神次元ゲイムネプテューヌ 渇望のアウトサイダー【完結】 作:ジマリス
ルウィーではコピリーエースが暴れようとしていたが、壊せば壊すほど喜ばれる採掘場を案内すると、嬉々として働きだした。
意気揚々と戻ったアイとブランは拍子抜けし、とりあえずは害がないことを確認したうえで再びプラネテューヌへと帰ってきた。
「はあ、ま、無事でよかったッスね」
「まさか働いてる人たちとも仲良くなってるなんてね」
「あそこで邪魔したら、ウチらのほうが悪者になってたッスねえ。ただいまー」
教会の扉を開けると、すでに戻ってきた女神たちに加え、そこにはいるはずのない者が闖入していた。
「ついに決定的な証拠をつかんだわ!さあ、観念しなさい!」
「だから誤解だと……は、離してください―!(。>_<。)」
アブネスがイストワールの小さな身体を掴んで右に左に揺らしていた。
必死な様子で、なにかを聞き出そうとしているみたいだ。
「プラネテューヌにも襲撃がきたッスね」
「……たしかに七賢人の襲撃だね。うん」
あいさつもそこそこに、ネプテューヌがあきれたようにその光景を見る。
「アブネスちゃん~!いーすんいじめちゃダメ~!」
「やっぱりアンタたちが誘拐犯だったんじゃない!もう言い逃れはできないわよ!」
「いやいや、それは違うッス……ってヤマトから何にも聞いてないッスか?ここが託児所になったって話」
プルルートが目を回すイストワールを奪還したが、アブネスは女神たちを指さして叫ぶ。
ここにいた子どもたちのことを言っているみたいだ。
「ヤマトならなーんか考えっぱなしだったわよ」
「考えっぱなし…?」
「最近、心ここにあらずみたいな感じでずーっとぼけーっとしてるわよ。そのせいでマジェコンヌもイライラしてるし…」
「はあ、それはまためんどくさそうな…」
アイはため息をついた。
ヤマトがなにやらしているのは知っているが、マジェコンヌまでイラついているとなると、レイの胃も限界に違いない。
「そんなことはどうでもいいのよ!うちはなにもかもしっちゃかめっちゃかだし、オカマにしてやられるし!」
机をバン、と叩いてノワールが主張する。
実際、ラステイションは一番の被害を受けている。
セキュリティに過信し、ほとんどのものをデータで管理していたがためにその被害は甚大なものだ。
ハッカーの居場所をなんとかつきとめたノワールは、そこで出会ったアノネデスと対峙したが逃げられたらしい。
「オカマ?」
「そうよ、機械のスーツを着たオカマ!もう一歩で追いつめられたのに…!」
「機械のスーツ…!わあ、見てみたかったかも…」
機械と聞いて、ネプギアが目を輝かせる。
メカオタクであるネプギアがアノネデスを見たとしたら、解体解体と騒ぎ立てるだろう
「そいつも七賢人を名乗ってたわ。あのおっさんといい、七賢人って技術に関してはかなり進んでいるみたいね」
「変なやつばっかりいるからよ。とくに最近は隠し事してるみたいだし…」
「わたくしのところにも変なのが来ましたわよ。追い払いましたが」
アブネスが七賢人に毒づく途中でベールが口を挟む。
リーンボックスはたいした被害は出なかったが、見たことのないモンスターが出現したそうだ。
「変なの?」
「ぶさいくな魚みたいなモンスターですわ。女神であるわたくしの攻撃を受けても簡単には倒れませんでした」
それを聞いたアイが急いで懐から写真を取り出し、二つ折りにしたそれの片面を見せる。
トサカの生えているふっくらした生物が三匹映っている。
「こーんなやつッスか?」
「そう、そうですわ!やっぱり七賢人のしわざですのね!?」
「この子たち、どれだけいたッスか?」
「え?……ええと、わかってるだけでも十匹以上は…」
それを聞いて、アイは黙りこくって考える。
顎に手を当てて物思いにふける、普段とは違う姿はまさに「黙れば美少女」の典型的な姿である。
「あ、あれ…?もしかして…」
その姿に、ネプギアはある女性の姿を思い出した。
「さっきから気になってたのだけれど、子どもたちは?」
「そうなんです!聞いてください、みなさん!!(゜Д ゜;;)」
ノワールの言う通り、いつもは騒がしい子どもたちがいない教会をきょろきょろと見渡すと、イストワールが思い出したかのようにわめきたてる。
「あの子たちが!あああ、どうしましょうどうしましょうー!?」
「落ち着いて落ち着いてー。何があったの?」
ネプテューヌがくるくると飛び回るイストワールを静めた。
「こ、子どもたちが!七賢人に誘拐されてしまったんです!」
「ほう、子どもたちが…って、ええええええええ!?」
全員が目を見開く
これが七賢人の本当の狙いだったのだ。さっきまでのは陽動。
すぐに言わなかったのは、アブネスに詰問されていたからだろう。
「みなさんが戻ってくるほんの少し前だったんですけど!突然押し入ってきて力づくで!」
「戻ってくる前って…ネプテューヌたちは何してたのよ」
ブランがプラネテューヌの女神三人をじろっと見る。
「パトロールしてたんだよ~」
「他の国が七賢人に襲われたって聞いて、こっちでも見回りしてたんです」
「珍しく仕事してたのね……にしても、手段を選ばなくなってきたわね」
「ほんの少し前だったなら、まだ追いつけるかもしれないわ。どっちに向かったかわかる?」
いつのまにか、その場の全員がイストワールに詰め寄っていた。
その必死の形相にたじたじとしながらも、イストワールは記憶をたどりよせた。
「え、ええと。ルウィー方面のルートを使うとか言ってたような…」
「急いで向かいましょう。今取り逃したら面倒なことになりますわ!」
ベールに言われるまでもなく、いままでのいつよりも迅速に準備をすませて、すぐに走り出した。
△
プラネテューヌからルウィーへ向かうルートはいくつかある。
二国が仲良くなってからは、道路も舗装されたし、それまで密かに使われていた地下空洞もある。
僕がいま通っているハネダ山道もその一つである。
モンスターがいるものの、すぐに通り抜けてしまえば気にはならない。
そうはいっても危険な道なのは変わりないし、そうそう人が来る場所ではない。
普段は足腰を鍛えるための道だが、今回は違う。
「レイ!」
僕は山頂近くに来たところで、目的のものを見つけた。
傍らには金髪の幼女がレイを引っ張るように歩を進めていた。
普通逆だろう。
しかしいまの僕にはそれをツッコむ気はない。
「ヤマト!」
こちらに気付いたレイに、僕はずんずんと足音荒く近づいていく。
「…この子は…」
「だれ?」
不思議そうに僕を見上げる幼女を見る。
アイが言っていた、教会で預かっている子ども「ピーシェ」だ。
「レイ……君たちはやっぱり…」
「うぅ……」
レイは否定しない。
いままでの子ども誘拐事件は七賢人のしわざだったのだ。
探してた敵は、身内だった。
ぎりぎりと歯ぎしりする。
なによりも最悪なのは、さらった子供たちを「兵器」として利用しようとするということだ。
「女神計画」はつまり、子どもたちに無理やり女神メモリーを与えて、七賢人の意のままの女神を作り出そうとするものだった。
もちろん、そんなに簡単に女神が生まれるわけはない。
本来女神になれる確率はごくごく少ないのだ。
失敗した場合、女神メモリーを取り込んだものは醜いモンスターになる。
リーンボックスにいたモンスターはおそらくそれだろう。
こどもたちはすでに「兵器」として投入されていたのだ。
僕の頭はぐるぐるとかきまぜられたように混乱した。
地に足がつかない感覚を振り払って、なんとかレイをにらむ。
「女神計画も承認したんだな、レイ」
「……」
黙って僕と目を合わせないようにするレイに、僕の感情は爆発した。
「レイ!」
「ひうっ」
いまのは、驚いたピーシェだ。
いきなりの怒号に金髪の幼女は泣きそうになるが、僕は構わずにレイを糾弾する。
「僕もか……僕のこともそういう目で見ていたのか…」
「ち、違います!」
負けじとレイが声を上げるが、僕には届かない。
いままで家族だと思っていたのは、僕だけだった。
その思いが僕の頭を占めた。
「僕のことも戦力としてしか見ていなかったんだな…」
「違います、ヤマト!」
「この名前も記号でしかないんだろう、なんなら数字で呼べばいい!!」
「ヤマト!!」
パシン、と鋭い音が鳴った。
レイが僕の頬をはたいた。
気付けば、彼女の目にも僕の目にも涙が浮かんでいた。
「作戦を遂行する」
逃げるように、僕はその場を去った。
これ以上、レイの顔を直視できない。
頬がひりひりと痛んでいた。
△
「ここで合ってると思うけど…」
聞き込みを繰り返し、アイたちはハネダ山道へと来ていた。
情報が正しければ、七賢人はこのルートを使って逃げているはずだった。
急な勾配が続く山道だったが、彼女たちは走り続けた。
「いたーっ!こんぱ!」
もうすぐで山頂というところで、ネプテューヌが声を上げる。
「ぢゅぢゅ!?もうきたっちゅか!?」
「あーっ!ねぷねぷー!」
指をさした先にいたのは、ワレチューと引きずられるようについていくコンパだ。
「こんぱーっ!」
「どうやら道は合ってたみたいね」
「でも、他の子たちが見当たらないですね」
とりあえずは安堵する一同だったが、他に人影は見当たらない。
「うう、時間稼ぎは何やってたっちゅか…」
「ワレチュー、これは何の作戦ッスか?」
アイがいつのまにかワレチューの目の前まで接近し、怒りのオーラを纏いながら質問する。
「あ、アイ。この四面楚歌をなんとかしてくれっちゅ!」
「な・ん・の、作戦ッスか?」
ワレチューの言葉に耳を貸さず、アイはずいっと顔を近づける。
「アブネス姉さんにもヤマトにもなんの説明もなかったんスよね。否定されて邪魔されるだろうからって。なによりこの作戦はもう終わったんじゃないッスか?」
「ネズミさん~…ネズミさんが、うちの子を誘拐したんだぁ~…」
明快な事実に、プルルートの怒りもワレチューへと向かう。
とたんにワレチューの顔が青ざめ、首を横に振る。
「ぢゅーっ!?違うっちゅよ?おいらはこの子を…」
「ぷるちゃん、ねずみさんはいいひとですぅ!おうちにかえしてようとしてくれたですぅ」
「…ほぇ?そぉなの~?」
コンパのフォローに、プルルートの怒りが少し収まったようだがいっぽうでやり場のない感情のぶつけ場所に困っているようにも見える。
「でも、あいちゃんとぴーちゃんがつれてかれちゃったですぅ…おばちゃんがつれてっちゃったですぅ…」
「おばちゃん…ってことは、あのオバサンだね!」
七賢人のなかでおばちゃんと言われるようなメンバーは、マジェコンヌ一人しかいない。
すぐに反応したネプテューヌの脳内には、マジェコンヌをボコボコにするシーンが浮かんでいた。
「複数犯で別れてとは、ずいぶん手の込んでいますこと」
「どっちにいったッスか?」
アイが鋭い眼光でワレチューをにらむ。
「そ、それは…」
流石にこのことに関してはワレチューは口を結んだ。
しかし、その視線が山頂方面に泳いだのを、アイは見逃さなかった。
「あっちッスね。行くッスよ!」
「アイ、なんだか焦ってない?」
誰よりも速く駆けだそうとするアイをブランが心配する。
「そりゃ焦りもするッスよ。なんだか、いやな予感がするッス…」
△
「マジェコンヌ!」
次に見つけたのは、マジェコンヌと彼女に抱えられる茶髪の子どもだった。
「ヤマト!このクソガキをなんとかしてくれ!」
「はなせ!はなしなさいよ!ばかーっ!」
「やっぱりマジェコンヌもこの作戦に参加してたのか…」
じたばたと暴れる子ども、アイエフを見て僕はさらに戦慄する。
女神を憎んでいるマジェコンヌでさえも、この計画に協力しているのだ。
「よっしゃー!追いついたー!」
「あいちゃ~ん!」
「アイエフさーん!」
そこに、向こう側から現れたのはアイ含む女神たちだ。
全員揃い踏みということは、アノネデス、コピリーエース、そしてアクダイジーンはまともに時間稼ぎをできなかったようだ。
「あのネズミ、さては屈したな」
女神たちから見れば、僕も同じ七賢人なのだ。
誘拐の補助に来たのだと思われているだろう。アイ以外には。
「…留守を狙って子供を誘拐だなんて、七賢人も堕ちたものね」
女神の中の一人、ブランが僕たちをにらむ。
いままでのいたずらとは違って、今回のことは許せないことだ。
それは僕にもわかっている。
「…ああ、たしかにくだらない作戦だな。私も乗り気ではなかった」
「ならいますぐ子どもを女神たちに返すんだ、マジェコンヌ」
女神たちよりも早く、僕は弓を広げて矢を向ける。
敵意を向けられたマジェコンヌは負けるはずがないと余裕たっぷりだ。
「ふん、貴様に命令されるおぼえはないぞ、ヤマト」
「状況は君に不利だ」
「なんだかよくわからないけど、いまなら見逃してあげますよ!」
僕たちの問答に、プラネテューヌの女神の一人ネプギアが口を挟む。
僕らは邪魔をするなと言わんばかりにギロっと目を向ける。
「ちょうどストレスが溜まっていたところだ。相手してやる」
「この人数に勝てると思ってんの?言っとくけど、今日の私は本気怒りモードだからね!」
怒り心頭なのは、あちらも同じようだ。
いつもぼーっとしているネプテューヌですら、憤慨している。
ピリピリした空気の中、最初に行動を起こしたのはマジェコンヌだ。
「そういつもいつも負けてやると思うなよ。あっちの姿になるのは気が進まんが、今日は全力で相手をしてやる」
マジェコンヌが拳を握ると、彼女の身体は大きく変貌していく。
巨大な身体に四本の腕と四本の足。
上半身には目立つ単眼がギョロリと敵のほうを向き、下半身にはワニのような顔が前に突き出して、牙をむき出しにしている。
とげとげしく禍々しい姿だが、マジェコンヌには違いない。
「この姿になった以上、必ず殺してやる…」
地の底からうなるような声が響き渡る。
ただの人間である僕にも、その力の大きさが伝わってくる。
たった一度だけこの状態のマジェコンヌを相手したことがあったが、腕を振られただけでノックアウトしてしまったことがある。
「この姿……これは…」
「よーし、こっちも変身だよ!」
女神たちが負けじと次々に変身する。
いくらマジェコンヌといえど、この数の女神を相手にするのはいささかまずい。
なによりあのどS女神が一番厄介。
だが、その厄介な女神は唯一変身していない。薄く笑っているだけだ。
「プルルート、何やってるのよ!早く変身しなさい!」
「……ふ、ふふ…やだぁ、なにあれ?気持ち悪うい」
「お、おい。お前…そのしゃべり方…」
ホワイトハートが後ずさりしながら、プルルートを見る。
「うふ、うふふふふ。ダメだあ。あたし、怒りすぎておかしくなっちゃったかもぉ」
「ぷるるん、しっかりして!今はとにかく…」
「わかってるわよぉ…このムシャクシャした気持ちは、ぜぇんぶこの人たちが受け止めてくれるんでしょう…?」
これ以上ない悪い笑みを浮かべたまま、アイリスハートは変身した。
妖艶な女性が変身前よりも邪悪な笑みでマジェコンヌを見る。
その姿に、マジェコンヌも少し押されているようだ。
「途中で死んじゃわないといいけどねえ!」
「やらせるか!」
僕はマジェコンヌに向けていた矢をアイリスハートに向け、放つ。
だがアイリスハートは持っている蛇腹剣で簡単に弾いた。
僕は次々と光の矢を放ちながら、アイリスハートへと走る。
「こぉんなんじゃ、ぜんぜん足りないわねぇ」
こともなげに僕の攻撃をかわすアイリスハートはそう言いながら、僕の頭上を通り過ぎていく。
目的はマジェコンヌだ。
「待て!」
「待つのはあなたよ!」
振り向いて矢を向けようとするが、それはブラックハートに遮られた。
大剣を振り下ろされるが、弓を盾にして防ぐ。
鍔迫り合いになるも、押されて膝をついてしまう。
抜け出そうとする僕の腹に、誰かの蹴りが炸裂した。
「あなたの相手なら私たちがするわ!」
パープルハートだ。
この二人とはいつ振りだろうか。
あれから僕も成長しているが、負けるとわかっている。
それでも退くわけにはいかない。
「上等だ。上等だよすれ!」
弓を構えて、矢を放つ。
やはり簡単に弾かれてしまったが、構わず連射する。
「わたしたちも…」
戦いに加わろうとホワイトハートとグリーンハートが構えるが、アイが制する。
「アイ?」
「ダメッス……これ以上はヤマトもマジェコンヌも危険ッス。ここから先は加勢させないッスよ」
二人の女神を前に、アイが立ちふさがった。
青いはずのその目は、暗い紫に染まっていた。