【万能者】と【剣姫】、そして【財宝竜】
さいしょはくろ。まっくろくろのせかい。
まえもくろ。みぎもくろ。ひだりもくろ。うえもくろ。したもくろ。うしろもくろ。まんなかもくろ。
くろくろくろ。それが
くろくろのせかい。それはいつしかいろいろに。
まえはみどり。みぎはみどり。ひだりはみどり。うえはあお。したはみどりとちゃいろ。うしろはみどり。まんなかは
あかあおみどりきいろ。あたらしいいろのせかい。それがいまのせかい、ほんとうのいろ。わたしのせかい。わたしはここにいた。
いろいろのせかい。わたしはあるく。あるく、あるく。わたしのせかい。せまいせかい、ひろくする。
ざっ、ざっ。せかいがひろくなるおと。ぴー、ぴー、ちちっ、ちちっ。せかいがひろくなるおと。
さんさん。ひかるたまがあおのなかに。とんでもとどかないせかい。きらきら。ひかるたまとつぶがくろのなかに。とんでもとどかないせかい。
きゅうきゅう。おなかのおと。たりないきもち。しゃりしゃり。かじるおと。いっぱいなきもち。
せかいはすこしづつ、ひろくなる。
こわいこわい。ひろいせかい。いろいろなせかい。でもこわいせかい。
ぎゃっぎゃっ、ぐるる。こわいがちかくにいるおと。ざーざー、ぴゅうぴゅう。こわいがちかくにあるおと。
ぶるぶる、ぐずぐず。こわいこわいきもち。わたしはうごけなくなる。
せかいはすこづつ、こわいものがみつかる。
そんな、まいにち――――――。
「ねぇ、あなたはだれ?」
あかいほうせきふたつ。わたしを
………
………………
………………………
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ダンジョン・24階層
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「もう一人の協力者?」
「はい。『黄金の穴蔵亭』で合流する貴女とは別に問題となっている24階層で合流する者がいます」
黒ローブの男からの
「その人は私と同じ他のファミリアの人?」
「おそらくそうでしょうが、かなりの実力者になる筈です。しかし二大ファミリアの一方である【ロキ・ファミリア】からは貴女が。対する【フレイヤ・ファミリア】はこの手の事に協力するとは思えない。ここで【ガネーシャ・ファミリア】の可能性が出てきますけどハシャーナを失った事で再び受けるとも思えません。しかし、そうなると協力者はほぼ確定できます」
「? アスフィさんは誰かわかるの?」
「ええ。色々と手助けを頂いた人でもありますから」
個人的な付き合いをしている相手、と言うこと何だろうか? ただ私の所や【フレイヤ・ファミリア】以外に強いファミリアの人は聞いた事がない。他に強い冒険者なんて……。
「……あ」
「どうかしましたか?」
「アスフィさん、その人って――」
「おーい! アスフィーッ!」
私が自分で思い浮かべた人が協力者かどうか聞こうとしたところで斥候に出ていたルルネの声に止められた。ちょっと残念だけど何かあったのだと思い、先に向かったアスフィさんの後を追う。
「モンスター達が殺気立ってる」
「そうなんだ。まるで戦ってる感じなんだよ」
ルルネの言う通りだ。まるで追い詰められたかのようにモンスターが雄叫びをあげて上層に通じる先へ向かってる。その先に敵がいるかのように。
でも、このくらいなら問題ないかな。
「……モンスターは駆除する予定でしたが、このままではこちらも被害が出ます。一旦、場所を確保して」
「待って。私が行く」
「は?」
「おっ、おい!?」
呼び止められたけどそれを無視――と言うよりももう飛び降りた後だから聞く前に、だね。
モンスターたちと同じ場に立つ瞬間は着地の音1つ。この音でモンスター達は私の存在を認識し、一斉にこちらへ襲い掛かる。殺気立ってるせいか通常より反応がいい。でもそれよりも鋭敏化されたLv.6の五感がそれ以上の情報を教えてくれる。
向かってくるモンスターは周囲を塞ぐように8体。Lv.5なら5体が限界だった。でも今なら。
「―――――――」
軽く鋭く、そしてなにより
ズレの修正、その一部を確認した直後にそれが足元に放り投げられた。
「……冒険者の」
死体、とまでは口にしなかった。この
この一瞬、意識を戦闘から離してしまった。その隙を棍棒型の
『……ッ!?』
「腕力の上昇も確認」
片手で受け止めた天然武器を握り、それだけで破損を与えた。そして再び剣閃を放ち、またモンスターを切り捨てる。
ここまでで大まかな感覚は把握した。でもまだ確認が要る。
「なんだ。【剣姫】ちゃんじゃない」
気を張り詰めた時に聞こえたそんな声。でもこんな状態だったから理解するよりも剣が動いてしまった。
「はいストップ」
でも剣は何も斬らず、強い力で止められた。いつもならすぐにでも振り払った所だけどここでようやく理解が追いつく。声を持ち主、私の剣を止めた相手、アスフィさんが言っていた人物。
「……カレンさん」
「貴女に名前で呼ばれるのは初めてね。それで
その言葉がどんな意味があったのか、こっちは理解が先に来て私は黙って頷いた。
「そう。じゃあ終わった頃に降りてくるから、あとはよろしくね」
それだけを言い残して他の皆がいる場所へ羽ばたいた。あっけないけど、モンスターに囲まれている状況なら仕方がない。でもすぐにまた話がしたい。そう思うとデスペレートを握る力を強くしていた。
「――
モンスターたちはこの言葉に呼ばれたように襲い掛かった。
上へ飛び崖の上にいた面々は知った顔がいるから【ヘルメス・ファミリア】の冒険者たちね。彼女らと【剣姫】ちゃんがこの
「待ちなさい。彼女も【剣姫】と同じ協力者です」
「え?」
「彼女も協力者だって?」
「そうです。――そして久しぶりですね、カレン」
「ええ、久しぶり」
アスフィが私を協力者と言ってくれたおかげで警戒はなくなり、安心して翼を休める。
「モンスター達が殺気立っていたのは貴女の仕業ですか?」
「ん? ええ、目立ってた方が上に進出しようなんて考えないでしょ。数日前から籠ってたわ」
「それは、お疲れさまです」
「大丈夫、大丈夫。徹夜は慣れてるから。それよりも貴女の方が苦労してるんじゃない?」
「……察してくれてるだけでありがたいです」
「じゃあ聞かないわ」
ちょっと同情。【
それにしても【剣姫】ちゃんに団長を含む【ヘルメス・ファミリア】の主力メンバー。あのローブの男が言ってたファミリアは【ヘルメス・ファミリア】なのは間違いない。ギルドの資料じゃそう高い実力じゃないけど、ヘスメス神が誤魔化してるって聞いた事がある。実力はある。ただそれを隠しているファミリア。隠密に解決するには都合がいいファミリアって事か。でも繋がってる感じはないし、目を付けられた感じでもあるか。
ただ【剣姫】ちゃんが同行している部分は引っかかる。彼女が同行する理由がわからない。さすがにこんな怪しい事態を軽く引き受けたわけじゃないし、
……考えても仕方がないか。そんな彼女は今はどんな感じかなと目を向けると息を乱さず、モンスター達を蹂躙してた。ここにいる全員が、それを見下ろしていた。
「なぁ、これ言っちゃいけねぇんだろうけど……」
「そうだな……」
『『『オレたちいらなくね?』』』
そんな声が聞こえたけど、わからないでもない。私も経験あるし。
でもやっぱりランクアップしたみたいね。圧倒的な戦いの中で所々に集中に緩みがある。それでも冷静だから流石としか言いようがない。
「カレン。貴女から見て【剣姫】はどうですか?」
「彼女の実力は疑ってないわ。逆にアスフィ、彼女がいてこの後の
「思いませんね」
アスフィの言葉に何人かがビクリと反応した。ちょっと『帰ってもいいかな?』とか思ったでしょ。
「あ、少し相談をしましょうか。カレンがいてくれるならパーティーの動きも効率化できるはずですから」
「そうね。じゃあ少し私から提供もしましょう。開封しやすい上に大型モンスターが踏んでも割れない器に入ったエリクサーとか」
「是非に」
眼鏡がキランと光った。かつて『眼鏡キャラは眼光と同時に眼鏡が光るんだぞ』と言ったゼウス様の言葉を思い出した。
『わたしのせかい』
彼女の始まりの話。
カレンに阻まれた3日間
一部のモンスターが成り立ての強化種になっており、通常より戦力は上がってる。それでも足止めをやり遂げたカレン、そんなモンスター達を相手にランクアップの慣らしをやったアイズであった。
アスフィ・アン・アンドロメダとの関係
お互い世界を旅していた時が初顔合わせ。ヘルメスがカレンの事を知っていた事で縁が生まれた。時折旅を一緒にした。しかしこの2人、かなり似た者同士。
お互いに名の知れたアイテムメーカー。
主神・団員に苦労させられる。
空飛べる。
女性同士。
大体はこんなところである。