神次元ゲイムネプテューヌ 渇望のアウトサイダー【完結】   作:ジマリス

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3 アイ

あの場からやっとのことで逃げだすことに成功した僕は、マジェコンヌを背負い、ワレチューを小脇に抱えて七賢人のアジトへと戻った。

 

「ふう…ふう…」

 

プラネテューヌからもルウィーからも離れている少し古めの洋館。それが七賢人のアジトだ。

誰かが捨てたのか、使われなくなったそれを僕たちが利用している。

正面の少し重い扉を開けると、大きなあくびをしている金髪の少女がいた。

 

「ふあぁぁ……あれ、何してるッスか」

 

「アイこそ…もしかして今起きた?」

 

彼女の名前はアイ。

普通に暮らしていればおそらく中学生ほどの年齢だ。

彼女は両親を亡くしたところをアクダイジーンに拾われ、今では親子のような関係となっている。

同じく親を「いない」ものとしている僕と気が合い、ふさぎ込んでいた最初のころよりもずいぶん仲良くなった。

今はすっかりみんなともなじんでいるようで、ゆったりとした余裕のある生活を送っている。

余裕ありすぎてこんな昼を過ぎた時間まで寝ていたわけだけど、それはいつもどおり。

外に出るにも寝巻を着ていってるし、髪も整えずに寝癖でピンと跳ねている

 

 

「まあまあ、寝る子は育つって言うじゃないッスか。それよりもなんでマジェさんとネズっちを抱えてるッスか?」

 

起きてきたばかりであろうアイに文句を言うのはやめにしよう。たぶん言っても聞かないし。

 

「これは、うん。いい薬になればいいけど…」

 

感情のままに戦ってしまうマジェコンヌもこれで少しは大人しくなってくれればレイの負担も減る。

もっと言えばマジェコンヌとワレチューの口喧嘩がなければ心の平穏が保てる。

 

「うええ…なんかよくわからないんッスけど。仲間外れッスか?」

 

「仲間外れも何も起きてこなかったアイが悪いんだろ。七賢人の活動するわけでもなしに」

 

「あ~七賢人関連ッスか。ウチはてっきり口喧嘩の末なにかが爆発したとかそういうのかと思ったッス」

 

「なにかってなんだよ」

 

「なにかはなにかッス。アノ姉さんとか」

 

「適当すぎるだろ」

 

「あ、でもあの中だったら一番爆発しそうなのはコピリーッスよね」

 

「それはなんとなくわかる。わかるけど何の話だ」

 

こんなふうにアイは話を飛躍させることが多い。本人はいたって真面目なのかもしれないけれど。

そんな彼女も最近はちょくちょく鍛えている。スライヌ程度の弱いモンスターなら一人で倒せるくらいにはなった。

見たところでは足技が得意のようで、アクダイジーンとアノネデスが一緒に戦闘用のブーツを開発していたりする。

 

「しかしヤマトも大変ッスね。七賢人の仲間入りとは。一回会議覗いたことありますけど、あれッスよね。あんまり話進まないッスよね」

 

「メンバーがアクが強すぎる上に議長が流されるからだよ…会議というよりかは報告会みたいになってるかな」

 

よくもまあ、あのレイが個性の塊とも呼べるメンバーを集めたものだと、いつも感心させられる。

 

「そういやいつまで「七」賢人なんッスか?ヤマト入れたら八人ッスよね?」

 

「僕が加入する前から七賢人だったし、今更変えるのもなあ…って。そう言ったのは僕だけど」

 

「ええ?そんなの周りから見たらヤマトがいないみたいな扱いになってるじゃないッスか!」

 

「…まあ僕は諜報員みたいなものだからね。そっちのほうが都合はいいんじゃないかな」

 

といっても女神三人の前でバラされたわけなんだけどね。

これからはいきなり動きづらくなりそうだ。

 

「うぇへ~。な~んか納得いかないッス」

 

「ほらほら、もうその話はいいでしょ。それよりもレイ見なかった?」

 

頬をふくらましたアイをなだめ、僕はレイを探す。

女神が誕生したことを早く伝えないと。

 

「レイさんッスか?ついさっき会議室でアノ姉さんと一緒にいるの見たッスよ」

 

他のみんなは各々の仕事をしているだろう。

 

「ありがとう」

 

「あ~ちょっと待ってくださいッス」

 

「ん、どうした?すぐ報告しなきゃいけないことが…」

 

「なんか嫌なことでもあったッスか?」

 

アイが僕の目をのぞき込んで言う。

時々、彼女は普段見せない鋭い部分を見せる。

隠し事をしているときにはそれを射抜くように言い当ててみせる。

 

「いや…ないよ」

 

嘘をついたわけではない。

ひっかかりはあるものの、それがなんなのか僕にはわからない。

そのかすかな迷いをアイは感じ取ったのだろう。

 

「……ま、いいッス。何かあったらすぐ言うッスよ?ウチだって力になるッス」

 

「心強いよ」

 

例えば「家族」というものがあったなら、こんなものだっただろうか。

目の前でにこっと笑うアイを見て、身体の内側が暖かくなる。

僕はアイの頭をなでた。

 

「うぇへへ」

 

満足そうに僕の手を受け入れ、また笑う。

 

「はっ!またそうやって懐柔しようとしてるッスね!騙されないッス!」

 

「懐柔の意味が違うし騙してもいないよ…」

 

今度、言葉を勉強させようと思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「ええっ!?女神が誕生したんですか、しかも二人も!?」

 

会議室には、アイの言った通りレイとアノネデスがなにか話し込んでいた。

他のメンバーはいない。

アクダイジーンはアクダイジーンで仕事があるし、ほかのメンバーも暇ではないのだ。コピリーエースだけは知らないけれど。

 

「うん、しかも一人はこの前言ってたネプテューヌってやつだったよ。レイの言うことが当たったというか、予言みたいになっちゃったな」

 

しかしレイの反応を見る限り、予測通りではないようだ。

もともとレイが言ってたのは「ネプテューヌが女神であること」だし、現実とはずれている。

 

「それでその二人がそういうことになってるのね」

 

会議室の椅子に座らせたマジェコンヌとワレチューをアノネデスが一瞥する。

二人ともそれほどの傷は負っていない。むしろ、あの嫌な感じがしたアイリスハートに痛めつけられたであろう精神のほうが気にかかる。

 

「大変だったよ。人ひとりとネズミ一匹抱えて走るのがあんなにキツイことだとは…」

 

「だからアタシがパワードスーツでも作ってあげましょうかって言ったのに」

 

「本当に検討しなきゃいけないかも…」

 

恰好が目立つことから今の今まで拒否してきたが、正体もばれてしまったし頼もうかな。

 

「いいいやいやそれよりも!どどどどどうしましょう!」

 

ネプテューヌどころかもう一人まで女神化したとあって、かなり動揺しているようだ。

 

「うーん、どうしようかしら。基本は情報収集からよねぇ。今のところ力でかなうわけじゃなさそうだし…」

 

「そうだね。あの女神たちがそのままプラネテューヌにいるか新しい国を作るかによっても対策が変わるし」

 

ルウィーはともかくとして、女神が三人いる現在のプラネテューヌを落とすことは至難の業といえる。

七賢人の戦闘担当がこうも簡単に返り討ちを食らう事態にまで陥っているのだ。

対策を練るためにもいま無策に動くのはいいとは言えない。

 

「ええええ!?……ってことは」

 

「様子見、だね」

 

「ええええええ!?」

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