神次元ゲイムネプテューヌ 渇望のアウトサイダー【完結】   作:ジマリス

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26 前に進むために

数日、僕はプラネテューヌの教会でお世話になることになった。

拒否はしたものの、力がなくなって動けない身体じゃ逃げることもできないわけで。

 

かつては敵であって、しかもあれだけ迷惑をかけた女神たちにはなんだか顔を合わせづらくて、体調不良を理由にほとんど喋っていない。

僕が女神たちの前にあまり姿を見せない理由は他にもいくつかある。

 

「ふう……」

 

誰も起きていないほどの早朝。

僕は洗面台の前に立ち、いま洗った顔をタオルで拭いた。

目の前の鏡をじーっと見つめる。

まだ充分にエネルギーが戻っていないせいでやつれているが、スッキリした顔になっている。

責任感やら重圧が背から降りたおかげだ。

まだ謎や今後のこと、細かいことは残っているが、大きいことは済んだ。

少しずつ解決していけばいい。

ああいや、まだ大きな問題が一つ残っている。

僕はゆっくりと上半身の服を全て脱ぎ去った。

 

緑の電撃は侵食を早める。

長年の経験でそれを知っていたが、レイを止めるのにはそれしかなかった。

その代償は顕著に表れていた。

最初は右手、それが広がって右肩まで広がっていた女神メモリーの侵食はいまや右胸にまで広がっている。

爬虫類のような鱗は触ればやはり堅い。

戦いが終わったいま、これが治るかどうかが一番懸念すべき問題なのだ。

この十年間進展なしというところを見ると、絶望的である。

 

僕は服を着なおし、部屋に戻って携帯端末を操作した。

アノネデスに渡された新型モデルだ。

当のアノネデスはいつの間にかいなくなっていた。

あれだけ女神が目を光らせていたのにも関わらず、だ。

それを知ったノワールは盗撮された画像を消す機会を失って憤慨していた。

 

携帯端末には様々な情報が映し出される。

この十年間のこと、僕の弓の設計、そして女神メモリーのこと。

アノネデスは、特に後者に関してはかなり熱心に研究してたらしく、あの姿を変えられた子どもたちが喋れるようになったのも、アノネデスがひとつの原因のようだ。

しかし僕という材料がいなかったのもあるが、僕はかなり異端らしく、シミュレートを重ねても研究が進まないらしい。

 

「僕が戻る可能性は低い、と」

 

『そういうことになるわね。知り合いの研究者もお手上げらしいわ』

 

僕はアノネデスに通話を申し込んだ。

送られてきた情報の詳細を知るためだ。

 

「ああ、知ってるよ。君がくれた情報は全部見た。かなり有名な研究者じゃないか、どこで知り合ったんだ?」

 

『ま、それはいいじゃない。こっちはもっと調べてみるわ。何年かかってもね』

 

ふふふ、と不気味に笑うアノネデスはいつも通りだ。

彼もまた、元通りになったのだ。

 

「無茶はしないでね」

 

『あら、あなたに言われるとは思わなかったわ。レイちゃんを助けるのに無茶したのはどこの誰かしらねー?』

 

その言葉を最後に、僕は通話を切った。

携帯端末を適当に放り、僕はため息をついた。

異端な存在になっていくという恐怖感が、焦りを生む。

たとえ僕の全身が丸ごと侵食されても周りの人が気にしないとしても、それとこれとはまた別の話なのだ。

彼女たちとは違う生物だと自覚するのが恐い。

異端だと認めてしまうのが恐い。

 

 

何をしたらいいのかわからない苛立ちを抑えていると、コンコンとノックが鳴った。

 

「ヤマト、起きてるッスか?」

 

アイの声だ。

端末の時計を見てみると、いつの間にか数時間が経過していたようだ。

 

「うん、どうした?」

 

「レイが目を覚ましたッスよ」

 

僕はすぐに立ち上がって、右手に手袋をする。

侵食された部分が見えないことを確認して、扉を開けた。

 

「おはようッス」

 

「おはよう、アイ」

 

 

 

 

教会の最上階にある広い部屋にはすでに女神たちが揃っていた。

レイから威圧感が消えたとはいえ、あれだけの力を持っていたのだ。

女神たちは全員、レイの監視という名目でプラネテューヌに泊まっていた。

 

「あ、ヤマトくん、もう大丈夫なのぉ?」

 

「まだ少し身体が怠いけど、問題はないよ」

 

「よかったぁ」

 

僕を心配そうに見るプルルートに返すと、彼女は心底安心したように深く息を吐いた。

 

「あれ、いつのまにか仲良くなってたんスか?」

 

「えへへぇ、そおなんだよぉ~」

 

プルルートの顔の周りに音符が見えるような喜びように、僕は少し照れた。

ううむ、面と向かって素直になられるのは慣れないな。

 

「それよりレイの状態は?」

 

「ごごごめんなさいごめんなさい!いろいろ調子に乗りすぎてごめんなさいー!」

 

「起きてからずーーっとあんな調子なのぉ……」

 

「なるほどね」

 

レイは女神たちに向かって頭を下げながら、大声で謝り続けていた。

その様子を見ると、どうやらあの大きな力の影響は消えたようだ。

 

「レイ」

 

「ああ、ヤマトヤマト!ごめんなさいごめんなさい!私あんなことを……」

 

「落ち着いて」

 

僕を見るなり頭をぺこぺこと下げて謝るレイに、僕はデコピンをかました。

 

「あいたっ」

 

これをすると、レイはリセットしたように落ち着くのだ。

 

「お、落ち着きました……」

 

「で、そろそろ本題に入るけど、あなた……レイでいいのよね。あなたも女神なの?」

 

「う、やっぱり気づかれてて…ごごごめんなさい!」

 

鋭く目をとがらせるノワールの質問に、レイは再び頭を下げた。

 

「女神で……力をどこかに捨てたってこと?」

 

このままではらちが明かないと思い、先を促す。

他の人が質問するより、僕が言ったほうが精神的に落ち着くだろう。

 

「それを話すには、ずいぶん長い話になるんですが……」

 

「そこんところくわしく。長話になっても構わないからさー」

 

珍しくネプテューヌが話の先を求めた。

 

「それはもう…遥か遥か、遠い昔。みなさんが生まれるより、何千年も、あるいは何万年も前のことになります」

 

「あ、本当に長話になりそうな予感。お茶とか用意したほうがいいかな」

 

「それじゃ、私が用意してくるです~」

 

と思ったらいきなり茶化しにかかった。

コンパもさっさと部屋を出て行ってお茶の用意をし始めたし。

 

それにしても、何万年も前?

レイが女神だってことすら僕ですら聞いたことのない話なのに。

 

「当時、この大陸には国という概念すらなく…」

 

口を動かしながら、レイはすっと一枚の紙を取り出した。

 

「おい」

 

「ちょっと待ったあーっ!!」

 

「ひっ!?な、なな、なんですか?」

 

僕とネプテューヌのツッコミに、レイが身体をびくっと震わせた。

レイが出したのは、黒と赤でぐちゃぐちゃと何か書かれた絵だった。

なにやら残酷的な絵だというのはわかるが、うん、良く言って前衛的だとだけ言っておこう。

 

「説明するときに絵を使うなって何回も言われてるッスよね…」

 

アイが呆れたようにため息をつく。

レイは何かを説明するとき、絵を使って説明するのだが、その腕が壊滅的なために毎回こういったツッコミが入る。

 

「絵?絵なの!?」

 

「わかりやすいように絵を出すんだけど……まあ見ての通り」

 

ノワールの驚きも無理はない。

僕だって最初はそんなだった。いや今でもそうだけど。

 

「いや、見ての通りって言われても……見てもわかんないわよ」

 

アイエフが言う。

そっすね。僕もそう思う。

見ても分からないものを説明させられる僕の身にもなって。

 

「まあ、このままだと進まないッスし……いつもの通りダイジェスト版でお送りするッス。ヤマトが」

 

「ういっす」

 

何千年、何万年も前、レイが女神になる前のこと。

当時この大陸には国という概念はなく、女神も伝説上の存在としか思われていなかった。

人々同士での争いは絶えず、無秩序な世界でレイは生きていた。

それほど前になると、レイ自身覚えていないらしいが、なんらかの偶然で女神になってしまったらしい。

女神となったレイは人々に求められるがままに国を作った。

『タリ』というその太古の国は、いまでは『大陸全土を支配し、圧政と暴虐をほしいままにした国』として伝えられ、レイを除けば一番古い女神であるブランのみがおぼろげに覚えていた。

国を作ったレイは、国民をより良く導いていこうとしたが、力を持つと性格が豹変するレイに対して国民は反発。

それがいつしか争いへと発展。レイはレイで反発する国民をことごとく蹴散らしたらしい。

信仰を糧とする女神はみるみる力を失い、人々は女神が現れる前よりも荒んでしまい、国は崩壊。

後に『タリ・ショック』と呼ばれる事件だ。

 

女神の力をほとんど失い、死ぬことも老いることもないレイは長い間考えた。

『女神が国を作って支配するのがそもそも間違いだったのではないか』

責任転嫁した形であるが、結果として、それが七賢人を立ち上げるきっかけとなった。

 

「と、こんな感じかな」

 

「おー、わかりやすいッス」

 

ちなみに、この説明を受けている間にレイは三枚の絵を出して女神たちを笑わせた。

これだけでまとめられることも、話で聞くと一時間ほどかかってしまったわけで。

 

「すー……すー……」

 

「ピーシェちゃん、寝ちゃったぁ~」

 

僕がまとめている間に、ピーシェはプルルートの膝枕で寝てしまった。

ピーシェにとってはいまいちよくわからない話だっただろうし。

あとまあ、笑い疲れもあっただろうし。

 

「ですけど、いまの話ですと、あなたは女神の力を失ったままのはずですわ」

 

「あそこまでの力を使えるのは変だな」

 

ベールと僕が疑問をぶつける。

目の前で力を体感した身としては、あれは他の女神よりも格段に強い力だったと言える。

タリなんて国がほぼ忘れられた存在となっていたのに、どこから力を得ていたのか。

 

「あ、それはこれから…って、あ。ああああ!そうです!そうですよ!ダメですよ、こんなのんびりしてたら!」

 

レイはハッとして、再び慌てだす。

 

「まだ解決してません!全然何にも解決してないんですよお!!」

 

「解決してない?」

 

慌てたまま手を右往左往させるレイにデコピンをして落ち着かせる。

勢いあまって強めにしてしまったため、レイは額を押さえたが、なんとかクールダウンしたみたいだ。

 

「ええと、ええと、ヤマトは知ってましたっけ?こことよく似た次元があることを」

 

「知ってるよ。アイから教えてもらって」

 

「ネプテューヌとネプギアがいた次元ッスね。ブランちゃんの妹もいるんでスって」

 

ネプテューヌはもともと違う次元の女神だったそうだ。

それが何らかの要因でこっちに来てしまったというのは、すでに聞いている。

ネプギアは次元を繋ぐ能力を持つイストワールによって半ば事故のようにこっちに来たらしいが。

 

「で、その世界にはもう一人の私がいたりして……」

 

「いたいた。正しい規制を作るぞー、なんてよくわかんない運動してたよね」

 

ネプテューヌが手を挙げた。

こっちと同じように、あっちのレイも女神反対運動をしているそうで。

 

「私が最後に見たときは、もう少し過激になってたかな?」

 

「…それが実は…私のせいといえなくもないような可能性がありまして…」

 

「詳しく」

 

アイが食い入るように身を乗り出す。

 

「えと……とにかくその世界では私は普通の人間として生まれてまして、でも私はやっぱり私なんで、うじうじしてて、ダメダメで、何にもできなくて…それでも、社会を変えようと思って一生懸命で、何の力もないのにすごく必死で……そう言う子がいるって知って、私、お願いしたんです。私に残されていたわずかな力をその子に届けてくれって」

 

「向こうのレイさんに力を…じゃあ、お姉ちゃんがこっちに飛ばされちゃったのって、やっぱり……」

 

「はい、向こうの私が原因かと……元はといえば、私が原因になるんですけど…」

 

「やっぱり!もー、おかげでどんなに苦労したことか!」

 

ネプテューヌが腰に手を当てながら、ぷんすこという擬音が聞こえてきそうな勢いで怒る。

 

「『お願いした』って言ったけど、誰にッスか?」

 

「黒い妖精……」

 

アイの質問に、僕は呟いた。

七賢人のアジトで見た、レイになにかを与えた黒い妖精。

あれがカギを握っているはずだ。

 

「あ、そう!クロワールさんのことも説明しないと!」

 

「クロワール……」

 

やはり、聞き覚えのない名前だ。

 

となると、厄介な人物のようだ。

ネプテューヌがこっちの次元に来たのも、レイが力を取り戻して暴れたのもそいつが原因なのだから。

 

「私が女神になったときからずっと一緒にいらした方で…」

 

「お、ちょーど俺の話をしてるみたいだな」

 

「え?」

 

その声とともに、件の黒い妖精が降ってきたように、いきなり目の前に現れた。

僕たちは一斉に警戒の構えをとる。

 

「君がクロワールか……」

 

「イストワールに似てるッスね」

 

確かに、イストワールが不良になったような風体をしている。

本に乗って浮くところも同じ。

ただし、なんだか得体のしれない雰囲気が気になる。

 

「えっとぉ~。黒いいーすんだからぁ、黒いーすんでどうかな~?」

 

「いやいや。悪いいーすんだから、悪いーすんだよ、どっちかっていうと」

 

「ガングロギャルいーすんを推すッス」

 

「いやいや、いまレイと僕が名前言ったじゃないか……それにそんなにガングロじゃないし」

 

プルルート、ネプテューヌ、アイの緊張感のないボケに力なくツッコむ。

他のみんなは警戒モードのまま、クロワールを睨みつける。

一番警戒しているのはイストワールだった。

 

「クロワール……あなたはいったい何者ですか?(;゜△゜)」

 

「さーな。たぶん、お前と似たようなもんだと思うぜ」

 

あっけらかんと笑うクロワール。

 

「たしかお前は、女神の紡ぐ歴史を記録するとかなんとか、そんな感じだったよな」

 

「は、はい。ではあなたも…?(;゜△゜)」

 

「まーな。俺の場合、『歴史を面白おかしくして』って条件付きだけど」

 

「そういう存在って、不干渉が鉄則なんじゃないのか?」

 

いろいろなコミックで『歴史の観測者』なるものを見たことがあるが、そういったものは歴史への不干渉を貫くものだ。

何らかの手を下せば、歴史の行く末がめちゃくちゃになってしまうからだろう。

そうなれば、観測どころではなくなってしまう。

 

「知るかよそんなもん。俺は気ままにやりたいことをやるだけだ。おかげであっちの世界では面白いものが見れたしな」

 

「違う次元では何か起きてるのか?」

 

『あっちの世界』とは、ネプテューヌたちがもといた次元のことを指しているのだろう。

 

「まあいまでも起きてるけど、何年か前にあった犯罪神のいざこざは見ものだったぜ。あっちとはまた違う次元じゃもっと面白いもんがみれたけどな。世界がぶっ壊れたんだぜ」

 

厄介どころじゃない。

表情を見るに、クロワールは文字通り『めちゃくちゃ』を望んでいるようだ。

そして今の標的は、『こっちの次元』と『あっちの次元』。

 

犯罪神のいざこざとやらの当事者なのだろうか、ネプギアが悔しそうに拳を握る。

それはいままで観察してきたなかで、一番複雑な表情だった。

 

「君は自由に次元を行き来できるのか。つまり、レイの力を届けたのは君ってわけだ」

 

「『いまでも起きてる』って、なにが起きてるんスか?」

 

アイの質問に、クロワールはにやりと笑い、レイを指さした。

 

「向こうのお前がさ、こっちの世界全部ぶっ壊すってよ。お前ごとな」

 

「ちょっと!何さらっととんでもないこと言ってんのよ!」

 

「世界を壊すなんて……」

 

ノワールとブランがクロワールに詰め寄ろうとしたそのとき、地震が起きた。

 

僕たちはあまりの揺れに、体勢を崩す。

このタイミングで起きたこれが、ただの地震であるわけがない。

いまクロワールが言った通り、あっちのレイが世界を壊そうとしているのだ。

だけど……

 

「どうやってこっちの次元に攻撃してきてるんだ?」

 

「私の力にはもともと、次元を貫くような能力がありまして……」

 

地震が収まると同時、レイが説明した。

ネプテューヌをこっちの次元に追い出したのも、その能力のおかげってわけだ。

 

「厄介ッスね……」

 

「おそらがまっくろっ!まっくろっ!」

 

ピーシェが窓から外を見た。

それにつられて、僕たちも外を見る。

まだ朝だっていうのに、あたりは夜のように暗くなっていた。

 

原因は、突如空に現れた巨大な黒い球体だ。

惑星と見まごうほど巨大なその黒い球体から、なにかが落ちた。

 

ドーンと大きな音がして、再び地鳴りが起こる。

空から黒い光が降ってきている?

違う、攻撃だ。

かなり遠いところに攻撃が落ちたにもかかわらず、その余波がここまで届いている。

 

「はは、あいつマジで、無差別にぶっ壊すつもりだな!」

 

「わ、私の力ですか?そんな、こんなことができるくらいに…」

 

「そーゆーこった。さて、向こうもさぞおもしれ―ことになってんだろーし……んじゃ、せいぜい頑張れよな!」

 

「待て!」

 

僕は手を伸ばしたが、あと一歩のところでクロワールは粒子のようにさらさらと消えた。

 

「わあ、消えちゃったぁ~」

 

「まずいッスよ。一転してめちゃめちゃピンチじゃないッスか」

 

僕は歯ぎしりした。

あっちのレイがこっちのと同じ性格だった場合、力を得たら容赦がなくなるということになる。

クロワールの言ったみたいに、全てを破壊するつもりだ。

長いこと熟成させたせいか、それとも違う次元に渡ったからか、あっちのレイの力はこっちのよりも遥かに上をいっている。

 

なにもかもが計算外だ。

 

「ぼーっとしている場合じゃないわ。とにかく今は、情報の整理と国民の非難を急がないと」

 

ノワールの一喝で、ブランとベールが我に返った。

あの球体からはまだまだ攻撃が続いている。

それがいつ自国に降ってくるのかわからないのだ。

大切な自分の国を守るために、女神三人はとてつもない速さで去っていった。

 

「ウチらはどうするッスか?」

 

「やっぱり、元から絶つしかないないだろうね」

 

「そんなこと言っても、あっちの次元に行く方法なんて……」

 

残された僕たちは案を出し合った。

防御も大事だが、攻撃をやめさせなければ話にならない。

あっちの次元に行くことができれば……

 

「いーすんさん!たしか、いーすんさんには次元を越えさせる力がありましたよね」

 

ネプギアがイストワールに向かって叫ぶ。

そうだ、イストワールには次元を繋ぐ力がある。

それさえ使えれば、あっちの女神に加えて僕たちが戦力となることができる。

 

「そうですけど、さっきからあっちのわたしに連絡しても全然繋がらあばばばばばば!Σ( ̄皿 ̄」

 

「うおっ、びっくりした」

 

話をしようとしたイストワールの身体がいきなり震えだす。

あまりに突然の振動に、僕も思わずびくっと震えてしまった。

 

「そっか、ヤマトはイストワールの通信見るの初めてッスよね」

 

「そんなことできるのか、こいつ…」

 

まあそうでもなくちゃ、次元を繋ぐなんてわけの分からないことになってしまうか。

 

「は、はい。もしもし?( ̄Д ̄)」

 

『す、すみません!何度も連絡をいただいたのに。ようやくかけなおすことができました!』

 

イストワールの口から、イストワールに似た女性の声が聞こえた。

なるほど、あっちのイストワールか。

少し大人っぽい声から察するに、あっちのはこっちのイストワールより成長しているみたいだ。

ん?成長するのか?

 

「そっちの状況はどうッスか?」

 

『プラネテューヌの街は壊滅状態です。女神の皆さんが集まって収束を図っていますが、街の中心部に近づくことすらできない状態で…』

 

諸悪の根源はあっちの次元のプラネテューヌにいる。

あっちには女神だけでなく、女神候補生と呼ばれる妹たちもいるはずだ。

なのに手一杯とは……。

 

「両方の次元に大規模な攻撃が仕掛けられてるってことッスか……」

 

「よほどだね。こっちで戦ったレイより明らかに強いだろう。そっちのレイさえどうにかできれば解決するんだけど……」

 

『それでなんですが、ネプテューヌさん、ネプギアさん。急いでこちらに戻ってきてもらえませんか?』

 

それしかない。

力を持つレイがあっちにいる以上、ネプテューヌたちになんとかしてもらわないと。

 

なんとか……してもらわないと?

 

違う。

僕はなんで七賢人を解散させたんだ?

子どもたちを守るために?

間違いを正すために?

 

ああ、そうだ。もちろんそうだ。

だけどそれはあくまで一端。

 

僕が夢見た、理想のために戦うため。

レイが言った『誰もが平等な世界』。

 

たとえそれが遥か遠い理想だとしても、ここで逃げたら、いつまで経っても僕は『化け物』のまま前に進めない。

 

「おー、やっぱりね。主人公であるわたしがいなきゃ無理ってことでしょ?もー、みんな頼りないんだから」

 

「だけど、次元移動するくらいのシェアってかなりの量が必要なんじゃ……」

 

『それなら大丈夫です。ある人が協力してくれます』

 

ネプギアの懸念を、あっちのイストワールはすぐに消した。

 

「ある人?」

 

『はい、ネプギアさんもよく知ってる人ですよ』

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