神次元ゲイムネプテューヌ 渇望のアウトサイダー【完結】 作:ジマリス
「『がはははは。ルウィーの女神が貴様らを引き付けてくれたおかげで、すんなりと破壊工作ができたぞ』」
僕はアノネデスに手渡された紙を見た。
「なにこれ」
「コピリーちゃんに渡した文章よ。ラステイションの工場を壊しつつ、女神が現れたら読むように言ってあるの。どう?」
「コピリーに漢字が読めるとは思わないかな」
紙を丸めて、会議室の隅にあるゴミ箱へ向かって投げた。見事に入る。
「ああ、そうよね。失敗だったわ。まあワレチューちゃんも一緒に行ってるし大丈夫よね」
「つまり、七賢人とルウィーの女神がグルだと思わせるってわけだね」
「そ。ルウィーの女神とラステイションの女神は衝突は回避できるし、ルウィーが七賢人と繋がってるって勘違いして仲は悪いまま」
あくまでも今すぐの戦争を避けるための策だった。
この状態がこんがらがれば、よりひどいことになってしまう。
それは避けなければいけない。
『あ~やっぱりアノ姉さんの仕業ッスか』
僕の折り畳み式携帯端末から、アイの声が聞こえる。
「お、アイ。そっちはどうだった?」
『まあアノ姉さんの思惑通り進行してるッスね。コピリーは普通に負けたみたいッスけど』
偵察を任しているアイしかあちら側の現状はわからない。
しかしとりあえずは作戦通りみたいだ。
「まあねえ。今回のは緊急措置的な策だし…」
『残骸…とかどうするんッスか?』
「……あ…」
『…まあいいッス。あとでウチが回収するッスよ』
「いや、僕が回収するよ。アイはそのままルウィーに向かってくれるかな。今後の戦争を回避したわけじゃないし、常に最新の情報は持っておきたい」
『ガッテンッス!』
アイが通話を切ったのを確認すると、僕はその端末で情報を集めることにした。
会議室はみんな集まってきているものの、今はまだ様子見だ。
「ううん、ん?アブネス」
「どうしたの、ヤマト?」
気になる記事を見つけた僕は、アブネスに端末の画面を見せる。
「いや、これ知ってる?」
「なになに…『子どもたちの神隠し相次ぐ』……ってなにこれ!?」
アブネスが素っ頓狂な声を上げる。
「ちょっと前からある事件らしいんだけど、幼年幼女に詳しいアブネスなら何か知ってない?」
以前子供の行方不明事件があったのは覚えているが、連続で起こったのは初めて聞いた。
「知らないわよ!誰よこんなけしからんことやってるの!?はっ、女神ね!こんな極悪非道を働くのは女神に違いないわ!!」
「どんな理屈だよ……って行っちゃったか」
僕が止める前に、アブネスは全速力で出ていった。
△
ギリギリの戦争回避から数日後、とくに戦争が起こる気配もなく、アイは近況を知るためにルウィーへ赴いていた。
もちろんのこと、コピリーエースは女神たちに負け、そのバラバラになった身体はヤマトによって回収済みだ。
「ふうん。これがこの大陸最大の国家、ルウィーの街並み…興味深いですわね」
「き、ききき金髪おっぱいだ…」
落ち着いたルウィーの街並みにおおよそ似つかわしくない、露出度の高い緑のドレスを着飾っている女性に、アイは目を丸くした。
なによりもアイにはない、豊満な体の一部を揺らす姿に驚愕していた。
「なにか、褒められてるような違うような複雑な言葉ですわ」
女性はアイに気が付くと、品定めするようにじとっと見た。
「いやあ、失敬失敬。っとこんなことしてる場合じゃなかったッス。ブランちゃんから情報を集めないと…」
「ちょ、ちょっとお待ちになって!今、ブランと仰いました?」
「ん~?言ったッスけど…」
ブランの名前に焦った反応を見せる女性に、アイはすこし警戒する。
「あ、いえ…ほんの少し、気になりまして…どういった方なのですの?」
「あー、えっと。言い表すには簡単じゃないッスけど、まあ一言でいうならキレッキレッスかね」
「キ、キレッキレ?」
「お?あそこにいるのは……おーい、プルちゃーん!」
遠くにぜえはあと息を切らして休憩しているプルルート、ネプテューヌ、ノワールを見て、アイが手を振った。
「おー、アイちゃん久しぶり~」
アイに気付いたプルルートたちが合流する。
「あら、あなたもルウィーに来てたのね」
「まあ、観光みたいなもんッス。そっちはなんで?」
「なんでもなにも文句言いに来たのよ、文句!」
「いやあ、本当はプラネテューヌでグチグチ言ってただけなのを、変身したぷるるんにおしお……ちょっと怒られたから来たんだけどね」
「はは~ん?」
ネプテューヌの言葉を聞いて、アイがにやりと笑う。
それでルウィーに来る途中、兵士に見つかりでもしたのだろう。
息を切らしているのは、それが原因か。
そんな二人のいやみったらしい行動にも関わらず、ノワールはぷんすこ怒っていた。
「それにしても、偶然だね。アイちゃ……うーん、アイちゃんっていうと違う子を思い浮かべちゃうからなー…」
「うぇぇ…じゃあ、『篠宮』はどうッスか?ウチの苗字なんスけど」
「シノミヤシノミヤ…あれ?どこかで聞いたことあるような…」
「じゃ、シノちゃんで~」
「お、気に入ったッス」
何かを思い出そうとするネプテューヌをさしおいて、プルルートがアイのあだ名を決めた。
アイも納得したようで、にこにこと笑っている。
ネプテューヌは悩んでいたのもつかの間、まあいいかというふうに考えるのをやめた。
「で、隣の人は?」
「金髪ボインのチャンネーッス。ルウィー初めてらしいッス」
ノワールをアイの隣の女性を怪しい目で見た。
「てことは、ルウィーの人間じゃない…?」
「うっ……。お、お友達が見つかってよかったですわね。では、わたくしはこれで…」
いぶかしむノワールから逃げるように踵を返そうとする女性。
それを逃がさないようにネプテューヌが指さした。
「ああああああ!!ベール!ベールだーっ!」
「ぶーっ!?な、ななな、なぜわたくしの名前をっ!?」
ベールと呼ばれた女性がおもいっきり吹きだした。
「ネプテューヌの友達ッスか?」
「うん!そっかそっか!やっぱりこっちにはベールもいたんだね!うわー、久しぶりー!」
初対面とは思えないほどべたべたと触るネプテューヌに対し、ベールは唖然としていた。
「つまり、向こうの世界での知り合いなのね」
「こっち…?向こう…?」
ノワールの言葉にアイはハテナを浮かべる。
「ねぷちゃんはね~、実は違う次元から来たんだよ~」
「ナナナナンダッテー!」
「…あなたってネプテューヌ並みにノリがいいわよね…」
目を丸くしてみせたアイに、ノワールは呆れた。
実際にはアイは相当に驚いている。七賢人、細かく言えばアノネデスの情報にもなかった事実だ。
プルルートとネプテューヌが言っているだけなら、「はいはい」で終わらせていたが、ノワールが文句を言わないところを見ると本当のことらしい。
「あ、紹介するね。この人はベールって言って、私やノワールとおんなじでリーンボックスのめが…」
「わーっ!わーっ!わああああっ!!!」
「わ、びっくりした。どうしたの?いきなり奇声張り上げたりして」
イメージにそぐわない叫び声を上げるベール。
近くにいたアイは、ブランで慣れているのかすでに耳をふさいでいた。
若くして耳が遠くなるのは避けたいのである。
「あ、あなたが軽々しく乙女の秘密をバラそうとするから!ちょっとこちらにきなさい!」
ベールはネプテューヌを引きずり、焦りながらも小声で何かを話しだした。
「めが…ってなんなのかしら」
「そりゃメガドラ…」
「わーーーっ!!」
ベールと同じような叫び声をあげるノワールのそばで、アイは耳をふさいだ。
「わ~、ノワールちゃん耳元で怒鳴らないで~」
「さっきの物まねッスか?」
「あなたが危ないこと言いそうになるからでしょおおお!?」