竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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***作者コメント***
 1年ぶりの投稿ですが作者としては続きを読んでいきたいです。
 速度は安定しませんが、どうか再びよろしくお願いします。
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あっけないほどの終わり方

 倒シタ。タシカ、おったる。【猛者(オウジャ)】。ウン、オモイ出セル。熱カッタ胸ノオク。大分穏ヤカダ。抑エテタものモ暴レテナイ。

 私、次ハ何をスレバイイ? 周リハもんすたーデイッパイダ。デモ私ナラ一発デ倒セル。おったるハ、大丈夫。アノ武器ハ持チ主ガ意識ヲ失ウト炎デ守ル。ソレニ、彼ナラスグ目覚メルハズ。

 ……ナカマ、仲間。ソウダ、仲間タチ。向カワナイト。今度ハ絶対ニ、1人ニナラナイ。ミンナハ、アソコ。もんすたーニ囲マレテル。デモ誰モイナクナッテナイ。確カ、人形ヲ渡シテタ覚エガアル。アノ子(・・・)ノ創ッタ物ダカラ大丈夫、トハ言イキレナイ。

 状況ハ、皆アノ子ヲ守ッテル。えるふノ、【ろき・ふぁみりあ】ノ子。魔導士。怪物祭(もんすたーふぃりあ)デ、魔法ハ見タ。彼女ナラコノ一帯ヲ殲滅デキルダロウ。

 

『……加勢、シナイト』

 

 誰モ、死ンデホシクナイ。何も、失イタクナイ。

 

 

 

 セメテ、コノ世界ヲ去ル日マデハ――。

 

 

 

 ダンジョン。そう呼ばれた少女に反応はなかった。動揺も嘲りもなく、ただその名を受け入れていた。

 

「ここで、何をしている?」

 

 そして口にした言葉はそれだけ。調教師(テイマー)の女に尋ねた。

 

「……お前こそ何をしている?」

「??」

「神への恨みはどうした? 過去のように、なぜモンスター共を地上に送り出さない?」

 

思わず愛剣を握る力を強めてしまった。ダンジョンのモンスターはギルドにいる神が祈りで封じ込めているってロキから聞いたけど、今調教師の女の質問にそれが『可能』と返されれば。

 

「できない」

「何?」

あの人(・・・)、がいない、から、できない。ここは、感情の土壌。産まれる、の、は、思いの、具現。行けって、言える、あの人、いない」

 

 それは『可能』よりも混乱する返答だった。それはまるでもう1人いるかのようだった。

 

「答え、ないなら。もう、いい。でも、痛かっ、たら、痛、く、する」

「過ぎれば襲う、そういう事だな。来るなら来い」

「そ、う。んー」

 

 疑問を残すばかりの少女がふとこちらに目を向けた。今までの会話でもう行ってしまうと思ってただけに警戒する。

 

「……気の、せい、か。起きて(・・・)()、訳、ないか」

「え?」

 

 起きてる訳ない、そう言った? 私はこのダンジョンと呼ばれた少女とは初めて会ったのに。でも調教師の女と出会ったせいか頭に思いかべる人がいた。

 

「それって――」

「さよ、なら」

 

 言葉の意味を聞こうとしたが少女は霧のように消えた。私に多くの疑問を残して。

 私が呆然としていると崩れる音が聞こえて現実に戻される。

 

「チッ、そのまま呆けていれば楽だったものを」

 

 そう言ったのは調教師の女だった。彼女は檻を壊して出てこようとしていた。それは幸運だった。呆然としたままだったら殺されていた。

 再び剣に力を込める。さっきまでとは強さが違う。思えばこの仕切り直しは本当に幸運だったんだろう。ここで終わる訳には行かない。私はまだ、死ぬわけにはいかないんだ。

 

 

 

 

 

 【千の妖精(サウザンド・エルフ)】を守り切る戦い。決して不可能とは言えない時間であっても犠牲が出ない訳ではない。ホセを救助しようとし、それを彼から拒絶された瞬間に思い知った。

 だからこそあの救援は思いがけない事であり、期待していた事でもあった。

 

「カレンっ!!」

 

 彼女はホセの救出と同時にその周囲のモンスターたちを屠った。その一瞬に静寂が感じられ、仲間達も呆気に取られていると。

 

「まだモンスターはいます! 陣形を保ちなさい!!」

 

 檄を飛ばし、皆はこの声に再び動き始めた。その間にカレンはホセを抱えて私の側に現れた。

 

「ううっ……」

「ホセ!」

 

 弱々しい呻き声がホセの命がまだ繋がっている現実に安堵が芽生える。しかし怪我は深くこのままでは――。

 そんな最悪の結果を想像するもそれも覆る。瀕死だったホセの体が輝き、収まればダンジョンに潜る前のように万全の姿になっていた。そうか、これはキークスと同じ。

 

「――発動、ジョウケン」

「え?」

「からだ、残ッテルガ前提。サッキノハ、発動シナイ。最悪、欠損シテモ再生スル」

 

 いつものカレンの喋り方ではなかったが伝える言葉はあのアイテムの情報だ。あのアイテムについてどこまでが効果の範囲かわからなかったのでありがたい。ただだからといって決死を指示したくはないが。

 その上で、私が言うべき言葉は――。

 

「私たちを、守ってください」

 

 カレンは静かに頷いた。

 

 

 

 

 

「――【間もなく、焔は放たれる。】」

 

 ようやく本命の魔法の詠唱に入った。今までになく魔力を高めた詠唱は集中も極限で内から暴れている感覚が強い。軽く叩かれるだけで乱れ崩れそうだ。そう、安心してもそれは同じだ。

 思えばあの人を見たのは【豊穣の女主人】の時だった。突然現れて、竜人と言う種族を初めて見て。そして初めて食人花のモンスターに出会ったあの日には助けて貰った。

 リヴェリア様はあの人のことをこう言った。

 

『カレンはある意味、ファミリアに所属しない冒険者だったんだ』

『所属しない? でもあの人は【ゼウス・ファミリア】にいたと』

『その通りだ。だが彼女は別のファミリア所属の眷属とパーティーを組むことが多かった。それも私たち【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】の者たちとも。だから彼女には【助演者(パーティースタッフ)】の二つ名が与えられた』

 

 不思議とその光景が簡単に浮かんだ。食人花のモンスターから助けてくれた時、私の事も見ててくれた。私の事を呼んでくれたあの瞬間があったからこそだろう。

 

「【忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。】」

 

 でもリヴェリア様はこうも言った。

 

『そして私たちはカレンのいたファミリアを壊滅させ、逆に私たちは竜人となったカレン1人に敗北した。この事実にお前はどう考える?』

『えっと、彼女は【ロキ・ファミリア】を恨んでいる?』

『そう考えるのは自然だな。でもそれはない。カレンは【ロキ・ファミリア】も【フレイヤ・ファミリア】も恨んでいないだろう。それがカレン・デュラスと言う冒険者だ』

 

 自分のファミリアを壊滅させたファミリアを恨まない。それがあの人と言う冒険者だと言った。思わず何故と聞き返すとそれを教えてくれた。

 

『誰よりも冒険者という挑戦者だったのさ。前に進むと言う事は、どこかで失う事もあるのだと。ファミリアも眷属も、果ては自分の命(・・・・)さえも。裏方であっても強い覚悟を持ち、そして一番に輝き続けていたからだ』

 

 それを聞いて私は、そんな人がいたんだ(・・・・・・・・・)と素直に驚いた。それは何故か?

 私が知る強い冒険者はアイズさんやリヴェリア様達のような【ロキ・ファミリア】の幹部たちと【フレイヤ・ファミリア】の【猛者】たち。その内の1人のリヴェリア様が輝いていたと言った。出会うまで影すら知らなかったカレン・デュラス(あの人)をオラリオの頂点が認めていた。

 

「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲な猛火。汝は業火の化身なり。ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。】」

 

 実は聞いたその時には評価される人なのかと疑っていた。だって本当に会うまで聞かなかった人だ。せいぜい過去の人、そんな認識だった。でもそれは、間違いだった。今ここにあの人がいることでこうして集中できている。皆さんと勝つ為の切り札を使える。

 そして詠唱ももう少し。それで魔法は完成し、全てをひっくり返す。

 

 

 

 

 

 でもモンスターも黙って見過ごす訳なく、私を射貫かんと蔦が地面から生えて囲む。

 

 

 

 

 でも私に、不安はなかった。

 

 

 

 

 

「――――――――――――!!」

 

 獣のような咆哮はあの人の叫び。そう聞こえたのは同時に空気が悲鳴を上げたかのような音があったから。目を下に向けて見れば私を避けるかのような爪痕があり、そしてモンスターの蔦は根元から切れたようで力なく萎びていった。

 

「【焼きつくせスルトの剣。――我が名はアールヴ】」

 

 

 ―――ありがとうございます。感謝は怪物祭の時と一緒に必ずお返しします、カレン・デュラスさん。

 

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

 

 

 

 

「ハァ…、ハァ……」

 

 剣を拾い、レフィーアとベートさんが隙を作ってくれた所の一太刀。天然武器(ネイチャーウェポン)を裂き、刃を敵に届かせた。ただ相手が人ではないこと。それを失念して深い傷を与えたことに安心していたのかもしれない。敵は大主柱を破壊し、食料庫(パントリー)の崩壊を引き起こした。

 

「呆けている場合か? お前には捨てられない仲間がいるのだろう」

 

 悔しいがその通りだ。聞きたいことはいっぱいあるけど、もうその余裕はなかった。

 

「……お前に2つ、伝えておこう」

 

 でもそこに、その言葉が鮮明に聞こえて足を止めた。

 

「59階層へ行けアリア。今あそこは面白い事になっている。それにお前が自分からそこへ向かうなら私の手間も省ける」

「……そこには何があるの?」

「それはお前の血が教えてくれるだろう。―――そしてもう一つ。もしお前がダンジョン、ひいてはアレの同類に関わるようなら警戒しておけ。殺されるのは別にいいが、死体がないのは困るのでな」

 

 ダンジョン。あの少女の事だろう。

あの子も気になる事を言っていたけど、調教師の女が忠告する事の方が不思議だった。そして反芻して、気付く。

 

「……同類?」

「それは自分で確認しろ。ではな」

「っ、ま―――」

 

 言葉に囚われた隙に彼女とは天井の瓦礫に挟まれ、そして姿は見えなくなった。

 

「急いで下さい【剣姫】! もう長くは持ちません!!」

 

 その声で状況を思いだし、脱出に向けて走り始めた。

 

 

 

 

 

 

………………………

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

………

 

 

 脱出、と言えるまでの場所はあの肉壁を見付けた入り口の所だった。自分でさえ息が切れた程の緊張で走ったものだから、他のみんなはそれ以上の疲労に襲われていた。でも、誰1人として死んではいなかった。

 

「あっはっはっはっはっ。生きてる! 死んだはずなのに生きてるぞ――!!」

「キークスうるさい!」

「やだー! お下げの片方が切れてるー!」

「ああ、人形が壊れてる。間違いなく1回は死んでたな……」

「魔剣、壊れちゃったなぁ」

「今日の事は必ず詩にしよう……」

 

【ヘルメス・ファミリア】の皆はあれだけの戦いの後でもよく喋る。ただ今はその姿が、生きて返ってきた実感を与えてくれた。

 

「大丈夫でしたかアイズさん」

「レフィーヤ。うん、大丈夫。ベートさんは?」

「片足が折れてましたがルルネさんが運んでくれたので一緒です。それでデュラスさんを知りませんか?」

「え?」

 

 あまりにも必死で、そして当たり前のように感じていた言われるまで気付かなかった。周りをもう一度見渡して、あの人の姿がないことに気付いた。

 まさか、と。

 

 

 

 そんな不穏な可能性が頭によぎった直後、ドオォン、とまたダンジョンが崩れた音が轟いた。

 

「なっ、なんだ!?」

「まさかまだダンジョンが!!」

「待ってください!」

 

 みんなが慌てだす中、アスフィさんの声が響くと警戒しつつも落ち着きを取り戻す。そして彼女の視線の先はさっきの音が出た場所。そこはさっきまで私たちが逃げてきた方面。さっきまで瓦礫の山だったところが何もなくなり、粉塵が舞う。

 

 

 

 その中から1人――カレンが現れた。

 

 

 

 彼女は【猛者(おうじゃ)】を肩に担いでいた。体格が倍以上ある彼を、軽い荷物を運んでいるかのように歩きは穏やかだった。そんな姿に誰も声を掛けられずにいた。

 その理由はわかる。私もそうだ。彼女の力は底が見えない。私が戦ったときは全力とは思っていなかったが想像を超えている。さっきの戦いは味方で助けてくれた事実だけど、その時は獣のような振る舞いだった。なぜそうなったかわからない。でも、まだその状態だとしたら―――。

 

 

 

「くちゅ。あ、ごめん」

 

 

 

 コケる音が耳に聞こえながら思わず呆気に取られた。

 




・『あの人』
 『存在しない者』。レヴィスの問いにそう答えたダンジョンマスター。
 その者がいてダンジョンは正しく有る。しかし今は条約により不在。



・『起きているわけがない』
 ダンジョンマスターがアイズを見て呟いた言葉。それはつまり・・・・・・



・くしゃみがちょっとカワイイカレンさん
 子供の頃からの一面。場を一歩引いていた彼女はくしゃみも抑えるようなった結果。神々曰く『萌えポイント』



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