竜人がいるのは間違っているだろうか?   作:Celtmyth

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強敵への挑戦①

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 セオロ密林

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 竜人は力強い種族と言える。強固な鱗、空を飛ぶ翼と器用な尻尾。加えて体力もある。戦闘における万能性はすでにトップでしょう。そんな中で弱点と言えるのは閉所での戦闘だ。

 他の種族と比べて多くの部位がある分、狭い場所ではそれが邪魔になる。行動・動きに枷が産まれ、それに障害物が加わればより重くのし掛かる。だからこそ、そんな場所での戦いは技量が求められる。

 

 パァン! パァン!

 

 二発の銃声に足を止めて体を曲げる。その直後に傍の幹に二つの穴が空いた。すぐにその射線上の先――、ではなくその背後。

 

「ふっ!」

「……んっ」

 

 武器で背後の奇襲を防ぐ。声からしてイベルグ―――。

 

「――っと!」

 

 なんて考えている内に武器と動きを上手く扱って私の正面に移動してきた。そして真っ直ぐに私を見つめ、遠慮なしの拳を放つ。

 でもすぐに上体を曲げて避け、イベルグ同じように動いて距離を取る。でもこれはつまり―――

 

「追い込みっ!」

「正解だよっ!!」

 

 振り返れば木の陰に隠れていたアーシンを視認できた。そして、あの子の周囲を囲むように水の玉が出現していた。

 

「【水の章、豪雨の節。潤沢な雨粒、此度は貫く矢となり降り注げ。バーストレイン】っ!」

 

 光る本を片手に詠唱を終えると周囲の水の弾が弾け、まさに雨粒までの小ささになった。ただし、詠唱通りならこれはちょっとマズい――なんて思っている間に雨粒は一斉に私に向かって降り注いだ。本当に詠唱通りなら貫通力は高い魔法。まさに針の壁。

 

「バニアンアックスっ!!」

 

 先に【ミュニアストレジャー】から取り出した竜具の一つの能力をここで使った。

 片手に握った片刃の斧。その名前を叫ぶと私が目に留めた木に届くまで柄が伸び、その幹に負けない程に刃が巨大化する。アンバランスな形状だったがこれは私が鍛えた竜具。特殊で最高の武器。斧の刃は派手な音を立てて木を一振りで伐採した。

 伐採した木は狙い通りの方向へ傾き、私とアーシンの間へ割り込む。盾ではなく武器として。

 

姜呂鞭(きょうりょべん)!!」

 

 もう片方で握っていた硬鞭を振ると距離のあった木に衝撃音。まるで私が殴ったように伐採した木はアーシンに向かって飛ぶ。でもアーシンの魔法とぶつかり破壊される。木は粉砕され、逆に魔法は健在。ただし粉砕されただけで粉微塵になったわけじゃなく、破片となっても私が叩き付けた衝撃は殺し切れていなかった。

 

「っ!? ったく!」

 

 木の破片でも勢いづいていれば鋭利な刃になる。これを私からの反撃でさっきの魔法に対処した物と察して今の場所から跳ぶ。ただし移動したことで放った魔法の軌道にズレが生じた。そのズレから隙間を見極め、十分に私でも躱せる空間を見付けた。

 

「だからごめんねエルシュウ!!」

 

 その隙間に入る前に姜呂鞭を使い、僅かの気配から潜むエルシュウに衝撃を当てた。相手を認識し場所も把握していないと発動できない竜具だけど、音が響いた事で命中した事を確認した。その後に魔法の隙間に入り込む。その間に姜呂鞭を口に咥えてバニアンアックスを両手で握り直す。

 

「―――フッ」

 

 今からする事をイメージしてバニアンアックスを巨大化させる。さっきより柄が短いが刃は逆に数倍にも大きくなる。さっきよりも重量は増えたがなんとか振るうだけの力は私にはある。だから遠慮はしない。

 

「フホホホホホホホホホホォォォ―――――――!!」

 

 咥えているせいでなんとも間抜けた声が出るけどやってる事は大胆だった。巨大化した刃は木々を断ち、同時に吹き飛ばして更に遠くの木々を薙ぎ倒す。それを二回転した所でバニアンアックスを巨大化したまま上空に投げた。その間に咥えていた姜呂鞭を手に戻す。

 

「……よしっ」

 

 そんな呟きと共に巨大化したバニアンアックスが背後に落下。と同時に火の攻撃から私を守ってくれた。

 

「もうっ、本当に周囲への警戒がハンパないね私たちのママはっ!!」

「姉さんに同意だ」

「暴れちゃ落としちゃうよお姉」

 

 バニアンアックスの影から背後を覗けば三人が固まっていた。ただしイベルグがエルシュウを背負っているけど。私がエルシュウを吹っ飛ばした時にイベルグが回収したわけか。そしてアーシンと一緒に攻撃したって流れね。

 それにしてもエルシュウが持っている銃は私でも初めて見るわね。

 

「また新しいのを作ったのねエルシュウ」

「ん? まぁね、旅をしていると色々あった方が対策の幅が広がるからね」

「それで爆弾を撃つ銃?」

「そそ、()()()()()()()()()()。地面に固定出来るタイプだったらもっとたくさん撃てたんだけど。あと爆弾じゃなくて擲弾。そこの区別よろしくね」

「はいはい」

 

 まったくこの子は。華がいた遺跡で下地があったとは言え、そこまで発展させるとは感心するわ。でも流石に広めることはしてないでしょうから目を瞑りましょう。

 

「さて、私がこうして視界を広げた。その瞬間にあなた達は火を使った。判断力とコンビネーションを見事と褒めるわ」

「ありがと♪」

「でもこれだけ拓けた場所が出来たって事は理解してるわね」

「もちろん」

「まったくだ。母さんは何事にも巧い」

「ん」

 

 私の言葉を理解して三人はより気を引き締めた。特にエルシュウはここで銃器を両手持ちの物から片手持ちの物に変えている。この先から火力を変えるのは愚策と見ての判断ね。

 

「【グニタヘイズより贈り物を】」

 

 なら私も他の竜具を出現させる。とは言えこのセオロ密林を完全に消失させるような物は出していない。

 

「【この意志に従え。キネシス・ハンズ】」

 

 更に魔法でそれら全てを浮かび上がらせ、私の意に従うようにする。

 さて、第二ラウンドといきましょう。

 

 

 

 

 

 全く、私たちのお母さんは本当にスゴいな。実力差があり、お互いに不利だった環境であっても私たちの成長を確かめていた。暗くて木々が密集して視界が悪かったのに私たちの位置を把握しているし、そう時間は経ってないのに私たちの連携の練度も理解してそのアドバンテージを取り払ってきたし。

 

「弟妹たち、今の状況はどう思う?」

「拓けて戦いやすい」

「そうだな。でも俺たちが不利だ。盾であり目隠しだった密林がなくなったからな」

 

 二人の言う通りだ。特にアーシンの意見は私が考えていたことと一緒だ。

 私たち竜人は地上戦より空中戦。より拓けた場所でこそ最大限の力を発揮できる。なら同じ竜人だったら? 答えは「どれだけの制空権を得られるか」。

 密林の木々が伐採されたこの場所はまさにそれが可能になってる。でもお母さんは魔法でいくつの武器を宙に浮かして操る。誰よりも広く空間を支配する。

 

「お互いの位置を気にして、なんて感じだったらお母さんには届かないでしょうね」

「母さんの索敵能力を超えて先読みが出来ればな。それも俺たち三人が、だ」

「無理。ぜったい」

 

 そして密林がなくなった事でお母さんはより私たちの位置を把握できる。数多くの武器を操りながら全ての武器の特性を活かせるだけ器用だ。まぁアレだけの武器を扱える技量を器用って言葉ですまされるのかって感じだけど。

 つまりお互いを意識してはお母さんに動きを先読みされるのは目に見えていた。だったらここからは信頼が鍵か。

 

「ならこっから先に連携はナシ。自分の事だけ考えて行きましょう」

「怖いな。姉さんを気にしないで背中を見せると鉛玉が当たりそうだ」

「ヒドいわね。それともアーシンは自信がない?」

「……やってやるよ。ただし念は入れる。【風の章。矢避けの節。殺意の(まなこ)、飛来する(わざわい)。しかしその視線は逸れ、接近は遠ざかる。エアリアル・ベール】」

 

 やると決めて、しかし慢心や強がりはしない弟が()()を唱えると弟と妹に薄緑色の魔力が輝き、それを包む。って。

 

「私にはないの?」

「必要ないだろ」

「してあげないのお兄?」

「残念。時間切れ」

 

 仲間はずれを問い詰めていたらそれを遮るようなお母さんの一言。でもすぐに理解してその場から離れた。その後に私たちがいた場所に槍が何本も生えてきた。誰の仕業か一目でわかり、すぐにお母さんの方へ振り向く。すると満面の笑みで。

 

「話し合いもいいけど戦いの最中って忘れないでね」

「「ごもっともっ!」」

「気を付ける」

 

 でもその笑顔での不意打ちは怖かったから次は止めて欲しいかなぁ!? イベルグだって無表情だけど冷や汗流してるよ!

 

「作戦! 自分の戦い方で望む! それ以外しようがないんだけどねぇっ!

「了解っ! お互い巻き込むなよっ!」

「痛くても我慢する」

「「絶対に当てないからっ!」」

「仲がいいわね、お母さん嬉しいわ」

 

 よく言うよっ!! なんて悪態がつけたら良かったけどそんな余裕さえない。とにかく、こっからも全力で行かせて貰うからねっ!!

 

 

 

 

 

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ダンジョン・第9階層

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 全身全霊で臨む、とは今のような場面を言うのでしょう。

 用事の出来たカレンに変わり、女神フレイヤの試練という物に対して私がベル達を追跡していたのは問題無い。

 

『そこで止まれ』

 

 しかしこの声で私は追跡を断念せざるを得ない。

 声は知っている。だから足を止めた。

 カラクリの体に感覚はない。それでもこれが殺気を当てられる物なのだろう。

 心臓なんて物はない。ただ()()()()()()()()()()()()()()()が鼓動している気がした。

 初めての感覚に興奮しているのか、それとも恐怖しているのか。『まさか』な事実を抱えながらも私は声の持ち主に対する返事をする事にした。

 

「はじめましてと、まずは挨拶します。改めまして、どうやって私に気付きました?」

 

 挨拶と疑問。なんとなく初対面の相手には礼儀を示したい。そして疑問は当然だった。ベル達の追跡にはカレンの言いつけで第一級冒険者でも察知されないほど細心の注意を払っていた。それなのに気付くとは、頂点とは察知能力も頂点なのでしょうか?

 

「勘だ。だが何かある程度の物だ。お前の気配は俺の知る限りでは一番に希薄だった」

「そうですか」

「が、隠れたままはやめろ」

「わかりました」

 

 軽く脅されたので素直に姿を現す。そして改めて対峙する、【猛者(おうじゃ)】オッタルの風格は二つ名に恥じぬ所か更なる上を表わす二つ名でも問題無いと思うほどだった。

 

「何者だ?」

「ラクジョウノ・華。わかりやすく身分を示すのでしたらカレン・デュラスの仲間、とお答えします」

「……カレンのか」

 

 一瞬、空気が圧迫された。この前、カレンと一戦交えたと聞いていましたし、周囲に当たるような人物ではないと思って正直に答えましたが結構な綱渡りだったようです。

 

「カレンが気に掛けている事はあの方から聞いていた。それ故にあいつが介入するとおもっていたのだがな」

「申し訳ございません。カレンは別件でこちらには来れません」

「別件、か。あいつの事だ。あの方の思惑は察していただろう?」

「はい。しかしあちらはカレンでなければなりませんでした。力不足かも知れませんが私がこちらに来たわけです。――なのでその先へ行かせて貰ってもよろしいですか?」

 

 道を譲って欲しい。そんな意図を示すために戦闘態勢は取らない。戦って勝てる相手ではないので出来る限り警戒はさせない。

 しかし彼が態度を変えることはなかった。

 

「ダメですか?」

「カレンの仲間だ。ならば身内の危機には介入するだろう」

「はい」

「なら通すわけにはいかん」

 

 彼の答えは拒否。私を通さないために大剣をこちらに向けてきた。

 諦めて去る、は論外。戦って押し通るには相手は強大すぎる。しかし論外で去ることがない以上は戦うしかない。

 カレンから受け取った竜具、見た目は皮の手袋の〈テオペリオ〉を両手に嵌める。

 

「……フッ」

 

 バンッ!!

 

 拳と拳をぶつけると鈍器を叩き付けなければ鳴らない音が響いた。そして腕に損傷はない。自分に衝撃が来る可能性があったが問題はないようだ。

 

「竜具か」

「はい。打撃特化、拳で接触した物は重い衝撃を与えます。恐らく、Lv.7の貴方でも痛みは感じるでしょう」

「どの程度か知らないが、慢心が過ぎるな」

「そうですね。英雄たる傑物に挑む、作り物は滑稽と言えるでしょう」

「なに?」

 

 私の言葉に疑問を抱いたが流石に今回は答える気にはなれなかった。並行思考をしながら戦える相手とは思いませんし、逆に手加減無用で来る可能性もありますからね。

 さて、〈テオペリオ〉は拳による打撃特化の竜具。投げ技、組み技は排除。下半身は移動のみ。リーチ差を配慮し、ステップのタイミングに集中。最悪、両腕の破損は覚悟の上。

 

「押し通るため、相対をお願いします」

「……来い」

 

 大剣を向けたまま誘うオッタル(頂点)へ一歩、力強く踏み込んで跳んだ。

 

 




・バニアンアックス
 斧型の竜具。拡大・縮小する事で広範囲攻撃・巨大な相手への有効打を可能とするが、サイズによって重さも変わるため、程度を計らなくてはならない欠点がある。カレンが最大まで大きくしようとして、オラリオの城壁すら粉砕するくらいまでで留めた。
(※元ネタ:アメリカのほら話(トール・テール)、ポール・バニヤン。名前に捻りがないのは、別称・異名がなかったので)


姜呂鞭(きょうりょべん)
 鉄鞭型の竜具。その一振りだけで距離・障害物などを無視して相手に衝撃を与える。ただし相手を認識してないと発動しないし、逆に意識しすぎて意図せず発動する事もある。因みに尻尾で振るうと発動するのでカレンは口に咥える事もある。
(元ネタ:中国・明時代の神怪小説『封神演義』の主人公・姜子牙(通称:
太公望)の武器。封神する仙人に限り、掛け声と共に投げると自動追尾して頭蓋を砕き、不死でも殺す。ただし封神対象365に対して使用回数が84。漫画で有名な方が確実に使いやすい)


・テオペリオ
 皮手袋型の竜具。純粋な格闘スタイルな打撃特化。しかし単純故にその威力は高く、レベル差があっても相手に大きなダメージを与える事が出来る、ジャイアントキリングの可能性を与える、一種の英雄に与えるような武器。
(元ネタ:ギリシャの古代オリンピックにおける拳闘チャンピオン、テオゲネス。四大競技会を全て優勝したことで『周期の勝者(ペリオドニコス)』と呼ばれ、神格化されている。因みに古代ギリシャにおけるボクシングの創設者・庇護者は太陽神アポロンである)


・ドラゴネット3姉兄妹(1/3・姉)

【エルシュウ・ドラゴネット】
 所属:無所属
 種族:竜人(ドラゴニュート)
 職業:旅人

【ステイタス】
 Lv.2
 力:I16 耐久:G273 器用:S999 敏捷:B725 魔力:A864
 製作:B 耐異常:S  
《魔法》
【スヴァルト・ニザヴェリル】
・時空魔法
・独自の異空間の所有
・レベル上昇により間取り変更可能
・時間経過の設定可能
・携行可能のみ無詠唱、拍手で出し入れ可能
・詠唱式
 【北方の暗野にして下方の闇窟。ここは匠の住まう小屋。何人たりともこの場を侵さず、法を犯さず、ただ作り手の安らぎの間の黄金館。暗き大地の作り手の居場所はここにあり】
・解除式
 【道具は棚に、火の明かりも消える。また静寂の喧噪を鳴らすときまで沈黙を】

【        】
・ 魔法



・詠唱式
 【※省略※】

スキル
【   】


多芸職人(ドヴェルグ)
・発展アビリティ【製作】の獲得
・器用アビリティの大補正

【    】





 カレン・デュラスの第一子で長女。リーダー役の頭脳派。バトルスタイルは銃器をメインに多種多様のアイテムを使用する中衛。カレンの才能を引き継いだように生産にも特化しているが、母親が『職人』ならエルシュウは『生産者』。魔法を上手く使い、華の遺跡にあった技術を使用して無人生産ラインを形成している。特に銃弾を生成している。とは言え『職人』としての腕も確かである。加えて独自のアイディアで物を作り、例としてカレンが【ヘルメス・ファミリア】に与えた〈献身たる雛人形〉は彼女の作で『呪詛効果で傷を奪うとか出来ないかな?』と製作している。
 家族としては一番に情が深く、父親についてはカレンへの気遣いもあって話題に出さないし察しても表には出さないようにしている。しかし家族全員が揃う事を願っているのも彼女が一番。その深さ故、その琴線に触れられる事は避けるべし。

追記:外見プロフィール
 見た目はカレンの生き写しそのもの。髪も同じくらいの長さだが胸の大きさは控えめで細身。服装のイメージは『軍服』。あらゆる所に銃器やアイテム、暗器をしまい込んでいる。本当はコートも欲しかったが竜人特有の翼と尻尾が邪魔になるために断念している。そんな装備が多い服なので自然の着膨れする為にカレンと体型の違いは隠れ、初見では間違えられる事が多い。


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