神次元ゲイムネプテューヌ 渇望のアウトサイダー【完結】   作:ジマリス

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10 リーンボックス

「ええと…シノさん…?」

 

次元移動の騒動も終わり、教会のなかへと戻った一行。

ネプギアはおそるおそるといった感じでアイに近づいてくる。

 

「お、どうしたッスか、ネプギア?」

 

「どこかで会ったことないですか?」

 

この奇妙な質問に、アイは即座に首を横に振った。

 

「いや、ないッスねえ。こっちの次元にネプギアがいたとしても、顔も見たことがないッスからね」

 

アイとネプギアのいる次元はもともと違う場所だ。

それぞれの次元で似たような人間を見たとしても、二人は初対面には違いない。

 

「そう、ですよね。なんだか知ってるような感じがして……誰かに似ているような…」

 

「あ、ネプギアもそう思った?わたしもそーなんだけど、なーんか思い出せないんだよねー」

 

「気のせいなんじゃないッスか?あるいは、もとの次元で見たか」

 

「んー、そうかな?ま、いいか」

 

ネプギアと同じく首をかしげるネプテューヌだが、アイのそっけない返事に興味をなくした。

アイの言う通り、あちらのアイと会ったことがあるか似た人物を見たことがあるかだろう。

 

「さて、とりあえず目下のところやらなきゃいけないのは…」

 

「リーンボックスッスね。ウチは気になるッスから、顔だけでも見に行くッスけど」

 

早速装備を点検し、一人だけでも出ていこうとするアイに

 

「そうね、罠の可能性もあるけど、その時は返り討ちにすればいいだけだわ」

 

「決まりね。ほら、プルルート、ネプテューヌ。さっさと準備して」

 

早速装備を点検し、一人だけでも出ていこうとするアイにブランとノワールも賛成する。

売られた喧嘩は買う主義なのだ。

アイとしても、女神が現れたのなら見逃すわけにはいかない。

 

「え、わたしまだ何も言ってないけど…」

 

「三人で決めちゃってずるい~」

 

「どうせあなたたちに聞いても、無理やりボケるか天然でボケるかのどっちかでしょ。時間の無駄よ」

 

「なっ!?わたしの洗練された計算ずくのボケを無理やりだなんて…あんまりだよ!」

 

不平不満を主張するネプテューヌとプルルートだったが、ノワールは冷たくあしらう。

 

「あんまり無茶はしちゃダメッスよ。今回はあくまでも挨拶と偵察」

 

「わかってるわ。まだ本調子じゃないもの。いざとなったらあなたが守ってくれるわよね?」

 

「がってんッス」

 

「って無視…」

 

アイとブランに至っては無視。

 

「え、えっと。まだこっちのこととかよくわかってないんですけど、私は何をしたら……あいたっ!や、やめて!髪の毛引っ張らないでー!」

 

立ち上がろうとするネプギアの髪の毛をアイエフが引っ張る。

子どもと言えど、いや子供だからなのかその力は容赦ない。

 

「ぎゃーちゃん、おいしゃさんごっこするれすぅ」

 

「え?ま、待って!その注射器、本物じゃ…」

 

「ぷぎゃー…ぱーんちっ!」

 

「ほぐぅっ!?う、うう…み、みぞおちは叩いたらダメだよ…?」

 

立て続けにコンパ、ピーシェに攻撃を受けてダウン寸前のネプギア。

その場の全員がほほえましく見守るだけだった。

 

「いいようにいじられてるわね、あなたの妹」

 

「ネプギアは怒ったり、イヤって言ったりができない子だからねー」

 

「なら子守りはネプギアに任せて、ウチらは行くッスよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。ほら、わたしお姉ちゃんと再会したばっかだし…づああっっ!?」

 

準備ができ、出ていこうとするみんなを止めようとするネプギアだったが、ピーシェに向こう脛を蹴られてついにうずくまった。

 

「適任ね」

 

「じゃ、そういうわけで。あ、ちゃんとお土産買ってくるからねー」

 

「え、ちょっと。また置き去りなの?お姉ちゃん!おねえちゃーん!!」

 

 

 

 

頑丈な金属で作られた巨大な部屋で僕とマジェコンヌが向かい合っている。

 

先手必勝、僕は正面に光の矢を放つ。

マジェコンヌに簡単に避けられたが、予想済み。弓で殴りにかかる。

マジェコンヌはこれも簡単につかんでみせる。

僕はつかまれた弓をいったん手放し、蹴りを放った。

マジェコンヌは弓でガードし、さらに空いた手で殴ってきた。

それをもろに受け、僕は倒れてしまった。

 

「まだ足りんぞ!」

 

「くそっ」

 

すぐさま立ち上がり、手のひらをマジェコンヌに向ける。

手に力を込めると、手のひらに光の玉が出現する。

これは光の矢を習ったときの初期段階。放出させるのにもかなりの力がいるので、加減が難しいからそれほど使いはしないが、弓を奪われた状況では仕方がない。

 

光の玉を放つ。

素早くまっすぐマジェコンヌに向かっているが、マジェコンヌはそれを掴み、手でつぶした。

対する僕の身体は光の玉を放出した反動で吹っ飛び、またしても床に倒れた。

 

間髪いれずに立ち上がるが、額に何かが当たった。

マジェコンヌの人差し指だ。

 

とん、と押されたそれに尻餅をついてしまった。

 

「どうした、ヤマト。今日は身に力が入っていないな」

 

「そうかな…」

 

「私をだませると思うか?」

 

両手を上にあげ、降参の意を示す。

僕が立ち上がると同時にマジェコンヌが弓を投げてきた。

 

「マジェコンヌ」

 

マジェコンヌが放った弓を受け取り、折りたたんで背中に戻す。

 

「いつも訓練してくれてありがとう。でも最近いろいろありすぎて…」

 

立ち去ろうとするマジェコンヌに、なにか言わなきゃと思い、言葉が見つからないまま口を開く。

ずっと前からマジェコンヌにはこうやって力をつけてもらっている。

なのに僕といえば、それに集中できずにぼんやりとしてしまった。

原因はアノネデスのデータの中身だった。

いますぐにでも、あの「女神計画」について知りたかったが、それができたら苦労はしない。

当のアノネデスは絶対に言わないだろうし、マジェコンヌも黙秘するだろう。

 

「…礼ならいらん。勝手にやっていることだからな」

 

歩を止めたマジェコンヌは、それだけ言うと去っていった。

ため息をついた僕の頭の中では、まだもやもやが残っていた。

 

 

 

シャワーを浴びて汗を洗い流したあと、暗い青を基調としたスマートな戦闘服に着替えた僕は会議室へ向かった。

そこにはすでにレイとアノネデスもいた。

 

「リーンボックスについてなにかわかったことは?」

 

会議室に入るなり、僕はアノネデスに尋ねた。

 

「うーん、たしかに女神はいるみたいねぇ。ただ、別の大陸とあって情報は少ないわね」

 

やはり現時点ではアイの情報が一番早いみたいだ。

いま僕たちがいる大陸の中なら、ほとんどの情報をアノネデスが把握できるが、別の大陸となればそうはいかない。

国があると分かったのも最近だし、七賢人は一度として他の大陸へ移動したことがない。

 

「ええ!また女神が現れたんですか!?」

 

聞いてなかったようだ。

レイはアノネデスの言葉を聞いて、いつものようにあわただしく手を動かした。

 

「三国に宣戦布告したそうだよ。それで、アイたちがいま向かってる」

 

「宣戦布告だなんてそんな…アアアアアイはいま大丈夫なんですか?」

 

「ピンピンしてるよ。アイなら大丈夫」

 

女神ではないというのに、そんな危険な状況に巻き込まれているアイを心配するが、今回は大丈夫だろう。

宣戦布告とはいうが、アイの様子を見るとそれほど大げさなことでもないみたいだ。

僕はレイをどうどう、と落ち着かせる。

 

「今回も様子見しておく?」

 

「そうねぇ、ラステイションへの報復も考えなきゃだし…」

 

「報復…ですか?」

 

またまた物騒な言葉に、レイが反応する。

 

「最近、ラステイションからハッキングされたの。重要なデータを見られる前に追い出したから問題はないんだけど、あんな凄腕がラステイションにいるなんてねぇ」

 

「そんなにいい腕の奴が?」

 

確実に僕のことだ。

だけどごまかすために、知らないふりをする。

 

「ええ、まさかパスワードもかいくぐってくるなんて思いもしなかったわ。これからはもっと強化していかないとね」

 

「重要なデータって?これからすること?」

 

「ええ、見られたらちょーっとヤバいコ・ト♪」

 

誘導も効果なし。のらりくらりとかわされてしまう。

やはり、前のようなうっかりミスはしないか。

 

「そうか」

 

これ以上の詮索は怪しまれてしまう。

力づくでも聞きたい気持ちを抑え、僕はあっさりと引いた。

 

 

 

 

「着いたー!!」

 

アイとネプテューヌ、そしてプルルートは万歳をした。

 

森で挟まれた長い街道を抜け、そして用意された船で揺られること数時間。

気力が削がれる寸前、一行はリーンボックスへ到着した。

 

最近できたばかりだからであろう小奇麗な街並み。

やたら建物が白く、そしてあらゆるものが巨大だった。

 

「…なにも無かったわね」

 

「とくに罠があるわけでもなかったわね。ずいぶんと余裕があるみたいね」

 

ノワールとブランは拍子抜けして、肩を落とす。

相手のホームグラウンドに飛び込むということで、罠があることを見越してきたが、道中には何もなかった。

街道はともかくとして、船は外装も内装もしっかりしていて、至れり尽くせり。

むしろ癒されたくらいだ。

 

「うわーすっごく大きいハンバーガー屋さんだよ!ぷるるん!シノちゃん!」

 

「ふわぁ~。あんなの食べきれないよぉ~」

 

「めいっぱい口開いても入らないんじゃないッスかねあれ」

 

「…かたや観光気分が三人。バランスはとれてるんじゃないかしら」

 

笑いながら指をさすネプテューヌ、目を輝かせるプルルート、試しに口を開いてみるアイ。

三者三様の緊張のない言動に、ブランはジト目でつぶやいた。

 

「ゲーム屋さんないのかなー?向こうのほう探してみようっと!」

 

「わぁ、待って~。あたしも行くぅ~」

 

「これはれっきとした偵察ッスよ!フゥ~!!」

 

「こら!遊びに来たんじゃないのよ!ああもう、本当に仕方ないわね!」

 

「…とか言いつつ、毎回あなたも付き合ってあげるのよね」

 

 

 

 

「えっと…ここが…」

 

「リーンボックスの…教会?」

 

「ほぇ~」

 

「フィギュアもゲームも多いッスね。ポスターも…」

 

散々観光し、アイたちがリーンボックスの教会へと到着したのは五時間あとのことだった。

教会の人に丁寧に連れられ、女神の作業場へと着いた。

 

その作業場にあるものを見渡し、アイたちは目を白黒させた。

おびただしい量のゲームのポスターが壁に貼られており、床にはゲームソフトのパッケージが散乱している。

さらには机上には書類やパソコンの他にも、真ん中に緑のボタンが付いている一抱えもある黒い長方形の箱がある。

 

「なんなのよこれは!ただの遊び場じゃない!」

 

この惨状に、ついにノワールが声を上げた。

 

「さっすがベール。ブレない…」

 

「ねえねえ~。あそこのポスターの男の人ってぇ、なんで服着てないのかなぁ~?」

 

「わああっ!み、見るんじゃないの!」

 

じーっとポスターを見るプルルートの目を、ノワールがふさぐ。

 

「これが…神聖なる女神の仕事場だというの…?」

 

「大陸間の違いか、それともここの女神がアホなのか…」

 

一方で、静かに憤るブランと呆れるアイはため息をついた。

アイが両隣にモニターが接続されたパソコンを覗いてみると、こちらもゲームのアイコンが所狭しと並んでいた。

 

「ふふふ…わたくしの教会のすばらしさに、感動なさっているようですわね」

 

様々な反応を見せているアイたちの前に、ようやくこの国の女神が現れた。

 

「ようこそおいでくださいましたわ。あの大陸の女神の皆さん」

 

腰まで伸びる長い金髪、そしてこれでもかと豊満な肉体を強調する緑のドレス。

それは、ルウィーで出会ったベールだった。

 

「金髪ボイン…」

 

「またその失礼な呼び名ですの!?ベール!ベールですわ!」

 

アイがつぶやいたあだ名定着の恐れを感じ、ベールは慌てて訂正した。

 

「それじゃ…あなたがこの国の…?」

 

「そ、そんなー。まさかベールがリーンボックスの女神だったなんてー(棒」

 

やはりネプテューヌは知っていたのだ。アイは思った。

ノワールやブランのことも知っていたと聞いたから、彼女のいた次元にも同じ人間というか女神がいたのだろう。

次元のルールや異なる事象もあるが、次元間で同じことも多々あるに違いない。

 

「それより聞きたいんだけど、この教会のあり様は、なに?」

 

「あら?気になるところでもありまして?」

 

ノワールの質問に何がおかしいの?というふうにベールはきょとんとした顔をする。

ということは、たまたま片づけ忘れたとかではなく、この部屋はいつもこうなのだ。

 

「むしろ、気になるところしか…」

 

「ノワールはむっつり検定一級ッスからねえ、気になってしょうがないと…」

 

「そんな検定持ってないわよ!」

 

むきになってか、それとも図星を突かれたからか、ノワールは顔を赤くして否定した。

 

「ふふ、相変わらず賑やかな方たちですわね。では改めまして…わたくしがリーンボックスの女神、ベールですわ。先だっては正体も明かさず、失礼いたしました」

 

「ルウィーに来ていたのは、女神自らスパイ活動を行っていた、という解釈でいいのかしら?」

 

「ご明察。思ったほど頭は悪くありませんのね」

 

ばかにする言い方に、ブランの額に青筋が一つ。

 

「…気に入らねーな。見下した言い方しやがって」

 

「で、自分自身で見聞きしたうえで乗り込んできたってことは、それなりの自信があるってことなのよね」

 

「あら、またご明察。予想外ですわね。こちらの女神は揃いも揃っておつむが弱いと踏んでいたのですけど」

 

「おつむが弱いのはあの二人だけ!」

 

ノワールがまたしてもむきになって反抗しながら、部屋中のゲームを眺めるネプテューヌとプルルートを指さす。

 

「お、何気に外されたッス。まあそれはそうと、宣戦布告とはどういうことッスか?」

 

「宣戦布告というのは語弊がありますわね」

 

「…つまり、どういうこと?」

 

「みなさまとは、争うまでもないということですわ」

 

ベールが得意げに胸をそらす。

 

「リーンボックスの最新ハードを普通に普及させれば、自然と人々の信仰はわたくしのもとに集まりますもの。それに…」

 

「それに…?」

 

ベールはそれぞれを見比べた。

正確に言えば、それぞれの胸を。

ノワール、ネプテューヌ、プルルート、ブラン、アイの順番に視線を滑らせ、ベールは再び胸をそらす。

 

「ふふ、人並が一人、平均以下が二人、絶望的なのが二人…といったところですわね。そちらの大陸の方々は、女神に恵まれていませんわねえ」

 

「ほっ、私は人並か…うんうん…」

 

ベールの審査に、ノワールが胸をなでおろす。

そして案の定、ブランが目を光らせて怒り出した。

 

「て…てめー!誰のどこが絶望的だ!?」

 

「反応してる時点で認めてるようなもんッスよ、ブランちゃん」

 

「うるせー!てめーも同じようなもんだろうがよ!」

 

「うおお、ストップストップ!」

 

アイの一言に、ブランはついにキレた。

敵国の教会内だというのに、変身しだしたのだ。

ルウィーはまだ立て直しで本調子ではないが、ブランは殺る気満々で斧を構える。

 

「あらあら、本当に野蛮ですこと。それにしても…うふふふふ。変身しても、絶望的なのは変わりませんのねー」

 

変身されてもなお余裕に構えるベールにいまにも襲い掛からんとするブランをアイは必死に止める。

 

「うがあああ!はなせ!はーなーせー!」

 

「暴れるのはダメッスよ!無理しないって言ったじゃないッスか!」

 

「てめーは悔しくねーのかよ!絶望的って言われたんだぞ!」

 

「ウチはそれほどコンプレックスあるわけじゃないッスから!ああ、お代官様!落ち着いてくださいまし、お代官様!」

 

じたばたと暴れるブランをアイはなんとか抑える。

敵国のど真ん中であるというのもあるが、いまのブランに戦ってほしくないのだ。

 

「やはり、戦う前から勝負はついていますわね。それではみなさん、残り少ない栄華を、どうぞお楽しみくださいませ」

 

必死な様子のアイたちに高笑いだけを残して、ベールは去っていった。

 

「待ちやがれっ!ぐううう…許さねー!あいつだけは、ぜってー許さねー!」

 

「うはぁ…疲れたッス…」

 

ベールが完全に見えなくなったところで、ようやくブランを離す。

アイはぐったりと机に腰を下ろした。

 

「しかし、まさか正攻法でくるとはね…どうする?」

 

「どーもこーもねー!正面から受けて立ってやる!要はあいつのハードなんか見向きもされねーくらい、こっちのハードを売りさばけばいーんだろーが!」

 

「くくくくくくく…」

 

こっちのハードとブランが言った瞬間、アイが不気味な笑みを浮かべた。

その顔はいままでにない悪い顔である。

 

「え、どうしたのシノちゃん。怖いんだけど」

 

「シノちゃん壊れちゃったの~?」

 

「こんなこともあろうかと!ルウィーのハードに関してはすでに企画をまとめてあるッスよ!」

 

座っていた机をバシーンと叩き、アイは立ち上がった。

先ほどまでの力の抜けた姿勢が嘘のように張り切っている。

 

「うちもハード性能には自信あるし…販売促進キャンペーンとか、打てる手は打っておこうかしら」

 

ラステイションもベールの言葉を気にして対策を練るつもりだ。

ただ二人、プラネテューヌ側はなにをしようか案が出ないまま目をぱちくりさせるだけだった。

 

「よっし!じゃあさっそく帰ってやるッスよ、ブランちゃん!」

 

「上等だ!こんな胸クソわりー国、すぐぶっつぶしてやんよ!」

 

ルウィー側の「絶望的」な二人はその勢いで部屋中のものを散乱させるのも構わず、飛び出した。

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