ヒキニクでも恋はできますか?   作:kue

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分かる人は分かる2次創作から得たキャラの作品です。


第1話  見よ! これがヒキニクの姿だ!

 現在の時刻はお昼の十二時二十五分。授業は十分前に終了し、今頃リア充共は教室でワイワイガヤガヤ楽しそうに喋りながらお昼ご飯を食べているだろうが俺こと相原世高は他の連中とは一味違う。

 便所でおにぎりを食べながらPlayForPotable・通称PFPをして一人楽しく遊んでいるのだ。

 今ハマっているゲームはモンスターを狩りまくるゲーム、モン狩狩だ。ティガバードだのラーレックスだの格好いいモンスターをハンティングするゲームだ。

 このゲームは既にプレイ時間はカンストしているし、回復アイテムや各武器の素材などは全て九十九個所持しているし、武器も同様。

 モンスターの情報が載っている図鑑に関しては最大・最少体長を更新している。

 そんなゲームで何をしているのかといえば防具を一切付けずに丸裸の状態でそれぞれの武器一本をもってモンスターをハンティングしているのだ。

 そしてそのチャレンジはラスボスであるゴジモスキングキリューの最終段階へと到達している。

 このチャレンジが出来れば家に帰って動画撮影をし、動画サイト・Me・tubeに投稿するのだ。これでも一月のお小遣いは余裕で稼げているし、将来の為の貯金すらできるくらいだ。

「そこだ!」

 ゴジモスキングキリューが俺の仕掛けた麻痺罠にはまり、動きが止まった瞬間に双剣の特徴である鬼神化を行い、攻撃力を増大させて叩き込んでいく。

 血しぶきが舞い、最後の一撃を入れるために三角ボタンを押した瞬間、一撃が決まり、画面がモンスターが倒れるさまを映し出し、クエストクリア時に流れる音楽が流れる。

 

「Yes! Yes! 俺来たぁぁぁぁ! やっぱ俺ゲームの天才だわ」

「出たよ。ベンマー」

「何それ」

「便所でゲームしてるゲーマー。略してベンマー」

「ぶはっ! 笑うわそれ」

 

 便所の外で何やら俺のことについて話している連中がいるみたいだがそんなこと俺は気にも留めないのでリザルト画面へと行き、オートセーブが終わるのを待つ。

 ポケットからゲームディスクを入れるパッケージを取り、そこに本体から取り出したディスクを入れ、交換要員として太鼓の神様を入れ、ゲームをスタートさせる。

 スタート画面に行ったのを確認し、一人プレイモードを選択、そこで適当に音楽を選択してゲームを開始させる。

 他の奴らが何と言おうが俺には関係ない。さてとこれからのゲームライフを

 

 

『二年十組 相原世高君。至急生徒会顧問の岩名のところまで来るように』

 

 

 放送で呼び出しを食らうがそんなものなど無視する。今の時間は俺のゲーム時間である。断じて誰かに邪魔されることなどあってはならない。

『もしも無視した場合はこれまでに没収したPFPに入っているメモステのデータを全て削除します』

 おのれ大人どもぉぉぉぉぉ!

 

 

――――☆――――

 

 

「で、何の用ですか。早くPFP返してください」

「ダメに決まってるでしょうが」

 

 ごもっともなことを言われてしまった。というかなんで教師は俺を目の敵のように注意するのかねぇ。授業中だって俺はばれない様に机の下でスマホゲームを画面も見ずにひたすら先生の方を見てやっているというのに。最近やけに俺の机の周りを巡回するようになったのも気に食わん。

 岩名綾香。生徒会執行部顧問にしてこの学園の文化祭で行われる美女コンテストで毎年、熾烈な争いを繰り広げている美女三人衆の一人。年齢は二十五歳。大学院に行っていたためにまだ新人だがその手腕から生徒会執行部顧問を任せられるという異色の経歴を持っている。ちなみに大学在学中に結婚し、まだ子供はいないが来年くらいにはできているかもしれないという予測が今立てられている。

 肩のあたりで切り揃えられた黒髪、整った顔立ち、そしてスタイルの良さ。これが俗に持つべきものを持ち、リア充になったビッチだ。死ねくそビッチ。

 

「PFP折ろうかな」

「マジでごめんなさい」

 心の中を読み取る技術も持っているなんて聞いてないぞ!

「相原君」

「な、なんですか」

「君、パソコン出来るよね?」

 

 よく言われるが俺はできない部類だ。一応、Word・Excel・PowerPointの資格は取っているがプログラミングに関しては全く分からない。

 これをできるというのかいささか疑問だがそう言う質問にはすべてNoと言う事にしている。

 パソコンが出来るという事で人が集まってくるからな。面倒くさい。どいつもこいつもこれやってあれやってと俺を道具のように扱う奴ばかり。

 

「で、できません。パソコンって難しいですよね」

「ふ~ん」

 そう言いながら先生はマウスを動かし、少し操作した後、俺にノートパソコンの画面を見せてくる。

 俺はその画面を見て凍り付いてしまう。その画面には俺がMe・tubeに投稿したゲーム攻略動画が再生されている。

 あ、この動画一千万回再生達成してたんだ。今度メモリアル動画だそうってそんなことを思っている場合じゃない! なんでこの人は俺がこの動画を作った当人であると知っているんだ。ネット上での名前は神世(かみよ)っていうハンドルネームにしてあるし、個人情報の一切を出さない様に細心の注意を払って動画投稿しているし顔出しはしていないし声も出していない! なのに何で突き詰めたんだ?

 

「この人凄いよね。クリア不可能といわれた丸腰装備によるラスボス攻略を発売初日にやり遂げたんだから。ほんと凄いよね~。ねえ、これやったの君だよね?」

「や、や、やっていません。俺、ゲームは好きですけどそんなに廃人じゃありません」

「それにしては君のデータはやりこんでるね。全アイテムは所持数カンスト、武器もカンスト、所持マネーもモンスター討伐回数もカンスト。これを廃人と呼ばずしてなんという」

 この人、俺のPFPのデータ全部盗み見してやがった! プライバシーの侵害だ! というかこの人も結構、ゲーム好きなのね。

「もう一度言うよ。これ君だよね」

「そうでございます」

 これ以上徹底抗戦しても勝ち目がない。

 ここで抗戦するよりも素直に認めてやんわりと物事を進め、消えるべきだ。

 

「で、パソコンが出来るからなんですか?」

「うん。私が生徒会執行部の顧問を知っているのは知ってるよね?」

「まあ」

「実はさ、そこの書記ちゃんが腱鞘炎を起こしちゃって。両手首に」

 

 どれだけ鉛筆走らせたんだよ。このデジタル時代に鉛筆で会議の話しを纏めるっていうのもアナログチックなものを感じさせるけど両手首に腱鞘炎を起こすなんて相当働かせたんだな。ご愁傷様です、書記さん。

 俺の将来の夢は社畜ではなく家の中にいて他人とも会わずに済むようにネットの世界で金を稼ぐことだ。いわゆるヒキニクの王様に俺はなりたいのだ。

 人に会えば面倒くさいことしか起きない。この前だって少しゲームを買いに行こうと一カ月ぶりに学校以外に外出したらヤンキーに絡まれたからな。

 それ以来、ゲームはネット通販で買うようにした。今の時代、何故ニートや引きこもり、オタクが多いかといえば要因の一つとして挙げられるのはネット環境が容易に整えられるこの時代にあるだろう。

 人に会わなくとも物を買える、人に顔をさらさなくてもコミュニケーションが出来るものが大量にあるこの時代はまさに引きこもり・オタク・ニートにとっては天国のような時代なのだ。これが昭和時代だったらもう地獄だろう。

 人と会わなきゃいけない、喋らなきゃいけない、顔を晒さなきゃいけない。これ以上の地獄がどこにあるだろうか。

 

「そこで。君に書記ちゃんの代わりに三カ月ほど書記をやってもらいたいの」

「お断りいたします」

「え~なんで~?」

「え? だって人と会うじゃないですか」

 

 そう言うと思いっきり引いたような表情をされる。

 別に俺は人が嫌いなわけじゃないが人と喋ったりするのが面倒なのでそう言った面倒なことに繋がりかねない人と会うというコマンドは放棄しているのだ。

 

「一か月間だけだから、ね? やることは会議の内容をWordか何かで保存するだけでいいからさ。お願い」

「嫌です」

「はぁ……仕方がないな」

 

 そう言うと先生は引き出しから俺から没収したPFPを取り出すと左右をそれぞれ掴み、そのままあり得ない方向に力を入れていくとPFPからあり得ない音が聞こえてくる。

 あぁぁぁ! 俺の息子ともいえるPFPがー!

 

「や、止めろ! な、何が目的だ!」

「私のお願い聞いて?」

「ぐ、うぅぅ」

 

 どうする? このお願いを聞けば俺は三か月間もの間、他人と離さなきゃいけない上に顔も晒さなきゃいけない。そもそも生徒会の会議はいったいどれくらいの時間で終わるんだ? 三十分程度で終わるはずがないし、長くなれば二時間なんて余裕で行くはずだ。

二時間も学校で時間を消費してしまえば俺の家出のゲーム時間が大幅に削られてしまう! そんなことは断じて許されない!

 だがここで先生のお願いを聞いておかなければ俺のPFPちゃんがあり得ない方向に曲げられてしまう! どうする! どうするのだ俺! 確かに他人からすれば何台も持っているのだから一台くらいいいじゃないかという意見が出てくるかもしれないが俺からすれば全員が俺の息子同然なんだ!

 今、先生が持っている奴は俺が初めてPFPを購入した際に予約者限定版を購入した者にしか引くことができないくじ引きで一発で引き当てた幻の一台なんだ! 壊させるわけにはいかない! 

 だ、だがここで俺が引き受けてしまえば俺は人と話さなければいけなくなる! どうするのだ俺は!

 

「さあ、どうする?」

「……ひ、ひ、引き受けさせてい、いただきます!」

 俺は権力の前に屈するしか他が無かった。

「やった。先生嬉しい!」

 

 年甲斐もなく喜びを全身で表現する先生の姿は少し可愛いと思えた。

 流石は学生結婚できるほどの美人であり、来年にはすでに妊娠しているのではないかという予想が立つ人物だ。

 やることなすことが可愛く見えるが俺はそうはいかんぞ。

 恋愛なんてものはただのバグでしかない。同時にそれに準ずる青春などというものもバクでしかない。

 バグを一掃するにはアップデートでウイルスバスターをグレードアップさせるかもしくは機体設定を初期化すればいい。

 青春なんてものはただのなれ合いであり、その延長線上にある恋愛に至っては互いに依存しあっている麻薬中毒みたいなものだ。

 言ってみれば恋愛などというものは精神障害の一種だ。

 ありもしない幻想を女性に抱き、その幻想から抜け出せないでいる状態が恋愛というものであり、誰が好き好んでやるものか。

 この時代、インターネットというものがあり、ゲームというものが存在する。そこで限りなくリアルな恋愛を体験できるゲームも存在するが俺はそういった類のことは一切やっていない。

 だってそんなものは幻想でしかないのだから。何故、ゲームや漫画にブサイクは存在せずに美人だけが存在しているか知っているか?

 その答えは簡単だ。マンガやゲームは世の男性方の欲望が生み出した幻想の塊なのだから。幻想にブサイクはあってはならない。いわゆるブサイクはバグなのだ。

 だからマンガやゲームにブサイクなヒロインはいない。たとえ登場しても髪型や化粧をすれば美人に大変身するというタイプしかいない。

 素のブサイクはいないのだ。

 現実は違う。でも俺は現実でも幻想でも恋愛をしようとは思わない。

 世の大人共は一人であることをマイナス評価する傾向があるが何故それがいけないのであろうか。昨今、独身で一生を過ごす奴だっているのだから一人で暮らしていてもおかしくはないはずだ。

 なのに友人を作れだの恋人を作れだの青春を満喫しろだのと大人共はうるさい。

 

「じゃあ、放課後生徒会室に来てくれる? あ、迎えに行こうか?」

「結構です。放課後いけばいいんですよね」

「うん、よろしく。あ、あとこれ返すね。もう学校でやっちゃダメだよ? ところで一つだけ聞いていいかな?」

 

 そう言われ、幻の一台であるメタリックのPFPを返却される。生徒会の仕事を手伝うという仕事への報酬なのだろうか。

 

「なんですか?」

「どうしてさっきから先生の目を見ないの?」

 

 先生の言う通り、俺は窓の外を見ながら話している。

 まぁ、これは病気のようなもので人と目が合うと動機が激しくなり、汗が出てきて体調不良を起こすのだ。

 

「ま、まぁこれは病気みたいなものっす。じゃ、放課後」

 PFPを受け取り、職員室から出ると俺は真っ先にスマホゲームを起動させ、今ちょうど来ているゲリラダンジョンに潜入し、経験値を稼ぐ。

 俺はゲームが大好きだ。オタクという部分を体現しているのはほぼゲームといっていいからな。

 スマホゲームはもちろん目ぼしいものは全部ダウンロードして一通りクリアしたら面白ければそれ以降も続けるが面白くなければすぐ削除だ。

 だから俺のスマホの中に入っているアプリのほとんどはゲーム関係であり、それ以外のアプリはあまり入っていない。

 強いて言えば最初から入っているアプリはそのままだけど。

 

「あ、相原君!」

「はい?」

「やっぱり今から生徒会室行こう」

 絶望した。

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