竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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一週間の5日目

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 メインストリート・北

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 今日も特に何もなかった、何も見付からなかった。そうして5日目にあった。さすがに時間のローテーションも整ってきたから気分転換に出る際も華との話も通信越しじゃなく隣に置いていた。

 

「どう思う?」

「昨日カレンが言ってったようにすでにオラリオ入りをしている可能性が高くなりました。であれば監視は止めていかがでしょうか?」

「そうしたいんだけど最初に予想が当たってるなら寧ろ何か仕込む可能性があるから気は抜けないわ」

「それもそうですね。確かにあの人なら落書きをするように被害を度外視しますからね」

「想像したくないわぁ……。もちろんその対策する相手は」

「予想通り彼女でしょうね。夫婦で来られないのが残念ですね」

 

 そりゃあそうでしょう。()()()はあの人との双璧だし、同時に傍観者を選んだ立場だ。まぁだから押しかけ嫁になった彼女が動くでしょうけど、怒り心頭でしょうね。何せ棺を奪ってるわけだし。

 

「あー、でもそうなると私がダンジョンで力を解放しちゃったのが原因だし。責められるかしら?」

「文句を言われたなら謝罪しましょう。追求しないなら流しましょう。気にしていては仕事は出来ないそうですから」

「同じファミリアに所属しているわけじゃないけどね」

「ですが、彼ら彼女らはカレンの()()です。願わくば、私も末席に加わりたいです」

「だーめ」

 

 華の考えは理解しているけど、それはダメ。私に付き合う必要はない。出来る事なら人類以上に稼働する寿命でここに生きていて欲しいのよ。それを、断ろうとしているのも貴女の成長の一つでしょうけどね。

 

「とにかくもう少しだけ様子を見ましょう。それで何もなければ事が起きるまでオラリオに留まるわ」

「ダンジョンには潜るのですか?」

「そりゃあね。彼女だって私の事は気になってるだろうし」

 

 彼女――ダンジョンマスターも私の事は気になってるでしょうしね。あの時は元・冒険者として思う所があったから無意識に荒っぽく対応しちゃったし、今後を考えてもう一度会わないといけない。

 

「でも1年も経たずにこうも進むなんてね。もう数年先かと思ってたのに」

「今が時代の転換期、ではないですか?」

「その理由は?」

「むしろカレンがよくわかっているのでは?」

「まぁ、ね」

 

 私にとってはわかっているじゃない。身に染みてる。15年前が正に転換期だった。二大ファミリアの入れ替わり。オラリオ暗黒期、闇派閥(イヴィルス)。そして抗争によるファミリアの壊滅。その場にいなかったけど、ここに来て様変わりしたのぐらい実感している。神々が降りてきて1000年の間にも色々あっただろうけど15年前と今を顧みるなら多くの事が起きている。まさに時代が変わろうとしているんでしょう。

 

「あ」

「ん?」

 

 更に思い更けようとした所で華が何かに気付いたように声を漏らした。何かとその視線の先を追うと見知った顔が3人。なんだか騒いでるけど、あの面子なら仕方がないか。

 しぶしぶ、ではなく珍しい組み合わせだからちょっと面白そうだなと思いながら3人、ベル達の所に近づいく。

 

「何やってるの?」

「あ」

「お?」

「ふお?」

「とりあえずヘスティア神はベルから降りて下さい」

 

 話す前にまずベルにへばり付いているヘスティア神を剥がして――抵抗されたのでちょっと強めに――まともに話せるようにした。

 

「で、ベル。【剣姫】ちゃんと一緒にいるとことがバレた訳ね」

「えっ!? なんで知ってるの!?」

「私、飛べます。つまり上空から目に入るの」

「なるほど……」

 

 バレないように城壁で特訓していたんでしょうけど翼がある私、特に監視している今じゃ見付けるわよ。

 

「とりあえずベル。まずは話よ。ヘスティア神もどういう事か知りたいでしょう?」

「もちろんだ! ベル君、誤魔化したって神には効かないから正直に話すように」

「はっ、はい!」

 

 

 

 

 

 そうして私たち5人、裏路地でベルの話を聞いた。私も特訓をしていたのは知っていたけど事情は知らなかったから同席させてもらった。

 事の始まりはベルと【剣姫】ちゃんがギルドで邂逅した時。この前の緊急依頼(ミッション)の直前で【剣姫】ちゃんがベルのプロテクターを拾ってたみたいで、それを返却する為にギルドにいたみたい。ちょうど私が教会に行った日ね。そこでベルの強くなりたい気持ちに【剣姫】ちゃんが手助けした訳、か。

 

「カレン、こういうのはよろしいのですか?」

「普通はよろしくないわよ。他派閥に自分達の財産を渡すわけだもの。私だってファミリアにいたときは取引交渉をした上だったし。ただ利益がある以上は表向き敵同士のファミリアでもやり取りは出来ていたの。ま、それでも秘密裏に手助けもあったけど」

「つまりバレなきゃ問題ない、と言う事ですね」

「そうそう」

「問題ありだよっ! 特にヴァレン某が相手なんて……」

 

 貴女のそれは嫉妬でしょうに。

 

「よし! ベル君、午後も特訓をするんだろ? どんな様子なのか見に行かせて貰う!」

「ええっ!?」

「ヘスティア神、バイトは大丈夫なんですか?」

「おばちゃんに土下座して頼み込む!!」

 

 あまり情けないことを言わないで下さい。

いや、考えよう。もしヘスティア神がここで無理を通して評価が下がったらクビになってファミリアの負担に。

 

「仕方がないですね。華、貴女が代理で店番してくれない?」

「私がですか?」

「本当かい!? あっ、でも言っちゃなんだけどそう愛想がいい子って感じじゃ」

「華」

「わかりました」

 

 初見なら華をそう評価するのは無理もない。だから、その不安を取り除く。

 

 

 

「どうもはじめましてっ♪ 今日、お手伝いをさせて頂くことになった華です。未熟者ですがどうかよろしくお願いしますっ♡」

 

 

 

 人当たりのいい満面の笑顔に腰の低い立ち振る舞い。店員代理としては満点でしょう。

 ただあまりにも突然な変わりようにベル達は絶句していた。うん、わかる。とりあえずこの後、華は問題なくヘスティア神の代わりとして採用された。

 

 

 

 

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 オラリオ・城壁

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 屋台を華に任せた後、私たちはベルの特訓の見学だ。監視あるけどここなら半分は気を配れるし、後でもう半分を華と確認れば問題無い。それに実はじっくり見るのは初めだから、細かく見てみる、つもりだったけど。

 

「グブッ!」

 

 速い鞘先が顔面に当たる。

 

「ゴブッ!!」

 

 フェイントの蹴りが鳩尾に当たる。

 

「ブッ!」

 

 受け流し損ねて頭上に一撃が当たる。

 

「【剣姫】ちゃん。基本的に1人で活動する事が多い……いや遠回しに確認するのはやめましょう。貴女、人に物を教えるのは苦手でしょう?」

 

 私が尋ねると【剣姫】ちゃんは凍ったように動きを止めた。ボコボコにされているのは知ってたけど、これはヒドい。あとヘスティア神、その笑顔は2人に失礼ですよ。

 

「ああ、でもそれで問題無いわよ」

 

 でもこれ以上の方法はないとも思うからフォローは入れておく。すると【剣姫】ちゃんに動きが戻った。とは言え、このまま続けるのも惜しいか。

 

「ベル、意識はある?」

「うん、なんとか……」

「じゃあそのまま聞いてね。冒険者は神の恩恵(ファルナ)でダンジョンに潜る力を手に入れる。それが【ステイタス】で5つの基礎アビリティ。これは誰でもわかってるよね?」

 

 手の平を見せる、5つの指を立てている状態をベルに見せる。【剣姫】ちゃんも見てるけどまぁ気にしない。

 

「うん」

「ならこの5つが戦闘にどう直結するかわかる?」

「それは……、筋力が攻撃で魔力が魔法?」

「そう思うわよね。でもそれは結果的に、が正しいの。あくまで【ステイタス】は神々の補助、基礎アビリティは補正よ。――【グニタヘイズより贈り物を】」

 

 【ミュニアストレジャー】から剣を取り出し、これを片手で振り回す。手の平で回し、手首を這わせ、上に投げてはそれをキャッチする。

 

「おお、見事」

「ありがとうございます。それでベル、これは基礎アビリティが上がれば貴方でも出来る?」

「え? いや、練習しないと無理だよ……」

「そう、練習してなきゃできない。つまりは技。そして知識。ベル、貴方は【剣姫】ちゃんと相対しているとき、剣筋や立ち回りを見て防御をしている筈よ」

「うっ、うん」

「じゃあその防御が関係している基礎アビリティは? それはわかる?」

「えっと……、耐久と敏捷のアビリティが関係している?」

「残念。魔力以外よ。相手の力に耐える耐久、それを支えに押し返す筋力、盾にする武器や防具を前に出す敏捷、受け流す繊細さを求める器用」

「そこまで関係しているの?」

「じゃあベル。耐久が高いからって無抵抗で剣を受けたらスリ傷すら付かないって思う?」

 

 ベルの疑問に極端な例を出したけど、さすがにそれはあり得ないと思ったみたいね。あ、自分の事は棚に上げてるわ、この例え。

 

「【剣姫】ちゃんのやり方に問題無いのは、結果として最善の動きがベルの体に身に染みるからよ」

「なるほど……」

「ただそれを自覚している冒険者は少ないの。実際、経験値を積めば強くなって相手を倒せるからね。第一級冒険者の【剣姫】ちゃんならわかる話でしょうけど」

「うん。でも貴女ほど細かくは考えてなかった」

「そう。まぁ【ロキ・ファミリア】なら洗練されたサポートがあるでしょうね。それならまとめて言う事は1つね。『今ここある物は何?』」

「「「??」」」

 

 ヘスティア神も含めて最後の言葉に首を傾げる3人。でもこの言葉の意味だけは自分で理解しなかや意味がない。

 そう伝えて納得させて特訓を再開させた。変わらず、ベルはボコボコにされた。

 

 

 

 

 

………………………

 

 

 

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 日が沈み街並みには魔石灯がつき始めた頃になると特訓は終わった。

 

「いや~、見事にボッコボコにされたね。アレ絶対にサンドバック代わりにされてるよ。つまりヴァレン某はベル君の事をなんとも想ってないわけだよ!」

 

 ボロボロのベル(※治療済み)に対して疲れが見えない【剣姫】の2人に比べてヘスティア神の喜びが大きい。へスティア神、その気持ちは理解してますがその態度は止めて下さい、みっともないですよ。

 

「気分が良さそうですねヘスティア神。それならウチの華を代理に立てた報酬を――」

「いやでもヴァレン某君も特訓で疲れただろう! 遠征も近いんだから休める時は休むといいよ、うん!」

「は、はい」

 

 私が取る気もなかった報酬の話をすると手の平を返したように【剣姫】ちゃんを気遣うヘスティア神だった。まぁ意図を察するだけそう頭が悪い訳じゃなさそうだけど。

 さて、私もそろそろ――、なんて考えていたけど妙は気配を感じ取った。

 

「あれ、灯りがない?」

 

 ベルの言葉にようやく当たりが普段より暗いことに気付いた。ここ最近、真っ暗な場所で監視をしていたせいか気にしていなかったけど、これは異常だ。

 

「【剣姫】ちゃん」

「うん」

 

 彼女もこの状況に気付いて剣を抜き、私も槍を出す。

 

「え? え?」

「2人とも、どうしたんだい?」

「ベル、しっかりヘスティア神を守りなさいよ」

「え?」

 

 私が一方的に告げると前の角から黒い衣装を着た猫人(キャットピープル)の男性。得物は槍。……ああ、なるほど。

 相手の正体が誰なのかわかった直後、私は()()飛び、()()()()()()

 

「って上もぉ!?」

 

 後ろ、と言うより真下からのヘスティア神の驚きの声は鮮明に聞こえた。それは私にとって余裕のある証であり、その合間に周囲を確認する。【剣姫】ちゃんは最速の彼の攻撃からベルを守り切り、そのまま離れる。他にいくつかの気配を見付け、その上で奇襲してきた相手を弾き、私もベルから離れる。

 

「さて」

 

 地に足をつき、いつでも追撃・迎撃が出来る体勢で相手を見据える。同じ黒装束にバイザー。ただ違うのは褐色の肌に長い耳のダークエルフ。それを確認していると別の場所からもう1人が私を標的とする。今度はエルフだ。

 

「悪いけど正体はわかってるわ。目的を教えて貰えると――」

「黙れ」

 

 話しかければエルフの方に殺気と一緒に罵倒された。まぁ嫌われてるわよね。

 

「貴様など、本当ならすぐにでも殺してやりたいほどだ」

「そう。そっちの貴方も?」

「……ッ!」

 

 ダークエルフの彼からも殺気を向けられた。さすがに軽口が過ぎたか。猫人の彼が【女神の戦車(ヴァナ・フレイア)】だと気付いた時点で【フレイヤ・ファミリア】なのは気付いた。つまり、その眷属全員には嫌われている。とは言え【猛者(おうじゃ)】を退いたから感情に任せてないし、何よりフレイヤ神に言い含められていそうだから私とは戦おうとしてないでしょう。もっとも、それも我慢が続く限りか。

 

「なら聞き手になりましょう。言いたいことがあるなら聞くわ」

「なら一字一句聞け。あの方が行う事に対して介入はするな」

 

 短く、しかし嫌悪の色を隠さず伝えてきた。あの女神様、ベルに何かする気なのかしら? 私に忠告するくらいだから無茶な事を――。

 そんな風に考えてしまったせいで()()()()()()、ダークエルフの方が襲い掛かってきた。その迂闊さに呆れつつ、改めて自分が恨まれている自覚をしつつも迎え撃つため相手を見据え、

 

 

 

 キィン、と。相手の剣が金属同士が当たる音と共に不自然な方向に振られた。

 

 

 

「「!?」」

 

 相手も私も不可解な出来事に目を丸くしたが、私が先に動いて相手を掴み、エルフの方へ投げ飛ばす。

 

「……チッ」

 

 ただ仲が悪かったのか受け止めず避け、対するダークエルフの彼もわかってたのか受け身で体勢を整えた。

 

「惜しいが時間切れだ。撤退するぞ」

「……わかった」

 

 2人から鋭い視線を向けられながら聞こえたやり取りを拾いつつ影に隠れていくのを見送った。ベル達の方を見れば向こうの3人だけになっていて無事に乗り切ったみたいだ。

 ただ、それよりも。この辺りの地面を見渡し、その中から光る物を見付ける。それを拾い上げるとキノコ状の鉄の塊だった。

 

「そう、()()()()が一番乗りだったのね」

 

 運命とは都合がよく、そして残酷なんだと思った。

 

 

 

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 とある高見台

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「メッセージ、送信と」

 

 自信はあったけど上手く命中したとなるといつも気持ちいいわね。後はここに手紙を置いておけば会いに来てくれるでしょう。

 

「お姉、大胆」

「そうでもないわよぉ。準備が出来たし、それに一週間の宣言はピッタリよ」

「でも本当は隠し部屋に置くつもりだったんだろ? そっちの方が確実に伝わるんじゃないのか?」

「そうね。でもこうして機会があったなら乗っておこうと思ってね。予定調和は崩してナンボでしょ?」

 

 弟妹達の言葉を軽い感じに返しながら武器をしまう。

 

「それとも何? 2人は心の準備が必要だった?」

「まさか」

「ううん」

「じゃあ問題なし。それじゃあ3日後の再会は()()()()()()()

 

 だから楽しみにしててね、カレン・デュラス(■■■■■■■■)

 

 





・臨時アルバイト華ちゃん
 ヘスティアの穴を埋めるために店番代理に立ったラクジョウノ・華。これまでの経験から客当たりのいいキャラとなりジャガ丸を売る。結果、高い売り上げを叩き出した。



・カレン・デュラスに対する【フレイヤ・ファミリア】の眷属達の感情。
 「殺す」
 「「「「地面に這い蹲せる」」」」
 「我が女神に引き摺ってでも連れ出す」
 「一生の苦痛を与える」


・キノコ状の鉄くず。
 この時代にはまず存在しない廃棄物。
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