「寒い……」
二月の真ん中、一夏は中学三年。受験の真っただ中。
「なんで一番近い高校の、その受験のために……」
昨年起きたカンニング事件のせいで各学校が入試会場を二日前に通知することになり、一夏は四駅先まで来ていた。
そしてその一夏の隣には簪がいた。
簪の従者になった一夏は本来ならこんなことはしなくても良かったが、受験料など既に払い終えていた為、仕方なく受けることになったのだ。
耳が聞こえない一夏の為に簪が付添に来ており、超寒い中、愚痴る。
『大丈夫か?』
『うん。大丈夫だよ』
一夏と簪は繋いだ手を離さないように握り、試験会場に入る。
◇
『……なあ』
『うん……そうだね』
中学三年になって迷子……になった。
いくら何でも分かりにくい構造をしたこの会場に一夏と簪は迷い、案内図すら見つからないのだ。
『次に見つけたドアで決めよう』
そう言って一夏は目の前のドアを開ける。
「あー、君、受験生だよね。はい、向こうで着替えて。時間押してるから急いでね」
部屋に入った途端、女性教師に言われる。どうやら相当忙しかったのか、女性教師は一夏の顔も見ずに指示だけを出して出て行ってしまった。
『じゃあ、簪は待っててくれ』
『うん。頑張ってね』
簪にそう伝え、一夏は奥へと進む。
そして、カーテンを開けると、奇妙な物体が鎮座していた。
何と言うか、『お城に飾ってあるような中世の鎧』がだ。しかも、忠誠を誓う騎士のように跪いている。
厳密には細部が甲冑とは違う。たぶん人によっては鎧という印象は受けないだろう。そして、一夏はそれが何なのか知っていた。
―――これは『IS』だ。
正式名称は『インフィニット・ストラトス』。宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。
しかし『
しかし、この『IS』には致命的な欠点があった。そのことから一夏にとっては何の意味もなかった。
「(男には使えないんだよな……これ)」
そう、『IS』は女にしか使えない。女以外には、反応しないのだ。
だから、今目の前にある物はガラクタ当然と同じだ。―――そう思って、触れた。
「!?」
キンッと金属音の音が頭に響く。
それが一夏に頭痛となって襲う。
「何!? ってなんで男がいるの!?」
一夏が倒れる音に気付いた女性教師が中を覗くと頭を抑える一夏を見つけたのだ。
そして、同時にあり得ない光景を目にする。
「嘘でしょ……なんで」
「一夏どうしたの!?」
中が慌ただしくなったことに気付いた簪が中に入って、倒れる一夏を見つけて女性教師を見る。
しかし、女性教師は一夏ではなく、奥にある方に目を奪われていた。
そして、簪もそれを見て、言葉を失う。
「ISが起動したの……」
女性が溢した言葉は世界を揺るがす一言だった。