第二十話を投稿します。
体調が戻った僕は、さっそく放課後のダンスレッスンを再開した。
今の僕は自分でも信じられないくらい、やる気に満ちあふれている。
レッスンはやっぱりハードで、練習時間が終わる頃にはヘトヘトになっちゃっうけど、それも何だか心地いい。
最初は嫌々だったのに今では早く放課後にならないかとソワソワするようになってしまった。
別宅に居た頃は運動が大嫌いだったのに何だか不思議な気分。
レッスンだけど、ダンスばっかりやっていて歌の練習がサッパリだったことに気づいてからは、そちらもメニューに追加された。
練習場所になっているスタジオには、葵姉ちゃん、奏姉ちゃん、そして計画を知ってしまった修兄ちゃんが日替わりで来てくれている。
みんな僕の練習を見てアドバイスをしてくれるんだけど、傾向がバラバラで面白い。
葵姉ちゃんは言い方が優しくて、分かりやすい感じ。あとよく誉めてくれるのがうれしい。
奏姉ちゃんはスパルタでビシバシ。
修兄ちゃんは最初は乗り気だったけど、だんだん飽きてきたみたいで、最近はスタジオの隅っこの方で眠そうにしてる。奏姉ちゃんはそんな修兄ちゃんの態度が気に入らないみたい。ときどき修兄ちゃんの当番の日にスタジオに顔を出しては、二人で言い合いを始めたりして困っちゃう。
で、今日はその修兄ちゃんの日なんだけど……
「……」
踊っている僕の様子を、修兄ちゃんが珍しく真剣な顔で見つめていた。
ちなみに今の僕は例のメガネとカツラを身につけている。カツラは以外と重量があって、あると無いとでは身体の動かし方が変わってくる。最初は慣れなかったけど、今はカツラ無しと同じくらい動けるようになってきていた。
「そうか……やっと分かった。おい氷、ちょっといいか」
「どしたの? 修兄ちゃん」
僕はダンスを途中で切り上げて、修兄ちゃんに駆け寄った。
「いままで練習を見ていて、お前に足りないものが分かった」
腕を組みながら深刻そうにつぶやく修兄ちゃん。
ちゃんとしたアドバイスを修兄ちゃんから貰うのは初めてだ。最初の頃に何回か僕の方から感想を聞いてみたんだけど、あまりまともな意見はもらえていなかったのだ。
いったい何だろう? 僕は修兄ちゃんを見上げながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「氷、お前には女らしさが足りない」
「女、らしさ……!?」
僕らの間にズギャーンと稲妻が落ちたような気がした。
「ああ。俺は正直、歌とかダンスのことはよく分からん。だけどこう、なんていうか……格好は女だけど中身は男が踊っているなって、見てて思うんだ」
「なんだってー!?」
僕は男なんだから、そんなの当たり前じゃないかって思うけど、それはまずい。
だって僕は女装してひかりんに接近しなきゃならないわけで、本当は男だってバレるわけにはいかないんだ。というか、バレたら恥ずかしすぎて生きていけないよ!
「どどどどうしよう修兄ちゃん!? 女の子っぽい動きなんて僕分からないよ!」
僕は泣きそうになりながら修兄ちゃんの腕を引っ張った。
修兄ちゃんは少し考えた後、僕を自分の身体から離れさせた。
「ちょっと待ってろ。俺にいい考えがある。この時間だと……きっとあそこか」
そう言うと、修兄ちゃんの姿がスタジオから消える。瞬間移動を使ってどこかへ行ってしまったみたい。
一人残された僕は試しに女性っぽさを意識して歩いてみることにした。
だめだ、サッパリ分からない。
頭の中がこんがらがって、同じ方の手足が同時に出る始末。とつぜん持ち上がった大問題に僕は頭を抱えてうずくまった。
すると、後ろからヒュンという音と、誰かが床に着地した音がした。
修兄ちゃんが瞬間移動で戻って来たらしい。
後ろを振り向いた僕は目を見開いた。そこに立っていたのは修兄ちゃんだけではなかったのだ。
「あれ、ここ……どこ?」
その人は修兄ちゃんに肩を抱かれて、顔を真っ赤にしながら辺りをキョロキョロと見回している。
このあいだ修兄ちゃんに告白をした佐藤花さんだった。
僕と花お姉ちゃんが会うのはあの時以来だ。と言っても僕が花お姉ちゃんを避けてるわけじゃ無くて、ダンスレッスンが忙しいせいで図書館に行く余裕が無くなってしまっただけなんだけど。
今日の花さんは高校のブレザー服を着ていた。放課後に寄り道でもしてたところを修兄ちゃんに連れてこられてきたみたい。あまりにも突然のことで驚いているせいで、僕が居ることには気づいていないようだ。
「おっと、いつまでもすまん佐藤っ!」
ずっと肩を掴んでいたことに気づいた修兄ちゃんが、慌てて花お姉ちゃんから距離をとった。
「あ……う、うん」
離れていく修兄ちゃんを見て、名残惜しそうな花お姉ちゃん。
修兄ちゃんも照れくさそうに視線をそらしながら後頭部を掻いている。
どちらも赤面したまま黙り込んでしまった。
……おえっぷ。この甘酸っぱい空気はなんだろう。あの告白からどうなったのか、僕は全然知らないんだけど、どうやらうまくいっているみたい。おかげで僕は胸焼けしそうです。ごちそうさまです。
「……あっ、そうだ櫻田君? 私、氷君がピンチだって聞いて連れてこられたんじゃ……」
そう言って僕の姿を探す花お姉ちゃん。時間が経って少し落ち着いたみたいで、今度は僕と目があった。
「ハロー、花お姉ちゃん。お久しぶりです」
片手を挙げながら陽気に挨拶をする僕。
「あっ、こんにちは……って、あなた……? ……すみません、どなたでしたっけ?」
「ええええっ!? うっそ!? 僕のこと覚えてないのっ!? ひどいよ花お姉ちゃん!」
あんなに一緒に映画を見た仲だったのに! 別に下心があるわけじゃないけど、それなりに好感度が貯まっていたと思っていた僕にしてみると大ショックだ。
いったいどの分岐でフラグ管理を誤ってしまったのか……
「ご、ごめんなさい! すぐに思い出しますから! ええっと、ええっと……」
賢明に記憶を手繰りながらアタフタする花お姉ちゃん。一休さんのように両手の人差し指を額に当てて考え込み始めた。やばい、年上なのにすごく可愛い。
「ああ、そういえば詳しい事情を説明してなかったような……すまん佐藤、そいつは氷だ」
「えっ、なに言ってるの櫻田君? この子ってどう見ても女の子……」
あっ、そういえば僕は女の子の格好のままだった。
僕はメガネを取り、後頭部にあるカツラの隠しボタンを押した。頭からプシューと煙が出て、カツラが地面に落ちる。これで僕だと分かるはずだ。
「これでどうかな? 花お姉ちゃん」
「え……えええぇぇぇっ!?」
ビックリした花お姉ちゃんの大声がスタジオ内に響き渡った。
◇◆◇◆◇
「えっと、まあそう言ったわけで……」
僕はこれまでのいきさつを花お姉ちゃんに説明した。
まだ頭で整理しきれていないのか、花お姉ちゃんはやや困った顔をしてる。
「ねえねえ修兄ちゃん、どうして花お姉ちゃんを連れてきたの?」
「あー、さっきの問題覚えてるか?」
「僕の動きが女の子っぽくないって話だよね?」
僕が答えると修兄ちゃんは頷いた。
「で、解決方法を考えたんだが……あれこれ頭で考えるより、誰かお手本を連れてきて真似するのが一番確実だろ?」
「それで花お姉ちゃん? でもどうして? 葵姉ちゃんとかじゃダメだったの?」
「えっと、それは……だな」
気まずそうに言いよどむ修兄ちゃん。僕が首を傾げると、やがて決心したように口を開いた。
「……俺が知る限り、佐藤が世界で一番可憐な女性だからだ」
言い終わると、修兄ちゃんは花お姉ちゃんを見ないようにして何度か咳払いをした。
うわあ! なんかとんでもないこと聞いちゃった気がするのは僕だけ!? 質問したこっちまで恥ずかしくなっちゃうよ!
咳払いを続ける修兄ちゃんの頬も紅く染まっているところを見ると、本人も相当照れくさかったみたい。だったら無理して言わなければいいのに……
僕が花お姉ちゃんの方を振り向くと、そっちも大変なことになっていた。
花お姉ちゃんは耳たぶまで真っ赤になりながら口元を両手で押さえている。全身を細かく震わせていて、今にも倒れるんじゃないかって心配になっちゃう。修兄ちゃんに何か言おうとしてようだけど、頭が沸騰して口がまともに動かないみたい。
「佐藤!」
「はっ、はいっ!」
修兄ちゃんが花お姉ちゃんの両肩をガシッと掴んだ。衝撃で花お姉ちゃんの身体がひときわ大きく震えた。
「氷に力を貸してやってくれ! お前が必要なんだ!」
修兄ちゃんが大声で叫んだ。この場の空気を勢いで何とかしようとしてる感がありありだ。
「わっ、分かりましたっ!」
「よしっ、それではさっそく頼む!」
「り、了解ですっ!」
花お姉ちゃんは涙目になりながら、修兄ちゃんに向かって敬礼をする。
こうしてよく分からないテンションのまま、レッスンは再開された。
まずは歩き方ということで、花お姉ちゃんにスタジオ内を歩いてもらっている。花お姉ちゃんはさっきのことを引きずっているようで、やや動きがぎこちない気がした。
僕と修兄ちゃんはその様子を少し離れた場所で見守っている。
「どうだ氷、何か掴めそうか?」
「ううん、まだ全然……」
僕はジーっと花お姉ちゃんを観察する。
「念のため言っとくが、佐藤をエロい目で見たら怒るからな」
「ちょっと! そんなことするわけないでしょ!?」
修兄ちゃんの言葉の暴投に、僕はズッコケそうになる。
まったくもう! こっちは一応マジメにヒントを得ようと頑張ってるのに!
「なんだと? お前、佐藤に魅力が無いっていうのか? よく見て見ろ。内側からにじみ出る素朴オーラ半端ないだろうがっ!」
修兄ちゃんが眉間にしわを寄せながら叫んだ。
「ちょっと!? なんでキレんのさっ!?」
ああもう、修兄ちゃんがどうしたいのか分からなくなってきた。
いきなりキャラが変わった修兄ちゃんに、僕はまた頭を抱えそうになってしまう。
「あのっ、こんな感じでどうだったかな?」
スタジオ内を一周した佐藤さんが、はにかみながら僕たちの元に戻ってくる。
「バッチリだ佐藤!」
修兄ちゃんは佐藤さんの頭をナデナデする。
花お姉ちゃんは嬉しそうに俯きながら、修兄ちゃんにされるがままだ。
うっぷ。二人から漂い始めた甘い空気に、僕はまたゲップが出そうになった。
その後も花お姉ちゃんを交えてレッスンは続いた。
今度は僕も再びメガネとカツラを付けて、花お姉ちゃんと一緒に歩いてみることとなった。
花お姉ちゃんの前で女装するのは恥ずかしかったけど、これもひかりんのためとグッと我慢した。
その結果、少しは女の子っぽい動きが身に付いたかって言われると……ちょっと自信がない。
まあ、そんなにすぐに出来るはずがないということで、花お姉ちゃんはこれからも僕に協力すると言ってくれた。
「そうだ。忘れるところだった。じつはもう一つ問題点があるんだが」
練習時間が終わりに近づいたころ、修兄ちゃんが思い出したように言った。
修兄ちゃんが気になったのは僕の言葉遣いについてだった。
仕草だけではなく、女性らしく喋れるようにならないと意味がないという修兄ちゃんの意見はもっともだと思う。
もし普段のままで話したりしたら、僕の正体があっという間にひかりんにバレちゃうもんね。
「そっちも花お姉ちゃんを参考にするの?」
「本当はそれが一番だが、お前もいっぺんにいくつも覚えるのは大変だろ? だからこういうのはどうだ?」
ヒソヒソと修兄ちゃんが囁いた案に、僕は大きく頷いた。
「なるほど……」
さすがは修兄ちゃんだ。僕のことをよく分かってる。それならすぐに出来そうだ。
内緒話をする僕らを見て、花お姉ちゃんが不思議そうに首を傾げていた。
◇◆◇◆◇
その翌日。今日は奏姉ちゃんが当番の日だ。
いつものように中学校まで迎えに来てくれた奏姉ちゃんの車に乗って、僕たちはダンススタジオへ向かった。
その車内で僕はきのう修兄ちゃんに動きが男っぽいと指摘されたことを奏姉ちゃんに話した。
ただし、花お姉ちゃんに来てもらったことは伏せてある。じつは花お姉ちゃんのことは修兄ちゃんから口止めされているんだ。ちゃんと時期が来たら自分で周りに紹介したいんだって。
「ふうん……修ちゃんもたまにはまともなことを言うのね」
奏姉ちゃんが珍しく感心したように呟いた。
「それじゃ、その成果を楽しみに見せてもらうわよ?」
そう言う奏姉ちゃんの様子はなんだかいつもより嬉しそうだった。
やがてスタジオに着いた僕らはさっそく練習の準備を開始する。僕も更衣室で練習着に着替えて、メガネとカツラを装着した。
更衣室から飛び出した僕は大きな声で叫んだ。
「さあ、奏お姉様! 準備が完了しましたわ! 本日も未熟なワタクシにご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますわ!」
僕がいかにもお嬢様という口調で話しかけると、奏姉ちゃんは盛大にズッコケた。
「お、お姉様!? お怪我はございませんかっ!?」
「ひょ、氷……あんた、その言葉遣いは……?」
ヨロヨロと起き上がる奏姉ちゃん。
「これも修お兄様からのアドバイスですわ。あの、本当にお怪我はございませんか? って、奏姉ちゃん鼻血! 鼻血出てる!?」
奏姉ちゃんの鼻からはポタポタと鼻血が垂れていた。
僕は練習着のポケットに忍ばせておいたティッシュ取り出すと、急いで奏姉ちゃんに手渡した。
奏姉ちゃん大丈夫かなぁ、ビックリして思わず喋り方が元に戻っちゃったよ。
ちなみに奏姉ちゃんに答えたとおり、この口調は修兄ちゃんのアドバイスだ。漫画やゲームに出てくるお姫様キャラの喋り方を真似てみたらどうかと、きのう修兄ちゃんに提案されたんだ。
ギャルゲーとかやっているとこういう感じのキャラが大抵一人は出てくるから、実践するのは簡単だった。
「修ちゃんグッジョブ……じゃなかった、ええっと……そういうことね。やってくれるじゃない、修ちゃん……」
奏姉ちゃんは目を血ばらせながら、なにかブツブツ呟いてる。
なんだかこういう感じの奏姉ちゃんを最近見た気が……って、そうだ! 初めて女装した後で押し倒された時に似てるんだ!
背筋がブルッとした僕は慌てて後ずさる。
「……氷? 悪いけど少し席を外すから、戻るまで一人で練習しててもらえるかしら?」
奏姉ちゃんは鼻血を垂らしたまま、ニッコリとほほ笑んだ。
なぜだか知らないけど、奏姉ちゃんの背中から黒いオーラがハッキリと見える。
身の危険を感じた僕は頷きながら更に距離をとった。
「べ、別にいいけど、なにか用事でも出来たの?」
「ええ……ちょっと修ちゃんを一発ぶん殴りに行ってくるわ」
そう言うと奏姉ちゃんはフラフラとスタジオから出て行った。
僕はそのまま奏姉ちゃんを見送ると、大きく息を吐いた。
た、助かった……また襲われるかと思っちゃったよ。ここで押し倒されちゃったら誰も助けになんて来てくれない。そうなったら、僕が思いもよらないことを奏姉ちゃんにされそうな気がする。
「……あれ? もしかすると今までも……?」
気づかなかっただけで、ものすごくヤバかったんじゃないだろうか。
うっわ!
葵姉ちゃんにお願いして、奏姉ちゃんの日は少しでいいから顔を出してもらうようにしよう。うん、そうしよう。
怖くなった僕は急いでカバンからスマホを取り出すと、さっそく葵姉ちゃんに電話をする。
幸いなことに葵姉ちゃんもまだ家に帰ってなかったみたいで、それからすぐにスタジオに駆け付けてくれた。
何かあったの? と不安そうな葵姉ちゃんに、僕は奏姉ちゃんが出て行った経緯を説明した。
「ああ……えっとね、奏なんだけど……」
何やら思い当たることがあったようで、葵姉ちゃんは苦笑いを浮かべていた。そして、奏姉ちゃんが小さかった頃の様子を僕に教えてくれたんだ。
それは僕が産まれる前の話。
当時幼稚園に通っていた奏姉ちゃんはお姫様に憧れていて、さっきの僕みたいな口調で話していたんだって。
何年かして恥ずかしくなった奏姉ちゃんは今みたいな喋り方になったんだけど、例の口調で話していたことは本人にとって触れられたくない黒歴史になったんだとか。
このことを話題に出すと奏姉ちゃんが怒るから、家族はみんな無かったことにしてたそうだ。
「もうずいぶん前のことだし、修くんもあんまり悪気は無かったんだと思うけど……だから氷くんも、もうその喋り方はやめてあげてね?」
「うん、わかったよ」
「偉いね氷くん。いい子いい子」
葵姉ちゃんは微笑みながら、僕の頭を優しく撫でてくれた。
それから練習を再開したんだけど、いくら待っても奏姉ちゃんは戻ってこなかった。
その代わり葵姉ちゃんが練習の終わりまで付き合ってくれて、僕らは二人で家に帰ったんだ。
その日のサクラダファミリーニュースは修兄ちゃんと奏姉ちゃんのことがトップニュースだった。
能力を使って国中を逃げる修兄ちゃんを奏姉ちゃんが追い回したそうで、その様子がバッチリと撮影されてしまっていたんだ。
騒ぎになってしまったせいで、夕食の前に二人とも父さんにお説教をされていた。
で、鬼ごっこの結果はというと……
「……」
いつもの櫻田家の夕食風景。だけどいつもとちょっと違うのは……みんな口数が少ない。
その理由は不機嫌そうにしている奏姉ちゃんと、頬に大きな張り手の痕を付けた修兄ちゃん。それぞれ眉をしかめながら黙々と箸を動かしてる。
二人のとばっちりを受けないように、兄弟たちはみんな目を逸らしながら食事をしていた。もちろん僕も。
ちなみに言葉遣いの問題だけど、奏姉ちゃんはあの口調を使うことを許してくれた。
本人いわく不本意だけど、他に良い案が見つからなかったんだとか。
そう語る奏姉ちゃんはすごく渋い顔をしていた。
その日の夜。寝る前のちょっとした空き時間。
僕はお姫様口調で喋る練習をすることにした。
奏姉ちゃんが鼻血を出したときに素に戻っちゃったから、少し慣らしておこうと思ったんだ。
以前やったギャルゲーのお姫様キャラのセリフを復唱すること十五分。
瞼が重くなった僕は、練習を切り上げてベッドの中に潜り込んだ。
疲れていた僕はあっという間に眠りに落ちる。
「むにゃむにゃ……やったぁ、ハイスコア更新ですわぁ」
そのとき僕は迂闊にも、部屋のドアを完全に閉めていなかったことに朝起きるまで気づかなかった――
お読み下さり、ありがとうございました。
なんやかんやで時間が取れず、間が空いてしまいました。
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