VANISHING POINT~もう1つのBECKの物語~ 作:JhonnyWolf
~ロスピエロスのトリビュートアルバムのレコーディングは順調そのものだった
プロの仕事・・・数回合わせて入ったレコーディングなのに
ちゃんとハイレベルで纏まった「音」になっていた
正直バンド内に不協和音を出してまで参加する価値のあるものなのか
疑問に思っていたが、このメンバーの中でも変わらぬスタンスで
受け入れられるKの実力を知れたのは大きかった
しかしそれと同時に言い知れない不安感もあった
「このままここに居させてはいけない」
どこか、そんな不安もあった~
「どうしました?黙り込んで」
帰りの電車でKは香澄に心配そうに声をかけた
「やっぱ凄い人なんだなって・・・」
「蘭さん?」
「Kさんです」
香澄は少し上目遣いにむくれた様に言った
「全然だよ・・・メンバーに追いつこうって武者修行のつもりで
参加してみたけど結果は惨敗だよ」
「そんな事・・・凄かったです・・・どっか遠くへ行っちゃうんじゃないかって・・・
皆もそう思ってます・・・だから・・・」
香澄は言いかけてやめた、ずっと抱えていた不安が現実になってしまいそうで・・・
それに気づいてしまいそうで言葉をかみ殺した
「不安なら口にすれば良い・・・そうしないのは・・・」
香澄はわざとKの言葉を聞かなかった
ストイック過ぎる・・・Kの目には音楽しか写っていなくて
自分も・・・他の誰もその世界には存在していないんだと気づいてしまいそうで
耳を閉じた
「Kの休日?多分家でベースの練習してるんじゃないかな?」
ジャンボパフェをモリモリ食べながらアリサは言った
「本当に音楽漬けだよね・・・」
「それ無くしたらただのダメ人間だからね」
「辛くないの?」
「私が?Kが?」
「両方」
「私はその辺は割り切ったし、Kにはその感覚がそもそも備わってないでしょ
音楽があれば幸せな人なんだからさ」
アリサはスプーンを置いた
「1つ聞いていいかな?」
そう言ったアリサの顔は神妙だった
「香澄さんってKの事好きなの?」
それは考えた事もない質問だった
「そ・・・そんな・・・確かにストイックな所は
嫌いじゃないけど、それにKにはアリサさんが居るじゃない」
「・・・・なら良いけど・・・」
疑問を残した顔をしてアリサは再びスプーンを手にした
~本当は違う・・・私は彼に惹かれ始めていた・・・
だから「失う事」「自分への無関心」を怖いと感じたのだ・・・
分かってしまえば自然と納得できた・・・この後起こる騒動で
私達はそれどころではなくなってしまうのだが・・・~