさ』
一夏はニカッと笑う。
「いいのか……」
『いいさ。あいつなら、喜んで受け入れてくれるさ』
お互いに顔は見ない。
だけど、掴んでいる手から伝わる感触からは……
「マドカ」
『ん?』
「織斑マドカ……私の本当の名前だ」
ずっとMとして名乗ってきたマドカは初めて、自分の名前を明かす。
『あぁ。よろしくな、マドカ』
お互いの思いをぶつけた闘いは幕を閉じ、騒ぎを聞きつけた教師たちに一夏たちは回収された。
◇
そして、その数日後。
「織斑マドカだ。よろしく頼む」
一年一組にIS学園の制服を着たマドカが立っていた。
マドカは正式に更識が管理することになり、一夏の部下として働くことになったのだ。
簪もマドカの存在は認め、一夏がいない間だけ、護衛を任せることになった。
楯無は……まぁ、専属としてマドカを欲しがっていたが、本人に却下され、涙目になったことは敢えて言わない。
「一夏ぁ!!」
「一夏さん!!」
「一夏?」
「嫁よ!」
マドカの登場に箒、セシリア、シャルロット、ラウラが立ち上がる。
「「「「これは、どう言うことだ!!」」」」
『そのままの、意味だが?』
一夏はしれっと返す。
何も普通なことに一夏は疑問を持つことも無く、彼女たちの意味が全くわからなかった。
「あれだけのことをして、何も無かったとは言いませんわ!」
セシリアがビシッ! とマドカを指差す。
「あぁ。あれは、すまなかった」
「すまなかったって……」
セシリアが言っていることは、マドカが使っていた《サイレント・ゼフィルス》のことだった。
あの戦いの後、《サイレント・ゼフィルス》はイギリスに返却された。しかし、その状態に問題があったのだ。
「スクラップ化した状態で返却して、よくそんなことをいえますわね」
コア以外、完全にオーバーホールする状態で返却され、イギリス側は激怒する。
操縦者をだせやコラと、ヤンキー顔負けの剣幕に日本は知らんと主張したらしい。
まぁ、
これが、政府がイギリスに出した報告だ。
しかし、本当のことを知るセシリアは、そのことは政府に言わなかった。
「言い争いはそれぐらいにしておけ」
千冬がセシリアとマドカを止め、SHRが終わる。
「では……」
そんな後の中で、山田先生は授業を始める。
マドカに対する視線が途切れることない一日が始まったのだ。