ヒキニクでも恋はできますか?   作:kue

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第5話

 ボランティアという名の奴隷を引き受けてから早一週間が経過したがもう既に古いパソコンへの議事録データの移行は終了しており、今は会議の議事録をWordで作成しているのだがもうかれこれ二十ページ目に突入していて流石の俺でも手首がいたくなってきた。

「だからー! なんであんたはそうやって私達を潰す規則を作ろうとするわけ!?」

「潰そうとなんて考えていないわよ。ちょっとお灸を添えるだけよ」

「お灸を添えるだけならなんで規則違反した奴には奉仕活動をさせる訳!?」

「別に全員にやらせるわけじゃない。酷い規則違反を犯した者のみよ」

 

 もう疲れた。後は録音しておいて後でまとめよう。

 Opodの録音機能を起動させ、二人の非常に熱い議論を録音しつつ、俺はPFPを起動させて昨日ダウンロードしたばかりのアクションRPGゲーム、ジャックマン・TXTを起動する。

 これは俺が小学生の頃に発売された1のPFP移植リメイク作品で全国の猛者とのオンライン通信も可能なのだがストーリーの難易度があまりにも高いという事で未だにバトルチップ、プログラムアドバンスのコンプリートした奴は誰もいない。

 ―――――俺を除いてな。

 こんなもの少し考えれば簡単だ。だいたいRPGゲームのストーリーの大本は既に既出の物が多いのでそれを組み合わせて少し変えてやれば簡単に、発売初日にストーリーをクリアすることなど容易だ。

 ちなみにその様子を上げた声無しの実況動画は早くも五百万再生を突破し、俺のお小遣いとなっている。

 ふん、こんなもの俺からすれば余裕よ。プログラムアドバンスは2バージョン、ホワイトとブラックが必要だが俺はその二つを購入し、同時にプレイしてクリアしたので既にコンプリート済み。

 今はオンライン対戦でランダムの確率でしか出てこないという最強のバトルチップ・ペンタゴンエッジを手に入れるために両手両足を駆使して対戦を重ねている。

 

 ―――――いつなんどきも全力。

 

 これが俺のゲーム道のモットーだ。

 たまに手を抜いて相手を勝たせてあげて喜ばせるとかいう奴がいるが俺からすればそんなものはただ単に自分の実力に絶対的な自信がない奴がすることだ。

 俺みたいに自分の実力に絶大なる自身があればそんな相手に与えられた勝利なんてクソみたいなもの。

 むしろゲーマーにあるまじき行為だ。

 ゲーマーとはいついかなる時でも全力を出し、相手を叩き潰すからこそゲーマーであって余裕ぶっこいてゲームで負けるなどバカだ。

 

 

「私はこんな規則作るの反対よ!」

「じゃあ多数決で決めましょ。相原君」

「は、はい!」

「あんたはこの規則に賛成? 反対? どっち」

 そう言われて手渡された書類を見てみると今さっき二人が言い合っていた議題が書かれていた。

 ふむ。学校の評判を著しく落とすような規則違反を犯した奴には奉仕活動をやらせると……その奉仕活動の例としては周辺のゴミ拾いだったり、学校の校舎内の清掃だったりって主に清掃しかないじゃねえか。

 まぁ、別に奉仕活動をさせることは世の大人たちもやっていることだろうけど流石に高校生でやらせるのはどうかと思うけどねぇ……監獄じゃないんだし。

「で、あんたはどうなのよ。ヒキニク」

「ヒキニクって何よ」

「知らないの? こいつはね、ベンマーっていうあだ名のほかに引きこもり・ニート・オタクの三つの称号を持っていてそれらを合わせたヒキニクっていうあだ名があるのよ」

 おうっふ。まさか俺のヒキニクというあだ名が学校中に広がっていたでござる。

「で、どうなのよ

「え、えっとですね……お、俺としては」

「あんたなんでこっち向かないのよ。キモイんだけど」

「服装乱してるあなたの方がキモイんだけど」

「はぁ!? 今なんて言ったの!?」

 こうして今日も2人の喧嘩は始まってしまう。

 

 

 

―――――☆―――――

 

 

 時刻は午後4時30分。すでに授業は全て終わっており、今俺は部屋でゲームをしながらお菓子を食べて1日の疲れをとっている。

 ヒキニクっていうあだ名は家だけのあだ名だと思っていたんだけどな……ちなみに俺がヒキニクになったのは小学校2年の頃で最初は両親や妹・兄も心配していたんだが2年も経てば誰も心配しなくなり、放置された。

 そしてそのままやってきて家での扱いはキモイ・恥ずかしいとの考えからいない者扱いとなり、婆ちゃんの家にも10何年行ってないし、ご近所さんにも顔は知られていないし、名前も知られていない。

 だからご近所さんは四人家族だという事を知っている人はあまりいない。

 俺には兄と妹がいるがどちらも俺の嫌いなリア充だ。

 まずは妹の名前は相坂一葉。ツインテールに巨乳というスタイル抜群の美少女であることから一カ月に一回は男が変わり、しょっちゅう男を連れてきている。

 以前、彼氏が来るから家から出ていけと言われたんだがゲームのランキングイベントがあったので内緒で家に引きこもっているとドアをけ破って鬼の形相の妹が入ってきてこう言った。

 

 

『出てけって言ったじゃん! なんでいんの!? あんたキモイから知られたくないの!』

 

 

 昔はにい、にいっていって俺と一緒にゲームをしていた妹がこんなにも凶暴な奴になってしまうとはお兄ちゃんは悲しいよ。

 それ以来、妹の中からも俺は無い存在となり、廊下ですれ違っても目すら合わさない。まぁ、俺の分の晩飯を作ってもらえなくなった時点ですでに家族ではなくなったけどな。

 そして長男である相坂和人。現在大学2年生の茶髪イケメン。こちらは一人の女性を愛する主義の男なので高校3年から彼女は変わっていないが一度も家には連れてきていない。

 一回、兄貴のスマホがテーブルの上にあったのでSNSを見てみるとどうやらあの兄貴、母親が祖父ちゃんの在宅介護で忙しいっていう理由で連れてきていないらしい。

 そして家族構成はやはり俺がいない。ま、構わないけどな。どうせ動画投稿で両親二人の給料を合わせても届かないくらいのお小遣いを稼げているし、賃料として電気代は俺が全て出している。

 まぁ、両親はそれすら気づいていないみたいだけどな。昔から両親はあまり、郵便受けを見ない人だったので俺が電気代の支払い領収書を取って支払い請求先を俺の口座に変えてから五年以上たつがそれでもまだ自分たちが支払っていると思っているらしい。

 まぁ、口座から自動引き落としにしているからな。

 ちなみに俺は自室にWi-Fiルーターを設置したり、インターネットを通したりしているがこれもちゃんと俺が料金を支払っているので両親に迷惑はかけていない。

 いわば俺は部屋だけを借りているだけである。

「くぅぅぅ……」

 一旦体を伸ばした後、足でコントローラーを操作しつつ近くに置いてある天然水スパークリングを一気に飲み干し、大きなげっぷをさく裂させる。

 炭酸ジュースは砂糖がいっぱいあるからあまり飲まないようにしているのだ。

 ただでさえ運動しない体なのに砂糖ばっかり取ったらだめだからな。

 さてさて、今さっき上げた動画の反応はどうかな~。

 動画サイトを開き、マイページに行って自分の動画を再生し、コメント欄を見てみると早速ある人物からのコメントが載っていた。

「STKさん……この人、昔から俺の上げる動画の一番最初のコメント者だよな……いったいどんな人なんだろうか……ま、ネット上の関係なんてどうでもいいけど」

 STKさん宛に返信コメントを打ち、再び俺はゲームへと集中した。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――☆―――――――

 

 翌日のお昼休み、俺はいつもの様に便所に入り浸り、そこで昼飯を食いながらPFPをしていた。

 やはりここは良い。他の連中の視線が届かないし、何より大便したくなったらその場で出来るし、小便も同じ理由できるからPFPを手放さずに済み、少しのミスも起こさなくて済む。

 やはりベンマーは素晴らしい! なのに何故、他の連中は気持ち悪がるのやら……ま、他の連中なんてどうでもいいんだけどな!

 と、そんなこと考えているとトイレのドアがノックされる。

「入ってます」

「見つけたわよベンマー!」

「ひぃ!?」

 突然、ドアがこじ開けられ、姿を現したのはあの悪の権化と称されている佐藤奏。

 というかなんで鍵を閉めていたドアを無理やりこじ開けられるんだ?

「な、な、なんでしょうか」

「ちょっと手伝いなさい!」

「は、はい?」

「いいから!」

 そう言われ、手を掴まれた俺はそのまま佐藤奏にどこかへと連れていかれたのであった。

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