竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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一週間の1日目

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 オラリオ・城壁

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「そっちはどう、華?」

『近づいている気配はありません』

「預けた探知装置は?」

『反応はありません』

 

 反対側にいる華と連絡を取りながら彼らが来ていないか監視をする。極東からここまで来るのに時間は掛かる筈だがその気になれば今日にでも来る存在だから油断は出来ない。

 

『カレン、本当に数日だけの監視でよろしいのですか?』

「ええ。私の力が解放されてすぐやって来ないなら時間をかけて来るでしょう」

『追われているからですか?』

「いいえ。追っ手を煽りながらよ」

『なるほど』

 

 その場合、どこかで被害が出ないことを祈る。祈る事しか出来ないからね。

 でもこの数日を乗り越えたとしてもそれは確実の予想が出来なくなる事だ。むしろ最初の時点で来てくれた方が楽になる。その最初であるこの数日でどうにか現れて欲しい。

 

『―――カレン』

「何か変わったことがあった?」

『ベル・クラネルとアイズ・ヴァレンシュタインが模擬戦をしています』

 

 いったいどんな状況?

 

 

 

 

 

 本当に模擬戦、と言うよりかベルが【剣姫】ちゃんにボッコボコにされてる状況だった。

 

「あらー……」

「一方的ですね。模擬戦とお伝えしましたがアレは成長に繋がるのでしょうか?」

「ダンジョンで活動するなら良い方よ。相手を見る。先を読む。危険を察知する。強い冒険者って言うのは目と判断が求められるの。まぁ【剣姫】ちゃんはあの様子を見る限りそこまで考えてないでしょう」

「何故ですか?」

「あの子、天然だから戦うのが一番と思ったんでしょう」

 

 なんて説明している間にまたベルの顔面に蹴りが入った。容赦がない、訳じゃなくただ手加減が出来てないわね。でも殺しにかかるモンスターを相手に考えるならむしろそっちの方が良いのかしら?

 

「ふむ……」

「動きを記録してるの? 別に良いけど華には合わないスタイルだから真似しない方がいいわよ」

「ええ、わかっています」

 

 ……なるほど、諦めていないわね。

 

「監視は私がやっておくわ。中心部の上空で全体を見てるわ」

「よろしいので?」

「必要なんでしょ?」

 

 ジッと見つめ、黙って見つめ返す華。本物と変わらない作られた貌だけど、長い付き合いと積み重ねた時間が表情の色を映してくる。だから、この子は()()()()()()()。だからベルと【剣姫】ちゃんの戦いに興味がある。

 

「……じゃあ行くわ」

「わかりました」

 

 返事は待たなかった。その意図は、考えなくてもわかっていた。

 

 

 

 

 

 飛び去って小さくなっていくカレンを黙って見送り、再びベル・クラネルとアイズ・ヴァレンシュタインの模擬戦へ視界を戻す。相変わらず一方的だ。一方的だがベル・クラネルは決して同じ手は使ってない。すぐに打ち負かされてはいるが攻める手順は変わっていく。

 

「それにしても、折れませんね」

 

 普通、確かな実力者から一方的に叩きのめされるのは心が折れるものの筈。カレンが言うにはベル・クラネルはアイズ・ヴァレンシュタインに恋慕と憧れを抱いていると言っていた。そんな相手だから折れないのでしょうか?

 しかし、この絡繰りの身では決して味わえない物が生き物にはある。それは疲労である。

 

「さすがに続けていれば立つこともままならなくなりますね」

 

 私が見付けた時はすでに模擬戦をしていましたのでそれより前に始まっていたのでしょう。そして体力も限界に来ていたのでしょう。もう足取りも怪しいです。あ、アイズ・ヴァレンシュタインに一撃を貰う前に倒れた。心配したアイズ・ヴァレンシュタインが近づいて何か話してる。すると肩を貸しましたね。どうやら模擬戦はここまでのようですね。

 ……どうせなのでもう少し様子を見てみましょう。こういうのは男女の関係が進展するシュチュエーションだとかつて読んだ本に書いていましたからね。尾行には慣れていますがさすがに今回は第一級冒険者が相手ですから最大の注意を持って追跡しましょう。

 それにしても密着しすぎですね。アレは見る人が見れば誤解、誤解……。

 

「誤解している方がいますね」

 

 路地の影から力尽きたように崩れ落ちる少女がいた。見過ごそうかと考えたがあの二人を見て崩れたので【ロキ・ファミリア】の者と思い至るとすぐに駆け寄った。

 

「すみませーん。大丈夫ですかー?」

 

 しゃがみ、つつくのが様式美だと本にあった。だから私もしゃがんで少女の頭をつつく。長い耳を見るにエルフの少女。栗色の髪となると、確か【千の妖精(サウザンド・エルフ)】のレフィーヤ・ウィリディス。

 

「……………………………きゅう」

 

 ただの呼吸音。うん、大丈夫そうです。倒れた際に頭をぶつけた等、肉体的には問題ありませんね。精神は撃沈でしょうけど。

 

「立てますか-? 出来ないなら送り届けてもよろしいですが-?」

「………………………………………お願いします」

 

 おや、意識はちゃんとしていましたね。しかし自力で戻る気力すらない上に初対面の善意を素直に甘えるとは。ところでこの方、ベル・クラネルとアイズ・ヴァレンシュタイン。どちらに対してショックを受けたのでしょう?

 とりあえず送ってあげましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 送り届けたと思ったらロキに捕まりました。

 

 

 

 

 

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 とある裏路地

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「なにやってるのよ貴女は」

「申し訳ございません」

 

 華に連絡が来たと思ったらまさかロキ神に捕まったなんて、思わず落下しそうだったわよ。まぁすぐに持ち直して、ロキ神のみの対面と場所の指定を伝えてそれは承諾して貰った。さすがに黄昏の館には堂々と()()()()し。

 

「まぁいいわ。―――ロキ神もこちらの要望を守って下さりありがとうございます」

「かまへんかまへん。こっちから頼んだことやしな。それにアイズたん達が世話になったみたいやったから礼を言いたかったんや。ありがとなカレンちゃん」

「いえ、むしろ私が迷惑を掛けてしまいましたから。それで、今回はその件について質問が?」

「それも考えたけど教えてくれるとは思っておらん。だから答えて貰えそうな事を聞くで。その子はなんや?」

 

 ロキ神が見ていたのは自分ではなく、華の方だった。彼女が黄昏の館に行ったのは放心した【千の妖精(サウザンド・エルフ)】ちゃんを送り届ける為で、その帰りにロキ神に見付かったのが事の経緯だ。華も飛び込んでくるロキを避けるとは考えなかったからあっさり捕まった訳だけど。……ん?

 

「華。貴女が捕まった時、ロキ神に何かされた?」

「いえ何も。両手両足でがっしり体を抱きしめられただけです」

 

 セクハラ案件だった。ロキ神を睨むとさっき軽々と質問したとは思えない、わざとらしくも顔を背けて冷や汗を流してる。言いたいことはあるけど、先に質問に答えましょう。

 

「彼女、ラクジョウノ・華はヒューマンはおろか人類ではありません。私が旅の最中に訪れた遺跡に眠っていた機械仕掛けの人形です。とは言え、そうは思えない作りですがね」

 

 正直に華の正体を告げた。彼女の頬をつつくと普通の皮膚と変わらない弾力で跳ね返るけど私の爪でも傷つかない。と、ロキ神もまずはセクハラについてはすぐに追求されないとわかったのか顔をこちらに戻してくれた。

 

「機械仕掛け、か。まさか地上にこんなもんを作り上げる子がおったなんてな。作った子の名前はわかるんか?」

「残念ながら。どうやら名声などには興味がなかったようで名はありませんでした。ただ華の名前から推測するに極東の出身かと」

「そっか……。生きとったらカラクリメイドのハーレムを頼みたかったのに……っ!!」

「本気で悔しそうですが?」

「本気だからよ」

 

 ゼウス神も同じ事を言うでしょうね。

 

「カレンちゃんはその子みたいなの作れないんか?」

「残念ですが出来ません。材料が手に入らないんです」

「ほぉ、()()かぁ」

 

 ロキ神がジロジロと華を見始める。さすがに言葉を遠回しすぎて()()()を付けられたかもしれないけど、ロキ神相手ならこのくらいがお互いの線引きが出来るわね。

 

「一応、彼女の事は広めないで下さいますか? 私が言うのもなんですが目立ちますから」

「せぇへんよ。こんなオモロいもん言いふらしたら勿体ないやん。それにいまウチのファミリアは遠征の準備中や。遅れるような騒ぎは起こしたくはない」

「遠征ですか……」

 

 確か前の遠征はだいたい一ヶ月前。その間に資金が集まるなんて……ああ、この間のクエストの報酬か。でもそれでもここまで速く実行に移すのも急すぎる。

 

「……その遠征、幾つかの目的がありますね」

「まぁな。さすがに教えられんで」

「当たり前じゃないですか。ここで教えるなら逆に説教ですよ」

「なんやオカンぽいなぁ」

「こんな外見ですが歳は重ねてますから」

「ああ、そやな。しかしなぁー。んー」

 

 なんだか悩み始めたわね。ただ年齢の話題になっただけのはずだけど――。

 

 

 

「――なぁカレンちゃん。自分はホントに()()なんか?」

 

 

 

 首を掴まれた感覚だった。この前心臓を言葉通りに掴まれたけど、今はこの悪寒の方が凍り付くようだった。

 

「なんですかその質問は?」

 

 こうして取り繕うことが出来たのは予想していたせいか。でも失策だった。今回は()()()()()()()

 

「いま、取り繕うたな?」

 

 天界きってのトリックスター。狡知に長けた神ロキ。思わずの誤魔化しなんて見破れるに決まってる。これは間違いなく私のミスだった。

 

「……お答えできません。と言えば十分でしょう?」

「ああ、やっぱ自分はかなり特異な存在って訳やな。神は下界の子らの嘘を見抜ける。でもカレンちゃんはそれがない。つまり神にとって未知なる存在。しかも独立した唯一。それがカレンちゃんの正体」

 

 これだと言う名には至ってないけど、当たりは付けた回答だった。むしろこれはわからないから、これだと思える答えを入れないで未記入にした状態だ。それにしても、この間【猛者(おうじゃ)】に伝えてそのままフレイヤ神に伝わった後にこうしてロキ神に不完全に知られた。

 思わず華の様子を確認した。最近の彼女はこの件に積極的だから彼女からボロが出ないかと思ってしまったからだ。でも見る限り沈黙を貫いてる。さすがにここで明かすほど積極的じゃなかったみたいだ。

 

「で、や。その上で聞きたいことがある」

「なんでしょう? 答えられるものでお願いしますよ」

「自分、何が目的や?」

 

 そう来たか、と思った。

 目的と言えばベルを見守る事だけど言葉通りには受け取らないだろう。()()()()()()()()()。それを見破られたくはない。

でも、ロキ神は彼の主神だ。それなら、それなら―――。

 

 

 

「15年前に選んだ覚悟に対する、心残りの清算です」

 

 

 

 そう答えると華がこっちを見たのには気付いた。天秤に掛けた事でこんな言葉が出たが、捉え方によってはその本心を見抜かれないと思ったかもしれない。でも、これ以上の言葉がなかったのも事実だ。

 

「……そうか」

 

 何かを察したのか、ロキ神は物思い気に呟いた。

 

「聞きたいことは聞けたからウチはもう帰るわ。そろそろ腹も減ってきたしな」

「ではお気を付けて」

「おう、華たんもまたな」

「また抱きつきますか?」

「そっりゃもちろんっ!! めっさ抱き付き具合がええからな!」

 

 思わず尻尾でロキ神の顔ギリギリで伸ばしてしまった。傷つける事はなかったけどロキ神は悲鳴を漏らして脱兎の如く行ってしまった。

 

「まったく……。気を使うにもやり方あるでしょうに」

「気を使われたのですか?」

「ロキ神のやり方、でね。でもアレは間違いなくセクハラだから真似しないように」

「記録はしてしまいましたが」

「悪い例として保存しなさい」

「はい」

 

 なんだか華が悪い方面で学習してるきがするなぁ。

 

 

 

……………………………

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

……………

 

 

 

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 とある宿の一室

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「ただいまー」

 

 色々な情報を集めて宿で一人留守番をしてたお姉の所に戻る。お兄はまだみたい。

 

「おかえりー。どうだった?」

「うん。あまりなかった」

「つまり目立った行動はないのね」

「うん」

 

 情報はそんなになかった。オラリオに帰ってきたとか、酒場で姿を隠してる所を見かけたとかそんな所。

 

「じゃあベル・クラネルとか【ヘスティア・ファミリア】については?」

「ない」

「そりゃあ零細ファミリアの情報なんてないだろう」

 

 調べた事を伝えてるとお兄の声と一緒に頭を撫でられた。気持ちいい。

 

「またおかえりー。そっちはどう?」

「両方とも情報は1つずつだけだったよ。ベル・クラネルが怪物祭(モンスターフィリア)の際、逃げ出したモンスターの一匹を倒したって話だけだ。中層直前に出現するシルバーバックをだ」

「へー、確かベル・クラネルは冒険者になったのが一ヶ月半ぐらいだからなかなかやったほうね」

「お兄、どこで知ったの?」

「ダイダロス通りだ。お前に行かせられないから俺が行った場所。だから見付けられなかったって気にするな」

「うん」

 

 また頭を撫でられてお兄の手が離れる。ちょっとさみしい。

 

「で、もう1つは直接的じゃないが関わってると思う情報。【ソーマ・ファミリア】の不祥事の件だ。元々、ソーマはファミリアの運営には消極的だったのが今回は珍しいほどに思い切ったって話だ。元々、神と眷属に隔たりがあったなら間違いない。確実に関わってる」

「なるほどねー。確かに関わってるわー。でも耳が届かない所には何があったかしらねー」

 

 お姉はまだ何かがあったと思ってる。お兄も頷いているし、私も同じ事を考えてる。だって何かがあったから私たちはここに来た。時間がないから。

 

「よし、それじゃあ一週間後にしましょうか」

「ん? お姉決断早い」

「いやいや妹よ。万全な準備には時間がかかるものよ。下調べに作戦会議。と言っても私の消耗品を作る時間が多いんだけどね」

「いや、それは仕方がないだろ? それで、こっちで手に入る物はどうだった?」

「十分十分。さすがはオラリオ。物は入ってくるしダンジョンの素材も中々よ。検証も満足いったしね」

 

 そう言ってお姉はさっきから手の中で弄り廻していた()()を真上に弾いて、またキャッチする。

 

「それじゃあご飯にしましょうか」

「おー」

「おー」

 

 ごはんは大事だ。食べれる時はちゃんと食べるのは基本。食べて、また食べる時まで頑張るため。

 




・ラクジョウノ・華。記録ス
 自動人形である彼女は人間観察により自分という物を形成していく。動き、言葉、感情。人の姿を記録し、そこから学ぶ。
 ある意味で人の営みが彼女の教師である


・華の抱き心地
 皮膚に当たる部分は普通の人間の物と変わらない。
 ちなみに身長・3サイズの可変が可能。

・一週間後
 分岐点。
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