「これでよし」
「ええ。これで強化種は生まれないでしょう」
【ヘルメス・ファミリア】と協力して倒したモンスターの魔石回収はたった今終了した。殆どは私がやったけど。こう、ガリアを振り回して素早く。そんな魔石の山が私の後ろに積み上がってるから魔法でしまう。
「ルルネ、地図を」
「あいよー」
そしてアスフィの指示で
「カレン、貴女は何処に向かうべきだと考えてますか?」
「北の
「はい。ですが私たちよりもここにいた貴女の意見が聞きたかったので」
「真っ当ね。とりあえずここ以外に怪しいと思った所はないわ。南西と南東からモンスターが来なかったわけじゃないけど北より切羽詰まった様子はなかったわ。だからこっちの二つは関係ないはずよ。でもそれは原因が一か所に集中してる可能性、つまりはヤバい物が分散してない可能性があるわ」
「マジですか……」
返事をしたのは【泥犬】ちゃんだった。敵が未知数な分、その戦力が集まってる事実は歓迎したくないんでしょうね。私だって嫌だけど。
「私が前衛に立とうか?」
「いいんですか? あなたはどちらかと言うと中・後衛向きでしょう?」
「いいのよ。手数は多いから先制・防衛は得意だし、何よりここの誰よりもLvが高いし」
「切り札は【剣姫】だと?」
「それはここにある一枚。私と【剣姫】ちゃん、そして【ヘルメス・ファミリア】の計三枚。アスフィ、切り札ってのは使って消費するんじゃなくて連鎖して最後まで残すのが最高よ。ま、だからと言って
「……それは忠告として受け取りましょう」
「そうして頂戴。さすがに真に受けて死んじゃったじゃ笑えないしね。でもこっちは高ランクとして頼ってくれていいわよ」
切り札を捨てるなんてのは主義主張尊敬を抱えるところだけでいい。でもいかなる時でも切れる
「……あの」
「ん?」
振り返ると【剣姫】ちゃんがいた。でもたどたどしいし声も遠慮がちだし、言いずらい事でもあるのかしら。
「何?」
「ちょっと話、いい?」
「話ね。わかった。アスフィ、ちょっと外すね」
「わかりました。ではこっちは方針を再考します。出発はこちらから知らせますので」
「ええ。じゃあこっちよ」
聞かれたくない話かもしれないから少し離れた場所に移動する。
「とりあえず、まずはランクアップおめでと」
「? 知ってたの?」
「さっきモンスター相手に今の実力を確かめていたでしょ。じっくりしてたしね。そしてランクアップしたならまた試したでしょ」
「うん。あの剣、【
へぇ、カリヌスが抜けたのね。Lv.6になったなら不思議でもない。でも彼女の顔にその歓喜の色は薄い。これはやっぱり抜けた
「抜いた剣、重かった訳ね」
「うん、そう」
「それはまだ貴方の技量が足りないからよ。ランクアップしてアビリティも上がったでしょうけどそれだけで振るえるほど私の至高は素直じゃないの」
「そう、なんだ……」
シュンとしちゃった。きっと抜けた時は喜びそうになったんでしょうに、結果はまだまだって評価だったから落ち込んだんでしょうね。そこに私が更に追い打ちをかけたんだから同情しちゃいけないんでしょうけど。でも重くてもカリヌスは抜けたんだから、この子の器は資格まで漕ぎ付けた事になる。でも重いのは彼女の願いがそれだけ重いという事。【
うーん、このままカリヌスが自在に振れるまでまだ時間はかかりそうねぇ。なら少し
「でも頑張ったからこれを貴方にあげるわ」
「え?」
【剣姫】ちゃんが呆然とした瞬間、私は彼女の髪に触れる。その場所に
「〈ウスキアス〉。私が作り上げた作品の中でもいい品だから大事にしてね」
「アクセサリー?」
「ちゃんと戦闘用よ。でも十全に使えるかは貴女次第よ」
「………うん、わかった」
白い剣のデザインを持つウスキアスを大事そうに撫でる【剣姫】ちゃん。でも投げて使うなんてことはしないでよね。
あとはこの子がウスキアスを発動させるまでどれくらいかかるか。
「カレン、【剣姫】。話が終わったなら隊列に戻ってください。こちらは終わったのですぐにでも出発が出来ます」
「ええ、わかったわ。じゃあ【剣姫】ちゃん、行きましょうか」
「うん」
私も彼女も臆してもいない返しだったけど、私はこれから起こる事がどうか困難であってもウスキアスが発動しない事を祈り続けた。
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ダンジョン18階層・リヴィラの街
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気に入らねぇ上にイライラする。
アイズが心配だから追いかけろとロキに命令された事はいいとして、パーティーに
「……クソが」
あの女の事を思い出す度に顔が疼く。治って痕も残ってねぇのにまだ生傷から治った気がしねぇ。
それから俺はあの日からあの女の事を調べた。冒険者として15年前の
【
相反する噂。突然の急成長。最後の三大
何があった。何がトカゲ女を強くした。【ステイタス】の上昇やレベルアップがそう簡単に行くはずがねぇ。なにより15年前とは言え、それでフィンたちや【
「俺は認めねぇ」
だから俺はこう考えた。高みに目指せる何かを、最初っから持っていた。だがあの女はそれを隠し続けていた。そのきっかけが15年前にある。ただそれがあったにも関わらず【
アイズがいる場所にテメェがいるなら覚悟しろ。どんな状況だろうとテメェへの敵意は忘れねぇ。待ってろよ。
「何やってんだ馬鹿エルフども!! 置いて行っちまうぞ!!」
さっさと行って、あの面また拝んでやる。待ってろよトカゲ女。
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ダンジョン24階層・
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「……カレン、すぐに他二つの経路を見てきてもらえませんか? 空を飛べる貴女ならすぐに確認ができるはずです」
「わかった。ならアスフィはこの壁、しっかり調べておいてね」
「もちろんです」
翼を羽ばたかせすぐに私は他二つの経路へ飛んだ。そして先に向かった方へ近づいていくとそこもあの壁に覆われて塞がれており、それを確認して次の場所へすぐに飛んでいくとそこもまた壁があった。これで北の
この情報を持ってすぐにアスフィ達の所へ戻り、彼女の横で着陸する。
「ただいま」
「どうでしたか?」
「他の2つも同じ状態だったわ。そうなるとモンスターは大量発生じゃないわね」
「ええ、そうですね」
「ど、どういうことだ?」
隣にいた【
「
「あっ……」
「……別の
「正解。ここに来て空腹を満たせなかったモンスター達は他の
「カレンの言う通りです」
「それで、やっぱり……」
「ええ、先に行くしかないでしょうね」
尻込みしてる感じね。でも行くしかないから『だよな』と答えて意識を変えたわね。
さて。私もこの状況は想定外だし、万が一にこれ以上の事は想像したくないけど考慮しないのもね。この場で一番痛いのは、戦力の分散。考えるに【剣姫】ちゃんがここにいるのは何らかの因縁があるから。そうなるとこの先、彼女は真っ先に分断される。でもそれを防ぐのに動いていると乱戦になって【ヘルメス・ファミリア】に犠牲が出る可能性が出てくる。
なら、ここは乗った方がいい。でも危険性は高い。全員に私特製の回復アイテム、そして【剣姫】ちゃんにはウスキアスをあげてるけど足りないわね。
「アスフィ」
「はい、なんですか?」
「これを【ヘルメス・ファミリア】の皆に配ってちょうだい。――【グニタヘイズより贈り物を】」
【ミュニアストレジャー】の中から両手で抱える籠を出し、続けて人数分のアイテムを雨降りの様に取り出す。
「これは……人形ですか?」
「これを全員に配って。ちょっとしたお守り。持っているだけで生存率が上がるから」
「効果は?」
「秘密」
「……効果を秘密にするほどの品を渡してくれると言う事はそれだけの危険があるんですね」
「ええ。言っておくけど避けるのはやめた方がいいわよ。そうすると、袋小路になると思うから」
「わかりました。では私たちの方でいただきます」
チラリと一瞬、【剣姫】ちゃんを見たわね。彼女ならただ善意や軽い気持ちでここに来てくれたとは考えてはいないはず。そもそも私が『切り札』の話をした時点で、彼女が一番手元に残らない可能性を考慮してるでしょうし。
「……?」
当の本人はキョトンとしてるわね。彼女には悪いけど頑張って頂戴ね。
「カレン、そろそろ中へ侵入します。魔法で穴を開けますが万が一に備えて待機してもらえませんか?」
「ええ、わかったわ」
さーて、何が起こるかな。ウスキアス然り、分断然り。まぁ最低、
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ダンジョン24階層・25階層入り口
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「……竜の気配がする」
・【ゼウス・ファミリア】の探索事情
彼らはダンジョン探索の際、マップなどは二の次三の次ぐらいの認識であった。その理由は多種に渡り『常に未体験を味わいたい』『頭に入ってる』『ここ行きゃ次にいける』『マッピングが苦手』である。そんな中でカレンと比較的重要視する面々はちゃんと地図を確保していたが、もっぱら自分たち用に使っていた。
・〈カリヌス〉
カレンが自分の作品を与える相手を選ぶために打った一振り。戦闘用より装飾・儀礼用と言ったデザイン。【
資格がなければ鞘から抜けず、抜けても実力が足りなければ持てないほどに重くなる。ただし抜けたなら持つ資格はあると断定されている。
・〈ウスキアス〉
白い剣のデザインが施された髪飾り。カレン
・『人形』
カレンが【ヘルメス・ファミリア】に配ったアイテム。正式名称は未開示。曰く、『探索の概念が変わるほどの品物』
・24階層出口の人物
カレンの気配を感じ、下の階層から現れた。すでにボロボロだが、闘志は最高潮になっている。