翌日の放課後、生徒会の仕事を終えた俺達はまたもや平野愛莉さんの家にお邪魔し、何故か弟の部屋の前にPFPを持って待機していた。
ちなみに会長とお姉さんは持っていないのでその場で待機、俺と佐藤奏はPFPを準備して待っているがさっきから佐藤奏の好奇の視線が凄まじくて息切れと動悸が凄まじい。
「あ、あ、あの何か?」
「あんたの持ってるそれってあれよね。初代PFPの先着10名様にだけ引くことを許されたクジの一等賞に用意されているメタリックVerよね!?」
「は、はいぃぃ!」
「凄いわ……幻だと思っていたのに」
さ、さっきからやけに近づいてくるから香水の良い匂いがしてたまらないんですが。
「よし、準備できたわね。じゃ行くわよ」
佐藤奏の指示に従い、俺はオンライン対戦モードを起動し、少し待っていると平野さんの弟らしきプレイヤーが作戦参加画面に表示される。
お姉さん曰く、下の名前をそのまま登録しているので合っているだろう。
そのまま作戦選択画面へと移行し、オンライン対戦専用のステージを選択し、ゲームがスタートすると早速画面に3人のプレイヤーが表示されるが速攻でチャットが開き、一番上に文章が表示される。
『やばっ!? なんでこれ持ってんの!? これってたしかオンライン対戦用ステージで全てSSランク評価を貰わないと貰えない奴じゃん!』
いや、なんで佐藤奏がそんなに興奮して……ってどうやらこっちも反応したみたいだ。
『すげえ! それどうやったんですか!? 俺どうしても最後が越せないんっす!』
どうやらこいつも俺と同じように対面すると喋ることができないが顔を見せないネット上ではやけに饒舌になるというThe・引きこもりな性格をしているようだ。
いや、それよりかはこんな性格に途中でなったって言った方が正しいか。
今回の作戦はステージを攻略しつつ、弟とゲーム内のチャット機能を利用して会話を行い、どうにかして引きこもりになった理由を聞きだす。
まぁ、理由は明白だけどな。ちなみに役割は佐藤奏が弟への交渉、俺がステージのクリアだ。
本来ならこんなことのためにクリア時間を長くするのは嫌なんだが致し方ない事情が今回はあるので嫌々ながらもそれを受け入れ、ボスを速攻で倒しに行くところをあえて遅く行くことにする。
『今、私たち貴方の部屋の前にいるのよ。貴方のお姉さんに相談を受けてさ。なんかあったの?』
佐藤奏のチャットに少しの間、無反応だったけど数分したころにようやく返事が返ってきた。
『……別に何もないし、あんたに関係ないし』
まあ、そらそうだわな。それは俺も賛成だ。ただ今回ばかりは事情が事情だ。あんたには姉貴というあんたを心配してくれる存在がいる。
そんな存在に俺達に対して相談が寄せられた。まぁ、俺の場合は巻き込まれた形だけど。
『そりゃ私だってあんたの事なんてどうでもいいわよ。でも私の友達からの相談だから断れないし、断りたくない。私は自分の友達が悩んでいるのを放っておけないし』
『何もない』
『嘘ばっかり。あんた、イジメられたんでしょ? もしくは調子に乗っているところをぼこられたか』
ドストレートの指摘にチャットはそれ以降、メッセージが来ず、ステージのボスのHPもすでに半分以上を削ってしまった。
残り時間的にはあと5分。
『別に両親に相談しろとは言わないわよ。私だって色々やってきたけど父さんとかには相談した記憶ないし』
色々って何をやってきたのか是非とも教えてほしいがそれを知るとなんだか脅されそうで怖いから聞かないでおこう。でも言っていることは理解できる。
俺も小学校で一度、出る杭を打たれるかのようにボコボコにされて以来、こんな性格になり、両親もいない者扱いに至るまでになったからな。
『でもさ、姉貴には相談しなさいよ。何も出来ないって思ってるけど実は弟の為だったら可能な限り何でもする。それが姉貴ってもんよ』
そうかねぇ? 俺がゲーム買ってきてくれって言ったらキモイ、死ね、消えろの3連発を食らわされたことがあるけどなぁ。
ま、俺の場合は特別という事で片付けておきますか。
と、そんなことを考えていると家の外からバイクのエンジン音が響いてきて近くで止まり、何回も連続でインターホンが鳴らされる。
「あ、何よ大事な時に」
佐藤奏と一緒に窓から下を見てみるとそれはもうThe・ヤンキー! みたいな恰好をした怖いお兄さん方が家の前に集まっていた。
しかも何故か明らかに中学生の格好なのにバイクを乗っているというね。
でも大体分かった。この弟君はあいつらにやられたんだろう。だから引きこもった。
「警察呼びましょう」
「はぁ? そんなことしなくてもいいわよ」
「……なるほど。悪には悪をということね」
「そう言う事。あ、もしもし?。うん、私だけどさ」
何やら結末が簡単に想像できる気がするんだけど……警察沙汰にならなきゃいいけど。
―――――☆――――――――
約五分後、平野さんの家の前はすさまじいことになっていた。
まずヤンキー崩れの中学生が縮こまっているところを本物のヤンキーさん達が怖い顔をしながら何十人で周囲を囲み、時には怒声や罵声、時にはバットを地面に叩き付けるという荒業で中学生を捲し上げていく。
「良い!? もしも今度個の家の奴になんかやったら……どうなるか……分かってるわよね」
「は、はい」
「聞こえないんだけど」
佐藤奏がそう言うとピアスをバリバリつけている金髪の怖いお兄さんがバットを地面に叩き付けて脅すと中学生たちはびくっと全身を震わせ、俺達にも聞こえるくらいの大きな声で返事をするとフラフラと覚束ない足取りで帰っていくがそのお見送りとして怖いお兄さんたちが周囲についていき、消えていった。
「いや~まさか姐さんのお友達の弟さんだったなんて。すみませんした! これからはきっちり俺達が目配せしておきますんで安心してください!」
「ありがとね。じゃ、また」
「うっす!」
そう言い、その金髪にピアスをバリバリ開けている怖いお兄さんたちは自転車を一人一台に乗りながらこきこきと広がらずに横一列に並んで道の端の方を走っていった。
姐さんてこの人まさか、ヤクザの娘?
「ま、これでとりあえずは安心よ」
「ありがと、奏ちゃん」
「良いのよ別に。友達の弟がイジメられたなんて聞いたら我慢できなかったし」
佐藤奏と平野愛莉さんが喋っているのを俺と生徒会長は遠巻きに見ている。
……これって俺達出番ないどころかいる意味なかったよな。まぁ、俺としてはレアアイテムが落ちたから結果オーライなんだけど会長は骨折り損のくたびれ儲けだし。
「……もしかしたら貴方の考えは当たってるかもね」
「お、お、俺のですか?」
「ほら……悪の権化を武器に仕えるじゃない」
……それはある意味ヤバい方向にあたっているかもしれないですね。
―――――☆―――――
「だーかーらー! なんであんたはいつもそうやって私たちを潰す規則を作るのよ!」
「貴方達が近隣の方々に迷惑をかけるからでしょうが!」
かれこれ叫び合う剣が始まって一時間が経過するが俺もう録音も何もかも諦めてゲームに集中している。
さっき会議が始まったのに開始五分でぶつかり合い、罵り合い・罵倒し合いの連続で一向に会議は進まず、最初の議題すら廃案にするのかそのまま通すのかでもめにもめている。
やはり、この二人を合わせたの間違いだったのかもしれない。
「「ヒキニク!」」
「は、はいぃ!」
こうやって二人からも呼ばれるようになっちゃったんだから……ま、どうにかなるだろ。
「ご、ごめんなさいぃぃぃ!」