竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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白兎とサポーター+α

 最近、カレン姉さんと会ってないな。もし会えたら新しい防具の姿を見てもらおうと思ってたのに。なんて、子供みたいな事を考えてるな、僕。

 昨日エイナさんと行って見つけた防具、そしてエイナさんからもらったプロテクターを装備した自分の姿は、ようやくらしく(・・・)なったと思えた。だからこそカレン姉さんに見せたい気持ちが生まれたのは当然だと思う。でもあの人もこのオラリオに来てから何かと忙しそうだし、僕のワガママでそれを邪魔するのはいけない。でも昔から突然、ひょっこりと顔を出す人だ。時には誰かを連れている時もあった。こうして歩いていたら会えるんじゃないかって期待もあった。

 でもそんな期待は叶わず、冒険者達の波に乗ってバベルに到着してしまった。それを見て今日も頑張ろうと、憧れる少女の事を思い浮かべ――

 

「お兄さん、そこの白い髪のお兄さん」

 

 後ろから僕を呼んでいる少女の声がそれを中断させた。

 

「え?」

 

 後ろを振り返る。でもその先には自分を追い抜いていく冒険者達の姿だ。いない、と思って視点を下げるとそこには100C(セルチ)の小さな体と、思わずギョッとするような大きなバックパックを背負っていた。

 でも同時に既視感があって、そしてすぐに昨日の出来事を思い出して目が開く。

 

「君は、確か……」

「初めましてお兄さん。突然ですがサポーターを募集してはいませんでしょうか?」

 

 僕の声を遮るかのように、目の前の少女は人差し指を僕のバックパックに向けた。この行動で彼女は僕がソロで活動している冒険者だと判断し、そしてソロだからこそその心中は簡単だ。

 『サポーターがいてくれたらなぁ、』、と言う心中を。だからこの少女は半ば確信して、サポーターはいりませんか? と尋ねたのだ。

 

「えっ、なんで?」

「混乱されるようですが、簡単な話ですよ。冒険者さんのおこぼれに預かりたい貧乏サポーターが、売り込みに来たのですよ」

「いや、そうじゃなくて。君、昨日会った子じゃない?」

「? お兄さんとリリは初対面ですよ?」

 

 笑顔で売り込み言葉を口にしていたその頭が首を傾げる。でもこの格好は。

 

「いや、そのローブの格好。昨日の小人族(パルゥム)の女の子でしょ?」

「……ああ、なるほど。冒険者さんはどなたかと勘違いされてるようですね。確かにこのローブは小人族(パルゥム)ですが、リリは犬人(シアンスロープ)ですよ。ほら」

 

 僕が特徴を伝えると少女はフードの部分を軽く捲り上げ、するとその中に隠れていた獣耳が見えた。

 

「あれぇ?」

「これでいいですか? それでお兄さん、サポーターはいりませんか?」

「ええっと……。できるなら、いてほしいかな?」

「でしたらっ、どうかリリを連れていってくれませんかお兄さん!」

 

 はしゃぐ様に押しに出てくると少女の円らな瞳と目が合う。だた一瞬、その瞳は僕からそれた気がしたけど、気のせいだろう。

 

「ま、待って。それはいいんだけど、キミの事はよく知らないし……」

「あっ、失敬しました。リリはまだ自己紹介もしていませんでしたね」

 

 少女は後ろに下がり、朗らかな笑顔を僕に浮かべる。

 

「リリの名前はリリルカ・アーデです。どうかサポーターとして同行させてください」

 

 そんな、僕を見上げるリリルカさんの瞳は、どこか輝きに暗みがあると、直感でそう思った。

 

 

 

 

 

 色々と気になる事はあったけどバベル二階の簡易食堂でリリルカさん――リリと話し合って今日一日はパーティーを組む事になった。元々、サポーターの存在は欲しい存在だった。早く強くなりたい僕はダンジョンでは戦闘にのみ集中していた。

 ただ契約するまでにリリのファミリアでの立場には軽く眩暈がするほどに動揺した。リリは別々のファミリアの構成員が繋がりを持つことがよくない事と考えていたと勘違いしていたけど。まぁそれとは別に、まだ昨日の小人族だと疑っていた僕がリリの獣耳を弄りまわした罪悪感もあったんだけどね。

 そして僕らは、7階層にいる。

 

「フッ、たぁ!」

『ギャシャア!?』

『ピャギュ!?』

 

 同時に襲い掛かってきたキラーアントとパープル・モスをヘスティア・ナイフと短刀で倒す。どっちも一撃で打ち倒し、力なく死体が転げる。

 

「そこぉ!!」

 

 続けて数歩先に離れたキラーアント二匹に向かって駆ける。口を大きく開けて牙を鳴らしながら威嚇する二匹を同時に――と見せかけて右の一匹を狙う。

 

『――ギ 、』

 

 僕の反応について来れず、絶叫を上げる暇もなく絶命する。続けて左のキラーアント、としたいが先に倒したキラーアントから突き刺したナイフがなかなか抜けない。その間に怒りに狂うキラーアントがその鋭い爪を僕に振り下ろす!

 

「ッ! ッガァ!!」

『ギィッ!!』

 

 でも咄嗟に左腕を掲げ、キラーアントの鉤爪を弾いた。左腕に装着した緑玉色(エメラルド)のプロテクターが弾いたんだ。キラーアントの攻撃力でも傷一つつかない防具は僕の命を守ってくれている。そして相手が怯んだこの隙に刺さったままのヘスティア・ナイフを放し、短刀に持ち替えて甲殻の隙間を走らせる。

 

「ギィィ……」

 

 この一撃は致命傷になり、キラーアントは紫の血飛沫を流しながら絶命した。

 

「次ぃ!」

 

 休む間のなく、モンスターの一群に飛び込む。

 

 

 

…………………

 

 

……………

 

………

 

 

 

「お見事ですベル様」

「そんなことないよ。僕からすればリリの解体の技術がすごいよ」

「いえ、リリにはこれくらいしか取り柄がありません。これだけの数のモンスターを屠ったベル様がすごいですよ」

 

 さっきの戦闘で倒した数がキラーアント4匹、パープル・モス3匹、ニードルラビット五匹の計十二匹。いつもだったら1人でこの数を捌くのは骨が折れる。対しリリのそれは洗練したものだった。魔石を最小限の切り口だけで回収していた。

 

「しかしつかぬ事をお聞きしますが、ベル様は駆け出しの冒険者とお聞きしましたが、それは本当なのですか?」

「そうだけど、なんで?」

「ハッキリと申しますと普通の冒険者とは3人以上のパーティーでダンジョンに潜るものです。ベル様の様にソロで潜るなんて普通、誰もやりたがりませんよ」

「でも、それってやりたがらないだけでしょ? Lv.1で僕以上に強い冒険者なんていっぱいいるだろうし」

「それは……そうかもしれませんが」

 

 僕の答えにリリは困ったような感じだった。僕はどこか変な事でも言ったのかな?

 

「まぁ……ベル様の強さには武器によるところもあるのでしょう」

「やっぱりそうだよね。僕もこのナイフには頼ってばっかりだし、こんなんじゃ本当に強くはなれないかなぁ」

「いえいえ、武器は頼られてこそ本懐ですよ。要はその力に翻弄されず御する事が出来ればそれはベル様の歴としたお力ですよ」

「そう、なのかな?」

 

 指摘されたから手が腰のヘスティア・ナイフへ回り、そっとそれを撫でていた。

 

「ベル様」

「あ、終わった?」

「はい。ですが折角ですからあの壁に埋まってるキラーアントの魔石も取っちゃいましょう」

「ああ、そうだね。でもどうやって取ろうか?」

「あの細い胴体を切り落とせばいいと思います。魔石は胸の中ですし、あとはリリがやっちゃいます」

「なるほど、じゃあ……」

「はい、ベル様。解体用のナイフです」

「え? あっ、ありがと」

 

 流れるようにリリからナイフを受け取ってしまった。ヘスティア・ナイフを使おうと思ってたけど、まぁいいか。僕は下半身が埋もれたままのキラーアントに歩み寄り、胴を切り落とすべく刃を沿わせる。

 この一匹を最後にして今日の探索は終了となった。この時、失くしものがあった事にも気づかずに。

 

 

 

 

「――所有物の盗難を確認」

 

 ダンジョン内の隙間でその現状を確認する。そして次に報告。懐から特殊なカットと複雑な文字列が刻まれた宝石の作品を取り出す。飾りの様に垂れ下がる金銀の鎖。その先にぶら下がる、対となる小さな宝石を耳の中にはめ込む。

 

「報告。返事をお願いします」

『――華? 何かしら』

 

 返事があり、通信に問題ないことを確認する。カレンが作った連絡用魔道具、カドケウス。ダンジョンを通しても問題は内容だ。まだ上層と言う距離もあるでしょうが。

 

「ダンジョンに入る前にお伝えした、ベルに近寄ったサポーターの件です。先ほど、彼女はヘスティア・ナイフを盗りました」

『鞘は?』

「ナイフ本体だけです」

『……そう、わかったわ。ならすぐに換金しようとするはずだからそのまま尾行して。最も売れるとは思えないけど』

「と、言いますと?」

『あれは正真正銘、ベル専用のナイフだからよ。ベルじゃないと刀身は死んじゃって切れ味も包丁より劣る。ブランド名がある鞘と一緒なら特殊武装(スペリオルズ)の可能性が出るでしょうけど、本体だけじゃただのガラクタの値打ちしか出ないわよ』

「特別なのですね」

『そういう事。じゃあ華、よろしく』

「了解」

 

 通信を切り、カドケウスを元の懐に戻す。そしてベルとサポーターに意識を戻す。

 しかしあのベルと言う少年、ナイフを盗られたというのに気付かないとは。警戒心が未熟すぎる。いや、疑う事を知らない(・・・・・・・・)のだろう。純粋すぎる。ただ……。

 

「カレンが話していた、アルゴノゥトの主人公のようですね」

 

 だからこそカレンは見守りたいのでしょうね。あの英雄を目指す小さな少年(こども)を。なら私も精一杯に見守りましょう。もっとも、私はお願い以上の事はしませんがね。

 

 




この日のカレンさんは言うと、


「俺が、ガネーシャである!!」
「知ってます。とにかく依頼(クエスト)の報酬は受け取りました。あとどうせなのでフィリア祭の後始末、手伝いましょうか?」
「うむ、頼む。そして俺は、ガネー」
「すみませーん。お手伝いできるのってありますかー?」
「俺はっ! ガネーシャである!!」

「「「「だから知ってますって」」」」


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