城下町のダンデライオン~氷の力を持つ王子~   作:ぽんぴん

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切りのよいところまで書けましたので、第三話を投稿します。
引き続き、茜視点になります。


第三話「甘やかす母とキレる次女」

皆さんこんばんは。櫻田家の三女、櫻田茜です。

 

あれから玄関先での抱擁は15分ほど続きました。

最後はいい加減見るに堪えられなくなった葵お姉ちゃん、修ちゃん、奏ちゃんが3人がかりで氷ちゃんを助け出しました。

 

今は家族そろって夕食のテーブルを囲んでいます。

予備の椅子が無かったため、氷ちゃんはお母さんの膝の上に座らされています。

最初は抵抗していた氷ちゃんでしたが、最後は諦めて座ることを受け入れました。

目が若干死んでいるように見えるのは気のせいでしょうか。ときおり「もう中学生なのに……」と呟いています。

お母さんはそんな氷ちゃんには構わず、楽しそうに「あーん♪」とスプーンで料理を氷ちゃんの口に運んでいます……

 

「あつっ」

 

料理が熱かったのか、氷ちゃんが涙目になりながら舌を出しました。

 

「あっ、ごめんね氷? いまふーふーしてあげますからね? ふ~っ、ふ~っ……はい、あーん♪」

 

お母さんはスプーンに乗った料理を丁寧に息で冷ますと、再び氷ちゃんの口元へ運んでいきます。

今度は大丈夫だったようで、氷ちゃんは運ばれた料理を口に含み、咀嚼を始めました。

その様子を見ているだけで胸焼けのような感覚がしてしまい、あまり食事が進みません……周りのみんなも同じようです。

 

「パパ、そろそろママを止めてくれませんか? 輝と栞の教育上よくないと思います」

 

イライラした口調で奏ちゃんが言いました。

私も同感です。

 

「そ、そうだな、奏。えーと、五月さん?」

 

「なーに? 総ちゃん?」

 

お母さんがお父さんに微笑みます。

お母さんの背中から黒いオーラが発生しているように見えるのは気のせいでしょうか……ううん、気のせいじゃない!

 

「私も氷に「あーん」させたいな~、なんて」

 

「違う! そうじゃないでしょパパ!!」

 

お母さんの放つオーラに負けたお父さんに、奏ちゃんが怒りました。

 

「今週の買い物当番は!?」

 

「俺だ」

 

「明日の! 帰り!! テーブルの椅子!!! 絶対! 買ってきて!! 修ちゃん!!!」

 

「お、おう」

 

奏ちゃんの気迫に修ちゃんが押されています。というか、完全に八つ当たりです……

 

「奏姉さんが椅子を生成したらいいんじゃないかな?」

 

「それよ! どうして気づかなかったのかしら」

 

奏ちゃんの特殊能力はヘブンズゲート(物質生成)といい、あらゆる物質を生成することができます。ただし、生成した物質に等しい金額が通帳から引かれていきます。

遥の提案に乗った姉さんは、すぐに能力を使ってみんなと同じ椅子を生成しました。

実は私は椅子を生成する案をもっと前から思いついていたのですが、お母さんの出す無言の圧力に負けて言いだすことができませんでした。

氷ちゃんは奏ちゃんの特殊能力を初めて見たようで、目をまんまるに見開いています。

 

「さ、氷。こっちにいらっしゃい?」

 

奏ちゃんが手招きすると、氷はお母さんの膝から降り、用意された椅子にちょこんと座りました。

葵お姉ちゃんと岬が氷ちゃんの前に料理の乗ったお皿やスプーンなどを手分けして置いていきます。

 

「んも~、せっかく離れてたぶんお世話したかったのに~」

 

お母さんがすごく残念そうな顔をしています。

ゆっくりと目の前の料理を食べ始めた氷ちゃんの様子に、残りの兄弟が安堵の息を漏らします。

氷ちゃんの目にも輝きが戻ってきました。

これでようやく落ち着いて食事ができそうです。

 

それにしても……

こうしてよく見ると、氷ちゃんはまるで女の子みたいに整った顔立ちをしています。

髪の毛が奇麗な水色をしているところ以外は小さいころの奏ちゃんそっくりで、男物の洋服を着ていなければ女の子と思ってしまったかもしれません。

身長も中学生の割には小さく、光と同じくらいしかないように見えます。

 

「そうだ、皆と会うのも久しぶりだし、初めて会う兄弟も居る。改めて自己紹介した方がいいんじゃないか、氷」

 

お父さんが氷ちゃんに言いました。

氷ちゃんはスプーンを置いて頷きます。

 

「えっと……皆さん、櫻田氷、です。今年で中学1年生です。氷を自由に使えます。これからよろしくお願いします」

 

全員を見回してからぺこりと頭を下げる氷ちゃん。

成長した氷ちゃんの声を落ち着いて聞くのは初めてですが、まるで女の子みたいな高い声をしています。

本当に男の子なのか、だんだん私の中で疑わしくなってきました。

 

「なんだぁ氷、元気がないな~、緊張してるのか? 家族の前なんだから緊張しなくてもいいんだぞ?」

 

「ううん、緊張はしてないんだけど、疲れてるっていうか、心の傷が癒えてないっていうか……」

 

言いながら横目でお母さんを見る氷ちゃん。

 

「そ、そうか、じゃあ今度は葵から順番に自己紹介していってくれ」

 

「はい、それじゃ……長女の葵です。高校3年生です。改めてよろしくね、氷くん?」

 

「うん」

 

「ところで氷くん? 私たち、昨日会わなかったかな?」

 

葵お姉ちゃんの口から爆弾発言が投下されました。




お読み下さり、ありがとうございました。

今回の話の中で氷の外見を決めました。
修は男らしい、遥は中性的、輝はヤンチャな感じなので、氷は女の子みたいな外見にしてみました。
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