竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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竜の隠された力

「こっちだよ」

 

 ひっぱられてひっぱられて、みどりのせかいからさよなら。

 かわるいろいろ。ぐるぐるかわる。あかいほうせきにひっぱられて、がたがたゆれるものにのって、ここにきた。

 

 おらりお。めいきゅう、とし。オラリオ。そのばしょにわたしは、きた。

 

 いろがちがう。においがちがう。かんしょくがちがう。なにより、わたしとおなじかたちをしているものがおおい。それは『ひと』といった。

 そのなかをひっぱられてすすむ。ひっぱられながらあかいほうせき、わたしとおなじかたち。ほうせき。しょうたいはめ、ひとみ。そんななまえ。

 

「ただいまー」

「ん? っておまっ!?」

 

 そしておっきくてかくかくなおおきななにか。あとできくと『ほーむ』っていうばしょだった。

 あかいほうせき、ひとにかこまれる。わたしもひとにかこまれる。なにかあるけどつかめないもの。これは『くだもののじゅーす』。それがはいったちゃいろいもの。これは『こっぷ』。ここにきてからいろいろものがあるんだってしる。

 そうして、ひとのかたちでひとじゃない(・・・・・・)そのひとがでてきた。

 

 

 

「嬢ちゃんがそうか。私はこの【ゼウス・ファミリア】の主神ゼウスだ」

「私は【ヘラ・ファミリア】の主神ヘラだ」

 

 

 

 そのひとは、かみさま。それが、ちかい(・・・)とおもえた。

 

 

 

 

 それからそれから。

 かみさまふたはしら、わたしのことをきく。これまでのこと。かんじたこと。

 かみさま。ぜうす、ゼウス。へら、ヘラ。ふたはしらにわたしはきく。ここまできたこと。はじめてみたもののこと。

 つたえて、しって。おしえられて、まなんで。わたしは、私になっていく。知っていくことで自分の中が大きくなっていくのがわかる。

 そうして時間が経っていくと、部屋の扉から乱入者が現れた。その子は私を連れて来た紅い宝石、宝石の様に紅い(ルビー)に似た瞳をした、女の子。

 

「これこれ。騒がしいぞネラ」

「ごめんね神様。ヘラ様、こんにちわ」

「私は構わないぞ。してネラ、用件はなんだ?」

「うんっ! その子にあげるものができたの」

 

 私にあげるもの? とはなんだろう? この女の子に聞かれたのはゼウスとヘラと同じような事。同じような……。同じ……?

 一つだけ、同じことを聞いて違う返事があった。

 

 

 

 

 

「あなたの名前はカレン・デュラス、だから改めて自己紹介! わたしはカンパネラ・デュラス。今日からあなたは私の妹よ!」

 

 

 

 

 かれんでゅらす、かれん・でゅらす。カレン・デュラス。それが私の名前。目の前の女の子はかんぱねら、カンパネラ。

 私の義姉となる女の子。カンパネラ(小さな鐘)の名前を持つ女の子。それが私にとって大事な存在になる人の名前だった。

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

………………………

 

 

 

 

 

 

 

============

 ダンジョン・24階層

============

 

 

 

「オォオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 ダンジョンに響く【猛者(おうじゃ)】の雄叫びは鳴り止まない。しかも叫び続けただけ勢いがついている。勢いはともかく雄叫びには耳を塞ぎたい気分だけど自分から五感の一つを潰すほど愚かなじゃない。

 周囲には【ミュニアストレジャー】から取り出して、でも力負けして散らばった武具の数々。中には大破されたものだってある。はぁ、我ながら舐めてるわね。

 

「――【グニタヘイズより贈り物を】」

 

 

 ここまで耐えきってくれた盾を放り投げ、新しく装備を取り出す。右手には長剣、左手には盾だ。勢いで攻めてくる【猛者】に対するには同じだけの力強さかそれに耐え切る我慢強さ。私は後者を取った。

 

「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」

「ハァアアアアアアアッ!!」

 

 さらに勢いをつけて突進する【猛者】を、真正面から迎え撃つ。

 まるで巨木が倒れてきているかのような大剣の一振り。不思議と臆する心はなく、前へ。そしてその一歩を軸に体を回転。一振りを躱し、懐へ――なんて許さない。

 懐に入った私が見たのは膝。2撃目に膝蹴りが迫っていた。すぐに盾を間に挟み、受け止める。

 

「…ッ!」

 

 さすがはオラリオ最強の一撃は全身に響いた。でも痺れるほどじゃない。長剣を強く握り、一瞬の合間に守りの隙間を探し、見つける。

 躊躇いも罪悪感も抱かず、剣先を【猛者】に突き刺した。手応えはあった。でも違和感もあった。

 

(これ、筋肉で抑え込んでいる!?)

 

 脳筋レベルの防御技だった。下手に抜くとまた武器を手放す事になる。なんて考えている最中に、私の角を掴んできた。

 

「いっ! ちょ――」

「ウォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 角を掴まれたまま私の体は宙を浮いて投げ飛ばされる。その膂力は周囲に広がる肉壁でさえも岩壁のような衝突を体に与えられた。

 

「バハッ!」

 

 体を圧され、体内の空気が一気に出ていく。竜人(ドラゴニュート)の体は頑丈だし、我慢強いつもりだけど痛いのは痛いし苦しいのも苦しい。

 なんて文句を言っている暇もない。さすがに距離が離れすぎた。遠すぎちゃ【猛者】に勢いづいて上をいく。でも突っ込んでくる相手なら――。

 

「【グニタヘイズより贈り物を】!」

「ぬぅ!?」

「魔石式機関砲、ガトリング! 虐殺の雨、食らいなさい!」

 

 立ち上がり、雑に取り出したのは鉄の筒に車輪を付けた兵器。華と同じ遺跡で見つけた物だ。使用方法も頭に叩き込んでいる――けど今回はそれを省略。引き金を足で踏み抜く。

 

 

 

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッッ!!

 

 

 

 ガトリングが耳鳴りな音を響かせながら『弾』と言うらしい鉄の塊が飛んでいく。

 

 ただしこのガトリングは連射中の反動が凄まじく、固定しないと危険な代物。そして今はそれをしなかった。

 ガトリングがその牙を剥き、弾が全域に降り注ぐ。

 

「っと!」

 

 ただし私はそれをわかっていた。弾が当たるよりも早くガトリングの上、弾が飛んでこない安全地帯へと避難した。そして暴れるガトリングに重心を上手く操り、暴れるガトリングをただ回転して連射するガトリングに変える。

 これで弾の脅威にさらされるのは【猛者】だけ。でも。

 

「な、め、るなぁああああああああああああああああああ!!」

 

 それを耐えていた。その巨躯を弾丸に貫かれても退かず、変わらず進んでくる。むしろ貫いているのか疑う。これがLv.7の力、もしくは私に対する勝利への執念(リベンジ)

 

「フンッ!!」

 

 そんな【猛者】が飛ぶ。弾丸の雨中を抜け、まっすぐ私に迫る。そして大剣の柄を両手で握りしめている。

 その刹那、私が出すものはすぐに浮かんだ。

 

「魔盾クルフーア! 叫べ(・・)!!」

 

 

 

『ヒギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 

 

 取り出した盾から悲痛な叫びが轟く。その声量は空気を振るわせている。そしてそれは、何もない場所に壁を作り出している。音撃と音壁によるクルフーアの防御。音撃は耳に響き、音壁は刃を通さない。

 

「ヌゥウッ!!」

 

 【猛者】もこれで勢いを止められ宙で留まった。

 

「続いて魔棍大猿聖(ダイエンセイ)!」

 

 そしてその隙をつく武器を取り出した。

 取り出したのは長い棍。勢いをつけて回転をかけ、【猛者】の鳩尾を突いた。

 

「伸びろ!!」

 

 私の言葉に大猿聖はそのままに伸びた。【猛者】の体は押されてまた離れていく途中で私は一度武器を引き――、

 

「そいやっ!!」

 

 振り上げ叩き付けた。棍の長さ、私の筋力、そして遠心力の三つが合わさった一撃は大きな破壊力を編み上げた。

 大猿聖は元の長さへと戻り、一回転させて地面に立てる。私は変わらず自分からは攻めない。ただ【猛者】の様子に目を向けて、私は告げた。

 

「相手にはなってあげる。でも今度にしなさい(・・・・・・・)

 

 そう、私は【剣姫】ちゃんたちと合流しなきゃならない。まだ冒険者依頼(クエスト)の最中なんだからそっちを優先したいしね。でも聞き分けてくれるとは思えない。またさっきのように突進してくると思い、迎撃・反撃が出来るようにしておく。

 

「―――手抜きか」

 

 その考えは、【猛者】がようやく言葉を発したことで無駄になった。ここで理性的になったことじゃない。見抜かれた事に(・・・・・・・)、だ。

 

「・・・・・・なんでわかったの?」

 

 誤魔化さず、正直に。これを見抜いた冒険者に敬意を持って。その彼は静かに立ち上がって返す。

 

 

「何故、本気を出さぬ」

「そうね。貴方から先に聞いてきたのよね。答えはイエス。理由は、その必要がないから」

「必要が、ない。だと」

「私の立ち位置は貴方が思う以上に特殊でね。外で色々とあったの。それは世界の中で潜む(・・・・・・・)下界の可能性(・・・・・・)なんて言うべきものだった。そして私もその枠になっている。そして出来る限り私も本気を出さないようにしているの。――と、言っても貴方は納得しないでしょう?」

 

 こんな意味不明な事で納得するとも思ってはいない。ただし私は【剣姫】ちゃんたちの所に急ぎたい。本気を出すわけにはいかないけど、少しは解放してもいいか。

 

「【グニタヘイズより贈り物を】」

 

 私の周囲に再びありとあらゆる武具が出現する。短剣から大剣、大斧から長槍、弓、鎚、盾――なんでもありだ。そして何より、これらは私の特許。

 

「【猛者】、さっき私が使った盾と棍、マジックアイテムのようだったでしょう。実はあれ、本来の魔剣の応用なのよ」

「何?」

「実は皆が認識している魔剣はね、急拵えの半端物なのよ。本当の魔剣は使用者の魔力を喰らってその能力を発揮する、まさに魔法発動媒体だったの」

 

 そしてそんな魔剣が消耗品として留まったのは神々が降臨する以前、モンスターが地上へ出てきていた時代が原因。モンスターは数で攻めてくるのに対し、人類はそれを押しとどめる火力が足りていなかった。魔剣は当時から対モンスターの兵器として作られていたけど完成するには時間がかかりすぎた。だから耐久・供給を二の次にし、その威力だけが出せるまでにした状態で戦場へ送られた。それが数年だったら完成品の名残が残っていたでしょうけどその時代は長すぎた。だから人々の記憶から失われ、完成品の伝承は途絶えた。私がこの製法を見つけられたのは、本当に奇跡ね。

 

「一撃としての威力なら貴方のよく知る魔剣が上でしょう。でも腕の立つ冒険者が、確かな武器として魔剣を使えるとしたら?」

「・・・・・・その力は大きく跳ね上がる」

「その通り。一流の技と、最高の魔法の力。私はそれを復活させた。貴方が来る直前に使った魔弓は魔力の矢を生成、さっき使った盾は魔力を音に変える攻防一体の技、棍は伸縮自在で間合いの支配権を手に入れる。今は私しか作れないから、これらは竜具と呼ぶべき魔法の武具ね」

「それが、お前の周りにある武器たちか」

「その通り。そしてこれら全てで、貴方に膝をつけさせる。言葉通り、全てで」

 

 そしてここからは、真骨頂。

 

「【この意に従え―――キネシス・ハンズ】

 

 それは魔法の言葉。詠唱と魔法名。その言葉に、周囲の武器たちが宙に浮かんだ(・・・・)

 

「・・・・・・っ!」

「驚いてくれてるわね。でも残念なお知らせを一つ」

 

 これを聞いたら【猛者】は何を思うかしらね。怒り? 屈辱? それとも驚嘆? どれにしたって彼は私に挑むのを止めないでしょう。それにここまで見せたんだ。あと一つ、教えてあげましょう。

 

「私ね、あるスキルを発現しているの。その効果は【ステイタス】の隠蔽(・・)、そして制限(・・)

「なっ・・・・・・!」

 

 【猛者】の反応は驚嘆だった。意外だったけど、聞いた以上は知りなさい。

 

 

 

 

 

「つまり【猛者】、貴方が私を真に敗北させたいならその制限を解除させる力を見せなさい。でなければ貴方は、私に勝てない」

 

 

 

 

 

「―――――――オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

 まぁ、貴方ならここでそれが出来るかもしれないけどね。その準備は今もある。その咆哮に乗せた感情、私に届かせて見なさい。

 




・魔石式機関砲ガトリング
 魔石を動力にする絡繰兵器。弾と呼ばれる専用の鉄礫で敵を貫くオーバーテクノロジーの品。自動人形の華を見つけた遺跡にあったものであり、現代では戦争の常識を塗りかえる品だが、もっぱらダンジョンでは荷物にしかならない。理由は重い・移動が遅い・整備が面倒だから
(※元ネタ:現代兵器のガトリングそのまま。なんの捻りもなく、播種機からガトリング砲を開発した発明家リチャード・ジョーダン・ガトリングから名前をとった)

・魔盾クルフーア
 カレンが作成したたった音を発する攻防の盾。魔力により音を発生させ、その大音量に動きを止めたり、攻撃の勢いを削ぐ。
(※元ネタ:ケルト神話のアルスター伝説に登場する王コンホヴァル・マク・ネサが所有する盾オハン。この盾が打たれ悲鳴を上げるとエリンの三大波浪と呼応する)


・魔棍大猿聖(ダイエンセイ)
 カレンが作成した伸縮自在の赤い棍。魔力によりその長さを自在に変えられる。大きな能力ではないが間合いを取れる、距離を開く、手持ちが楽になると応用が利く。
(※元ネタ:西遊記に登場する斉天大聖・孫悟空の如意棒。そのまま)

・竜具
 魔法の効果を持つ武器の総称。現時点では竜人カレンしか製作できない為にこの名称である。
 カレンは旅の最中、古代ドワーフの遺跡から魔剣の本当の製作を知る。その技術からほかの武具防具に同じ効果を付加することに成功。魔剣を超える魔法の武器だが、現在ではカレンしか所有していない。

・【キネシス・ハンズ】
  ・遠隔操作魔法
  ・詠唱式【この意志に従え】
 カレンが発現した魔法の一つ。ただ遠くにある者を操作する魔法だが使用者次第で操作できる数は多くなり、カレンほどになれば100人並の動きが可能となる。


・【????】
  ・Lv・アビリティ値を制限する
  ・【ステイタス】情報の隠蔽可能
  ・【神の恩恵(ファルナ)】所有者と対峙する際、相手以下には制限できない

  カレンが持つレアスキル。【ステイタス】を制限・隠蔽はデメリットが大きいと感じられるがカレン自身にとっては本来の力を封じれらることもあって重宝している。ロキに見せた【ステイタス】も実は制限した上での数値だった。つまり、本来はそれ以上の実力を有し、彼女がそれだけの力を手に入れられたのかという謎が生まれた。


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