あれから十年―――私たちの平和な日々が崩れた。
篠ノ之束が亡国機業と手を組み、第三次世界大戦を起こしたのだ。
ISが使える者は戦場に出され、その殆どの者が散った。
「今日も行くの?」
もちろん一夏もその一人だ。
臨海学校の時から一夏はこうなる事は分かっていた。
ISの生みの親である篠ノ之束を怒らせ、勝ってしまったことにより、より過激になってしまったことを。
『まぁな』
臨海学校の出来事以来、箒はすっかり大人しくなった。
今までライバル……または、同等だと思っていた彼女はあの日……一夏によって打ち砕かれてしまったのだ。
一夏にとって箒はライバルなんかではなく、“格下”でしかなかった。
それをあの日、ハッキリさせた。
「…………」
昔のような仲に戻ることは出来なくなってしまったかもしれない。
けれど、それは一夏も同じだった。
簪を助けたあの日から、俺の道は大きく変わってしまった。
『心配するな。さっさと終わらせてくるよ』
一夏は朝食のパンを口に放り込み、食事を終わらせる。
そして、屋上へと簪ともに上った。
「おはようございます。兄さま」
「隊長~」
「「みんな、織斑隊長が来たよ!」」
屋上には12人程の女子たちが集まっていた。
そして、彼女らの首元にはタグが下げられおり、それぞれにアルファベットと数字が刻まれていた。そう、彼女らは全員が黄昏種だったのだ。
一夏と簪は世界大戦が始まると同時に世界中に散らばった黄昏種を保護し回っていた。
その中で戦う気のある者だけに簪はISを与えたのだ。
『上から出動命令があった。これから、その場所に向かう』
集まった女子たちは整列し、一夏の話を聞く。
「どちらに?」
『首都だ』
マドカの質問に一夏はニャりと笑いながら答えた。
そして、全員がそれを聞くと、腰に下げた剣に手をかける。
「総員、抜刀!」
マドカの指示に、全員が抜刀した。
『――降臨せよ、為政者の血を継ぎし王族の竜。百雷を纏いて天を舞え、《リンドヴルム》』
「――侵食せよ、凶兆の化身たる鏖殺の蛇竜。まつろわぬ神の威を振るえ、《夜刀ノ神》」
「――目覚めろ、開闢の祖。一個にて軍を成す神々の王竜よ、《ティアマト》」
「――転生せよ。財貨に囚われし災いの巨竜。遍く欲望の対価となれ、《ファフニール》」
飛翔型のISの展開が終わると、陸戦型を乗せ、何時でも出られる準備に入る。
「一夏くん!」
簪はこの戦争には参加していない。
ISは政府に返却し、日本代表候補生も捨ててしまった。
一夏の傍にいるために全てを捨てて、この場に立ったのだ。
「いってらっしゃい」
『あぁ。行って来る』
そう言って一夏は簪の唇を合わせるように自分の唇を重ねた。
『行くぞ!』
一夏の掛け声と同時に全員が飛び立つ。
その後ろ姿を簪は見えなくなるまで見守った。
「必ず帰って来て……」
空は雲一つなく、簪の髪色と同じ青空が広がっていた。
Fin