竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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モンスターを追う竜

 【ガネーシャ・ファミリア】の団員から話を聞いて気になった私は西ゲート付近へ向かい、地下へと侵入した。でもそれが間違いだった。

 それからしばらくしてモンスターが脱走した事を知り、ここにいたせいでそれに気づくのが遅れてしまった。ただここにいたおかげでこの事を知れたとも言えるけど。でもこの様子ならあの方はもういないでしょう。だったら……。

 

「失礼します」

「おう、俺がガネーシャだ!!」

「相変わらずですね」

「むっ? おおっ、お前はカレンではないか!! 入団希望か?」

「違います」

 

 私はファミリアの団員たちの目を掻い潜り、地下から上階へ。最上部の観覧席にいたガネーシャ神の所にやって来た。この方の事だから借りを作ってでも他のファミリアの助けでモンスターの討伐を命じてる筈。でも私はあえてガネーシャ神に伺いを立てる事にした。

 

「私も手を貸します。が、地上からの救援に出なかったのはこれからの事を考えてです」

「ん、どういう事だ?」

「ガネーシャ神を信用してお答えします。私はスキルによって主神がなくとも【ステイタス】を維持しています。今回の件が解決したのち、協力してくださった他の神々への貸しを作る中で私だけは異例になるからです」

「なんと、そのようなスキルを……!」

「他言はしないで下さい」

「もちろんだ! お前の信頼を裏切らないと誓おう! そしてお前にも脱走したモンスター討伐を依頼する! これはお前指名の緊急冒険者依頼(クエスト)だ!」

「私はもう冒険者ではないんですけど、とにかく受諾します。それでは」

「ああ、頼んだ!!」

 

 ガネーシャ神の言葉を受け取ると同時に背中の翼で上へ昇る。闘技場の内部とは言え、観客の目は中央のショーに釘付けで私に気づいた気配はなかった。

 高く飛び上がると脱走したモンスターの姿を探す。まずは耳を澄まし騒ぎが起きている方向を探し、

それが東であることを突き止める。すぐにそっちの方角へ移動する。するとその姿を見つけた。

 

「【剣姫】じゃない」

「え?」

 

 闘技場を囲む柱の1本に彼女がいた。ロキ神も討伐に協力したみたいね。

 

「まぁいいわ。貴女は自分が届くところでいいわね」

「何を――」

「お先に」

 

 会話もほどほどに、翼を羽ばたかせて移動をする。その最中に両手に双剣を握り、目の前のモンスターを十字に斬った。

 

『ガァァァァ……』

 

 悲鳴と共に消滅し、魔石が出現する。折角だからこの魔石は回収しておく。このまま続けて2体目、3体目を倒す。それほど多くは脱走してないみたいだったから【剣姫】と一緒になればすぐでしょう。

 そう思っていたら地面に揺れを感じ、別の場所で大きな音が聞こえた。

 

「あれ……?」

 

 この揺れと音が脱走したモンスターの仕業なら、ありえないと私は直感でそう思った。

 

 

 

 

 

 目の前でその巨体を堂々と見せる顔のない蛇のモンスターは手ごわい相手だ。さっきティオネさんに様子を見て詠唱を始めてとは言われたがティオネさんとティオナさんの打撃が通じない相手に少し気圧されてしまった。しかもモンスターは怒り狂ってお二人に襲いかかっている。それでいて軽やかに周囲を飛び回ってその攻撃を避けるお二人はすごい。

 この状況の停滞が私にとっては詠唱の時間。すぐに口ずさむ。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」

 

 使う魔法は【アルクス・レイ】。自動追尾の単射魔法。そしてすぐに出せる短文詠唱の魔法だ。出力は控えめだけどその分、高速戦闘に対応できる。それにモンスターはお二人の攻撃にかかりっきりでこっちに気づいていないから狙いも十分に定められる。

 突き出した片手の先に山吹色の魔法円(マジックサークル)が展開しながら魔法が構築されていく。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!!」

 

 最後の韻が終わった。魔法名を唱える前に魔力が集する。

 その直後、モンスターが私を見た。

 

「――え」

 

 思ってもみなかった反応に声が漏れると同時、私の心臓は悪寒とともに打ち震えた。なんで急に私を見たのか、退避をしているお二人が視界の隅に残る中で、『魔力』に反応したと直感した。

 この間、私の思考は外の時間より遅く動いていた。いや、逆に早く動いていた。でなければここまで冷静に直感を得ることは出来なかった。ただそれが体を動かす力を、凍り付かせていた。後になって私に向かって黄緑の触手が伸びてきている事を。このままなら私を叩き付け貫いただろう。

 でも、そうにはならなかった。

 

「【グニタヘイズより贈り物を】」

 

 この言葉を聞いた直後、目の前に壁が降ってきて私を守ってくれた。その後に見たのは綺麗な紅い鱗を持つ尻尾だった。

 

 

 

 

 

 

 

 間一髪っ! ギリギリでタワーシールドを狙い通りに出せたわ。足りない速度は私が上から押し付けてなんとかなったわね。途中、持っていた双剣をしまわず捨ててきたけど後で回収するなり諦めるなりするしかないわね。

 

「【千の妖精(サウザンド・エルフ)】ちゃん!」

「はっ、はい!」

「無事ね。ならこの盾を壁代わりにしときなさい!!」

 

 彼女が無事なのを確認すると目の前のモンスターを見上げる。すると先端部分をもたげるとその頭部からいくつもの線を走らせ、そして咲いた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 モンスターの咆哮が轟く。何枚もの花弁の中心からさらに開く巨大な口は禍々しささえあった。

 

「蛇じゃなくて花!?」

 

 驚愕する【大切断(アマゾン)】の言う通り、これは蛇のモンスターではなくて食人花のモンスター。そしてその口は真っ直ぐにこちらを向けていた。さっき【千の妖精(サウザンド・エルフ)】ちゃんが魔法を発動させようとした所で反応したところを見る限り、このモンスターは魔力に反応し、そして仕留め損なった獲物(・・)を諦めてない。

 

「でも植物ならっ」

 

 このモンスターに適しているであろう武器――1本の斧を手に取る。ただし形状は戦斧(バトルアックス)よりも伐採斧(フェリングアックス)そのものだ。属性なんてものはないが、それに目を瞑る程の物を持つ。それは。

 

「はっ!!」

 

 迫ってきていたモンスターの首をこの斧で両断する。その一刀は手際のいい伐採のようだった。

 この斧は【ビーンスターク・ブレイク】。草木に対して最高の切れ味を持つ武器だ。属性頼りに限らない武器開発の一環で製作し、樹木の構造を理解した上で作り上げた武器。ただしそれ以外のものに対しては普通の戦斧(バトルアックス)以下のナマクラでしかないけどね。

 でも、この相手には十分すぎる。

 

「レフィーア!」

「アイズさん!」

 

 そこに【剣姫】が現れた。この騒ぎじゃこっちを優先するのは当たり前か。でも。

 

「脱走したモンスターは?」

「それは、まだ……」

 

 でしょうね。こいつが今もっとも危険ですぐにでも討伐しなければならない相手だ。ただしここに戦力が集まるのは些か危ない。と思っている内に更に三体!

 

「【ロキ・ファミリア】の4人(・・)!! ここは任せて大丈夫!?」

 

 聞いた彼女たちは何を言ってるんだって思うでしょうね。でもここに私たちがいる限り、他で暴れまわるモンスターがいる。どれだけ討伐したのかもわからない。そんな情報不足の状態で一体に構っていては被害が大きくなるのは目に見えている。

 非情だと思うでしょう。でも私は良くも悪くも、ここの4人を信じていた。

 

「……問題ないわよ! 行くなら行きなさい!!」

「ティオネ!?」

「バカっ、モンスターはこいつらだけじゃないんだから別れた方がいいわよ! それに、あんたに頼らなくても私たちなら問題ない!!」

 

 私の言葉に返事をしたのは【怒蛇(ヨルムンガンド)】だった。拒絶する物言いだけど私の同じ事を考えていた。この戦いで血が昇ってるとは思っていたけど、意外と冷静だったわね。いや、私を見て何かあると考えて、その結論が出たのかもね。

 

「その言葉、信じるわ!」

「うっさい!! その内、団長の前に引き摺ってやるから覚悟しなさいっ!!」

「それは、覚悟しとくわ」

 

 ひと振りしか使わなかったビーンスターク・ブレイクをしまうとすぐに飛び、残りのモンスターを探し始める。途中、食人花のモンスターを見下ろした。改めて見るけど新種のようだし、しかも地下から出現している。そして私が斬った1体を合わせて計4体。このモンスターは【ガネーシャ・ファミリア】が捕まえてきたモンスターではない事は明らかだった。

 この街には、ヤバい物が潜んでいる証拠でもあった。でも今はそれを頭の隅に置き、モンスターの姿を捉えようとした。






属性『なし』の武具について
 属性付与された武器はそのほとんどが上位武器となるがその分、作るのにも手間がかかる上に上級鍛冶師(ハイ・スミス)しか打つことができない。
 そんな中でカレンはあえて属性付与をしない制限で【製作】アビリティをフルに活用して試行錯誤を始めた。もっとも使わないのは属性付与だけであって外すのは【鍛冶】や【神秘】なのであり、【調合】などはその範囲に収めた。結果として特化性の強い武具を作れるようになったが高い技術と知識を求められたので結局、属性付与したほうがいいとわかっただけだった。


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