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ダンジョン・××層
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――――ふと、目が覚めた。懐かしくて初めての気配が私の眠りを妨げた。でも不快感はない。
でもそれは
それよりも私を目覚めさせたこの感覚。
「・・・・・・これは、誰だろう?」
懐かしくも初めての感じ。懐かしい理由はわかる。私と同じ気配だから。だからこそ誰何かはわからない。間違いなく後輩だ。
気配をよく探る。場所は、異物からさらに上で感じられる。そして、同じ異物の気配も感じた。
「・・・・・・ん」
見に行くぐらいなら、と私は
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ダンジョン・24階層
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「我が敵に血塗れの裁きを! 魔槍カズィクル・ドラクレア!!」
カレンの持つ禍々しい槍が床に突き刺さした直後、同じ槍が幾本も出現した。それはカレンを中心に現れ、続けて俺に向かって現れ始める。
「ヌゥン!!」
俺はソレが自分の足下に来るよりも早く現れた槍を全て切り裂く。だがそれでも槍は現れ続く。切るは無意味。ならば、
「オァウ!」
出現する床を叩く。生き物の肉に似たそれは飛び散るが槍は出現してこなかった。どうやらこれが正解か。
「感心する時間はないわよ! 魔銃ジ・キッド!」
カレンの言葉、そして何十回もの雷音。耳を塞ぎたくなるような音で、音が聞こえなくなった。同時に受けた体の痛みに比べるなら、痛みが楽だ。
「―――! ―――!」
何を言っているのかも聞こえないが、悪態をつく動きに見えたからそういうことだろう。奴は手ぶらだが、その周りを浮遊する筒状の武器がこちらを向いて煙を出している。さっきの『がとりんぐ』の一種だろう。
そうしている内にカレンは刀と斧、そして周りにいくつもの武器を身につけて迫ってきた。
「―――! ――、――――!!」
俺の間合いへ入れる直前、カレンは斧を地面に叩き付けた。地面が砕け、そして雷が
「―ィ! キ――ァけ!
ようやく耳が聞こえるようになり、しかし聞こえたのはカレンが技を放った後だ。斧から昇った雷を切り裂いた。ただ切り裂いただけではなく、切り裂いた雷が刃のように放たれた。拡散しているそれはそのほとんどが当たる事はないが、当たる分もそれなりの数が俺に向かってくる。1つ1つ払うのはすでに不可能。かといって耐えきるにしては攻め手を押さえられる。ならば、一度に全てを防ぐ!
「フンッ!!」
俺が行ったのは剣を手放す事だった。そして剣は投げた勢いで回転し、力の方向で飛び回らぬように。結果、剣は盾のようになった。
回転した剣はその範囲のみ雷を防いだ。幸いか、もしくは狙っていたのか俺は雷からは無傷だった。
「器用ね!」
「お前ほどではない!!」
お互いに言葉を交わしてカレンは距離を取り、俺は再び剣を取る。
「魔琴トリス! 奏でなさい!!」
カレンがそう言うと中に浮く竪琴の弦が音色を立てる。その直後、体に重い衝撃が走った。
「ッ!!」
口から全てを押し出そうな程だったが、なんとか耐える。
「下層のモンスターでもしばらく動けないのによくやるわね! だったら――」
「させるかぁ!!」
これ以上カレンの流れを続けさせる訳にはいかなかった俺は琴に向かって大剣を投げた。唯一の武器をこの時点で手放したのだ。だが代わりは、
その形が浮かぶよりも俺は大剣を投げた瞬間に駆けていた。
「ん? って貴方!?」
俺の狙いにカレンも気づいたが俺の足は止まらない。カレンの武器が襲いかかろうとも、周りに至高と言える武器があろうとも俺が求めるのはただ1つ。
ソレを、この手に握った。その瞬間、手に馴染む感触を得た。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
この手に取った武器――黄金と宝石の柄を持ちながら刀身は飾り気のない大剣を横一文字に振う。
この一撃でダンジョンを覆う肉の壁、そして元々のダンジョンの壁が破壊された。その中でカレンは自分を覆うほどの巨大な盾の影でこの一撃を防ぎきった。
「・・・・・・この盗人」
「貴様はかつて、俺の武器を持っていったのだ。これはその先払いだ」
「へぇ、それは私に勝って取り戻すってこと?」
「そうだな。まぁ、今ここにあるわけだが」
「・・・・・・見事ね。その感覚は流石ね」
そうか。手に馴染むはずだ。そして目を奪われ、
この手に握った大剣。かつてカレンに敗北し、そして奪われたあの大剣だと。当時の俺はLv.5でその時に愛用していた大剣は第一級等級武装の中でもトップクラスにあった大業物だった。
それが奪われ、しかしこうして再びこの手に戻ってきている。しかも大きな力を得て。
「――暴走されると厄介だから教えておくわ。その剣の銘は〈魔剣テオドリック〉。
「あり得ないだろう」
「一度振っても実感はないのかしら?」
「そうだな」
荒唐無稽なカレンの言葉だったが、それが嘘と断じる事は出来なかった。奴の言うとおり、先ほどの一振りでこの剣の真価を感じた。その言葉の通りに俺の力に耐えた上に刃こぼれもなく、わずかながら炎も発していた。偽りのない、この剣の
「まぁ盗られたならしょうがないわね。終わった後に回収させて貰うわ」
「悪いがそれは叶わぬだろう」
「言ってなさい」
カレンは目の前の盾を下げて武器を構え、さらに多くの武器を周囲に集めさせた。奴にとってこの大剣はそれだけ警戒に値する武器と言うことだ。
しかしそれで勝てる相手ではない。これ以上の力を振わなければ奴には――
その時、カレンの体から腕が突き出た。
「ガッ、アアッ・・・・・・!?」
懐かしい気配は目の前の少女からだった。そしてその中で一番力を発していた部分を
「んん・・・・・・?」
見た感じ、変わった所はない。もしかして精神的な部分だったかもしれない。心臓と言うなら心――。
「ア“ア”ッ!!」
考えていると腕を切られた。斬られてとっさに引いた。斬られたのは突き抜けた部分だったみたいだ。
「ハァ・・・・・・、ハァ・・・・・・」
少女は呼吸を乱しながらもこっちへ振り返る。斬られた腕はすでに心臓から手を離し、
「アナ、タは・・・・・・。んっ、ガァ・・・・・・!!」
少女は苦しそうに胸を押さえる。でも私は感じる。少女の奥底からわき上がるその気配。それは確かに―――。
「やっぱり、
確証を持ってそう言った。すると少女は私を睨み付けてこう言った。
「私を、同類と呼ぶな!
・××階層
――こども達よ、いずれこの地へ。
――しかし、此度は微睡みに覚醒した。
・魔槍カズィクル・ドラクレア
突き刺すことで同型の槍を出現させる魔法を持つ槍。ただし穂先の全てが突き刺さる制限もある。
(※元ネタ:ドラキュラのモデル、
・魔銃ジ・キッド
空砲を必殺までの威力にあげた魔法の空気銃。空気のため砲身1つで散弾も可能。本作では音でオッタルの聴覚を麻痺させた。
(元ネタ:アメリカ西部時代のアウトロー、ビリー・ザ・キッドより)
・魔斧金剛雷撃斧
雷属性の魔法を持つ
(元ネタ:金太郎の鉞。異説では父を雷神、母を山姥とした子であるとも)
・
〈
(元ネタ①:戦国時代の武将、立花道雪より。渾名は鬼道雪・雷神。若い頃に雷を斬って涼んでいたらしい)
(元ネタ②:属性はケルト神話・フィアナ神話のディルムッド・オディナの槍、
・魔琴トリス
弦を弾くことであらゆる攻撃を起こす魔法の事。弦の弾き方で斬撃・打撃・射撃と多様な攻撃パターンが出来る。
(元ネタ:円卓の騎士トリスタンより。彼は竪琴フェイルノートを弓に改造して使っていた)
・魔剣テオドリック
15年前、カレンがオッタルから奪い取った大剣。炎属性、〈巨殺属性〉、〈不壊属性〉で素材は
(元ネタ:ゲルマン民話・ディートリヒ伝承よりディートリヒの愛剣エッケザックス。元は巨人エッケの剣であり、鋼鉄の盾を切り裂く黄金の剣。ちなみにディートリヒは東ゴート王テオドリックがモデルである)
・心臓を抜き取られても、
それは、体質やスキルでは説明のつかない事である。
カレン・デュラスは本当な何者か?
・ダンジョンマスター
「迷宮にはその主、ダンジョンマスターがいる」と言う創作から世界に浸透した名称。存在するかもしれない幻想。
その、筈だった。