VANISHING POINT~もう1つのBECKの物語~   作:JhonnyWolf

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スタジオ

「相変わらず線が細いな・・・」

 

川久保はリモコンの停止のボタンを押した

 

「Kさ・・・もう少しメンバー信頼しろよ・・・」

 

 

 

~後にBadの最大の特徴になる「豊かな表現性」もこの頃はなかった

 

Kは完全に袋小路にはまり、疲労もピークに差しかかっていた

 

川久保さんも気を遣いKが持ってくるラフスケッチみたいな試し録りを

 

私を含めた3人で聞いていた~

 

 

 

「これ以上追い込んでも何にもならん・・・今日は帰って休め」

 

川久保は煙草を灰皿に押しつけると立ち上がった

 

 

 

「厳しいと思いますか?」

 

Kが帰った後、打ち合わせで残っていた香澄に川久保が言った

 

「あ・・・いえ・・・音楽とか分からないですし・・・」

 

「厳しいですよ、実際・・・今日持ってきた曲だって

 

他のインディーズレーベルなら余裕で合格ラインでしょうね」

 

「それなら・・・」

 

「だからなんですよ・・・」

 

「え?」

 

川久保はメガネを外すと机に置いて目頭を押さえた

 

「ロスピエロスの晋作・・・あいつに似てるんですよ

 

音楽へのアプローチも繊細さも・・・」

 

「ロスピエロスと言うと・・・」

 

「今度Kが参加するバンドがカヴァーするバンドです、蘭も例の

 

「ライ麦畑でつかまえて」を聴いて同じ事を言いました

 

まぁアイツはもっと過激な提案してたけど・・・

 

俺も蘭も繰り返したくないんですよあんな思いは・・・」

 

 

 

 

~その頃のBadは最悪とも言える状態だった、Kに大きなチャンスが

 

舞い込んだ事がバンド内に不協和音をもたらしていた・・・~

 

 

 

「Kが来ないんだったら・・・ってユズルから連絡あった」

 

リィヤがため息と一緒にクラッシュシンバルを手で叩いた

 

「私も帰ろうかな・・・VoとDrだけじゃ練習にならないし・・・」

 

「ちょっと待ってせめてさ・・・」

 

椅子から腰を浮かせたリィヤにアリサが声をかけた

 

「アリサは大丈夫だよ・・・アリサは・・・」

 

「ちょっと待って・・・」

 

「私はユズルの気持ち分かるよ?アリサが言いたい事もね・・・

 

でもやっぱ今は無理だよ・・・ゴメン・・・帰る・・・」

 

リィヤは背中を向けスタジオから出て行った

 

「皆勝手だよ・・・私だって・・・」

 

 

 

~この頃ファンの間で流れていた無責任な噂「Badからユズルが抜ける」という

 

話が少なからず影響していたのだろうし、Kがユズルに直接どうも話していない

 

事がユズルを否応なく追い込んでいたのも現実だった、しかしこの

 

当時のKにメンバーを思いやれる精神的余裕を期待するのはあまりに酷だと言えた

 

まだアリサが気丈に振舞っていたから最悪の事態にはならなかったが、本当に

 

危ない状態だった~

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