城下町のダンデライオン~氷の力を持つ王子~   作:ぽんぴん

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第十三話を投稿します。


第十三話「第一回櫻田兄弟年長組会議」

皆さんこんにちは。櫻田茜です。

 

今日は皆さんに聞いてもらいたいことがあります!

最近、弟の氷ちゃんの様子が変なんです!

 

何だか上の空でいることが多くて、ときどきため息なんか吐いたりして……

悪い病気に掛かってしまったんじゃないかって、心配で心配でたまりません。

本人に聞いても、はぐらかされてしまいました……

 

「そういう訳で! 今日は櫻田家の年長組に集まってもらいました!」

 

「何がそういう訳なんだ? あとこんな所で大声を出すな。周りの迷惑になるだろ?」

 

「ごめんなさい修ちゃん……」

 

ゴールデンウィークの連休が終わったばかりの五月初旬の平日。

学校が終わった後の放課後、私は氷ちゃんのことを相談するため、葵お姉ちゃん、修ちゃん、奏ちゃん、岬、遥に喫茶店に集まってもらいました。

 

「で、相談したいことって何なの? 私、選挙活動で忙しいんだけど」

 

「私だって分身を学校に置いてきてるんだから、早く始めてよー」

 

「ごめんなさい、奏ちゃん、岬。あのね、相談したいことって、氷ちゃんの事なんだ」

 

「氷くんの事?」

 

「うん、氷ちゃん、最近おかしくない?」

 

「そういえば、ボーっとしてること多いよねー」

 

「そうかと思うと、ときどきため息を吐いてたりするな」

 

岬と修ちゃんが相槌を打ちます。

やっぱり他の人から見てもそうなんだ……

 

「ももも、もしかして悪い病気なんじゃないかな!?」

 

「茜姉さん、ちょっと心配し過ぎ。体調が悪ければ母さんに言って、病院で診てもらってると思うよ」

 

「でもっ、でも遥ぁー!」

 

興奮した私は遥の肩を掴んで激しく揺さぶります。

 

「ちょっ、姉さん、やめ――」

 

「ちょっと茜!? 落ち着いて!?」

 

「あか姉、遥が死んじゃう!」

 

私は葵お姉ちゃんと岬に取り押さえられてしまいました。

 

「けほっ、分かったよ姉さん。氷が健康かどうか分かればいいんだね?」

 

そう言うと遥は目を瞑り特殊能力を発動させました。

遥の特殊能力は『確率予知(ロッツオブネクスト)』といい、あらゆる可能性の確率をパーセント形式で予知できます。

 

「氷が病気の可能性は0パーセント。みんなも知ってる通り、僕の特殊能力は正確な予知ではないから絶対とはいえないけど、ここまで数値が低ければ信頼してもいいんじゃないかな」

 

「そっかぁ、病気じゃないんだ……」

 

私は胸を撫で下ろします。

 

「病気じゃないとすると、氷の様子がおかしい理由はいったいなんだ?」

 

「何か悪いことに巻き込まれてなければいいんだけど……」

 

葵お姉ちゃんの言葉に私は背筋が冷たくなりました。

 

「は、遥ぁー!」

 

「はいはい。もう……氷がトラブルに巻き込まれてるかどうか、だね?」

 

遥が再び能力を発動させます。

 

「氷がトラブルに巻き込まれてる可能性も0パーセント、と出たよ」

 

「病気でもない。トラブルでもない。だったら別に心配するほどの事じゃないんじゃないかしら?」

 

「そうだな」

 

「奏ちゃん、修ちゃん、真面目に考えて! みんなも何か思い当たることないの?」

 

「そういえば氷くんって毎週土日になると図書館に行ってるけど、関係あるかな?」

 

「図書館? あいつそんな勉強好きだったか?」

 

「普段の言動を見てると、とてもそうは思えないけどねー」

 

岬の言葉に私も思わず頷いてしまいました。氷ちゃんごめんなさい!

 

「僕は氷が家に帰ってくる前に偶然図書館で会ったことがあるけど、そのときは勉強してなかったよ」

 

「じゃあ、あいつ図書館で何をしてたんだ?」

 

「たしか視聴席のテレビで一人きりで映画を見てたね。タイトルはえっと……グーニーズだったと思う」

 

「それ、俺たちが生まれる前の作品じゃなかったか? ずいぶん渋いセレクトだな」

 

「あはは……」

 

葵お姉ちゃんが苦笑いを浮かべました。

 

「しっかし、さっぱり分からないな。こうなったら本人に直接聞いてみればいいんじゃないか?」

 

「もう聞いたけど、はぐらかされちゃった……」

 

「姉さんじゃなくて、僕から聞いてみようか? それとも氷の友達にでも聞いてみる?」

 

「え、あいつ友達いたのか?」

 

「いくらなんでもひどいよ修ちゃん!」

 

怒った私は修ちゃんに向かって言いました。

そりゃ、氷ちゃんはちょっと変わったところはあるけど、友達くらい居るに決まってます。

 

「す、すまん茜。言い過ぎた」

 

「僕は会ったことはないけど、女の子の友達がいるって、父さんに言っていたらしいよ」

 

「ちょっと待って遥! ため息……ボーっとしてる……女の子……図書館……繋がった!」

 

岬はセーラー服のスカーフを締め直すと、ドヤ顔で呟きました。

 

「岬、なにか分かったの!?」

 

「氷はその友達の女の子に恋してるんだよ! 図書館通いはその子に会うためだったんだよ!」

 

「「「「「な、なんだってー!?」」」」」

 

思わず全員で叫んでしまいました。

私達の様子に、喫茶店にいた他のお客さんたちも何事かとこちらを見ていました。

全員でお客さんたちに頭を下げた後、話を続けます。

 

「しかし、氷が恋なんて意外ね。ゲームしか興味が無いと思ってたけれど」

 

「そんなことないよ奏ちゃん! 氷ちゃんだってお年頃だもん。恋だってするよ!」

 

「そういうあんたは恋したことあるの?」

 

「っ、私!? わわ私はまだだけど……そういう奏ちゃんは恋したことあるの!?」

 

「わ、私の事はどうだっていいでしょ! 今は氷の話をしてるんでしょ!」

 

お互いに顔を赤くしながら不毛なやりとりを行ってしまいました。

そうです、今日は氷ちゃんのために集まってもらっているのです。

 

「氷が恋ねぇ……いったい相手はどんな子なんだろうな?」

 

「図書館デートするくらいだから、きっと勉強好きな大人しい子だって!」

 

「僕は映画好きな明るい子だと思うよ」

 

「うーん、やっぱり私は氷くんにはそういうの早いと思うな……」

 

すっかりもう、私たちの間では氷ちゃんが女の子と図書館デートしているということになってしまいました。

 

「よし、決めた。俺は氷の恋を応援するぞ!」

 

「私も私もー!」

 

「あはは……修くんも岬もノリノリだね」

 

「こういうことはなるべくそっとしておいた方がいいと僕は思うけど……」

 

「まぁ、私はどうでもいいけど」

 

みんなそれぞれが思ったことを言いました。

私は……どうすればいいのでしょうか。まだ迷っています。

氷ちゃんの恋を応援してあげたい気持ちもあります。

でも、それと同じくらい、寂しいような気持ちも湧き上がってきていて、どうしたいのか自分でもよく分かりません。

 

けっきょく、相談会はここで終わりになり、分身ちゃんを迎えに行った岬と遥以外は家に帰りました。




お読み下さり、ありがとうございました。
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