竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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一週間の6日目

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 とある高見台

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『貴女が私達に気付いた日から三日後、セオロの密林で再会しましょう』

 

 

 昨日の件から場所を特定し、その場所に向かえばこの一文だけが綴られた手紙が置かれていた。

2日後、【ロキ・ファミリア】遠征の当日と重なる日か。フレイヤ神がベルに何をするつもりでもあるから気になるけど、この件は私じゃないとダメでしょうね。

 

「華、2日後の日だけベルを任せていいかしら?」

「構いませんよ。何かあるのですか?」

「フレイヤ神が何かしでかそうとしてるからね。見守って欲しいの」

「危険があれば助ける、と言う事ですか?」

「正直、そうして欲しい。でもフレイヤ神の事だからベルに与えるのはおそらく試練の類いよ。身内としての心配と同時に元【ゼウス・ファミリア】としてはベル自身で乗り越えて欲しいって思ってるの」

 

 それに本当に試練なら露払いの1つや2つはあるでしょう。昨日、【フレイヤ・ファミリア】の面子を顧みるに【猛者(おうじゃ)】が仕込みをしている可能性が高い。華でも彼との対峙は実力差がありすぎる。現状では、だけどね。

 

「……ああ、ダメね」

「?」

「何でもないわよ」

 

 私の事もあって華の封印が中々頭の奥へ隠れてくれない。私以外に解除できないようにしているとは言え、この考えは早い内に忘れないと。

 

「華、監視は終了。ベルの件まで自由にしていいわ」

「よろしいので?」

「私とあの子達の再会は誰も邪魔は絶対にしないでしょう。一番の候補だったあの人は来てたとしても自粛するでしょうしね」

 

 性格はアレだけど身内には甘いからなぁ。身内以外、いや特定の種族には無慈悲だけど。いけない、暇つぶしに悪行する可能性が出てきた。でも未然に防ぐのは難しいし、ここは祈るしかないのかぁ。

 

「カレン、()()()に関する事件があった場合は?」

「ああ、華もそう考えるのね。思うところはあるけどあの人なら防ぎようがないわ。残念だけど関係性だけを調べるだけにして」

「わかりました」

「ええ。それじゃあ私も二日後に備えて色々と準備をするわ。これに関して不足だった、なんて恥ずかしい事は出来ないしね」

「頑張ってください。では私もメンテナンスが必要になる以外は自由にします」

「……ちゃんと隠れ家には帰ってくるのよ?」

「……わかりました」

 

 その間は何? 何をするつもりだったの?

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

……………

 

 

………

 

 

「ありがとうございましたー」

 

 店を巡って数軒目。とは言え求めてる品数そのものは少なかった。ただ特殊なものだから必要な物と数が中々揃わないのが店を巡っている訳だけど。

 

「でもほとんどが観賞用か置物の材料なのよねぇ」

 

 これを素材として再利用すると知ったらお店の人は何を思うのかしら? いや、私の事を知っている人はどこか納得した顔をしてたから察しているのでしょう。

 

「でもそう言う品だから量は確保できる。あとは―――」

 

 【ミュニアストレジャー】が収納魔法だった結果、収納物が頭に記憶するようになってから買い物にメモを用意する事がなくなった。その代わり周囲の気配に対して鈍感になる。とは言え高レベルの自分は警戒心が強い方だ。

 でも、例外はある。それを証明するように()()()()()()

 

「ん?――――んん?」

 

 手を握られた事に気付いて、それが私にはあり得ないとすぐに気付く。つまり手を握ったのは私の無意識、本能で警戒しない相手と言う事。そんな相手はゼウス、ヘラ・ファミリアのみんな。ベル。そして―――。

 

 

 

 

 

「やっと、捕まえた……!」

 

 フィンぐらいだった。

 

 

 

 

 

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………(グッ)」

「って逃げないでくれ話がしたいだけなんだ!」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………(ググッ)」

「止まってくれと言うか手は振り払わないし黙ってるって事は混乱してるだろ! ホントに話だけだから!!」

 

 ホント、逃げたい。

 

 

 

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 仮宿の一室

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 【ロキ・ファミリア】はもうすぐ遠征にダンジョンに潜る事になる。物資の目処も立ったし団員たちも鍛錬も十二分。

 団長の僕もそれに追われていたが、今日はどこか親指が疼いたから息抜きがてら散策に出たらカレンを見付け、しかも今なら近づけるほど警戒が緩んでいた。

 逃がさないように手を握り、それでも往生際悪く逃げようとするカレンに引き摺られながらなんとか話し合いに応じさせることが出来た。こっちも疲れたけど。

 

「何してんのよ、私……」

「そこまで落ち込まないでくれ。それにさっきの態度で確信したよ。やっぱり酒場の時やホームに来てた時は僕から逃げてただけなんだね」

「悪い? と言うか貴方こそ大丈夫なの? 特に【怒蛇(ヨルムガンド)】の子」

「……………今回は覚悟して来たつもりだよ」

「その間は絶対に気にしてるでしょ」

 

 相変わらず察しがいいね。間違いなくあの場で噂が広がる筈だからティオネにも伝わるだろう。なんとか説き伏せよう。そう誓う。

 改めて、いや15年ぶりに面と向かったカレンは変わっているようで変わってない。皮肉を口にするのもいつも通りだった。何を目的にオラリオに戻ってきたのか知らない。でもそれがわかるとどこか嬉しかった。

 

「で、話って? 15年前の件? 食料庫(パントリー)? それとも私たちの関係について?」

「まずはキミが落ち着いてくれ。捲し立てるときは気持ちが宙に浮いているときだろう?」

「むっ……」

 

 饒舌だけどその場合、キミは本心を誤魔化すからね。

 指摘するとカレンは悩ましい様子で思案し、すぐに立ち上がる。

 

「貴方、好みは変わった?」

「いや。まぁ会食の機会が増えたから舌は肥えたかもね」

「そう。こっちは旅をして珍味も味わったわね。―――【グニタヘイズより贈り物を】」

 

 収納魔法からテーブルと茶器が出現したけど僕は寧ろカレンから話題を振られた事が嬉しかった。なにせこの十五年の空白を埋めるようだったからだ。

 

「それは羨ましい。ここじゃアイディアがないと新しい美食は生まれないからね」

「そうでもないわよ、当たり外れもあるし。でもその土地の人達と友好を築くにはゲテモノでも口にしなきゃいけなかったわよ」

「逆に興味が湧くよ」

「お茶が出来るまでなら話して良いわよ」

「そうか、ありがとう」

「礼を言われる事じゃないわよ」

 

 カレンは手を動かしながらも会話を続けているけど手順は丁寧で流れるように動かしている。懐かしい。この姿を見るのは息抜きの1つだったな。

 食事の話以外にも寝泊まりや季節の話で時間を使うとカレンの用意が終わった。

 

「どうぞ」

「うん、いただくよ」

 

 目の前に出されたお茶を口につければ懐かしい味が舌の上に広がった。

 

「……この味は変わらないんだね」

「好みなんてそう変わらないわよ。貴方が懐かしいと思うならそういう事でしょう」

 

 ……そうか、そうなんだね。やっぱり15年前から変わらないんだね。キミの事だ。味くらい変えることだって出来ただろうに。全く、僕は相変わらず彼女から先手は取れないな。

 

「話をしてくれるんだね」

「一ヶ月も足踏みしてようやく勇気が出たみたいだからね。それに報いただけよ」

「その割には逃げようとしたみたいだけど」

「……貴方の本気を見てただけよ」

 

 嘘だ。だって本気で逃げようとしていたし、動揺していたのを認めて自己嫌悪してたじゃないか。と、言えたら良いけどへそを曲げられて逃げられたくないからここは黙っていよう。

 

「失礼な事、考えてる?」

「いや、考えてないよ」

 

 本当に察しが良いね。

 

「まぁいいわ。実を言えば私、事の次第でしばらくオラリオを空けるの。良いタイミングに捕まえたわね」

「え?」

「言っておくけど一時的よ。ちょっと私関係で騒がしくなりそうだからそれを止められる人をどうにかして連れてくるだけ」

「それは、ゼウスかヘラの元眷属かい?」

 

 カレンの言葉で想像したのは彼女の仲間だった【ゼウス、ヘラ・ファミリア】の眷属だった。彼女で止められない事を仄めかしていたからそれも高レベルの冒険者―――。

 

「違うわ」

 

 と、カレンによってその可能性はあっさり否定された。

 

「私がオラリオから飛び出して、しばらくお世話になった人よ。今は世捨て人のように引きこもってるから時間が掛かるのよ」

「そうか。それは会ってみたいね」

「言葉を失うと思うわよ?」

「そこまでスゴい人物なのかい?」

「まぁ、ね」

 

 ん? どこか歯切れが悪いし、遠い目をしてるな。この反応は僕も知っている相手だった場合だけど、心当たりがないな。

 ……おっと。これはカレンの誘導だな。彼女から話題を振って僕からの質問を回避してる。

 

「――安心しなさい。ちゃんと質問には答えるわよ」

「え?」

「貴方ってば普段が普段でしょう? いつもの理知的な姿勢から外れると読める相手には読めるくらい思考がわかりやすいのよ。そこは気をつけなさいって言ってたでしょ?」

 

 ……ああ、そうだ。15年前のキミもそう言ってくれてた。自分から遠ざけてるのに言ってくれてるのか。

 なら覚悟を決めよう。

 

 

 

「ならみっともなく聞かせて貰うよ。キミは恨んでいるかい? 15年前、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 恥の欠片もなく、この胸の奥でしまい込んでいた後悔をここで告げた。

 

「………」

 

 カレンは静かに僕を見ていた。反応がない、なんて筈がない。

 わかってる。この沈黙こそ彼女の返答だ。そして彼女が恨むなんて、しないと。

 

「黒竜討伐の生き残りからキミが殿として残って聞いた時は腹の底が熱くなった事を今でも覚えている。死んだと思ったからね。だから僕は、僕らは頂点に立つために【フレイヤ・ファミリア】と共に神ゼウスと神ヘラを追放し、オラリオの二大ファミリアになった」

「でも、私は生き残ってオラリオに戻ってきた」

 

 カレンが言葉を挟んだ。これは話を最後まで続けるように言ってる。

 

「ああ、生きていてくれた。そしてキミは【ゼウス・ファミリア】として、最後の眷属として、神ゼウスを追放した僕ら【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】を襲撃した。その時の僕は、()()()()()()()()()()()

 

 キミの変わり果てながらも生きていてくれた姿を見た時、僕の気持ちは乱れた。困惑、歓喜、焦り――。あらゆる感情が渦巻いていた僕は恐らく、自分の心がむき出しになっていたんだろう。

 

「……そう。そしてそんな貴方を倒した私は失望した」

「そんなキミに僕は『嘘つき』と言われた。返す言葉がないよ。僕とキミは別所属の【ファミリア】だった。けれども【ファミリア】の眷属として相対するときは決して情に流されず、お互いが衝突する時には全力で戦う事を誓っていたのに」

「つまり、女との約束を貴方は破ったのよ」

 

 そんな言葉でまとまる事じゃないと思うけど、僕に非がある上に彼女の口から突きつけられると改めて胸の奥に突き刺さる。

 でも僕はその上で踏み込まなくてはならない。僕にとっても。恐らくカレンにとってもだ。

 

「改めて教えて欲しい。キミは僕を恨んでいるかい?」

ううん、全然

 

 

 ガシャンッ!

 

 

 思ってもない返事に思わず頭をテーブルに叩き付けて食器を鳴らした。

 え? ちょっと待ってくれ。

 

「でも根には持ってるから」

「ああ、そうなんだ……」

 

 でもすぐにそう聞かされて完全に許している訳じゃないと知って、変だけど安心した。ただそれでもダメージは大きい。

 

「そもそも私が恨んでようがなかろうが、貴方はその頭脳と理性で宿願を果たす方へ進むでしょ? だったら私が面倒な感情を抱えても無駄でしょ?」

「まぁそうなんだけど、確かにそうだけどっ」

 

 まさにカレンの言うとおりこの15年間でもダンジョンに潜り、実力と実績を積み上げてきた。でもそれでもキミの事を忘れた事はなかった。なかったからこの返しは本当に予想外――――。

 

「でも、ないかぁ……」

 

 忘れていた。いや罪悪感で目を逸らし続けていたのか。

 カレンは後悔しない、そんな女性だ。自分の選択、運命ですら受け入れて顔をあげて前へ進み続けられるほどの強かだった。そんな前向きなのに、責任感は人一倍に強く無茶もやってしまう。

 そんなカレンに、僕は使命も忘れて恋をした。そしてカレンはそんな僕を理解してくれた。

 

「……昔に戻ってきたわね。貴方はそのくらいの方が前進するでしょう」

「お陰で心のしこりが取れた気分だよ。僕は贖罪に来たはずなのにどうしてキミに背中を押される事になるなんて」

「貴方は追っかけてる方が良いのよ。ま、だから避けてた訳だけど」

「避けてたのは嘘だろう? キミだって距離を取らないとと思っていた筈だ」

「………そう言う察しの良さは女に嫌われるわよ?」

「じゃあキミは僕の事は嫌いかい?」

「それを聞く?」

 

 呆れた顔で紅茶を口にしたカレンはその返事を口にする。

 

 

 

「好きのままに決まってるじゃない。この15年、私は貴方の大願を想わなかった事なんて、一度たりともないわ」

 

 

 

「………/////」

 

 その返しは卑怯だよ、カレン。

 

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

……………………

 

 

………

 

 

「あ」

 

 カレンの告白から少し、この15年の空白と後悔が嘘のように会話が弾んでいると何かを思い出したように声を上げた。

 

「どうしたんだい?」

「うーん、まぁ隠してもしなくても問題か」

「なにが?」

「ほら、私が黒竜討伐の前に最後、貴方に会った件」

「討伐前――――」

 

 その時期を聞いて、心当たりが一つ。そして自慢の頭脳と回転の速さがその可能性を否応でも導き出された。

 

「………それは、そういう事かい?」

「うん」

 

 …………そうなのかぁぁ。

 

 




・監視の終わり
 要注意人物は、すでに来ていた3人に対しては遠慮する故にカレンは監視を終えた。しかし逆に言えば2日後の件が終われば確実に現れると予想している。



・仲直り
 そもそもカレンは「惚れた弱み」と「まぁよく悩む人だし」で深くは怒っていなかった。これまでの皮肉や距離を取っていたのは向こうから来てくれるためのブラフ(+本音)。その方が愛する人の為になるから。
 むしろなかなか踏み出さなかったフィンの方がある意味で徒労になった形である。



・討伐前に何をしていた?
 ■■をしていたました。
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