竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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第2章「竜とファミリア」
悪戯神のホーム


「回収していった物を返してください」

「いや、つったら?」

「そうですか。では大事にして下さい」

「いやいやいや冗談や!! こうバッサリ会話を切らんといて!」

 

 怪物祭(モンスターフィリア)より翌日。私は【ロキ・ファミリア】の拠点(ホーム)こと黄昏の館、その応接室にいた。要件はロキ神が回収していった武器を回収するためだ。もっとも、ここには現時点で会いたくない人がいるからここに来るまで、自覚できるほどに不機嫌だった。でもここの門番に怯えられた時点でそれは抑え込んだ。

 

「まったく、私と話がしたいなら冗談は控えてください。貴女様が良くてもここには私を歓迎できない人達が少なからずいるでしょう」

「それはウチが言い含めてやったから大丈夫やで。と言ってもカレンちゃんを嫌悪しとる子はおらんで」

「え、それはなぜですか?」

「フィン、そしてリヴェアとガレスが諌めたんや。まぁカレンちゃんが遠慮なくボコったせいもあって敵意を超えて開き直った感じやな」

 

 そこまでやったかしら私? いや、やったんでしょうね間違いなく。あの時の私って情緒不安定だったし。

 

「では15年前の件に関しまして、【ロキ・ファミリア】の団員からは特に恨まれていないと認識してよろしいでしょうか?」

「おう、それでええで。まぁカレンちゃんの言う通り15年前は、だけやけどな」

「やっぱりですか」

 

 今でも感じる視線は複数。内2つは明確な敵意だ。そしてその2つには心当たりはあるし、無視するつもりはない。そして他のいくつかそれとは違う方向の視線だ。こっちの内、1つだけが気に食わない。

 

「では話を戻し、もう改めて言います。私としてはあの双剣とタワーシールドはなくなっていればそこで諦めていた程度の品ですが、貴女様の下にあるなら別です。回収するにせよお渡しするにせよ、話だけはしておきたいのです」

「そうなん? 諦めるにしては結構いい品やったと思うんやけど?」

「ただ振り回しやすい2本の剣と重いだけのおっきな盾ですよ。あの程度、作ろうと思えば作れますから」

「ほぉ、上級鍛冶師(ハイ・スミス)級の武具があの程度か。『製作』のアビリティも結構な物になってるみたいやな」

「ロキ神、自然に話を変えようとしても騙されませんよ」

「そりゃあ残念やな」

 

 やっぱり。神様たちの中でも随一の悪戯者(トリックスター)のこの方の弁はよく自然に回る。こうして私の実力を探ろうとしているのがいい証拠よ。でもこの方が止めようとは思わないし、しょうがないか。

 

「では交換と行きませんか。武器を回収したお礼に私がお返しをするという事にしましょう」

「なんかくれるんか?」

「私の【ステイタス】の閲覧でどうですか?」

「ブフゥッ!?」

 

 あ、吹いた。さすがに破格すぎたか。ロキ神にとってはだけど。あと扉の向こう側も物音が聞こえたわね。

 

「ちょちょちょ待てや! なんでそんな貴重なもんを対象にすんねん!」

「そうですね。でも今回は相手がロキ神であるからでもあります。貴女様なら例え私の【ステイタス】を見たとしてもそれを吹聴することはしないでしょう」

「むっ、むぅ……」

 

 私の言葉に言い淀むロキ神。ここで私の実力を見ておく事はこの方にとって価値ある情報(カード)になる。元々、探りを入れていたしね。そしてフレイヤ神(ライバル)を意識してこの情報はロキ神自身で留めるはずでしょう。でなければ悪戯者(トリックスター)とは呼ばれてないでしょう。

 

「どうしますか?」

 

 神相手に追い立てるような言葉が出るけど、この程度ならロキ神がどんな返事をするのかは簡単に予想出来ていた。

 

 

 

 

 

カレン・デュラス

 Lv.7

 力:B734 耐久:B781 器用:S988 敏捷:B702 魔力:C679

 製作:G 精癒:D 耐異常:G 再生:H

《魔法》

【ミュニアストレジャー】

 ・収納魔法

 ・出し入れは体の届く範囲限定。

 ・収納の容量は魔力に依存。

 ・収納中、内部の時間停止。

 ・詠唱式【グニタヘイズの穴蔵、その奥底に宝物を置きましょう】

 ・解除式【グニタヘイズより贈り物を】

《スキル》

器用貧乏(マルチマスター)

 ・あらゆる製作系発展アビリティ能力の獲得。

 ・経験・知識・技術の忘却防止。

 ・能力限界の消失。

孤高眷属(インデペンデンス・ファミリア)

 ・主神を失っても神の恩恵(ファルナ)を維持する。

 ・【ステイタス】を更新する。

 ・主神を得た際は封印される。

 

 

 これがカレンちゃんの【ステイタス】やった。まさか応接室で見るわけにもいかんかったからウチの部屋で見してもらってる。応接室から出る時、なぜかカレンちゃんが動かんかったけど扉の向こうにいたみんなを解散させるとここでようやく動いてくれたわ。ウチ以外には見せとうないって事やな。

 

 それはともかくこれは凄まじい。レベルや発展アビリティも凄いモンやけど、何よりスキルや。【孤高眷属(インデペンデンス・ファミリア)】。これは事実上、どこのファミリアに所属しなくても神の恩恵(ファルナ)を持ち続けられる。まるでゼウス以外の眷属(子供)にはならんって言ってるようなスキルやな。でもこのスキル、どっかのファミリアに入って封印されてもただ使えなくなるとは思えんな。

 

「もうよろしいですか?」

「あ、ああ。ええで」

 

 十分に見たし、カレンは服を着て背中を隠す。

 ってしもた! 折角のカレンちゃんの生肌にセクハラするの忘れとったぁ!!

 

「しかしロキ神がセクハラしないのは意外でしたね。まぁ実行しようものなら【ゼウス・ファミリア】名物、セクハラ主神制裁技の1つを繰り出してましたけど」

 

 いやっ、やらなくてよかったわぁ!

 

「それはともかく、これで武器は返してくださいますね?」

「ああ、ええで。しかし確かにこの情報は流せんわ。そしたら他の神共が派手に動く事になるやろうしな」

「だからですよ。この情報はロキ神にとっては使わない劇薬です。危ないものは自分の手の中に管理するのが一番、と言う事です」

「神相手にそんな手を使うとはなぁ。立派になったな」

「お褒めの言葉と受け取りましょう。では早速受け取りを行いたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ん、そやな。じゃあついて来てぇな」

 

 手招きをしながら素直についていくるカレンちゃんと部屋を出る。今度は誰も居らんかったな。多分、フィンかリヴィアが近づかせんようにしてくれたんやろうな。

 廊下を進みながら軽く世間話をカレンちゃんとしたが、こっそりと入れた誘導には全く乗って込んかっちゃな。でもカレンちゃんが言いたくない部類は大体わかった。

 『オラリオ(ここ)への目的』『ゼウス・ヘラ両神の安否』『頑なな勧誘拒絶の理由』の3つ。最後の1つはウチのファミリア限定の事やけど。でもウチ相手にこれだけの情報でも十分なのは分かっとるやろうに。いや、いつか知られる前提か。つまり隠し続けるつもりはないっちゅう事やな。なら、後はウチなりに調べるか。あの件も別に調べながらな。

 

「あら」

「ん? あっ、アイズたーんっ」

 

 ちょうど剣と盾を入れておいた倉庫の前にアイズたんがおったわ。ゴブニュん所の三鎚の鍛冶場から戻ってたんな。

 

「ロキ。それにその人は……」

「おう、カレンちゃんやで。何度が顔は合わせとるよな?」

「うん。あっ、昨日はありがとう」

「はい?」

「ああ、昨日のモンスターにカレンちゃんの剣を使わせて貰ったんや」

 

 あん時はアイズたんの剣が折れてもうたからな。他にも剣はあったけどカレンちゃんの剣の方が良い剣やからな。ホントにちょうどよかったわ。

 

「あの時に役立ったなら幸いです」

「そうか。なら今、倉庫を開けるけん持って帰ってぇな」

「え?」

「え?」

「ぬ?」

 

 カレンちゃんに返そうとして聞こえた声はアイズたんのものやった。なんかそれを予想してなかった声や。これってまさか。

 

「アイズたん、あの剣に愛着できたか?」

「…………………………うん」

 

 メッサ溜めて肯定しよった。いや、ここはあのアイズたんがあの武器がカレンちゃんのもんとわかってる上で肯定した。遠まわしに欲しいって言ったも同然。

 

「つまり、貴女は私の持つ武器が欲しいと」

 

 そしてカレンちゃんもその事に気づかないわけがないんや。アイズたんも、正直に首を振った。

 

「なるほど。でも残念だけどあれの所有権は私に戻ってるわ。さっきロキ神と話が終わって今まさに回収する所よ」

「そうなんだ……」

 

 あ、シュンとなった。まぁアイズたんやからな。ここで返さないなんて強欲な所はないし。これは後で慰めてやろるか。

 

「……いいかもしれない」

「んっ、どうかしたかカレンちゃん?」

 

 今度はボソッと聞こえたカレンちゃんの声。と思って振り返ると。

 ものすっごい、楽しそうな顔をしてた。カレンちゃん、そんな顔するんようになったんやなぁ。

 

「【剣姫】ちゃん、でいいかな?」

「うっ、うん」

 

 

 

 

「【ロキ・ファミリア】の次世代の冒険者である貴女の実力、私にぶつけてくれなかしら? 私が納得できるものがあるなら私の剣を譲ってもいいわ」

 

 

 

 

 あ、これは面白い展開やわ。

 

 

 

 




【ゼウス・ファミリア】名物、セクハラ主神制裁技
 好色爺であるゼウスが女性団員へのセクハラに対する【ゼウス・ファミリア】限定の技。女性団員が入団した時より身に付ける必須項目である。
 発案は古株の女性エルフ、考案は同じく古株のアマゾネス。主に絞め技、関節技、急所打ちが多いのが特徴。痴漢撃退にも活用できる対『女性の敵』の技。
 しかしこれがあってもゼウスがセクハラ紛いのことをやめることはなかった。ただし、これで脱退した女性団員がいないのは彼が憎めない程に堂々とまっすぐな神物(じんぶつ)で人望があったからである――と言うこともあるが同時にヘラにバレた時の酷い折檻後を目の当たりにして「もう許しとこう」と思う女性が多かったからである。


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