ガネーシャ神の手伝いに区切りをつけた後、すぐのオラリオの空を羽ばたく。と言っても今回は目立ちたくないし、でもただ飛んでいれば目立つ事この上ないから姿を透明化する〈
目指す場所、というものはない。ただ追跡している華はダンジョンから出てきた後は建物の屋根伝いに追いかけてると言っていた。つまり空から探すのが手っ取り早く見つけられる。とりあえず今はバベルを中心に東西南北をぐるぐる回っていた。
そうして北西のメインストリート近くの建物にその影を見つけ、そこへ降りていく。
「来たわよ」
「カレン?」
「ああ、こっちこっち」
天狗の面を外して透明化を解除する。私の姿を確認した華はあっさりと視線を戻す。
「目標はあちらです」
華が指し示す先には路地裏の入口のような場所。そしてそこに報告で聞いていたローブ姿の少女がいた。しかもベルや、豊穣の女主人の制服をきた少女2人も一緒だ。丁度今はベルがエルフの少女の手を包んでいた。何があった?
「彼女は盗まれたナイフを取り返して、ベルは落としたと思っていたナイフが見つかって感激しているところです」
「そう。まずサポーターを疑うことなく自分の失敗と思ったわけね」
「人を疑わないのですね。しかしそれでは危ういのでは?」
「そうね。でも決めるのはあの子よ」
でも、あの子が何を選ぶのかは予想がつくけどね。あら、何か話してるわね。
「華、何を話してるか聞き取れる?」
「問題ありません。どうやら明日もサポーターとして一緒にダンジョンへ潜るようです」
「そう」
「あの少女に釘を刺しますか?」
「そうねぇ」
ベルから危険を遠ざけるならその方がいいのでしょうけど、なんだかあの子は
「華、あの子の所属ファミリアは?」
「【ソーマ・ファミリア】です」
「ソーマ神の所なのね」
ソーマ神の
「――しばらくは様子見をしましょう。と言う訳で引き続きお願い」
「わかりました。しかし彼女の事は気になりますのでダンジョンの外では彼女の方を見てます」
「わかったわ」
「はい、それでは」
すぐに行動へ移した華は屋根から降りて姿を消した。
「さてと、なら私は――」
「――【ソーマ・ファミリア】に探りを入れたい、か」
「はい。ファミリアに介入する際にはウラノス神の許可を頂きたいと思い、こちらに顔を出しました」
私はあの後、すぐにギルド――ウラノス神の祭壇へやってきていた。ただし今回は天狗の面で人目がなくなるまで姿を隠し、そしてこの場所に近づいた所で姿を現した。ウラノス神にこの事を咎められていないので問題なく、次もこうして謁見に来ていいという事だろう。
「それは以前、お前が語った
「そうです。ただし、加えて個人的に【ソーマ・ファミリア】の現状に思うことがありますので」
「そうか」
この反応だと知ってるけど関せず、と言う事ね。中立たるギルドとしてはそれでいい。だたし、それで他のファミリアの情報を把握していないわけじゃない。そして関わらないのは
「個人的、と言ったな。お前は何を思い、一介のファミリアの腹を探りたい?」
「簡単に言ってしまえば、私の思っている内情なら気に入らないだけです」
「……珍しいな。お前の口からそんな言葉が出るとは」
「自分でもらしくないと思っています。ただ、【
「……そうか。いいだろう」
やっていいってことね。
「ギルドの力が必要となるなら言うがいい。ただし、お前の都合を聞く代わりにこちらの都合を聞いてもらいたい」
「わかりました」
と、言ったけどギルド規模で借りを作る事になるから冷や汗が出そう。覚悟はしていたけどこれはかなり危険な都合に振り回されるわね。しかも恐らく、ウラノス神自身が関わる案件ぐらいになるでしょうね。
「私の用は以上です。もし他に何かありましたら今お受けしますが?」
「ない。必要になれば使いを出す。人気のない場で姿を見せると思うが」
「なるほど。では不審と思える相手が現れても先手を打たずにおきましょう」
「それでいい。カレン、もう行っていい」
「はい」
静かに立ち上がり、静かに出口へ向かう。さて、何から手を付けましょうかね。
「――フェルズ」
ウラノスに呼ばれ、姿を示す。リヴィラの街の一件から翌日。その時にカレン・デュラスが来た。なら予想できるというもの。
「例の
「そうだ。ただし、深入りはさせるな」
ん? 彼女を使わないつもりか。彼女なら大きな戦力になると思うのだが。
「理由を聞いていいか?」
「確信はないが、アレは大きい」
「大きい?」
「カレン・デュラス――【
神の手に余る、だと?
「……ウラノスでも冗談を言うのだな」
「冗談、か……。今はそれでいい。頭の隅に置いてもらえればいい」
「わかった」
「しばらくダンジョンからの情報を集めておけ。そっちは近々、大きな事が起きる予感がする」
「私もそう思って目を光らせている。それと彼女が関わろうとしている【ソーマ・ファミリア】だが、ギルドでもそこの団員の行動が問題になってきている。それとなく探るようにしておこう」
「そうだな。任せる」
任された。異変が近く起こる故、確実に彼女の力が必要となるだろう。ならば彼女が追ってる問題をこちらで縮小化させた方がいいだろう。
しかし、冗談と終わらせた先ほどのウラノスの言葉。思えば彼女に関して神々はこう呟いていたな。
―――カレンちゃんの言葉って嘘か本当かわからないんだよね。
子供の虚実を見抜く神が見抜けぬ存在。それはまるで……。
「いや、まさかな」
さすがに、ない話だったな。
結局、一番大事な事を確認してなかった私はその場所へ向かった。途中、ちょっと質のいいお肉とかいい味を出す香辛料とか【デメテル・ファミリア】産の野菜とかを買い込んで。
それらを持って目的の場所に向かい、そして到着するやすぐに目の前の扉をノックする。
「ベールー、カレンおばさんよー」
叩いた扉は廃教会、その隠し部屋の扉だ。つまり、ベルたちに会いに来たという事だ。つまり、ベルに確認したいことがあるのだ。
そして扉の向こうで気配を感じて一歩下がり、その直後に開いた。
「カレンねえ――おばさん!」
「おしいからデコピン」
「あいたっ」
まったく。この子はいつになったら直してくれるのかしらね。
「数日ぶりだけど大けがはしてない? 食事経済はまだ低そうだから差し入れもあるんだけど」
「失礼だな
「ヘスティア神もお元気そうで。とりあえず冷蔵庫……はないですよね」
「失礼だな! でもないよ! 悪かったな!」
でしょうね。でも買ってたら買ってたで説教したけど。
「なら生ものは今日中に使いましょうか。ベル、今日の夕食は?」
「えっと、ジャガ丸くんと野菜……?」
「ごめん、泣きそう」
「ジャガ丸くんをバカにするなぁ!!」
いやヘスティア神。まだ賄い生活から脱出出来てないんですから泣きたくなりますよ。
「とにかく台所は借りますね」
「いや待った! 食べ物はちゃんと受け取るけど、お客さんのキミの手を煩わせるわけには――」
「じゃあ代わりにします? ただし、ジャガ丸くんが100個くらい買えるお肉がありますけど」
「「お願いします!!」」
ベルまで……。やだ、また泣けてくる。高めの食材を触るのすら恐れ多くなってるなんて。
「じゃあヘスティア神、ベルと一緒に待っててください。準備してきますから。――あっ、さすがに口にしてくれますよね?」
「「もちろん!」」
よかった。さすがに食べるまでは及んでなかったわね。あと、ついでに。
「ベル。食事をしながらでいいから最近の活動を教えて頂戴。何かあったらアドバイスはできると思うから」
「えっ! うん、わかった!」
嬉しそうな顔ね。話したいことがいっぱいあるって顔だわ。そんな顔を見ると、監視をお願いしている身としては心が痛いわね。
そんなベルだから、貴方の気持ちを確認しておきたいのよね。
〈天狗の面〉
隠密用の
前々からカレン自身は
(※元ネタ:民話『彦一ばなし』の1つ、『天狗の隠れ蓑』の隠れ蓑。蓑そのままだとちょっとカッコ悪いので、天狗を模した仮面にした)
神々でも嘘とは見破れないカレンの存在
フェルズはあるものを予想したが、それはないと否定した。
お土産のお肉(
赤身が美味い牛の肉。だいたいA3ランク。ちょっと贅沢め。ベルたちには高級品。3000ヴァリス分を買った。近くの魚屋で巨大な魚が目に止まったが「ないな、買う以前ね」とした。ちょっと前に有名なアマゾネスが買いに来た事も知らずに。