VANISHING POINT~もう1つのBECKの物語~ 作:JhonnyWolf
~Kは脱退後言われた様にアルコール中毒でもなければアリサとそういう関係でもなかった
「関係者」ともっともらしい事を書かれてたりもするが、私以上に彼等の近くにいた「関係者」は
居ないし、そういった立場からその話は否定します
Kは音楽に対しては誰よりも誠実であった・・・いえ「音楽にだけ誠実」だった・・・
それは突然一方的な脱退をしたのにも関わらずリイヤが新しいバンドに参加表明している
事でわかるだろう~
私が最初にそう思ったのは練習スタジオでの事だった
「またですか?練習熱心なのも良いですけど少しは力抜いて下さい」
Badは比較的練習時間の多いバンドだった、1stアルバムの作曲とデビューライヴや
東京・名古屋・大阪の3都市ツアーが決まっていたからだろうか、週の半分は練習に
明け暮れていた
特にKの練習量は群を抜いていた、バンド練習前に必ず個人練習を数時間入れていた
「バンドって・・・音ってウソ吐けないんだよ、やらなきゃ「やらないなり」の音しか
出せないし・・・」
他のメンバー・・・特にユズルとはこの頃からスタンスの違いから不満はあったのかもしれない
普段は何考えているのか判らない人だが、スタジオでは・・・練習中の彼は素敵だとも
思ったし、彼がこのバンドの大黒柱である事は実感できた
「やっぱ歌が少し浮ついてるな・・・アリサ、もっと周囲に合わせる感じでもう1回行こう」
曲がある程度煮詰まると練習を録音して演奏後メンバーで聴いて、直すポイントを共有して
もう一度・・・Badの練習はこの頃はそれの繰り返しだった
私はスタジオの隅で邪魔にならない様に見学していたが、その「何かが生まれる場所」に
居る熱い感覚が好きだった
「お腹すいたぁー・・・ファミレスいきたーい」
練習が終わるといつも決まったファミレスへ行くのがお決まりだった
「今日はパスします」
ユズルは3回に1回位来なかった・・・
アリサと私を先頭に遅れてリイヤとK・・・
この二人はずっと音楽の話ばかりしていた
「名古屋行ったらういろう食べるの、みそかつも食べるの」
アリサは食べ物の話が多かった
この頃はデビューという目標に皆がひたすらに走っていた頃だった
ユズルも学校との両立に前向きであったし、不安の欠片なんてどこにもなかった
レーベルに注目されるデビューアルバム・・・それはKにとってどれだけストレス
だったのだろう・・・今でも彼は黙して語らない・・・
ただ・・・皆「Kに任せておけば大丈夫」そんな曖昧で残酷な事を考えていたと思う