箒と一夏が上空へと飛び立ち、ある程度の高さに到達すると一夏が停止する。
一夏の前に箒が到着し、箒は《紅椿》の専用武器である二本の刀である《雨月》と《空裂》を構えた。
「行くぞ! 一夏!!」
そして、箒の言葉で戦いが始まった。
『…………』
最初に仕掛けて来たのは箒の方だった。
武士道らしく真正面からの攻撃。
『《支配者の神域》』
一夏の身体が七色の光に包まれ、箒の《雨月》が空振りになる。
「な!?」
箒は一夏が一瞬にして消える単一仕様能力は今まで散々見て来た。
しかし、箒はそんな卑怯な技を一夏は使わないと思い込んでおり、一瞬の隙が出来てしまう。
『《雷閃》』
一夏が転移した先は箒の背後であり、転移が完了すると同時に大槍から雷を放った。
箒は一夏が放った雷に反応することが出来ず、背後から直撃する。
「がぁ!? 卑怯だぞ!! 正々堂々と戦え!!」
未だに武士道精神を言い出す箒。
しかし、一夏はそんな箒の言葉を吐き捨てた。
『卑怯? 甘ぇ事言ってんじゃねぇよ。聖者でも相手にしてるつもりか?』
「っ……」
《リンドヴルム》の大槍の特殊武装《雷光穿槍》から放たれた雷撃にはスタン効果があり、箒の《紅椿》から複数のアラームが鳴り響いている。
動きが鈍った敵など一夏からしてみれば、ただの的でしかなかった。
「くそ! 動け、《紅椿》!!」
そこから先は一方的な戦いでしかなかった。
一夏の電撃を受けた《紅椿》は一夏の大槍から攻撃など避けることは出来ず、《紅椿》の装甲を破壊していく。
『《雷光穿槍》』
「ぐぅ!!」
箒も負けまいと一夏の《雷光穿槍》を《雨月》と《空裂》で無理矢理受け止める。
『《星光爆破》』
一夏はさらに上空に《星光爆破》の光弾を撃ち上げた。
箒は一夏がなぜそんなことしたのか分からなかったが、その後に思い知る。
『《支配者の神域》』
一瞬にして視界が変わる箒。
眼の前には一夏が放った光弾があった。
「な!?」
一夏は箒を《支配者の神域》で光弾の着地地点へと飛ばしたのだ。
制限された質量、転移範囲さえ合っていれば、何でも転移させることができる。
回避とかに使う《支配者の神域》を一夏は箒に使ったのだ。
『チェックメイト』
箒の前で光弾が弾け、轟音が鳴り響いた。
光が収まると大破した《紅椿》が落ちてくる。
一夏は溜め息を吐きながら、箒を捕まえた。
『ほらよ、そいつをさっさと医務室に連れて行け』
一夏は箒を山田先生に投げ渡すと、プルプルと握り潰す拳をする束の方へと振り向いた。
『満足したか? お前が言っていた屑機が勝っちまったぞ?』
「何でよ、何で!! あたしが作った機体は今までの中で最高作品だったんだよ!! どうして、そんな屑機体がぁ!!」
束は納得がいかなかった。
箒が武士道精神で馬鹿正直に真正面から仕掛けてきたのも敗因の一つかもしれないが、それだけではない。
一夏たちが乗るISは既に完成されたISであったからだ。
ISの自己進化の最終到達地点に既に到達しており、束が作るISなど足元に及ばない領域へと来てしまっていた。
『知るかそんなの。箒は負けた、そんで俺が勝った。ただそれだけだ』
「っ……」
束はそんな一夏を睨み付けるが、無意味だった。
一夏の眼には束など、すでに興味などなかったのだ。
『用がないなら、さっそとその塵を持って帰りな』
そう言って一夏は束にある物を投げ渡す。
束が受け取ったのは、ボロボロになった二つの鈴が着いた赤い腕輪だった。
それは、《紅椿》の待機状態であり、先程回収した物だ。
「いっくんはきっと後悔する。自分が犯した罪に」
『そうかい。だが、そうだろうと俺は何も後悔はしない』
もう既に一夏は罪を犯している。
この手が赤く染まっていようと、一夏は突き進む覚悟があの日からできていた。
「…………」
束は無言のまま、一夏たちの前から立ち去った。