神次元ゲイムネプテューヌ 渇望のアウトサイダー【完結】   作:ジマリス

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2 女神

ZECA一号遺跡はその名の通り、遺跡であるが人の手入れは全くされていない。

石造りの壁や天井はところどころ崩壊し、いたるところに植物が生い茂っている。

すでにモンスターが棲みついているこの場所に、ある大事な場所がある。

 

道の最中にはモンスターがいたものの、それほど強くはない。といっても戦ったのは僕一人で、マジェコンヌとワレチューは後ろからついてくるだけだ。

ワレチューはともかくマジェコンヌは手伝ってくれてもいいのに。

 

アノネデスが造ってくれた、金属でできた弓を構える。

右手で弦を掴み、ゆっくりと引っ張る。

軽く弦を引っ張ったところで、右手から徐々にあるはずのない淡く光る白い矢が現れた。

 

これは僕のエネルギーが具現化したものである。

「自身のエネルギーを具現化する」というのはマジェコンヌに教えてもらった技だけど、平凡な人間である僕にとっては簡単なものではなく、思い通りに扱えるようになったのはここ最近になってからだ。

弦を強く引っ張れば引っ張るほど強く輝く高威力の矢が現れるように調節してもらっている。

もちろん強い威力の矢を使えば、それだけ体力を消耗することになる。

全力の矢は最大で十発ほどしか射ることができない。

試しに全部射たときは全身から力が抜けたようになって立てなくなったなぁ…。

実際に力抜けてるんだけど。

 

よし、これでいいだろう。

少し離れた奥の部屋の直前で、うろうろしているヘルメットをかぶったカエルのようなモンスターを狙いに定め、右手を放す。

白い矢はまっすぐモンスターへ向かっていき、見事に命中。

モンスターとともにその身体を貫いた矢も粒子状となって消滅した。

 

これならもう少しエネルギーを弱めてもよかったかな。

 

「なかなか使いこなせているじゃないか、ヤマト」

 

「師匠の前で恥をかくわけにはいかないからね」

 

微笑むマジェコンヌに僕も笑って返す。

 

「こんなオバハンに教えられるなんて、屈辱の極みっちゅね」

 

「いや、感謝してるから。こうやって戦えるようになったのもマジェコンヌのおかげだし」

 

ワレチューのオバハン発言に青筋を立てたマジェコンヌを抑えるために、すかさずフォローを入れる。

 

そうしてやっと、僕とマジェコンヌ、そしてワレチューの三人は奥にたどり着いた。

他よりも明らかに巨大な円形の部屋。

こここそが重要な場所だ。

 

「おおっ、おおおおおお!!」

 

その部屋に入った瞬間、柄にもなく大声を上げてしまった。

 

そもそもここに来た目的というのが、「女神メモリー」の回収だ。

女神メモリーとは、素養のある人間を「女神」にすることができるもの。

女神になれば人知を超えた力を得ることができ、老いることがなくなり、さらに国を作ることができる。

ただし女神になれる素養のある人間というのが相当少ないとされているうえに、メモリーが出現するのもこれまた稀だ。

その証拠に、現在確認されている国はたった二つ。

女神「ホワイトハート」が治める閉鎖的な国「ルウィー」と、最近できたばかりの国「プラネテューヌ」。

 

その激レアアイテムである女神メモリーが、二つ。この部屋に落ちていた。

輝く菱形のそれを、マジェコンヌが拾う。

思わず叫んでしまった僕に対して、マジェコンヌとワレチューは割と淡白な反応だった。

 

「まさか二つも見つかるとはな。こんなことは初めてじゃないか?」

 

「珍しいこともあるっちゅねー。きっと、オバハンが珍しいことをしたから、珍しいことがおきたっちゅ」

 

「おい、クソネズミ。死にたくなければ、いい加減その呼び方はやめな」

 

「オバハンをオバハンって呼んで何がわるいっちゅ?そっちこそ、ネズミ呼ばわりはやめるっちゅ。おいらにはワレチューというかわいらしい名前があるっちゅ!」

 

「ハハッ。笑わせるな。ネズミをネズミと呼んで何が悪い?」

 

こんな悪口まで言い合う始末。

良くも悪くも変わらないなあ…。

 

「はいはい。そこでストップ。間違っても誰かにとられるわけにはいかないんだから、早く戻ろう」

 

険悪な空気になる前に、いやもうなってるけど、マジェコンヌがこの遺跡ごとワレチューを吹き飛ばす前に僕は二人をなだめた。

そんなとき

 

「あなたたち!」

 

「ちょっと!ノワールってば!」

 

後ろから強気な声が聞こえた。

振り返れば、黒髪ツインテールの少女と紫髪ショートカットの少女がいた。

 

「ん?なんだ、貴様たちは」

 

「誰だっていいわ。その手に持ってるもの、こっちに渡しなさい!」

 

「もーノワールってば!一体全体急にどうしたのさ?」

 

ノワールと呼ばれた黒髪の少女がこちらを指さす。

 

「…あれが、女神メモリーよ」

 

「へー、あれが…なんですと!?」

 

「君たちもこれを狙ってるのか」

 

わざわざ女神メモリーを狙ってここにくるとは、いまどきなかなか珍しい。

それほど女神になりたい意思があるということか。

 

「もう一度だけ言うわ。おとなしくそれを、こっちに渡しなさい!」

 

「なんかノワールのほうが悪者っぽい台詞…でも、ここは乗っかっとくべきだよね!そーだそーだ!それはわたしのなんだからね!おとなしく渡せばよし。さもなくば…だよ!」

 

世間的に見ればこちらのほうが悪役だというのに、目の前の少女たちはそれを感じさせないほどの悪役らしさを見せつけてくる。

 

「小うるさい連中だな…む?おい、もしかして貴様がネプテューヌ…か?」

 

「そうだろうね。アブネスが言っていた特徴と一致するし」

 

アブネスの言う通り「紫のショートカットの幼女で、見た目はギリギリ幼女」。ついでに言えば「バカやかましい」。

 

「え?なんでわたしの名前知ってんの?ひょっとしてわたし、こっちでもちょー有名人だったりする?」

 

「何故だろうな。貴様を見ているととてつもなくイライラしてくる」

 

マジェコンヌはギリギリと歯ぎしりをし、女神メモリーを僕のほうへと放ってきた。

 

「ネズミ。ヤマト。貴様たちはこれを持って先に戻れ。こいつらの相手は、私がする」

 

「あなた一人で、私たちの相手をするっていうの?」

 

「ああ。光栄に思うがいい…。七賢人が一人、マジェコンヌ様が、直々に貴様たちをあの世に送ってやるんだからな!」

 

マジェコンヌが自信満々に名乗った。心なしか集中線が見えるような気がする。

 

「なんですって!?」

 

「しちけんじんって!しちけんじんって言った、今!?」

 

「ああ、ばらしてくスタイル…」

 

僕たちが七賢人というのも、こうやって女神メモリーを回収してるというのもばれるのは、できることなら避けたかったのだが。

 

「構うものか。どうせこいつらは、すぐにこの世から消えていなくなるんだからな」

 

「そんなことするから、僕たちがテロリスト扱いされるんだよ」

 

「まーいいっちゅ。オバハンがどうなろうと、知ったことじゃないっちゅからね」

 

はあ、とため息をついて僕はワレチューに女神メモリーを渡す。

 

「僕は…残るよ。ちょっと、不安になってきたし」

 

負けるとは思ってないけど、なんだかマジェコンヌがフラグを立ててるし。

 

「ヤマトもモノ好きっちゅね。こんなオバハンを案じるなんて」

 

「ていうか君たち…普通に僕の名前出すのやめてくれない?」

 

僕、諜報員的なポジションだからばれると活動しづらいんだけど。

 

「待ちなさい!それは置いていきな…」

 

「待つのは貴様だ。私が貴様たちの相手をしてやるといっただろう。なに、心配するな。ネプテューヌのついでに、貴様もしっかり殺してやる」

 

去っていくワレチューを追いかけようとしたノワールを、マジェコンヌが阻む。むろん殺気満々だ。

 

「いやあの。先に見つけたのは僕たちなんだから、順番ってことでね?ここは退いてくれないかなあって」

 

「いやよ。あれはわたしがずーーっと探してたものなんだから!」

 

「そうそう!あれがないとわたしよぼよぼのおばあちゃんになっちゃうんだから!」

 

ノワールとネプテューヌが交互に叫んでくる。

 

「頑固だなあ…」

 

なんだか本当にあっちが悪役なんだけど。

 

「ふん、関係ない。ここで消し去れば問題ないだろう」

 

そういうとマジェコンヌの身体は黒い光に包まれ、同時に彼女の身体は変化していく。

顔はウサギのようになり、ふさふさとした羽のような耳が生える。

そして腕と脚には紫色のとげとげしい防具が装着され、これまた禍々しい雰囲気を放つ翼までもが背中に現れる。

この姿のマジェコンヌの力は凄まじく強大で、人間ではまず太刀打ちができるはずもない。

 

「これは…僕の出番はなしかな」

 

 

 

 

そんな僕の予想通り、マジェコンヌは二人の攻撃をいとも簡単にかわして見せ、手に持った両刃槍のたった一撃で伏させることに成功した。

 

「そん、な…手も足も、出ないなんて…」

 

「ううう、こんな強いなんて」

 

「マジェコンヌ、本当に殺す気なの?」

 

僕たちが来た目的はあくまで女神メモリー回収のためだ。

いま現在脅威となり得ない少女二人を殺すのはいささかはばかられる。

 

「もちろんだ。こんな雑魚でもなぜかイライラするんでな」

 

確固たる意志をもって槍を振り上げるマジェコンヌ。

「その瞬間」だけは見たくない。

顔をそらし、目を閉じる。

 

「さあ、死になっ」

 

ぶん、という武器を振り下ろす音が聞こえた。

だが一瞬あと、ガキンという金属音が鳴る。

 

「誰だ貴様。邪魔をするな!」

 

恐る恐る目を開けると、そこには一人の女性がいた。

 

「なんだあれ」

 

露出度の高い、まるで下着のような紫のそれは防具だろうか。

紫の長い髪を持つその女性を覆うのは、マジェコンヌが装備しているものとどことなく似ているような「プロセッサ」と呼ばれるもの。

女性が左手に持っている剣はカッターナイフのように分かれた刃を持ち、その刃はワイヤーのようなもので繋がれている。

たしか「蛇腹剣」というものだっただろうか。

ノワールとネプテューヌが無事なところを見ると、それでマジェコンヌの攻撃をはじいたのだ。

 

「な、な、な…なんで変身してるのよ!?プルルート!?」

 

「あ、そーいやぷるるん、どこ行ったんだろ?一人で逃げちゃったのかなー…って、え?変身?ってことは?まさかまさか…えええええ?あれが?あれがぷるるんなの?」

 

「あら、ご挨拶ねえ。ノワールちゃんを助けてあげるために、わざわざ変身してあげたのにぃ…」

 

ゆっくりとした口調で女性はにやりと笑う。

プルルートという名には覚えがある。

新興国プラネテューヌの女神だ。

 

「理想だけは高いくせに、無力で非力で目の前の敵を倒すことさえできない、とぉっても哀れなノワールちゃんをねぇ!」

 

蛇腹剣を鞭のようにしならせ、ひびが入るほどの強さで地面を抉る。

 

「うわあ…」

 

思わず顔が引きつってしまう。

本能が危険だと叫んでいた。

 

「貴様…さてはプラネテューヌの女神だな?」

 

「ご名答。プラネテューヌの女神アイリスハートよ。まあ、この姿を見れば、脳みそ空っぽのおバカさんでもわかると思うけどぉ」

 

挑発するようにアイリスハートが言う。

僕はそれよりも彼女の右手に握られているものが気になった。

今にもちぎれそうな紐みたいなものは、しっぽだ。

その先にはずるずると引きずられて傷がついているワレチューがいた。

おそらくは先ほど逃げる途中で女神に遭遇、気絶させられたのだろう。

 

「ねえ、女神さん。その引きずってるやつ返してもらえないかな。そう見えても一応僕たちの仲間なんだ」

 

「いいわよ。はぁい」

 

刺激しないように頼むと、あっさりと返してくれた。

女神が放ったワレチューをしっかりとキャッチする。

 

「おっとと」

 

傷はたいして深くはないが、ものすごくおびえた表情なのが気になる。

 

「ネズミ程度では歯が立たないようだな。だがその程度で調子に乗ってるなら、すぐに後悔させてやるぞ!」

 

「まあまあ、サカっちゃって…そんながっつくものじゃないわよぉ?」

 

女神はなにやら光るものを二つ。胸の谷間から取り出した。

なんだか破廉恥だ。

 

「でも、その前に…二人とも、これなぁんだ?」

 

「それは…!」

 

「女神メモリー…奪われたか」

 

「ふん、野蛮な女神もいたもんだ」

 

女神メモリーを持っているから絡まれたのか、絡まれた末に奪われたのかは定かではないが、なんにせよ女神メモリーがあちらの手に渡ってしまった。

 

「あら、ひどい。これはぁ、ネズミさんへのサービスに対する正当な対価よぉ。それよりもこれから大事な話をするからぁ、あなたはちょぉっと黙っててね?」

 

アイリスハートはノワールとネプテューヌに向き直り、何かを話し始めた。「わたしの体!?」とか「やさしくしてね?」とか「なんでも」とか聞こえたがとりあえず無視。

 

「マジェコンヌ、これはちょっとばかしまずいかもしれない。下手すれば女神が増える。あの二人はどうやら、女神メモリーを使うこと自体には躊躇ないみたいだし…」

 

「なんだ。お前は私が負けるとでも思ってるのか?」

 

「いや、女神メモリーも無くなるし、女神が増えるしで、ここにいても僕たちにはもうプラスになることがないって言いたいんだけど…」

 

「ここで女神を葬ればプラスになるだろう?」

 

「ああもう…」

 

マジェコンヌから見れば「女神を葬る」ということがまず優先事項で前提のようだ。

彼女が七賢人に入った理由も女神に頼らない世界を目指したレイに共感したからだから、この発言も仕方ないといえば仕方ないものだけど。

だけど、なんだかあの女神には嫌な予感しかしない。

 

「お待たせぇ」

 

やっと話が終わったのか、アイリスハートがこちらに向き直る。

後ろのネプテューヌとノワールは釈然としないような、覚悟を決めたような複雑な表情を浮かべている。

 

「ふん、それよりいいのか?こいつらは、貴様のお友達なんだろう?」

 

「ええ、そうよ。それが何か?」

 

「女神になれる素質を持った人間は十万人…いや、百万人に一人存在するかどうかだ。もし資質のないものがそれを使えばどうなるか…知らないわけではないだろう?」

 

「醜い姿に変えられてしまう…だったかしら。まあ、そうなっちゃったら仕方ないわよねえ」

 

女神の素養のない人間は化け物になる。

僕は実際に見たことはないが、この話はかなり有名。

これが激レアである女神メモリーの競争率が低い最大の理由。

 

「冷たい女神だな」

 

「勘違いしないで。あたしはぁ、ノワールちゃんとねぷちゃんが女神だろうと醜い化け物だろうと…ちゃぁんと、おんなじように可愛がってあげられるってだけよ」

 

少しだけなにか引っ掛かりを感じた。

ほんのちょっとだけもやもやしたものが心の中にできたのがわかった。

それがなんなのか、ハッキリしたことはわからないけど。

 

「よーっし!いちばんネプテューヌ!いっきまーす!」

 

「え?ちょ、ちょっと。あなた、少しは躊躇とか不安とかそういうのは…」

 

ネプテューヌが早速メモリーを口に入れようとしていた。

あれって食べるものなのかよ。それは知らないよ。

 

「そんじゃノワール。おっさきー!」

 

「待ちなさい!女神になるのは私が先よ!」

 

そんなネプテューヌに感化されたのか、ノワールも負けじとメモリーを手にする。

二人が口に放り込んだ瞬間、白い光が辺りを包んだ。

 

その眩い光が収まった時にいたのは、美しくたたずむ二人の女性だった。

 

「…ふう。久しぶりね。この姿になるのは。いえ、向こうとは少し違うかしら?」

 

黒と紫を基調としたプロセッサを纏う紫髪三つ編みの妖艶な女性が呟く。

 

「なれた…私が、女神に…きゃはははは!当然よね!私がなれないわけがないものね。ああ、最高の気分だわ!」

 

こちらの灰色のプロセッサに銀髪のキリッとした女性は反対にテンションが高い。

銀髪のほうがノワールの面影があるとことを見ると、紫髪のほうがネプテューヌだ。

女神になるとこれほど変わるものなのか。

いやそんなことよりも…

 

「あああ、最悪だよ。もう…」

 

「うふふ。ふたりとも、とっても素敵よぉ」

 

「信じられん。こんなこと、確率的にあり得るのか?」

 

「まあ、実際なってしまったもんはなってしまったんだし」

 

どれだけ低い確率の話だろうがなってしまっては意味をなさない。

現実問題として女神が二人生まれてしまったのだ。

思いつく限りの最悪のシチュエーションだ。

 

「さってと…さっきはよくもやってくれたわね。たっぷりと、お返しさせてもらうわ!」

 

「女神三人だって。マジェコンヌ」

 

「まとめて葬り去ってやる!」

 

僕の忠告も聞かないマジェコンヌは颯爽と槍を構える。。

 

「使い古されたセリフねえ…ああ、そうそう。言い忘れてたんだけどぉ。あなたがこの二人を勝手にいじめたこと…あたし、ちょぉっとだけ怒ってるの。だからぁ…手加減してもらえるなんて、思わないことね!」

 

再度アイリスハートが剣を鞭のようにしならせ、地面をたたく。

それがゴングだというように、ネプテューヌとノワールがマジェコンヌへと向かっていく。

ネプテューヌは太刀を、ノワールは大きな剣をその手に具現化させ、マジェコンヌに斬りかかる。

素早い攻撃をマジェコンヌは難なくよけて見せる。しかしそれを予見していたかのように、ネプテューヌはさらに一歩踏み込んで一閃する。

さしものマジェコンヌもこれは想定外だったようだ。ダメージを受け、いったん退く。

 

女神になったばかりの女二人ならマジェコンヌは負けないと思っていた。

だがどうにも気になるのは、ネプテューヌの動きだ。

まるで元から女神だったかのように力を使いこなしている。

それに危険因子はもう一つ。

後方でにやにやと笑っているアイリスハートだ。

先ほどのセリフから考えて、そろそろ参戦してくるだろう。

 

「手伝おうか、マジェコンヌ」

 

「お前はそこで見ていろ」

 

助けを出そうとしたが即却下。

おそらくマジェコンヌは負けるだろう。

ここいらで痛い目を見させるのもいい薬かもしれない。

 

次に仕掛けたのはマジェコンヌだ。

槍をまっすぐネプテューヌの身体へと向け、突進していく。

これはまずい。焦っているのか、単調になっている。

その直進的な攻撃は当然避けられ、そこに待っていたのはアイリスハートによる電撃攻撃だ。

剣から放たれた紫の電光はくねくねと曲り、マジェコンヌを翻弄しがら空きの背中に直撃した。

 

「ぐああああっ!?」

 

マジェコンヌの変身は解け、膝を崩す。

 

「もう終わりぃ?そっちのあなたはどうかしら?」

 

物足りないといった顔で、アイリスハートがこっちを見る。

 

「僕はやめておくよ。戦闘要員じゃないし、そもそも女神に勝てるわけないし」

 

腰に手を当てるふりをして、腰に装備した矢筒から、矢を一本手にかける。

何としても無事に帰って、七賢人にこの状況を伝えなければいけない。それを可能にするのはこの手しかない。

 

「あら、逃がすとでも思ってるのかしら?」

 

ノワールが僕に剣先を向ける。

どうやら僕を捕まえて七賢人のことを聞くつもりだろう、だがそれほど簡単に捕まらないのが諜報員というものだ。

矢を取り出し、弓にかけてノワールを狙う。

 

「いや逃げさせてもらうよ」

 

矢を支えている右手を放す。

不意打ちの射出も、女神なら悠々と反応できるだろうが思い通りだ。

ノワールが剣で放たれた矢に触れた瞬間、矢の先端からあたりを包むほどの煙が噴出された。

 

「なっ…!?」

 

「なんなのよ、この煙…。もう!」

 

この矢筒の中にある矢にはこのようにさまざまなギミックが施されていて……なんて説明はまあいいか。

かくして女神の視覚を奪うことに成功した僕は、マジェコンヌとワレチューを抱えて逃げることに成功した。

 

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