真剣で私に恋しなさい!S~弓腰少女のマジ恋!~【未編集再投稿】 作:Celtmyth
蘭が秘密基地にて仮住まいを始めて数日が経った。住まわせる事にしたとは言え、やはり個人的な私物も多々あるので一日目はその一時回収と別室を生活スペースにすることとなった。もっとも生活スペースは床のゴミやホコリを片付け。そこにテントを置くと言う異様な光景を作っただけであるが。
ちなみにテントを立てた理由はプライバシーの保護である。
それが一日目で以降はファミリーが二人ひと組で様子を見に来たり外に突き合わせたりした。特に京が川神学園の弓道場に連れて行った日は充実したそうだ。1人の1年生が勝負を吹っかけて負けたそうだが。
「上手くみんなとの付き合いが出来てるみたいだね」
「元々、社交的な感じだったしね」
「大和とは気が合うかもね」
「いや、俺とは方向性が違うよ。俺は貸し借りとかある方だけど彼女は請われる方。あっちのほうが清らかだよ」
「それって自虐で言ってる?」
「無自覚がタチが悪いと思ってるよ」
そして今日は大和とクッキー(第一形態)が様子を見に行く日だ。と言っても2人が彼女を何かに付き合わせるなど、予定としてない。連れ出したり決闘したり外国人美女を紹介してもらうなど、まったくない。と言うかこれ以上は蘭も疲れてしまうだろうという気遣いである。
「で、大和は彼女とどう時間を潰すの?」
「なんでも試作の弓の性能を人目のつかない場所で試したいらしいからそれらしい場所に案内するつもり」
「なるほどなるほど。その時の状況はしっかり記録しないと」
「なんでそこまで」
「ここに来て恋敵だろ。京の為だよ」
「まだその話題は残ってるのかよ……」
「京の為なら僕はストーキング行為すら躊躇わないよ」
「その姿じゃ目立つじゃん」
「ならこの第三形態でやると。頭脳もあって誰にも尻尾を掴ませないよ」
「ほい」
「って尻尾を掴むんじゃない!!」
浮くクッキーの尻尾を掴む大和。ただし本気で引っ張っると地面に叩きつけてしまうのでそこの加減はしっかりとしている。尻尾を掴んでいるが手首から下は体重をかけずに浮かしている。
「その手を放してくれないかな?」
「え~」
「もしこの瞬間、僕が変形すると巻き込まれて怪我をするかものよ」
その危険性を聞いた途端に大和は手を離した。冗談、と思うがクッキーは短気なところもあるので冗談ではすまないと直感した。
「ふぅ、これで変形できるよ」
大和が手を離した直後にクッキーは第一形態に戻った。どうやら手を放して正解だったようだ。大和は自分の判断に感謝した。
「ムッ……!」
その直後、クッキーが直感が走ったと言わんばかりの「ムッ……!」を呟き動きを止める。
「どうしたクッキー?」
大和も足を止め、そして彼女が歩いていた方向とは別の所に顔を向けているのに気づく。誰かいるのか? そんな予想が浮かべつつ大和もその先へ顔を向けた。
そこにいたのは真っ白なワンピース姿でそれには似合わないトランクを持ったツインテール少女。そしてその少女は敵意ある目で大和たち――クッキーを見ていた。
「クッキー、知り合い?」
「あの子は……」
クッキーの様子から心当たりがあるのだと察した。いや、少女を見た瞬間に察するべきだったと思った。彼女の姿は第四形態に似ていた。
「見てましたよ。なんともまぁそれで奉仕ロボを名乗るとは」
「貴女、なぜここに?」
「それは些細な事です。重要な私よりの弱そうだということと、私こそがクッキーだという事」
「えっ、クッキー!?」
「――キャスト、オォンッ!!」
クッキーと言う名に大和が驚く中、視界が光に包まれ思わず腕で顔を覆い隠す。
それから数秒で視界が回復した大和の見たものはワンピースから黒いボディスーツと機械ギミックな装備を身につけた姿。よりクッキーの第四形態に酷似した姿だ。
「クッキー4IS……」
そばにいるクッキーの言葉で彼女も同名という事を知ったが「IS」と言う単語はなんのことなのかはわからない。ただクッキーと彼女は互いのことを知っているということだ。
「さて、あなたはしばらく大人しくしてくださいませ」
そんな時、クッキー4似の少女が大和に向けてネットを放った。突然のことに大和は無抵抗でそのネットに覆われた。
「おわぁ!?」
「大和!!」
ネットを覆われてそのまま転がる大和。なんとか脱出しようとするが動くほど網は絡みついていく。なお脱出が不可能になっていく。
クッキーは大和を助けようとも考えたが背を見せれば、この所業の犯人であるクッキー4ISが何かをしてくる可能性がある。そう判断してまずはクッキー4ISと対峙する。
「なぜこのようなことを。なにが目的なのですか?」
「さっきも言ったとーりです。それ以外はなにも言うことはないのです。ですので――」
クッキーの問いにまともな回答はしなかった彼女は装備したパーツの一部より、ガトリング砲を取り出した。
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!!!」
取り出してすぐに火を吹くガトリング砲。弾丸の雨が容赦なく降りかかる。
「くっ!」
しかしクッキーはその雨から逃れる。戦闘型の第二形態ではないとは言え、今の形態でもある程度の回避運動は出来る。しかしそれはギリギリの回避でもある。
「やめなさい、クッキー4IS!!」
「やめねーですよ。それに先ほどで軌道修正も終わりました。次は外しません」
一度、連射を止めて照準を修正するように角度や向きを変えた。
「クッキー! 第二形態だ!!」
クッキーの危険を見て大和が叫んだ。
クッキーはその砲門が自分の回避運動を超えて命中する軌道にあることを瞬時に見破る。先程まで説得を試みようと考えていたが今の状況は危険。大和の言う通りに戦闘型で銃弾にも耐えられる第二形態になる事を決定付ける。この時点でクッキー4ISとの戦闘は確実になるが、今は仕方がないと諦めた。
「さぁて、一気に――」
「っ! チェンジクッキ――」
二人が攻撃と防御それぞれに行動を実行しようと、した。
「ふぎゃっ!?」
「「え?」」
クッキー4ISから情けない声。そして彼女は前に倒れる。もちろんガトリング砲は不発に終わった。
「なんで……」
「大和! 今助け出します!」
状況がわからない大和だったがクッキーは先に彼の救出を優先した。
クッキーのおかげで抜け出した大和はすぐに倒れるクッキー4ISの様子を見に行った。
「きゅぅ~……」
目を回して気絶している、という認識をしたあとでロボットに気絶はないんじゃないかという疑問を抱いた。
「固まってますね。いわゆる一時的なフリーズ状態ですね」
「そういう表現なんだ」
「はい、ロボットですから。――それと原因はこれのようです」
クッキーが拾って見せたのは1本の矢だった。しかも素人目でもわかる手作り満載の矢。それだけで誰がいたのか大和は察する。すぐに橋の周辺を探その姿を探したが目に見える場所にはいない。
「あれ、いない?」
「いえ、いますよ。上に」
「上?」
先に見つけていたクッキーの言葉に素直に聞いて頭が上に向く。そして見たのは影が素早く落ちてくるものだった。
「うおっ!?」
上にいると思って現在進行中で落ちてくると思っていなかった大和は心臓に悪いくらいにびっくりした。
それを他所に落ちてきた影、蘭はしゃがんだ体制からのったりと直立する。
「ドーモ。 大丈夫でシタカ?」
「うっ、うん」
「おかげさまで」
「そうデスカ。大和ハ捕まってマシタが、大丈夫そうデスネ」
「あはは……」
事実だがなにも出来ずに捕まったことには少し情けないと思っているので蘭の心配はチクリときていた。
その事には気づいていない蘭はまたしゃがんでクッキー4ISの顔を覗き、するとすぐにクッキーの顔と見比べる。わざわざ立って座って確認するほどに。
「……貴女ノ兄弟デスカ?」
「妹ですね。私の後継機にあたるアイデアルサポートシリーズの第4号機です。ちなみに私の変形形態に合わせて108号機まであります」
「デスカ」
「ISってアイデアルサポートの略か。それにしてもよく似てるな」
「後継機ですから」
「シカシどうしマスカ?」
「事情を知るため、九鬼にいるお父様に聞きに行こうかと。もちろんこの子も連れて行きます」
「じゃあ運ぶのを手伝うよ」
「ワタシも付き合いマス。コレデ壊れてイタラ目覚めガ悪いデス」
「大丈夫だと思いますが、どうかよろしくお願いします」
事情は九鬼で聞けると、3人はクッキー4ISを捕縛して向かった。
この時、クッキーはある事実を聞こうとも口にしようともしなかった。
クッキー4ISを射抜いた蘭だったが、それには疑問があった。
距離が不自然? と言う訳でもなく彼女が持っていた弓の張力なら特に問題はない。
蘭とクッキーの位置で結ばれる射線上は橋を吊るワイヤーがあって障害物だらけだったこと? いや京が使う椎名流弓術には”迷い鳩”と言う複雑な軌道を描く技もあるから出来ないわけではない。
いつの間に射った場所にいたこと? ここは自分がセンサーの感度をクッキー4ISに追いつけるまで精度を上げていたから今更だし、観測していない事を疑問には思わない。
ならクッキーはなにを疑問に思っているのか。
(いったいどのような妙技なのでしょうか?)
情報が少ないために答えが出ないクッキーはその疑問を反芻させる。
(どうやってクッキー4ISを捉えたのでしょう? 間違いなく姿が見えない場所から射ったというのに)
それが笹谷の弓術なのか、現時点でその答えはわからなかった。