ヒキニクでも恋はできますか?   作:kue

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第6話

 佐藤奏に連れてこられた場所は学校でも秀才と呼ばれる奴らが集まる選抜特進コースの教室である2年2組の教室でチラッと中を見てみるとまだ昼休みだというのに全員が勉強している。

 な、なんだこの異様な光景は……誰一人として喋らずに黙々と参考書やってるってどこかの宗教かよ。

 佐藤奏はそのまま教室に入ったかと思えばすぐに後ろの出口から出てきた。

「あ、あ、あのなんで俺を」

「この子は平野愛莉」

「ど、どうも」

「どうも」

 何故に佐藤奏はこんないかにもThe・真面目! みたいな恰好の眼鏡女子を俺に紹介してるんだ? あ、まさか俺に彼女を作らしてくれるっていう……ふっ、そんな幻想あり得ないと既に割り切っているさ。

 所詮、俺はヒキニク(ベンマー)だ。彼女なんてリアルに求める気は一切ない! というかリアルに求めて手痛いしっぺ返しを食らったんだ。

 俺は一生、リアルに幸せは求めないさ。

「生徒会って生徒の為にも働くでしょ」

「ま、まぁそうでしょうね」

「そこでよ! 私達でみんなのお悩み相談をしようと思うんだけど」

「頑張ってください」

 そう言って教室へ帰ろうとしたんだが後ろからガッ! と肩を掴まれて無理やり振り向かされたかと思えば俺の後ろに悪魔が立っていた。

 い、いやだからなんで人を殺さんばかりの憎しみを込めて睨むんですかい? さっきから動機と息切れ、そして汗がやばいんですが。

「や・る・わ・よ・ね?」

「は、は、はいぃぃ!」

 ここで断ったら毎日、ヤンキーに睨まれる未来しか見えない! おのれヤンキーどもぉぉぉぉ!

「素直な奴は好きよ。で、この子の事なんだけど最近、弟が引きこもりになっちゃったらしいのよ」

「はぁ」

「一か月前の事なんですけど弟がいきなりボロボロの姿で帰ってきたんです……それ以来、部屋に閉じこもりっぱなしで理由を聞いても全く答えてくれないんです。ゲームをやっている音は聞こえてるから生きてはいるんですけど鍵も閉めてるし、窓もカーテンを閉めて見えなくしているし」

 甘いな。俺だったらイヤホンもつけて窓は段ボールで完璧にシャットアウトし、周囲の音を完璧にシャットダウンしてからゲームをやるな。

 そうすると誰かに怒られていても気づかないし、聞くことも無い。まぁ、唯一の欠点はゲリラ時間になるとやってくるスマホの着信音が聞こえないこと。

「というわけでこれを解決するわよ」

「えぇ~。そう言うのは当人たちで」

「いいからやるわよ!」

「は、はいぃ!」

 

 

 

 

 

 ――――――☆―――――――

 その日の放課後、生徒会の仕事も終わった俺はそそくさと帰ってやろうとしていたが見事に佐藤奏に見つかってしまい、連行されたうえに生徒会長にまで見つかったので結局、平野愛莉の家に生徒会メンバー全員で行くことになってしまった。

 家は二階建ての一軒家で一階がリビングなどの生活スペース、二階がそれぞれの部屋を割り当てられているらしいが確かに二階の弟さんの部屋は真っ暗で何も見えない。

 大体、ボロボロになって帰ってきて引きこもるようになったって言えば苛められて学校に行くのが嫌になったっていう事しかあり得ない。

 それは当人たちも理解しているだろうが初めてのことでどう対処すればわからないんだろう。

 平野愛莉さんに案内され、弟さんの部屋の前まで案内される。

「蒼汰。お姉ちゃんだけど……ねえ、顔見せてよ」

 呼びかけるがまったく反応は無いどころか中から音すら聞こえない。

「ちょっとごめん」

 そう言いながら水原生徒会長がドアに耳をあてて中の音を探り出すが中々、判別がつかない程音が小さいのか難しい顔を浮かべる。

 そりゃそうだ。引きこもりは外の音をシャットダウンして自分の世界に引きずり込む性質があるからまずカーテンで外からの光をシャットダウンするのはもちろんだけどドアの隙間から様子を見られない様に本などを立てかけて隙間を塞ぎ、そしてイヤホンをして音をシャットダウンする。

 俺ならここまでするね。

「さっきからガチャガチャする音は聞こえてるんだけど」

「退きなさいよ。私があててやるわ」

 ま、佐藤奏が言うようにガチャガチャ音だけで推測はできるが所詮そこまで。だが俺は違う。

 ガチャガチャ音にもいくつか種類があり、RPGなどはあまりガチャガチャ音がならないし、中からドン! と何かにぶつかったような音がすればそれは確率が深く関係しているゲームである可能性が高いし、スティックをグルグル回している音がすればそれはシューティングゲームであることが多い。

 ま、そんなこと誰にも教えないけどな。どうせ俺の話しなんか誰も聞かないさ。さてと、俺はゲリラダンジョンに潜入して経験値を稼ぎつつ、バックマンTXTをやりますかね。

「で、当てれたの? 悪の権化」

「う、うるさいわね。中々聞こえないのよ」

「私、ゲームにはあまり詳しくないから弟が何を買っているのか分からなくて」

 恐らくそれらのゴミなども弟が中で処分しているだろう。それどころか外に出ていない様子だったから家にある古いゲームをしているんだろうけどな。

 さっき玄関見た時に三人分しか靴が出ていなかったから弟が長い間、外に出ていないのは分かりやすい。

 ちなみに俺の場合は既に自分の部屋に靴箱まで用意しているくらいだ。だから玄関の靴箱には俺の靴は存在していない。

「あ、あ、あの」

「はい?」

「ト、トイレ行きたいんですが」

「あのどこ見てるんですか?」

「こ、これは病気みたいなもので……で、トイレは」

「一階に降りて階段のすぐ近くです」

 指示通り、階段を降りると確かにすぐ近くにトイレらしき扉を見つけ、開けてみると正解だった。

 便座に座り、さあ用を足そうとした時にふとトイレに置かれているゴミ箱から袋がはみ出ているのが見え、お店のロゴマークらしきものも若干見えている。

 たしかあのマークは駅前にある中古屋のゲーム屋のものだったはずだ。確かあそこは本当に古いゲームだったら十円とかで買えるようなものを売っている老舗のゲーム屋だ。

 でもなんでトイレなんかに袋が…………もしかして弟がやっているゲームって俺が想像しているようなPF3みたいなものじゃなくてゲームフォーアドバンス、通称GFAか。

 確かあれは弁天堂が出したゲーム機で中々に売れた商品だったはずだ。俺もあれは持っているし、今でもデータを削除して逸り直したりもしている。

 そういやあそこのゲーム屋でもGFAは販売していたな……いや、PFPも販売していたはずだ……。

 少し気は進まないけどゴミ箱から袋を取り出してみると予想通り、袋の中にレシートが入っていた。

 中古のPFPといくつかのゲームを購入したわけか……お? このゲームは確か世界を股にかけてオンライン対戦も可能なワールドオブワールド、通称WOWではないか。

 あ、どこかの有料チャンネルじゃないからな。にしてもこれ、あまりの不人気さに続編は発売どころか制作すら中止された幻のソフトなんだよな。

「ふぅ、スッキリした」

 用を足し終え、弟の部屋の前に戻るとまだ佐藤奏が壁に耳をつけていた。

 いや、諦めようぜ。

「あ、あの」

「もう少し……もう少しで分かりそうなの!」

 いや、PFPだからあまりガチャガチャ音は聞こえないぞ。

「た、多分ですけど弟さんがやっているのはPFPみたいです」

「なんで分かるの?」

「さ、さっき便所のゴミ箱にPFP専用ソフトのゴミが見えたんで」

「PFP……じゃあオンライン対戦でチャットできるじゃない!」

「ひぃ! そ、そうです」

「で、ソフトはなんなの? これでも私、家が金持ちだから色々持ってるわよ」

「WOWです」

 そう言うとお姉さんと会長は全く分からないような表情をしているが佐藤奏は分かったのかは知らないけど驚いた表情を浮かべて俺の方を見てくる。

 ま、まさかWOWのことを知っている奴が俺以外にも近くにいたとは。

「あ、あのあまりの不人気さのために続編が出るような作り方していたけど続編が出なかったって言うあの幻のゲーム!?」

「は、はい」

「へぇ……よし、やるわよ」

「どうやって? 何をやるのかしら」

「ふふん。ここからは悪の権化の出番よ」

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