ヒキニクでも恋はできますか?   作:kue

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タイトルはふざけてます。
無かったりもします


第2話 見よ! これが学園の美女二人だ!

 ……この人はいったい何をおっしゃっているのだろうか。俺にさっぱり分からないのだがなんで今行かなきゃならないのだ?

 文句を言う前に先生の腕を掴まれ、引きずられるようにして生徒会室へと向かう事となってしまった。

 生徒会室と聞いて思い出すのは去年の暮れに行われた生徒会長選挙だ。投票率は驚異の九十九パーセントで残りは欠席していた奴ららしい。

 そこまで白熱したにはある理由がある。生徒会長に立候補した二人の女子生徒が学園の男子どもの高嶺の花となっている超美少女なのだ。

 まず一人は選抜特進コースといううちの学校の中で頭がよく、国立受験を視野に入れている連中を集めたクラスに在籍している佐藤奏。

 ちなみにうちの学校にはコースがいくつかあり、一番上がさっき言った上位レベルの国立受験を視野に入れている連中を集めた選抜特進コース。

 上位ではなく中堅クラスの国立受験を視野に入れている連中が集められた特進文系・理数コース。

 私学に進学を考えている奴らが在籍する特進コース。そして卒業後は就職などを考えている進学コース。

 その佐藤奏の容姿は金髪にミニスカ、第二ボタンまで外してネックレスが見えているという今時の女子高生みたいな恰好なのだが外見で判断してはいけない。

 去年の学年末テストでは全教科九十八点という高得点をたたき出した秀才であり、しかも親父さんが大企業の社長さんらしい。

 

 周囲に男子生徒を侍らせ、男の告白は一度は受け入れるが一週間で振られた者や一日、さらに言えばその数分後に振られた奴がいるという伝説があるほどの自他ともに認める学園の女子生徒の頂点に立つ女王様。

 

 そしてもう一人は同じく選抜特進コースに在籍している水原沙也加。佐藤奏を抑えて堂々の学年トップに君臨する最強の女子。

 その風貌は佐藤奏とは正反対の真面目スタイルを通しており、スカートは膝丈、ボタンは第一ボタンまで留め、靴下も学校指定の物という真面目の怪物。

 佐藤奏を不真面目の女王様というならば水原沙也加は真面目の女王様だ。

 その学校の二人の高嶺の花がぶつかり合った生徒会長選挙ではチャライ男子や女子は佐藤奏派閥につき、真面目で隠キャラと呼ばれている連中は水原沙也加派閥につき、それはもう熾烈な応援合戦が繰り広げられたらしい。

 

 なかには暴力沙汰を起こした生徒もいたらしく、生徒指導室略して生指の前には長蛇の列が出来た。

 結局、得票率は佐藤奏が五十四パーセント、水原沙也加が五十五パーセントだったので生徒会長は水原沙也加が選ばれた。

 それ以来、学校の校則はさらに厳しくなり、染髪はどこの高校もそうだけどワックスは駄目、ネックレス類もダメ、そして一カ月に一回の生活点検という名の頭髪検査が新しく制定された。

 検査基準は男子は眉毛にかかってはいけない、耳は出す、襟足に髪がかかってはいけない。女子は化粧類を確認されるというまさに真面目女王様が考えそうな基準。

 勿論そんなこと佐藤奏を含むチャライ系一派が許すはずもなく抵抗の表れとして染髪、ネックレス・イヤリングなどの装飾品、服装などを乱している。

 教師たちは生徒たちの自主的な自治活動が出来てよろしいという事で大方のことは見逃している。

ちなみに俺は投票していない。選挙の日、俺は普通にゲームのランキングイベントがあったから学校を休んだからな。

 

 

 そのイベントで一位を取れば一位限定の装備が手に入るから俺は夜通しランキングイベントに精を出し、絶対に他の奴らが届くはずのない点数を叩きだした。

 その時の奴らの反応の面白さといえば凄まじかった。チートだの死ねだのゲームやる資格ないだのと何様だと言いたくなるほどの罵詈雑言をチャットで送られてきた。

 悪いが俺はチートなどしていない。そもそもチートしている奴に普通に勝つほどの俺の実力をもってすれば余裕のことだ。

 なのに連中はそれを認めようとしない。いや認めたくないんだ。現実世界では何もできない自分が唯一、威張れるのがゲームの世界。そう考えているような奴らが集まるコミュニティーでは俺のような凄腕プレイヤーは潰される傾向にある。

 まぁ、俺の場合はそれら全てを弾き飛ばしてきたわけだが。

 腕を引っ張られながらエレベーターに乗り込み、最上階である七階を目指してエレベーターがまっすぐ進んでいく。

 

「君そんなにゲームが好き?」

「大好きです」

 

 そう言いながら俺はスマホゲームで経験値が大量に手に入るゲリラダンジョンに潜入し、ザックザックと経験値を稼いでいる。

 俺のモンスター育成計画において毎日のゲリラダンジョン潜入は必須事項だからな。

 

「恋人とか作る気ないの? ほら、うちの学校って可愛い子多いでしょ?」

「そうっすね。恋愛なんて言うものはただのバグです。精神病です」

「そこまで言い切るんだ」

 

 何も俺は経験したことがない状態でこんなことを言っているのではない。一度、恋愛関係で手痛いしっぺ返しを食らったがために恋愛を精神病、バグと称しているのだ。

 その日、俺は俺に対して初期化を行った。人生二度目のな。それ以来、俺は定期的な点検にも引っかからない程、健康体になったわけだ。

 

「学生の内だけだよ? 恋愛とか自由にできるのは」

「ほら。要するに先生だって他の大人と同じですよ。学生だから、学生のうちに……要するに誰かと仲良くしろってことを強要してるじゃないっすか」

「強要じゃないよ~。大人になると仕事とか他の人のご機嫌取りとかで忙しくなってプライベートになかなか時間を割けないんだよ~」

「大丈夫っす。俺、将来の夢はニートになってネットで金稼ぎます」

「そんなにまっすぐ言われると何も言えないわ」

 

 呆れている様子でもなくただ単に純粋に驚いた様子を見せている先生を裏目に俺はただひたすらゲームをする。

 エレベーターが開き、生徒会室がある奥へと向かっていく。

 ニートが悪いと社会は印象操作するが俺はニートには二通りがあると考えている。

 一つは世間一般に流布している親のすねをかじり、何年たっても会社に就職せずにバイトすらしていないいわば収入ゼロのニート。

 そしてもう一つは俺が目指している会社には就職せずに家に居ながら金を稼ぐというニートだ。俺はこれを収入アリのニートと考えている。

 会社に就職して社会のために奉仕するというのは大人たちが形成してきた枠組みの中での常識行動だ。

 俺はただ単にその枠組みの中での常識行動を嫌い、枠組みの中にはない新しい行動をしているだけだ。人はそれをいいように言えばチャレンジというが大人共は悪く言い、大人に従わない悪い子としか言わない。

 俺からすれば大人の常識に何故、付き合わなければならないのかといいたいのだ。

 確かに俺もあと数年もすれば成人し、大人と呼ばれることになるだろうが俺は昔ながらの古びた大人にはなりたくない。

 まぁ、こんなことを言っておきながら要するに人に会いたくない、喋りたくない、顔を晒したくないというまさにニートの鏡のようなことを言っているだけだ。笑うわ。

 まぁ、両親も妹も兄貴も俺のことを存在しない奴と扱ってくれているおかげで人目を気にせずにゲームできてるからありがたいけどな。

 家族とさえ目を合わせて会話したらさっきの症状が出るからな。不思議なことにゲームのキャラと目が合っても症状は出ない。不思議なものだ。

 そう言えばこの前、妹が彼氏らしきイケメンを連れてきたときに隣の部屋、誰かいるのって言われた時の慌て様は凄かったな。

 その時、上の兄貴は彼女と旅行に行っていたから兄貴というカードはきれないし、両親は普通に仕事だったからな。壁に聞き耳を立てて盗み聞きしていたらあいつがきったカードはなんとテレビつけっぱなしだったというカード。彼氏もそれに納得したのか笑っていたが俺の部屋に入ってきた妹の表情は悪魔だった。

 

『音立てないでよ! あんたキモイんだから知られたくないの! ていうか出てろって言ったよね!? なんでいるの!?』

 

 その質問に俺がゲームのイベントがたまたまお前の彼氏が来る時間に開催されるからといえばブチギレたのか俺に向かってスリッパを投げつけてきた。

 思わず爆笑したね。俺はテレビか! ってな。それほどまでに俺という存在は妹にとってはキモく、そして知られたくない存在らしい。

 それに比べて兄貴は賢い。滅多に家に彼女を連れてこないからな。一度、兄貴の部屋に忍び込んでスマホのメールを盗み見してやるとどうやらうちの母親は在宅介護でお爺ちゃんにつきっきりで忙しいから、という理由にしているらしい。

 それと何故、兄貴のスマホのロックが分かったかといえば兄貴は物覚えが悪い。特に数字に関しては最悪的なまでにな。

 だから兄貴は初期設定から一切パスワードを変えていないし、LINEなどのSNSにパスワードすらかけていないからタップするだけで開ける。

 

「ここね。君の仕事は三カ月の間、会議などで議事録を作ったり、会議内容をWordなんかに保存して私に提出すること。あと会長が言う事のお手伝いとかね」

「うっす……ところで帰れる時間っていつくらいなんですか?」

「ん~。会長によるかな。じゃ、頑張ってね」

 

 そう言い、先生がエレベーターに乗ったのを確認し、俺はすぐさまその場から離れようとするがガラガラっと生徒会室の扉が開き、最悪なことに会長らしき黒髪の女子生徒と目が合ってしまう。

 そして訪れる俺の症状。動悸が激しくなり、全身から汗が噴き出す。

 慌てて目を逸らし、どうにかして呼吸を整える。

 

「貴方は?」

「あ、え、えっと……その…………あ、相原です」

「ん? ごめん、聞こえなかった」

 

 グイッと耳を近づけられ、女子特有のシャンプーの匂いがフワッと漂ってきて思わず女子から距離を取り、慌ててポケットから生徒手帳を取り出し、自分の顔写真が貼られている最初のページを見せる。

 

「相原……世高君……それでいったい何の用なの? ここ一応、生徒会室なんだけど」

「あ、え、あの……」

「男のくせにそんなモジモジしないの! 喋る時は相手の目をしっかりと見る!」

「ひぅ! す、すいません!」

「そこまで謝らなくても」

 

 俺の悪い癖その一;大きな声を出されると無条件で頭を下げて謝ってしまう。

 俺の悪い癖その二;相手の目を見て話せないこと。

 そのほかにも俺の悪い癖はあるが語りつくすには一日が必要だろう。

 

「で、本当に何の用なの? あたし忙しいんだけど」

 おいおい、話しかけてきたのはそっちじゃねえかアホ! 俺は引き留めてもないし第一喋りかけてもねえよ……っていえたらどんなに楽だろうか。俺はヘタレだからそんなことは思うだけで口には出さない。

 

「え、えっと……そ、その……書記の」

「書記? あ、もしかして先生が言っていた代わりの子?」

 

 相手に先に言われ、肯定するために首を縦に振る。

 こういう人は好きだ。相手が最後まで言うまでに要件を完璧に理解してくれる人。他人と最小限の会話で相手に用件を話せるからな。

 できればテレパシーの一つでも使えたらいいんだけどそれは人間である以上は無理だ。

 

「そのことなんだけどあれ、もういいよ。せっかく来てくれたのに悪いけど」

「へ?」

「議事録の作成とかあたし一人でもできるから。先生にはあたしから言っておくからもう帰っていいわよ。むしろいられると邪魔っていうか」

 バサッとハッキリ言うんだな。まぁ、俺もそっちのほうが分かりやすくて済む。

「わざわざ用意しなくていいって先生に言ったはずなんだけどな。ごねんね、わざわざ来てもらって」

 

 首をブンブンと左右に振り、気にするなと訴えかける。

 よっしゃー! これで俺のゲーム時間が減ることは無くなった! 今日は少し減ってしまったが致し方ないこととしよう。

 

「じゃ、じゃあ失礼します」

「あ、やっぱりまった」

「は?」

 

 え? 何? 最近、期待させておいてガッカリさせるっていう手法が大人気なの? そんなことされたら俺、あっという間に絶望しちゃって最後の希望を護ってくれる魔法使いさんに助けてもらわないといけなくなっちゃうよ?

 

「やっぱり手伝ってくれる?」

「え~?」

「元々手伝いに来るということで先生と約束したんでしょ? だったら護る!」

 

 そう言われ、腕を掴まれてそのまま生徒会室に押し込まれるように入る。

 開きっぱなしのカーテンが風で膨れ上がっており、そのせいか書類の山が床に散らばっている。

 

「ま、そこに座ってよ」

「は、はぁ」

 

 近くにあったパイプ椅子に座り、会長が用紙を拾いきるのを待っているとふと長机に置かれているノートパソコンが気になり、開けて電源を入れる。

 ……おい、古くないか? 電源いれてスタートのデスクトップの壁紙が草原ってWindows XPじゃねえか。しかもデフォルトだと? ちなみにこのデフォルトの壁紙の草原、実在する場所でカリフォルニア州にあるソノマバレーという場所で撮影されたらしい。ちなみに撮影者は不明のようだ。

 既にXPのサポートは終了しているから一応、インターネットには繋いでいないのはよかった。徐々に危険性が増していくからな。ということはこのパソコンはWordやExcel専用のワープロみたいに使ってるってことか。まぁ、そっちのほうがコスト面で見れば新しいパソコンを買うよりも遥かに安い。まぁ、コストを見るか安全性を取るかは別問題だけど……生徒会なんだから予算で買えばいいのに。備品として通るだろ。

 

「ごめんね~。汚い部屋で」

「い、いえ別に」

 

 会長と軽く会話らしきものをしながらドキュメントを開けるとこれまでの大量の議事録らしきWordで書かれたファイルが保存されている。

 去年からか……という事はこれ、会長の私物か? これらのデータってUSBに保存とかしておいた方が良いんじゃないのか? 俺もゲームの攻略内容をWordで書くけど全部USBの中にしか保存していない。まぁ、理由はないんだけどUSBに入れていたらネットカフェとかでも編集できるし。まぁ、そんなことしないけど。俺のUSBって全部ゲーム関連なんだよな。

 

「さてと」

「っっ!」

「なんで離れるのよ」

「い、いや……その……」

 

 なんで隣に座るんだよー! そこは普通一つ分、いや二つ分は席を離して座るのが常識でしょうがー! え、なに!? 会長は男好きなの!? 誘ってるの!? ごめんなさい俺現実の女子と会話すると死にます!

 自分で言ってて悲しいわ。そう言えば同年代の女子と話したのはいつ以来だ? 確か小学生の時に勇気を振り絞っておはようって挨拶をしようとしたらちょうどその子が友達を見つけて離れていったのをきっかけに俺は嫌われているんだと考えるようになり、一切話すことは無くなったからそれ以来か。いや~やっぱり……リアルの女子と話すと動悸と汗が半端ないな。さっきから汗がタラタラ流れてくるわ。

 

「さて。まず君にやってもらいたいのはこの古いパソコンのデータを全部新しいのに送ってほしいの」

 あ、流石に古すぎるっていう認識はあったのね。

「は、はぁ。で、その…………あ、新しいっていうのは」

「……ねえ、なんでさっきから目を逸らして喋ってるの?」

「病気です。そ、それで俺はその新しいパソコンに送ればいいと」

「うん。じゃ、お願いね」

「…………あ、あの」

「何?」

「え、えっとですね……USBは」

「ゆーえすびー? 何それ」

 

 ……今のこのパソコン全盛期の時代にUSBを知らない人間がいること自体が俺にとっては驚きだわ。今時誰しも一度は利用したことあると思うぞ。仕事上とかでデータの持ち運びに便利だし。

 困ったな。会長がUSBを知らないとなると多分、そのほかの機器も知らないだろうから……まさか手打ち?

 

「そんなのちゃちゃっとキーボードで打ちなさいよ」

「す、すみません!」

「何謝ってんの?」

 

 とりあえずその新しいパソコンの電源を入れ、Wordを開いていつでも打てるようにしておき、古い方のパソコンのドキュメントに保存されているWordファイルの数を数えてみるとざっと半年分。土日祝日も含めて一日一個はあるので単純計算して百八十個もWordファイルが保存されている。

 さらに面倒なのは全てが一つのファイルとして保存されているのでスクロールしても下に着く気がしない。

 マジでパソコンここまで使えない人っているんだな、この時代に。

 

「あ、あ、あの会長」

「なに?」

「そ、その……い、いらない奴とかってないんですか?」

「いらない奴? ん~そうね……確か」

 

 会長は何やらファイルが入れられている棚を開け、確認し始めた。

 ……あれ、チラッとタイトル見えたけど明らかに議事録だよな。紙媒体でちゃんと保存しているのに何でパソコンでも保存してるわけ? ダブル保存? 紙媒体でいいじゃん。

 

「とりあえず土日祝日のはいいわ。それあたしが一人でやった議事録だし。あ、あと参考までにこっちのファイル見ても良いわよ」

「は、はい」

 

 とりあえず、祝日はファイル名からじゃ判断できないから土日の分だけでも新しい方のパソコンに保存しておくか。

 はぁ、なんでUSBも知らない人が生徒会長やってんだか。

 古い方のパソコンにある平日のファイルを開けていき、それを見ながら新しい方で開いたWordに打ち込んでいく。

 はぁ。これがアルバイトなら半分ほど全力だすんだけど時給無し、褒美無しのボランティアという名の奴隷だからな~。

 ボランティアで思い出したがボランティア活動を心の底から楽しんでしている人は純粋に凄いと思う。

 だってボランティアって要するに奴隷みたいなもんだろ? 俺一回中学の頃職業体験で喫茶店に行ったんだがそこの店長がアルバイトを全員休ませて俺ら職業体験組だけを奴隷のように働かせてたからな。まぁ、どこの都道府県も職業体験なんて総合の振り替えとしか見ていないからな。修学旅行も総合、職業体験も総合。総合で二百三十五時間埋めないといけないから学校側はそれらを総合に振り替えて消化しているわけだ。

 兵庫県のとらいヤルウィークというのは職業体験の見本とされるくらいに質のいいものらしいけど他の県の物はそれの劣化版だ。

 そして思ったね。喫茶店の従業員なんか絶対にやらないと。だってそこの店長、休憩中に俺達に三日じゃなくて一週間来てくれたらいいのにって笑いながら言ってたからな。

 それ以来、職業体験のような行事ごとは全部、体調不良で休んでるからな。圧倒的にレポートを出してそれで振り替えた方が楽だ。

 

「へぇ、君キーボード打つの早いね」

「そ、それはどうも」

「まるでイソギンチャクね」

 イソギンチャク? ブラインドタッチしてる人にそんなこと言ったらぶちぎれられるぞ。

「どこまでいった?」

「い、一応会長に就任した初回の議事録から一カ月分は移しました」

「は、早いわね」

 

 まぁ、毎日の様にキーボード打って文字を打ちつづけていればキーボードの位置なんて覚えてしまってキーボードを見ずに文を打てるようになるって。

 朝の六時に起きてから八時十五分までネットやってそれから二十分ゲームやってそこから朝飯を食べて着替えて学校に行く。これが俺の一日の予定だ。

 何故、これで間に合うかというと俺の家から高校までは三分で行ける距離にある。だから一番遅い授業時間まであっても三分後には既に家にいるのだ。

 この為にまあまあ偏差値が高いこの学校に必死こいて勉強して合格したんだ。

 

「やっぱりこの時代、パソコン使えないとダメかしら」

「さ、さぁどうでしょう」

 近いって! なんでこの人は俺の隣に座りながら画面をのぞき込むんですか!? さっきからシャンプーらしき良い匂いがするんですけど! い、いかん。人が近すぎるせいで動悸と汗が……。

「暑いの? エアコン着ける?」

「い、いえ。だ、大丈夫です」

 

 その時、廊下からやけに大きな足音が響いてきた。

 そしてその足音が生徒会室前で止まるとともに凄まじい勢いで扉が開かれ、凄まじい爆音を鳴らしながら壁に激突する。

 ドアのところにいたのは金髪にミニスカ、第二ボタンまで外してネックレスが見えていると今時の女子高生みたいな恰好をした佐藤奏、その人だった。

 その表情は明らかに怒っている。

 な、なんでこんなところにヤンキーどもを束ねる女王が降臨するんだよ~。

 

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